第58話 シャッターチャンスはピカチュウ
旅の途中、ポケモン達をモンスターボールから出してお昼休憩をしていると、何やら見られている気配を感じ取った。
カスミとタケシを不安がらせるのも嫌なので、先に波導を広げて存在を感知する。
悪い感情は持っていなかったので、一先ず声をかけてみることにした。
「おーい、そこにいる君。隠れてないで出ておいでよ」
「ん?」
「なぁに?」
突然俺が上げた声に、タケシとカスミは俺が手を振った方を見た。
「あぁ、見つかっちゃたか」
望遠カメラを構えた姿で、少年が立ち上がって草むらから出てきた。
「草むらに隠れて俺達の方を見てたけど、何か用かな?」
「僕はトオル。そこのポケモン達の写真を撮ろうとしてたんだ。生きているカブトプスやオムナイトの写真を撮ることができるなんて!初めて見るポケモン達もいるし!本当に感激だよ!」
目を輝かせて興奮しているトオルに、カスミとタケシの警戒心が緩む。
「なぁ~んだ。変質者ってわけじゃなさそうね」
「写真を撮りたいなら、初めからそう言えばいいのに」
タケシの言うことはもっともだ。
それに。
「許可なしに他人のポケモンの写真を勝手に撮るのは、あまり褒められたことじゃないぜ?」
「あくまで自然な表情のポケモン達を撮りたかったんだ。だから隠れてただけなんだよ。それが、天才カメラマンとしての僕のこだわりなんだ」
こだわりはいいけども。
「それでポケモン達を怖がらせたりしたらダメだろう?写真を撮られるのが嫌なポケモンもいるし、自分のポケモンを勝手に撮られて嫌な思いをするトレーナーもいる。天才カメラマンならちゃんとマナーは守って、撮られる方の気持ちも考えなきゃ」
「うっ……そ、それは、そうなんだけど……」
俺の言葉で揺れるのは、やってはダメだとわかっている証拠だ。
「サトシの言う通りだ。ルールとマナーは守る。じゃないと、トオルの行いでカメラマンという括りが嫌われてしまうことになるぞ?」
「えぇっ!?」
タケシの言葉でに驚いているが、それはそうだろう。
マナーがなっていない分野は周りの分野から嫌われていく。
ルールとマナーは守らねば、他の人達が肩身の狭い思いをすることになるのだ。
「ご、ごめんよ、許可なく撮って!僕のこだわりで、嫌な思いをさせたなら謝るよ………。改めて、カブトプスとオムナイトの写真を撮りたいんだ。いいかな…?」
申し訳なさそうな表情で、おそるおそる許可を求めてくるトオルの姿に溜飲が下がる。
謝ってくれたから俺はよしとするか。
カブトプスとオムナイトはどうだろな。
「カブトプス、オムナイト、カメラは大丈夫か?」
「?、?」
「???」
カブトプスとオムナイトはカメラがそもそもわからないようで、揃って首を傾げた。
まぁそうか。
ずっと地下で生きてきたんだから、人間の文明なんてわからないよな。
カメラが姿を写し取るもので写真となって出てくることを説明し、トオルに風景を一枚撮ってもらって撮る時に音が鳴ることを話す。
「どうだ?大丈夫そうか?」
「…………」
「…………」
再び問いかけるとカブトプスとオムナイトは互いに顔を見合わせ、困ったように俺の方を見てきた。
「フ、フラッシュはなしで撮るよ!もちろん!」
「うーーーーーん。そういう問題でもなさそうだなぁ……。カブトプスとオムナイトは、化石ポケモンとして有名であり、希少なポケモンの部類に入る。そのポケモン達の自然体の写真を撮りたいというのはわかるが、当人達は乗り気じゃなさそうだな………」
「そんなぁぁ~~~」
「カメラは初めて見るからな。きっと怖いからとか単純な理由じゃなくて、未知のもので心を許せないんだろう」
俺の言葉に、うんうんと二人とも頷く。
ガックシ、と肩を下げたトオルは、気落ちしながらも顔を上げた。
「わかったよ。無理強いするわけにはいかないもんね。ねぇ、よかったら僕の家によっていかない?お詫びってことでさ。美味しいパンケーキをご馳走するよ!」
「パンケーキ!」
「なんだか悪いけど、そういうことなら!」
「ご馳走になりますか」
というわけで、ピカチュウとトゲピー以外のポケモン達をモンスターボールに戻し、トオルについていけば一軒の家に案内される。
「どうぞ、ゆっくりしていってよ」
美味しそうなパンケーキを皆で味わっていると、トオルが再びカメラを取り出した。
「ねぇねぇ!ピカチュウの写真を撮ってもいいかな?とってもいい表情だから、ぜひ写真に収めたいんだよ!」
「ん、どうする?ピカチュウ」
「ピ?ピーカ………」
「バッチリ、いい写真を撮ってあげるからさ!」
トオルの勢いに負けてピカチュウはぎこちなく頷くが、カメラに慣れていないのはピカチュウも同じだった。
カメラを向けられていることがわかると、どうしても固くなってしまい、自然体ではなくなってしまう。
「ダメだ………これじゃ全然ダメだよ……。僕はピカチュウの自然な表情を撮りたいのに……」
「ピカチュウもカメラに慣れてないからな。いざ向けられてると思うと、どうしても緊張しちゃうんだろう」
「ピカピカ……」
ピカチュウも申し訳なさそうに頷いている。
「ピカチュウは、サトシと一緒の時が一番いい表情をしている。人間の写真は撮らないのか?」
「僕はあまり人間は撮らないんだ。撮るのは、ポケモン達!」
「へぇ~」
「けど、被写体のいい表情を引き出すのも天才カメラマンの務め!助言に倣って!サトシ、ピカチュウと一緒に撮ってもいいかい?」
「もちろん!おいで、ピカチュウ」
「ピ!?ピッカーーー!!」
両手を差し出すと、ピカチュウは電光石火の勢いで腕の中に飛び込んできた。
顔を寄せて、ニコニコ笑顔で頬をすり寄せてくる。
「いい!とってもいいよ、その表情!最高だよピカチュウ!」
トオルはピカチュウの表情を撮るのに夢中だ。
ピカチュウも俺に触れているなら緊張はしないようで、順調に写真を撮ることができた。
一通り撮り終わって満足したらしいトオルは、お礼を言ってティータイムに混ざってくる。
「へぇ、サトシはポケモンマスターを目指してるんだ」
「あぁ。世界一のポケモンマスターになる。それが俺の夢なんだ」
「じゃあポケモンリーグに出るの?」
「もちろん。バッジも今の時点で六つ集めてる」
「こう見えてサトシはけっこう強いのよ?」
「こう見えて、って……」
「ははは、それはすごいな!僕は、いつか雑誌に取り上げられるようなすごい写真を撮って、どんなポケモンの写真でもゲットできる天才カメラマンになるのが目標なんだ」
「へぇ~~。夢じゃなくて、目標なんだ?」
「そう、目標!夢は別にあって、伝説のポケモンの写真を撮ること!そのために、僕も色んなところを巡る旅に出たいんだ」
「いいじゃないか!応援してるぜ?」
「ありがとう!」
俺達のことを話しトオルの話を聞き、和やかなティータイムを過ごした。
トオルが撮った写真を見せてもらったが、自然の中で生き生きとした表情をしているポケモン達は、確かによかった。
「今度からは、トレーナーのポケモンを撮る時はちゃんと許可を取るようにするよ。いくら自然な表情を撮りたいからって言っても、迷惑かけるのも嫌な思いをさせるのもダメだってわかったらかね」
「それがいい」
「トオルなら、きっとポケモン達の自然な表情を引き出せるカメラマンになれる。伝説のポケモンの写真を撮れたら、いつかきっと見せてくれよな?」
「あぁ!任せてよ!」
連絡することがあるかはわからないが、一応ポケフォンの連絡先を交換しておく。
そして笑顔で別れ、俺達は旅に戻った。
第59話 ポケモン検定試験!?
道中、近くにポケモンセンターがないのに歩いているジョーイさんを見かけた。
「あれ?」
「何々?………ジョーイさん?」
「おぉ!なんてお美しい人なんだ!」
「でもなんでこんなところに……………ジョーイさん!」
傷付いたり病気になったりしたポケモン達がいるのかと気になって、声をかける。
「あら?あなた達は…………サトシ君達!」
「えっ?えっと……」
「私、セキチクシティのジョーイよ!」
「セキチクシティの!」
なんと、お世話になったジョーイさんだった。
「ポケモンセンターの出張ですか?」
「えっ?あ、いいえ、違うのよ。私は、ポケモンリーグの検定試験を受けに来たの」
「「ポケモンリーグの検定試験???」」
カスミとタケシの声が揃ったのを聞きながら、そうかこの辺りにあったんだっけかと思い出す。
「そうよ。ポケモンリーグに出るためには、いくつかの町のポケモンジムを周って、ジムリーダーとの勝負に勝った証のバッジを集めなければならないでしょう?」
「え、えぇ。そういう決まりですね…」
「年齢的、体力的に各地を回ることが難しい人や、私のように仕事が忙しい人なんかには、重宝してる試験なの。普段、お仕事でジムを周れないから、この試験を受けに来たのよ」
「結構便利なんだ、この試験って」
「そうよ。よかったら、あなた達も受けていってはどうかしら?経験を積むという意味で、損にはならないと思うわ」
「ふ~~~ん…………どうする?サトシ」
経験しといて損はなし、か。
確かに、自分の今のトレーナーとしての実力を測るいい機会だな。
「受けてみるのもありだな。ご一緒してもいいですか?」
「えぇ!もちろん!」
快く頷いてくれたジョーイさんの案内に従って、ポケモンリーグ検定センターへと向かう。
「某ポケモンリーグ検定センターでは、筆記と実技の総合点で合格の判定を行います。そして合格者には、ポケモンリーグ挑戦資格バッジが与えられます。はい、君の受験番号」
受付の男性から説明を聞いて、ラッキーセブンの受験者バッジを受け取り、胸に付ける。
視線を感じたので後ろを向くと、慌てて顔を逸らしたムサシを見つけた。
そういえば、ロケット団のムサシとコジロウもこの試験に参加するんだっけ。
「そうそう。モンスターボールを全部預けていくように。試験では、君のポケモンでは行わないので」
「あ、あの、試験に参加しない友達に預けてもいいですか?」
「ん?もちろんそれでも構わないが…」
「じゃあ俺はそうしますんで。それじゃ」
ゾロア達を見知らぬ人に預けるのは抵抗があったので、そそくさとその場を立ち去る。
「カスミ、俺のモンスターボール預かっててくれるか?」
「もちろん!任せときなさいって!」
快諾してくれたカスミにモンスターボールを全て預け、泣きそうなトゲピーにすぐ戻るからと言ってカスミに抱かせた。
「そうだ、ピカチュウ」
「ピ?」
ピカチュウがタケシの肩に移動する前に、もしかしたらロケット団が邪魔してくるかもしれないので、見かけたら容赦なく〝10まんボルト〟で吹っ飛ばしてほしいとお願いする。
こちらも快諾してくれたピカチュウに感謝して、ピカチュウをタケシの肩へと移動させた。
そうして始まった検定試験。
第一試験はポケモンに関する知識を測る、○×問題。
・ベロリンガの舌は身長の2倍である。
・ポケモンのことわざ キュウコン千年、カメール万年
・サワムラーの別名はパンチの鬼。
・コイキングが始めから覚えている技は〝はねる〟だけ
・もっとも小さいポケモンはキャタピーである。
・ドガースが初めて発見された場所はお風呂屋さん。
等々。
正直、知識というよりは雑学の問題が多い気がしてならない。
今の俺にとっては簡単な問題が多かった。
第二試験はポケモンの認識度を測る、シルエット問題。
・丸いシルエットのポケモンは何か→上から見たプリン
・この渦巻き模様を持つポケモンは何か→ニョロモ
・炎の尻尾を持つポケモンは何か→ポニータ
等々。
もはやクイズだろう、という試験内容だが前の記憶も活かして全問正解していく。
所々でムサシとコジロウがズッコケている気配を感じたが、大丈夫だろうか。
と思ったら、ムサシの堪忍袋の緒が切れたらしく、自分にもわかる問題を出せと逆ギレし始めた。
「こんなんでポケモンマスターになれるものですか!」
「ポケモンマスターとは、どんなポケモンのことでも沈着冷静に対応し、生態を把握していなければ務まらないものです!」
「だーーー!もう!あんたが何言ってるかわかんないわ!やってられないわよ!」
そう言ってタッチペンを投げ捨てたムサシは退場となり、出て行った。
そういえば、この頃は皆ポケモンマスターをその定義を知らずに目指していたんだったな。
試験官の男性が言うポケモンマスターの像ももっともなので、覚えておくとしよう。
俺も、どんなポケモンのことでも対応できるようにならなくちゃ。
筆記試験は以上で終わりのようでパネルが下りてきて、たいへんよくできました、よくできました、もうひとがんばりの評価で顔写真が映し出される。
俺は今回はたいへんよくできましたの欄に載っていた。
「サトシ、やっぱりやるわね」
「へへ」
「ジョーイさんもたいへんよくできましたの欄だ!さすがだな」
ふと横を見ると、もうふたつもみっつもがんばり、という最低評価の欄にコジロウの顔写真が載っていた。
退場したムサシも映し出されている。
前もそうだったな、そして俺もここだったなと思い出して苦笑する。
さて、第三試験はいよいよお待ちかね、実技試験だ。
ポケモンが入ったモンスターボールが三つセットされたベルトを選んで、試験官と戦うという内容だった。
事前に中のポケモン達を確認することはできない。
「バトル用に訓練されたポケモンだから、ちゃんと君達の言うことを聞きますよ。見たいのは、どんなポケモンが出てきても、ちゃんとトレーナーが対応できるかどうかです」
とのことだった。
うーん。
試験内容が試験内容だから、波導を使うのはやめておくか。
これだ!、と思ったベルトを一つ取った。
今はジョーイさんがヒトカゲを相手に、有利なゼニガメを出せて善戦している。
順番を待っていると、コジロウが選んだモンスターボールからピカチュウが出てきて、これは勝ったとコジロウが高笑いしていた。
対する試験官が出したのはゴローン。
電気技が利かず、ピカチュウはされるがままにやられてしまった。
コジロウ達もタイプに詳しくなるのは、この後からだったか。
結局コジロウは、続くバトルで残りのポケモンであるリザードンとフシギソウを一気に出し、失格となっていた。
ポケモンは大当たりなので、真面目にやれば勝っていただろうに。
呆れていると、ようやく俺の番がやってきた。
「行くぞ!サトシ君!」
「はい!」
「行け!モンスターボール!」
試験官のモンスターボールからは、ブースターが出てくる。
「行け!モンスターボール!」
「マァタドガァス」
対する俺のモンスターボールからは、マタドガスが出てきた。
相性は可もなく不可もなく。
トレーナーの腕の見せ所だな!
「マタドガス、〝どくどく〟だ!」
毒タイプの〝どくどく〟は必中。
避ける術なくブースターは猛毒状態になる。
「ブースター、〝かえんほうしゃ〟!」
「〝ヘドロばくだん〟!」
〝かえんほうしゃ〟と〝ヘドロばくだん〟が中央でぶつかって爆発が起こる。
ポケモンの技を知る以外での波導の使用は、俺のトレーナーとしての実力に含まれるからいいだろうということで、波導でブースターの場所を探知しそこへ〝ヘドロばくだん〟で攻撃した。
「!?ま、まさか、視界が悪い中でも相手のポケモンの位置が把握できるのか!?」
ポケモンリーグ検定の試験官に驚かれると、ズルしているような罪悪感が湧いてくる。
すまん。
だが決してズルではないぞ。
これは俺が生まれ持った才能の一つというだけだ。
オーキド研究所に預けているスイクンが、頷いてくれた気がした。
「マタドガス、〝えんまく〟!」
「マァタドガァス!」
俺が波導を使えることで、ヒット&アウェイに次いで使用している戦法。
視界を悪くして相手の不意を突く。
その戦法をここでも使用し、〝えんまく〟で視界が悪い中〝ヘドロばくだん〟連打で攻めて、相手のブースターを戦闘不能にさせた。
「やるなサトシ君!よし!次だ!」
試験官のモンスターボールからは、サンダースが出てくる。
そういえばブイズが出てくるんだっけか。
「次のモンスターボール!GO!」
「シャーーーボック!」
俺のモンスターボールからは、アーボックが出てきた。
再び相性は悪くない相手だ。
「アーボック、〝へびにらみ〟!」
「シャー!」
初手で麻痺らせていき、痺れている間に〝あなをほる〟でサンダースを空中に吹き飛ばす。
「サンダース、〝かみなり〟攻撃!」
「〝あなをほる〟!」
空中に飛ばされたサンダースが放った〝かみなり〟を再び〝あなをほる〟で地中に潜ることでかわし、地上に降り立ったタイミングで〝あなをほる〟を決めた。
そして再び空中に吹き飛ばされたところを〝かみくだく〟で追撃し、超至近距離の〝どくばり〟でフィニッシュした。
「よし!これで二勝だ!」
「行け!最後のモンスターボール!」
試験官が出した最後のポケモンは、シャワーズ。
「行け、モンスターボール!」
「ニャー!」
俺が投げた最後のモンスターボールからは、ニャースが出てくる。
あえて突っ込んでこなかったが、ロケット団のポケモンにここまで縁があるとはな。
「〝ねこだまし〟!」
「ニャ!」
先制で〝ねこだまし〟を決め、怯んだところに一応〝ちょうはつ〟しておく。
「シャワーズ、〝れいとうビーム〟!」
「〝いやなおと〟!」
真っ直ぐに向かってくる〝れいとうビーム〟に〝いやなおと〟を当てることで、振動で氷を砕きニャースまで届かせない。
「!?攻撃技に攻撃技じゃない技を当てるとは!そんな防ぎ方が!」
試験官が驚いている隙に、〝みだれひっかき〟連打からの〝かみつく〟でフィニッシュした。
ポケモン勝負は全て勝ち、減点されることもなかった。
これで合格ラインにいったか、と思っていたら、観客側で何やら爆発が起きた。
「?なんだ?」
「なんだーかんだとー聞かれたらぁーー」
「答えてーあげるがー世の情けぇーー」
「世界のー破壊をー防ぐためぇーー」
「世界のー平和をー守るためぇーー」
ピカチュウが俺の頼みを聞いてくれたようで、ロケット団が邪魔しに来ようとしたタイミングで〝10まんボルト〟で吹っ飛ばしてくれたらしい。
口上を言いながら吹っ飛ばされていくロケット団を、皆よくわかっていない表情で見送っていた。
「これが、ポケモン検定試験に合格した証、ポケモンリーグ挑戦資格バッジだ。おめでとう、サトシ君」
「ありがとうございます」
試験官だった男性から、ポケモンリーグ挑戦資格バッジを受け取る。
ジョーイさんも合格したようで、他に合格した人は俺とジョーイさんを除いて二人だった。
あまり多いとポケモンリーグに出られる人が溢れてしまうので、それなりの難易度に設定されているのだろう。
たいへんよくできましたの欄にはもっと人がいたので、真にポケモンの知識を問われる実技試験でふるいにかけられたのだろう。
「サトシ君、ポケモンリーグで会いましょう」
「はい!楽しみにしてます!」
ジョーイさんと好戦的に笑い合って、握手をする。
通常業務に戻っていったジョーイさんを手を振って見送って、俺達も俺達の旅路に戻る。
「サトシ。これでポケモンリーグに出られるようになったけど、旅はどうするの?」
「前と同じように、次のバッジがゲットできるグレンジムを目指すぜ。ジムバッジは八個集めきる。これは記念みたいなものだからな。俺は旅できない体ってわけでもないから、ちゃんと各地を回って実力もつけないと」
「サトシらしいな」
「でもそのほうが、やっぱり楽しいわよね!」
ポケモンリーグの参加資格は得たが、これまで通り各地を回ってジムバッジを集める。
それが俺の成長に必要な旅だからな。
第60話 育て屋の秘密!
立ち寄った街の大画面テレビで、お姉さんの育て屋さんというCMが流れたのを見て、思い出す。
あれ、ヤマトとコサブロウの育て屋だ。
つまりロケット団が暗躍してる。
よし、潰そう!
「育て屋さんかぁ」
「俺達も前にお世話になったなぁ」
カスミ達が思い出に浸っている横で、トゲピーをカスミの膝に乗せる。
「サトシ?」
「どうしたの?」
「俺ちょっと、用があるとこ思い出した。二人は先にポケモンセンターに行っててくれ。俺もすぐ行くから」
「「………?」」
俺の言葉にカスミ達は顔を見合わせて首を傾げたが、俺を信頼してくれているからか笑顔で送り出してくれた。
ピカチュウと一緒に件の育て屋の裏側に回り込み、中でロケット団の証拠写真をポケフォンでたくさん撮って撤退する。
撮った写真をジュンサーさんに見せれば、今回は俺が泥棒だと誤解されることなく育て屋を取り締まってくれた。
ヤマトとコサブロウはジュンサーさんに捕まり、預けたトレーナーのポケモン達はジュンサーさんが責任を持って返してくれるらしく、俺の役目はここまで。
派手な騒動にもならず、平和的に解決できてよかった。
カスミ達の元に戻ると、開店一周年記念でオムライス食べ放題の店を見つけたらしく、そこに行こうと誘ってきたのでもちろんOKする。
お店の場所に行ってみると、コックさんが出てきてある条件さえ満たしてくれれば無料で食べ放題ということだった。
「ある条件って?」
「そうです。私が好きなポケモンを実際に見せてくれたら、オムライスは食べ放題なのです」
「ちなみにどんなポケモンなんですか?」
「私が見たいのは、これなんだ」
そう言ってコックが見せてきたのは、コダックの写真。
「コダック?」
「コダックのことを考えただけで、胸がドキドキしちゃって……。コダックに触れたら、オムライスでも何でも、食べ放題なんだけどねぇ」
「そういうことなら任せといて!コダック!出てきなさい!」
「おぉぉぉぉ!!!」
目を光らせたカスミがコダックを出せば、コックさんがすぐに抱き付きに行った。
「こんな立派なコダックを見られるなんて!サービスしていくよ!ぜひ寄っていってくれ!」
「「「やったーーーー!」」」
コックさんのサービスで、腹いっぱいご馳走になった。
カスミがすごい勢いで食べていたのが印象的だったなぁ。
第61話 燃えろ! グレンジム戦 VSカツラ
俺達は船に乗り、グレン島に向かっていた。
「グレン島は火山島で、そこの研究所では強いポケモンを育てる研究もしている。全国のポケモントレーナーが集まってくる場所だ」
タケシがグレン島の解説をしてくれるが、それって確か。
「確か、昔のことになっちゃったんじゃなかったっけ……?」
「昔のこと?」
「うん。グレン島がポケモントレーナーの憧れの場所だったのは昔の話で、今は温泉で有名な観光地になってるとか、なんとか……」
俺の言葉を裏付けるように、今乗っている船には観光客が多い。
それを見て思い出す。
しまった。
宿の予約を取っとかないと、ポケモンセンター含め全部埋まってるんじゃなかったっけ?
……………まぁいいか。
前のようにカツラさんのペンションにお世話になろう。
「さすがは、よく知ってるじゃないか、サートシ君?」
「!…………シゲル」
この呼び方をする存在は、今のところ一人なのでわかりやすい。
声のした方を向くと、予想した通りシゲルがいたが、アロハシャツを着ていていかにもリゾートスタイルといった風貌だった。
「その格好………シゲルはジム戦じゃなくてバカンスか?」
「僕はもう、ジムバッジを八個集め終わったからね。グレン島にはリフレッシュしに行くのさ。それに、グレン島にジムがあるなんて話は聞かなかったが……」
「俺の記憶が正しければ、まだやってるはずだよ」
「………他でもない君が言うんだからそうなんだろうな。ジムバッジを求めてということは、君はまだ八個集めきっていないのかい?」
すぐに俺の言葉を信じてくれたシゲルは、少し意外そうな顔をする。
「まだ六個だ。ポケモンリーグ検定試験には合格してるから、一応ポケモンリーグに出る資格があるんだけどな。そっちの資格は記念だから」
「なるほど、随分と意義のある旅をしているようだ。ただ単に道草を食っているわけではなさそうだね」
「当たり前だろ?限られた時間を無駄にするわけにはいかないよ。まぁ、休むことは大切だけどな」
シゲルと話しているとグレン島に着いたようで、観光客が降りていく。
俺達も船を降り、宿に向かうシゲルと別れジムを探して歩くことにする。
歩きながら辺りを見渡すと、まさに温泉街だった。
「ポケモントレーナーの憧れの地は、どこ行っちゃったんだ…」
タケシが嘆くのもわかるほど、観光客が多い。
歩いていたらふと目の前に、金髪のおじさんが現れた。
「頭はヒヤヒヤ、体はホカホカ、なーんだ?」
「へ?」
「ひょっとしてそれって、なぞなぞ?だったら露天風呂!」
「当ったりー!確かにここは昔、ポケモントレーナーの憧れの地であった。だが、ある時温泉が掘り当てられてからというもの、あろうことかこのグレン島はすっかり観光地になってしまったんだ。あー、なんと嘆かわしいー!」
大げさに嘆いているおじさん。
確かこの人がグレンジムのジムリーダー、カツラさんじゃなかったっけ?
「おじさん、グレン島の人ですよね?グレンジムがどこにあるか知りませんか?」
「ジムのトレーナーは、カツラっていう人なんだけど」
「目の前にあるのに見えないものなーんだ?」
俺とカスミの質問に、おじさんは再びなぞなぞで答えてきた。
「透明人間かな…?」
「違う、瞼よ!」
「また当たりー!カツラのジムも目の前にあるのに、見えんのか!」
そうしておじさんが指差した方には、廃墟となったグレンジムが。
「こ、ここが……」
「グレンジム?」
「トレーナーのカツラは観光気分でジム戦に挑む客が多いのに嫌気が差して、ジムを閉めてしまったんだ」
「俺達は観光気分じゃなくて、ちゃんとポケモンリーグ出場のためにジムバッジを求めてきたんですけど……」
「それはカツラに向かって言わなきゃな」
ごもっともだが、そのカツラはあなたでは?
「まぁ何かあったら、ここに来なさい」
そう言って手渡されたティッシュの紙には、ペンションなぞなぞとあった。
「なーによ。グレン島が観光地になったって嘆いていたくせに、自分も旅館の人なんじゃない」
「あ、あれ?おじさん、どっか行っちゃったぞ……」
いつのまにかカツラさん(推定)はいなくなってしまっていた。
その後タケシの提案でポケモン研究所に向かうことになったが、ポケモン研究所まで観光地になっていた。
「研究所の強いポケモン達を見たかったんだけど……」
「そろそろ日が暮れるわ。ポケモンセンターに泊めてもらいましょ?」
「そうだな」
果たして空いているのか。
「ごめんなさいね。泊まる人が多くて、うちはもうロビーまでいっぱいなの。悪いけど、これ以上人を泊める余裕はないのよ…」
「そうですか………わかりました」
やはりいっぱいだったので、とりあえず母さんとオーキド博士に連絡を入れる。
手持ちをピカチュウ、トゲピー、バタフリー、ニンフィア、ブラッキー、ウインディにして、宿を求めてポケモンセンターを出た。
「あいすみません。お部屋はいっぱいなのよぉ」
「どいてどいて!泊まりたいなんて無理よ!うちは一年先まで予約いっぱいなんだから!」
「本当に、申し訳ありません……」
「誠に申し訳ありませんが……」
「今日はもう満室なのよ」
行くところ行くところ、全て満室だった。
お腹を空かせたカスミ達に、それなら最後の手段でここに行ってみようぜと、カツラさん(推定)から貰ったティッシュを出す。
「それってあのおじさんから貰ったティッシュ?」
「そう。ここに、こう書いてあるんだ。下はブランコ、上は兄さんと弟が追っかけっこ。そこがペンションなぞなぞ」
「またなぞなぞか……」
「なぞなぞはカスミが強い。とりあえず、ブランコ探しに公園を見つけようぜ」
「わかったわ」
そうして歩き回って見つけた公園で、上は兄さんと弟が追っかけっこという文が、時計を指しているとカスミが気付いた。
「ブランコの上にある、時計台のある建物!そこがペンションなぞなぞよ!」
さっそく向かうと、カツラさん(推定)が出迎えてくれた。
「よくぞあの難しいなぞなぞを解いたな!」
「誰でもわかるって」
カスミ、そういうのは思っていても言わないの。
「それに免じて、今夜だけはタダで泊めてやろう」
「「「やったーーーー!」」」
カツラさん(推定)のご好意に与り、泊まる場所と夕飯をゲットした。
夕飯を食べていると、ペンションの電話が鳴り響く。
「?何だ?」
「何!!!?」
電話に出たカツラさん(推定)の大声に、皆で食べる手を止めた。
「どうかしたんですか?」
「ポケモン研究所が、襲われてる!」
「何だって!!?」
慌てて皆でポケモン研究所に行けば、ロケット団が気球に乗って上から網でポケモン達を捕まえていた。
「ロケット団!」
「またあいつらか!」
「バタフリー、君に決めた!」
「フリ!」
「〝エアスラッシュ〟!」
「フリフリフリフリー!」
バタフリーの〝エアスラッシュ〟で網を切り、捕らわれていたポケモン達を助け出す。
そしてバタフリーの〝ぼうふう〟とピカチュウの〝10まんボルト〟でさくっと「「「やな感じーーーーー」」」にした。
自由になったポケモン達が、笑顔でこちらに手を振っている。
「同じグレン島に住む者として、研究所のポケモン達を救ってくれたことに感謝する。お礼にカツラのジムが、今どこにあるか教えてあげるよ」
「本当ですかっ!?」
「うん。上が大水、下は大火事。なーんだ?」
三度のなぞなぞに思わずズッコケてしまった。
なぞなぞの答えを思い出そうと、皆で温泉に浸かりながら考える。
「大水って…………温泉のことか?」
「そうよね。やっぱりサトシもそう思わよね?」
「大水が温泉なら、大火事はなんだ?」
「それがわからなくて………そこにジムがあるってどういうこと?って、あれ?あら?あれ?」
温泉に入って仕切り越しに話していたカスミの様子がおかしくなる。
「カスミ?どうかしたか?」
「大丈夫か?」
「これ、何かしら。仕掛け?」
という声が聞こえてきたと思ったら、何かがガコンと作動した音がした。
何だ、と思っていると仕切りが軽い素材でできていたのか、あっけなく倒れる。
今回は水着を着ているわけではなく、それ故に混浴しなかったわけで。
仕切りが倒れれば当然、反対側が丸見えなわけで。
「きゃあああああああああ!!!!?」
「うわぁぁぁぁぁぁ!!?」
「わ、悪い!!」
顔を真っ赤にして後ろを向きしゃがみ込むカスミに、慌てて俺もカスミと同じように叫ぶタケシの腕を掴んで後ろを向かせる。
まだタオルを巻いていたからよかったものの、この温泉はどうなってるんだ。
「ちょ、ちょっと!こっち見ないでよ!まだ後ろ向いててよ!」
「わかってる!後ろ向いてるから、カスミは早く着替えてこい!」
「もう~~~!何なのよこの温泉はーーーー!」
大声で文句を言いながら着替えに行ったカスミにホッとして、俺とタケシも着替えに行く。
改めて温泉の場所に行くと、洞窟が出来ていた。
階段を降りていくと、だんだんと熱気がすごくなる。
辿り着いた扉の取手も、手のひらが焼けるほどの熱さをしていた。
俺は波導でガードしたから簡単に開けられたが。
「ここは………」
扉を開けた先には、マグマの上にバトルフィールドがあった。
にしても、想像以上に熱い。
空は出てないのに常時日照りのような熱さだ。
そして下にマグマがあるこのバトルフィールドでは、〝あなをほる〟は使えないな。
「露天風呂の下に、ポケモンジムが…」
「まさしく上は大水、下は大火事ね」
と、電気がついて辺りが明るくなる。
反対側のトレーナーの立ち位置に、カツラさん(推定)が立っていた。
「ようこそ、諸君。わからないと平気で言えるのに、わかっちゃうと言えなくなるものなーに?」
「カツラ!わからないと平気で話題にできるけど、その人がカツラだとわかると、やっぱ言えなくなっちゃよね!」
間髪入れずにカスミが答えを言ってくれた。
「ピンポンピンポンピンポーン!大正解!」
そう言ってカツラさん(確定)は、自分のカツラとメガネを外した。
「私がグレンジムのジムリーダー、カツラだ!私と三体三のジムバトルをするのは誰だ?」
「俺です!俺はマサラタウンのサトシ、よろしくお願いします!」
俺も前に出てトレーナーゾーンに入る。
「うむ、準備はOKか?」
「いつでも!」
「よぉし、まずこちらの一番手は――――こいつだぁ!」
「コーン!」
カツラさんが投げたモンスターボールからは、キュウコンが飛び出してくる。
綺麗なキュウコンだ。
俺も自分のキュウコンを自慢したかった。
「ブラッキー、君に決めた!」
「ブラッキ!」
俺の一番手はブラッキーだ。
ウインディが次のジム戦に出ると決まった時、自分も出るとアピールしてきた。
おそらく、ウインディに置いていかれたくなかったのだろう。
その強さ、しっかりと見せつけてやるぜ!
「キュウコン、〝ほのおのうず〟だ!」
「ブラッキー、〝バークアウト〟!」
「コーーーーン!」
「ブラッキ!!!」
キュウコンの強力な〝ほのおのうず〟は〝バークアウト〟でかき消す。
キュウコンに当たったわけではないので特攻は下がらなかったが、それでも相殺できるほどの威力は見せた。
「〝あやしいひかり〟」
真っ向勝負で打ち合うのは不毛と判断したのか、カツラさんは変化技を使用してくる。
「〝みきり〟だ!」
混乱するとだるいので、〝みきり〟で確実に防いでいく。
返しに再び〝バークアウト〟を発動してキュウコンにダメージを入れ、ついでに特攻も一段階下げる。
こちらが変化技にも動揺せず対応したことで、カツラさんはほう、やるなという顔をしてこちらを見てきた。
さすがにここまで来て、変化技に動揺している俺達じゃないぜ。
「キュウコン、〝わるだくみ〟だ!」
〝わるだくみ〟を覚えているのか。
カツラさんのキュウコンはゴリゴリの特攻アタッカーらしいな。
特攻を上げ切られると面倒だ。
「〝バークアウト〟!」
「ブラッ!」
一先ず再びのバークアウトで、ダメージを稼ぎながら特攻を一段階下げる。
「もっともっと〝わるだくみ〟だキュウコン!」
「コーン!」
「〝バークアウト〟!」
「ブラッキ!」
〝わるだくみ〟は一気に二段階上げられる分、〝バークアウト〟では追い付かない。
〝ちょうはつ〟を持っていればよかったのだが、俺のブラッキーはまだ覚えていない。
いかに上げ切られる前にダメージを与えられるかといった勝負だが、俺のブラッキーは〝のろい〟からの〝かみつく〟が一番ダメージが出る。
だがそんなに時間をかけていられない。
〝バークアウト〟連打でとりあえず削れるところまで削って、あとは〝みきり〟で確実に防いでカウンターを決める。
これしかない。
「頑張れブラッキー!〝バークアウト〟!」
「ブラッキ!」
張り切っているブラッキーは、俺の声に応え〝バークアウト〟をキュウコンに当て続ける。
さすがに苦しそうな顔をするキュウコンは、それでも〝わるだくみ〟で確実に特攻を上げていく。
カツラさんは腕を組んで静かにこちらを見ている。
シンプルでわかりやすいキュウコンの強化に、挑戦者がどう対応するか見ているのだろう。
「キュウコン、〝だいもんじ〟!」
五回目の〝わるだくみ〟で満足したらしく、キュウコンは攻撃に転じ高火力の巨大〝だいもんじ〟を放ってきた。
「〝みきり〟!」
予想通りの大技に、即座に〝バークアウト〟から〝みきり〟に切り替えて〝だいもんじ〟を避ける。
これまででだいぶ削ることができた、もう一押しで削り切れる。
避けた瞬間攻撃に転じようとした瞬間、ブラッキーの目の前にキュウコンがいた。
「なに!?」
「ブラッ!?」
「〝でんこうせっか〟」
物理技がないわけではなかったか!
思わぬ素早い物理技に、〝のろい〟を指示する間もなく避ける指示をする間もなく、ブラッキーが吹っ飛ばされて体勢が崩される。
「今だキュウコン!〝だいもんじ〟!」
「コーーーーン!!!!」
「!!〝みきり〟だ!」
「ブラッ――――!」
〝みきり〟系の技は連続で使用すると失敗しやすい。
それ以前に、体勢が崩れていて〝みきり〟の発動ができていなかった。
ブラッキーは巨大〝だいもんじ〟に吞み込まれていった。
「ブラッキー!!!!」
技の衝突で起きた煙が晴れると、ブラッキーは倒れ伏して目を回していた。
完全に俺のミスだ。
〝わるだくみ〟の存在に気を取られすぎて、物理技はないと思ってしまっていた。
ないわけではない。
ないわけがないのだ。
ジムリーダーのポケモンなら。
「ありがとう、ブラッキー。俺のミスで、悪かった。ゆっくり休んでくれ」
ブラッキーをモンスターボールに戻す。
〝わるだくみ〟で特攻が五段階上がったキュウコンという、とんでもなくやりづらい相手が残ってしまったが、体力は残りわずかだ。
それに、手がないわけではない。
「ウインディ、君に決めた!」
「ガウ!」
「ほう…………ん?」
この俺に炎タイプのポケモンで挑むか、と言いたげな顔をしたカツラさんは、実際に俺のモンスターボールから出てきたウインディを見て片眉を上げた。
「初めて見るウインディだな。通常のウインディとは違いそうだ」
それだけ言って、何も聞いてこないカツラさんに不敵に笑ってみせる。
さすが、バトルの場でこちらが手の内を明かすはずがないとよくわかっている。
それに俺のウインディの特性はいしあたまだが、通常のウインディの特性にもらいびがある。
警戒してくれれば―――。
「出方を窺わせてもらう!キュウコン、〝でんこうせっか〟!」
炎技は使わない。
「〝もろはのずつき〟!」
「ワォーーーーン!!!」
雄叫びを上げたウインディは飛び出していき、〝でんこうせっか〟で向かってくるキュウコンに〝もろはのずつき〟で正面突破した。
効果抜群の大技を受けてキュウコンは吹っ飛び、戦闘不能になる。
これで並んだ。
特攻が五段階上がったキュウコンを即座に処理できたのは大きいし、ブラッキーの頑張りは無駄にしない。
「戻れキュウコン!なるほど、キュウコンが体力ギリギリだったとはいえ、あの威力。炎単タイプというわけではなさそうだ。それに、〝もろはのずつき〟の反動ダメージがあるように見えない……さしずめ炎・岩タイプでいしあたま特性のウインディか?」
〝もろはのずつき〟だけでそこまでバレるとは。
さすがはジムリーダーだな。
「さてね。まだ言いませんよ」
「ふふふ。バトルが終わったら、そのウインディのことについて是非教えてくれ」
「俺が勝った後でね」
「はっはっは、言いよる。こちらの二番手は、こいつだ!」
「ガウ!」
カツラさんの二番手は、前のようにサイドンではなくウインディだった。
原種ウインディ対ヒスイウインディの対決。
だが悪いな、カツラさん。
「戻れ、ウインディ」
「む?」
そのウインディの特性がいかくの可能性がある以上、一旦引っ込めさせてもらう。
「ニンフィア、君に決めた!」
「フィア!」
「ニンフィアか……これまたカントー地方では珍しいポケモンを……」
カツラさんが驚いている隙に、攻める!
「ニンフィア、〝うたう〟!」
「む!?」
「フィ~~~~ア~~~~」
高らかに〝うたう〟を響かせて、まさかの技に驚いているカツラさんのウインディを眠らせる。
フェアリータイプの技は炎タイプに効果いま一つ。
それでもニンフィアを選んだのは、ニンフィアの想いを優先したからにすぎない。
そして、ニンフィアなら勝てると信じているからにすぎない。
「ガゥゥ~……」
「ウインディ!起きるんだ!」
「〝どろかけ〟!」
「フィア!フィア!フィア!」
眠っているウインディを〝どろかけ〟で泥まみれにしていく。
「起きろウインディ!!!!」
「ガウ…………?」
「〝ずつき〟!」
「フィ!」
「ガッ!?」
寝惚け目で目覚めたウインディに〝ずつき〟をして怯ませる。
「ウインディ、〝しんそく〟だ!」
「ガウ!」
「ニンフィア、〝でんこうせっか〟!」
「フィア!」
首を振って正気に戻ったウインディが〝しんそく〟で攻めてきたので、こちらも〝でんこうせっか〟で対応していく。
スピードは向こうには劣るが、こちらはスイクンの〝しんそく〟を見慣れている俺のポケモン達だ。
当たりそうなところを器用に体をひねって受け流し、こちらの〝でんこうせっか〟を決めている。
スピード勝負は、互角。
「ほう。私のウインディについて来れるとはな。ウインディ、〝フレアドライブ〟!」
「!〝つぶらなひとみ〟!」
〝しんそく〟のスピードのまま〝フレアドライブ〟を仕掛けてきたので、避けきれないと踏み咄嗟に〝つぶらなひとみ〟で威力を下げた。
それでもニンフィアは吹き飛んだが、何とか持ち堪えている。
〝しんそく〟の時といい、〝どろかけ〟で命中率を下げているのに平気で当ててくるな。
「ニンフィア、〝うたう〟だ!」
「フィ―――!」
「〝しんそく〟!」
「ガウ!」
〝うたう〟を発動しようとした瞬間に〝しんそく〟で吹き飛ばされ、キャンセルさせられる。
さすがに二回目を許してくれるほど甘くはないか。
「ウインディ、〝かみなりのキバ〟!」
「ガウ!」
おそらく水タイプ対策であろう〝かみなりのキバ〟で攻めてきたので、再び〝つぶらなひとみ〟をしてからの〝でんこうせっか〟で確実に避けていく。
「フィア!」
「!」
「フィアフィーア!フィーア!」
「ニンフィア………よし、行くぞニンフィア!〝でんこうせっか〟で近付け!」
「フィア!」
ニンフィアの想いに応え、〝でんこうせっか〟でウインディとの距離を詰める。
「真っ向勝負かね?いいだろう。ウインディ、〝フレアドライブ〟!」
「ガウウウウウウ!!!」
ウインディも〝フレアドライブ〟で真っ向から仕掛けてきた。
だが残念。
俺達の狙いは真っ向勝負じゃなく。
「フィア!」
〝でんこうせっか〟で〝フレアドライブ〟の軌道からわずかに体を逸らし、ニンフィアはリボン状の触角をウインディに巻き付けた。
「捕まえたつもりかね?」
「いいえ!ニンフィア、やれ!」
「フィアー!」
ニンフィアがリボン状の触角から、敵を削ぐ波動をウインディに流していく。
プテラとの戦いで、俺と仲間のポケモン達以外に触角を触れさせるのをとても怖がるようになってしまったニンフィア。
そのニンフィアが戦いの場で、自ら自分のこの波動を活かして戦うと言った。
恐怖はおそらく、まだある。
だがその恐怖に、打ち勝つために。
強くなりたい、強くなるという言葉を嘘にしないために。
ニンフィアは自分から使うと言ったのだ。
ニンフィアの想いを受けて。
トレーナーである俺が、燃えないはずがない。
「ガ、ウ……?」
「ふむ?ウインディ、燃えろ!〝フレアドライブ〟!」
「ガ、ウウウ……」
「!?どうした、ウインディ!」
ニンフィアの波動を受けて、思うように体に力が入らず困惑するウインディ。
ウインディの様子にカツラさんも動揺し、大きな隙が生まれた。
「今だ!〝ハイパーボイス〟!」
「フィーーーーーーーアーーーーーー!!!!」
想いを込めた渾身の〝ハイパーボイス〟を至近距離で浴びせ、ついでに触覚を振り回してウインディをぶん回す。
「ウインディ!」
「叩き付けろニンフィア!」
「フィア!」
地面に叩き付けて解放するが、ウインディは未だに立ち上がれない。
「ウインディしっかりするんだ!ニンフィアはまだ近くにいるぞ!〝かみなりのキバ〟!」
「〝どろかけ〟!」
「フィ!」
何とか顔を起こして〝かみなりのキバ〟を仕掛けて来ようとしたウインディの顔目掛けて〝どろかけ〟を放ち、目をつぶらせて技をすからせる。
「〝ハイパーボイス〟で止めだ!」
「フィアーーーー!」
二度目の〝ハイパーボイス〟を受けて吹き飛んだウインディは、目を回した。
ニンフィアも〝フレアドライブ〟の直撃を受けて息は上がっているが、まだ戦える。
「ニンフィア、やったぞ!すごいな!」
「フィアフィーア!」
俺の腕の中に飛び込んできたニンフィアを、優しく抱きしめて頭を撫でる。
ニンフィアもすごく嬉しそうに俺に擦り寄ってきてくれた。
恐怖を克服し、格上との戦いにも堂々と参戦し。
言うことなしだ。
「戻れウインディ。やるなサトシ君!攻撃じゃない技に対処し自分も使ってくるどころか、ポケモンの特徴まで利用してくるとは思わなかったぞ」
「ニンフィアにはニンフィアの戦い方があります。カツラさんのウインディはきっと、触覚で捕まえるだけでは逆にこちらがダメージを負ってしまう。ニンフィアの波動まで利用する必要があると思ったんです」
「その観察眼やよし!実際に触角で掴まれただけでは、ウインディの〝フレアドライブ〟の的になっていただろう。そのニンフィアもよく育てられている」
「ありがとうございます!」
「フィア!」
今一番嬉しい、ジムリーダーからのニンフィアへの言葉に口角が上がる。
「さて、ではサトシ君。私の最後のポケモンだ。こいつを倒せるかな?出でよ!ブーバー!!!」
カツラさんが大声で呼んだと思ったら、マグマの中からブーバーが飛び出してきた。
ニンフィアも俺の腕の中から、バトルフィールドに戻っていく。
ニンフィアの体力は致命傷とはいかないまでも、削られている。
ニンフィアで削り切れるならそれでもいいが、なるべく削ってウインディに最後を託す形になるだろう。
「ニンフィア、〝うたう〟!」
「フィア!」
「ブーバー、マグマの中へ!」
「ブバ!」
「!」
ブーバーは〝うたう〟が届く前に、素早い動きでマグマにダイブした。
避けられない位置で〝うたう〟を発動しない限り、かわされると思ったほうがいいな。
「ブーバー、〝かえんほうしゃ〟!」
「ブーバーーーーー!」
「〝ハイパーボイス〟!」
「フィアーーーー!」
マグマから飛び出してきたブーバーが、もうかでも発動しているのかと思うほどの高火力で〝かえんほうしゃ〟を放ってくる。
マグマの中にいたからか、マグマのエネルギーを吸収して一時的に火力が上がったようだ。
そんなのありかよ。
〝ハイパーボイス〟で迎え撃とうとしたが貫かれ、ニンフィアに〝かえんほうしゃ〟が直撃した。
「フィアーーーーー!?」
「ニンフィア!」
「〝ロケットずつき〟!」
「ブバァ!」
吹き飛ばされたニンフィアに、追撃の〝ロケットずつき〟が迫る。
「〝ずつき〟で迎え撃て!」
「フィ!」
咄嗟に〝ずつき〟で迎え撃ったが、ニンフィアはどちらかといえば攻撃力が低く、ブーバーは逆に攻撃力が高い。
〝ずつき〟よりも〝ロケットずつき〟の方が威力が高いとくれば、ニンフィアが押されるのは自然だった。
「フィアーーーー!?」
「ニンフィア!!!」
「〝だいもんじ〟!!」
「ブーーーーーバーーーーー!!」
キュウコンの〝だいもんじ〟に勝るとも劣らない威力の〝だいもんじ〟が、吹き飛ばされたニンフィアを容赦なく呑み込んだ。
「ニンフィア!!!!」
技によって上がった煙が晴れた先で、ニンフィアは倒れ伏し目を回していた。
「よくやったぞ、ニンフィア。お前の頑張り、絶対に無駄にはしない。ウインディ、君に決めた!」
「ガウ!」
ニンフィアを労ってからモンスターボールに戻し、こちらの最後のポケモンであるウインディを送り出す。
同じプテラに傷を負わされたもの同士であるニンフィアの頑張りと想い、兄弟のように仲のいいブラッキーの頑張りと想いを受けて、ウインディも燃えている。
「相性はこちらが不利だが、それだけでやられるほど私は甘くないぞ。ブーバー、〝だいもんじ〟!」
「ブーバー!」
「突っ込め!〝かえんぐるま〟!」
「ガウ!」
放たれた〝だいもんじ〟に真正面から〝かえんぐるま〟で突っ込み、〝だいもんじ〟の炎も纏ってブーバーに突っ込んだ。
「なんだと!?」
こちらも〝だいもんじ〟のダメージは受けるが、〝だいもんじ〟の火力を纏っている分ブーバーの方が受けるダメージは多い。
「ダメージを負うことすら厭わないか。ならばこちらも真っ向から勝負!ブーバー、〝ロケットずつき〟!」
「ブーーーーーバーーーーー!!!」
「受けて立つ!〝もろはのずつき〟!!」
「ガウゥゥゥウ!!!」
〝ロケットずつき〟と〝もろはのずつき〟が衝突し、衝撃波が起こる。
押し勝ったのは、〝もろはのずつき〟。
ウインディがブーバーをぶっ飛ばした。
「〝しんそく〟!」
「ワゥ!」
「転ばせろ!〝ローキック〟!」
「!?」
〝しんそく〟で距離を詰めて追撃に出たが、ブーバーが頭で〝しんそく〟を受け止めたと思ったら〝ローキック〟により足払いをかけられ、転倒してしまう。
効果は抜群だ!
「〝かみなりパンチ〟!!!!」
「ブーーバーーーーー!!」
転倒したウインディの横っ腹に、ブーバーの〝かみなりパンチ〟がぶち込まれる。
「ウインディ、〝かえんぐるま〟!」
「ガ、ウ…!」
咄嗟に炎を纏う〝かえんぐるま〟を指示してブーバーの拳を燃やすが、あまり意味はなさそうだ。
「〝ローキック〟だ!」
「〝しんそく〟!」
再びの〝ローキック〟で大ダメージを受けるが、何とか〝しんそく〟でその場を離脱する。
だが〝ローキック〟の追加効果で素早さが二段階下がっていることもあり、〝しんそく〟のキレは落ちていた。
近距離戦ではこちらに分があったはずが、これで一気にわからなくなったな。
むしろ〝ローキック〟を警戒しなきゃいけない分、こっちが不利か。
「ウインディ、〝かえんほうしゃ〟だ!」
「こちらも〝かえんほうしゃ〟!」
一先ず遠距離攻撃で仕掛けてみたが、隙を作らねば当てることはできないだろう。
簡単に相殺されてしまう。
それなら。
「ウインディ、〝しんそく〟の勢いを乗せるんだ!〝もろはのずつき〟!!!」
「ガゥゥウウウウウウウ!!!!!!」
「ブーバー、〝ローキック〟だ!」
「ブーバー!」
素早さが落ちキレが落ちたとはいえ、〝しんそく〟のスピード自体は使える。
目にも止まらぬ速さでブーバーに突っ込み、不意打ち気味に〝もろはのずつき〟をぶち当て再びの〝しんそく〟で〝ローキック〟をかわして離脱する。
お得意のヒット&アウェイだ。
「ほう。洗練された動きだ、君達の十八番と見た。その動きでは確かに〝ローキック〟は当てづらいな。だが……―――フィールドに〝かえんほうしゃ〟!」
「ブーーーーーバーーーーー!!!」
「!?」
ブーバーの〝かえんほうしゃ〟を浴び、高温で地面が溶かされぬかるみ始める。
これではぬかるみに足を取られかねず、足場がしっかりしていないと迂闊に〝しんそく〟が使えない。
ウインディは炎タイプも併せ持つので熱さは平気だが、火山の火口近くで暮らしたりマグマに入って傷を癒すと言われたりしているブーバーにはさすがに及ばないだろう。
自分の得意なフィールドを作って不敵に笑うブーバーは、ラスボスに相応しかった。
遠距離攻撃は意味を成さず、近距離攻撃ではあちらに有利なフィールドが作られ。
だがそれで心が折れる俺達じゃない。
むしろ絶対攻略してやると、ウインディと一緒に口角を上げる。
「笑うか!この状況で!それでこそ叩きがいがある!ブーバー、〝だいもんじ〟!」
「ブーーーーーバーーーーー!」
「〝かえんほうしゃ〟!!!」
「ガウ!」
フィールドの中央で〝だいもんじ〟と〝かえんほうしゃ〟がぶつかり合い、一瞬の拮抗の後に〝だいもんじ〟が〝かえんほうしゃ〟を突き破る。
しかし威力も勢いも落ちており、かわすのは余裕だった。
かわして地面に着地した瞬間、ウインディの目の前にブーバーが。
「!?しまった!」
「ガウ!?」
「〝ロケットずつき〟!!!」
「ブバァァァ!!!」
「〝しんそく〟!!!」
〝ロケットずつき〟で距離を詰めていたブーバーの攻撃を、咄嗟に〝しんそく〟を指示して間一髪でかわす。
幸いにもぬかるみに足を取られることなく、転ばずに済んだ。
「〝だいもんじ〟!!」
「ブーーーーーバーーーーー!!!!」
「ガウウウ!!?」
〝しんそく〟で避けたはいいが、地面に気を付けなければいけない分その後が隙だらけで、〝だいもんじ〟が直撃する。
「くっ!」
「まだまだ行くぞ!〝かみなりパンチ〟!」
「ブバァァァァ!!」
火口付近のドロドロした地面を歩き慣れているからか、ブーバーの足取りは変わらず素早い。
「〝もろはのずつき〟で迎え撃て!」
「ガウ!」
〝かみなりパンチ〟を〝もろはのずつき〟で受ける。
こちらが押せると思ったそのぶつかり合いは、ウインディの足がぬかるんだ泥で踏ん張れなかったことに寄り、こちらが押された。
おまけに追加効果で麻痺状態になる。
「ウインディ!!!」
「ガ、ガウワゥ!!」
大丈夫だ、とウインディは力強く返してくるが、目に見えて動きが悪い。
「〝ローキック〟!!!」
「ブバァァァァ!!!」
「!!〝しんそく〟!」
「ガ、ウ…!!?」
〝ローキック〟を〝しんそく〟で避けようとしたが運悪く麻痺で痺れ、ウインディの動きが止まってしまい、諸に〝ローキック〟が入って転ばされてしまった。
「ぶち込めブーバー!〝かみなりパンチ〟!」
「ブゥゥバァァァァ!!!」
動けないウインディに、〝かみなりパンチ〟が迫る。
ウインディの体力はもう残り少ない。
絶体絶命。
「――――――〝きしかいせい〟!!!!!!!」
「!」
一発逆転を狙って放った〝きしかいせい〟。
「ガゥウウウウウウウウウ!!!!!!!!」
渾身の力を振り絞って放たれた〝きしかいせい〟は、迫っていた〝かみなりパンチ〟を押し返してブーバーに直撃した。
ほぼ最大火力の〝きしかいせい〟だ。
ブーバーの体が、軽々と吹っ飛ぶ。
「なに!?」
「〝かえんほうしゃ〟ぁ!!!」
「ガウウウウウ!!」
吹っ飛んだブーバーに〝かえんほうしゃ〟を直撃させて、その隙に起き上がって体勢を整える。
ブーバーの体力も、もう残り少ない。
次で決める!
「面白い!面白いぞサトシ君!では最後の攻撃といこう!〝ギガインパクト〟!!!」
「!?」
〝ロケットずつき〟よりも威力の高い物理技があったのか!
さすがはジムリーダーのポケモン。
平気で技を四つ以上使ってくるな。
だったらこちらも全力で迎え撃つ。
「〝もろはのずつき〟だぁ!!!!!」
「ガゥウウウウウウウウウ!!!!!!!」
〝ギガインパクト〟と〝もろはのずつき〟の衝突で、ものすごい衝撃波が起こる。
タイプ一致で放てているので威力はこちらが上、ただし足場はこちらが不利で中々に踏ん張りが効かない。
結果、何とか拮抗していた。
と思ったのだが、ブーバーの方が足場が有利な分押し返す力も強く、徐々にだがウインディが押されていく。
「ガ、ウウウウウ………!」
「ウインディ!!!」
徐々に押されていくウインディの苦しそうな顔を、見ていることしかできない。
このまま押し切られれば、負け―――――。
「ウインディ!!!!頑張れ!!!!!」
俺にはもう、お前を信じて声援を送ることしか――――いや、それぐらいなら、できる。
例え声が枯れても、お前を信じ続けることだけはできる。
それはやめない。
結果がどうであれ、お前が頑張ったことを誇り続ける。
だから―――――。
「がんばれ!ウインディ!!!!!」
「ガウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!!!」
俺の声に応えてくれたウインディは、ぬかるんだ地面の上で器用に足の踏み場を確保し、わざと拮抗している力を逃がした。
ブーバーよりもウインディのほうが体が大きい。
必然的にブーバーはウインディの頭を狙って上に力を加え、ウインディはブーバーを押さえつけるように下に力を加える。
上への力を加えているところに支えを外すように力を逃せば、当然、ブーバーは体勢を崩す。
「ブバッ!!!!?」
「なに!?」
この技で決めるとお互いが思っていた状況で、本来なら力を逃がす行為は自殺行為。
負けを認めたようなもので、こちらの隙になる可能性の方が高い。
だが今回、ウインディはブーバーが体勢を崩したその先まで見越していた。
それは俺が得意としている戦法の一つ、カウンター気味に技を決める戦法。
すなわち――――。
「ガウウウウウ!!!」
〝きしかいせい〟の、発動。
超至近距離で、ブーバーの〝ギガインパクト〟を最大火力の〝きしかいせい〟が吹き飛ばした。
爆発。
爆煙が起こり、爆風が巻き起こる。
「ウインディ!!!!!!」
「ブーバー!!!!!」
互いのトレーナーが、互いのポケモンを呼ぶ。
返事は、どちらもない。
徐々に煙が晴れていくのを、固唾を吞んで見守る。
どちらも、倒れていた。
「!!」
引き分けか―――。
「ガ、ウ…!!」
「!?」
ウインディが、根性で立ち上がった。
ブーバーは、目を回していた。
「――――ッ!!!勝ったぞ、ウインディ!!」
「ピカピ!!!ピカチュウ!!!」
高温で熱されているフィールドに飛び込んでいきそうになった俺を、ピカチュウが必死に止めてくれた。
そういえば、人間が踏んでいいレベルを超えたフィールドになっていたな。
「す、すまんピカチュウ……」
「ピカピカッチュウ……」
呆れるピカチュウにお礼を言って、よたよたとふらつきながらも笑顔で近寄ってきたウインディを抱きしめる。
「よくやったぞ、ウインディ!!!本当に、本当にすごかった!!強くなったなぁ!」
「ガウ!ガウワゥ!」
ウインディは笑顔で俺の顔を舐めてきた。
可愛い。
「本当にすごかったわよ、ウインディ!」
「ウインディの根性とサトシを想う心、しかと見せてもらった。本当に、強くなったな、ウインディ!」
カスミとタケシもウインディの境遇を知っているので、心からの称賛を送ってくれる。
「ガウ!ガゥワゥガゥ!」
ウインディも褒められまくってニコニコだ。
そんな俺達に、ブーバーを戻してフィールドを外回りしてきたカツラさんが近寄ってくる。
「見事だ、サトシ君。最後の最後にしてやられたよ。君達の実力を認め、このクリムゾンバッジを授けよう!」
「ありがとうございます!クリムゾンバッジ、ゲットだぜ!」
「ピッピカチュウ!」
「ガウワーウ!」
カツラさんからクリムゾンバッジを受け取り、いつもの台詞を決めればピカチュウとウインディも続いてくれる。
無事にクリムゾンバッジを手に入れたので、一先ずポケモンセンターに向かった。
ジョーイさんは忙しいかと思ったが、ポケモンの治療なら宿泊施設が忙しくとも話は別のようで、すぐにポケモン達を回復してくれた。
その後カツラさんのペンションでご馳走になりながら、ウインディのことについてカツラさんに話した。
ロケット団が関わっていると知ると、カツラさんも顔を険しくさせる。
タマムシシティのゲームコーナー下のアジトが潰れたこと、そして幹部がキーストーンを所持していたことは知らされており、その後でジムリーダーがいないシオンタウンにロケット団が出入りしているのを聞いてポケモンGメンが調査に入ったことは知っていたらしい。
シオンタウンのことについては俺達は初耳だ。
ゴース達の協力を得るために、ポケモンタワーにしかいかなかったからな。
町の住民に話を聞くこともなかった。
何やら不穏な気配を感じながらも、カントー地方でも最強のジムリーダーが務めているので是非、というカツラさんの強い勧めで最後のバッジはトキワシティのトキワジムで手に入れることになった。
記憶と知識が正しければ、トキワジムのジムリーダーはサカキ様のはず。
ミュウツーもいるのかな。
助けられるかな。
俺に今、それだけの力があるのかな。
色々不安になりながら、その日は夜が更けていった。
俺が寝た後に、ナツメから「ヤマブキシティにロケット団が集まってきている」というメールが届いていた。
・『シャッターチャンスはピカチュウ』より。
この世界ではプテラが地下洞窟から飛び出さず終わったので、トオルがプテラを撮影することがなかった。
そのため、まだ有名ではなく雑誌にも載っていないのでロケット団もピカチュウをとってほしいと頼まなかった。
トオルがサトシ達に近付いた理由が、生きているカブトプスとオムナイトを見かけてその生き生きとした表情を撮りたかったから、サトシ達のポケモン達が皆いい表情をしていたからとなっている。
また、仲良くはなったが同行せずに別れた。
・『ポケモンけんていしけん!?』より。
トオルが同行していないのと、サトシの実力が上がっているのでカスミからの煽りも入らず、道中で試験を受けに行くジョーイさんと遭遇してポケモン検定試験を知った。
筆記試験は前の記憶も活用しながら、ほぼ百点満点で突破。
実技試験も減点どころか加点されて突破して、見事合格した。
ポケモンリーグ参加資格は得たが、今のところその資格でリーグに出る予定はない。
旅は続く。続くったら続く。
スイクン(色違い) Lv.50→51
エーフィ♀ Lv.53→54
リザードン♂ Lv.54→55 -太陽-
ピカチュウ♂ Lv.56
キュウコン♂(色違い) Lv.46
バタフリー♂ Lv.47
ピジョット♂ Lv.48
ニドキング Lv.50
フシギダネ♂ Lv.49
リザードン♂ Lv.53
カメール♂ Lv.45
キングラー♂ Lv.44
ニンフィア♀ Lv.49→50
ゲンガー♂ Lv.53
バタフリー♀(桃色の色違い) Lv.20 -モルガナ-
ゲンガー♂ Lv.46
オコリザル♂ Lv.51
ブラッキー♂(色違い) Lv.41→45
ウインディ♂(ヒスイの姿) Lv.49→50
リーフィア♂ Lv.36
ベトベトン♂ Lv.45
ジバコイル(色違い) Lv.42
ケンタロス♂ Lv.36
ガルーラ♀ Lv.34
ニョロゾ♂ Lv.35
サイホーン♂ Lv.38
バサギリ♂(色違い) Lv.34
ゾロア♀(色違い) Lv.27→31
ヒンバス♂(色違い) Lv.24→28
ラッキー♀ Lv.32
カラカラ♂ Lv.36
ポリゴン Lv.34
カブトプス♂ Lv.40→41
プテラ♂ Lv.60
オムナイト♂ Lv.20→24
トゲピー♀ Lv.2→10
フシギソウ♀ Lv.20→25