転生サトシの旅路   作:ナノブ

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6.旅で出くわす脅威

第10話 トラブル続きの旅 対決!ポケモンセンター!

 

 

明らかに弱り切り、憔悴しきっている様子の色違いのロコンが、倒れていた。

慌てて駆け寄り、傷の具合を見る。

気絶しているようで、威嚇もされなかった。

イーブイに会った時よりも酷い傷で、一目で致命傷だとわかる。

 

 

「誰が、こんなっ…!!」

 

 

声にならない怒りが込み上げたが、その怒りを押し隠して応急処置だけ手早くする。

太陽とピカチュウも絶句していた。

トキワシティが近くにあるので、トキワシティのポケモンセンターで診てもらうのが一番いい。

 

 

「これでよしっ!太陽、ピカチュウ、走るぞ!」

 

「グォウ!」

 

「ピッカ!」

 

 

ロコンを抱え上げ、なるべく揺らさないようにしながら走り出した。

太陽とピカチュウも俺の後に続く。

太陽は余裕で付いて来れていたが、ピカチュウがしんどそうだったので肩に乗せた。

走ってすぐの時に、応急処置のおかげかロコンが目を覚ました。

 

 

「コン……?」

 

「ロコン、大丈夫か!?今ポケモンセンターに連れて行くからな!」

 

「コン………………!!!!?コーン!!!コンコン!!」

 

 

状況がわかっていなかったのか、ぼんやりとした表情だったロコンは、ハッと意識が覚醒したようで俺の腕の中で大暴れし始める。

 

 

「うわっ!ロコン、大丈夫だ!ここはもう、安全だから―――!」

 

「コーン!!コンコン!!!」

 

 

俺の言葉も聞こえていないようで、ロコンは俺の腕の中から逃れようとじたばたし、しまいには俺の腕に噛み付いてきた。

 

 

「いっ!!!」

 

「ピカピ!」

 

「グォウ!」

 

 

噛まれた痛みは問題ないが、さすがにこれほど暴れられると落としそうになるので、一旦足を止めざるを得ない。

太陽とピカチュウも心配そうに俺の顔を見てくる。

 

 

「大丈夫、大丈夫だ。ロコン、俺達は何もしないよ」

 

「コーン!コーン!!」

 

 

体力が削られていくのもお構いなしに暴れるので、仕方なしに波導の力を使う。

ゆっくりと波導の力でロコンを包み、ポケモンの技である〝いやしのはどう〟を真似て精神を落ち着ける波導を流す。

 

 

「コ、ン……?」

 

 

ようやくロコンが止まった。

不安そうな表情をしながらも、先ほどまでのようにじたばたと大暴れすることはない。

 

 

「大丈夫だぞ、ロコン。もう、大丈夫だ」

 

「コ……………ッ!!?」

 

 

俺の顔を見て呆然としていたロコンは、今更ながらに傷の痛みを思い出したのか、顔をしかめる。

 

 

「大丈夫か?すぐポケモンセンターに連れて行ってやるからな」

 

「コン………」

 

 

大人しくなってくれたロコンを抱え直し、再び揺らさないようにしながら走り出す。

トキワシティまで、まだ距離がある。

歯痒く思ったところで、視界の端に自転車を捉えた。

 

 

「しめた!戻れ、太陽!」

 

「グォウ!」

 

 

太陽をモンスターボールに戻し、目にした自転車に駆け寄った。

自転車の傍には思った通り、釣りをしているカスミの姿が。

 

 

「ごめん!これちょっと借りるよ!」

 

「え?あぁ!!あたしの自転車!!!」

 

「あとで返す!!」

 

 

長話をするには時間が惜しく、ロコンを自転車の籠に入れてピカチュウを肩に乗せたまま自転車で駆け出した。

今回はオニスズメ騒動が既に済んでいるので、カスミの自転車が黒焦げになることもないだろう。

そのまま爆走し、トキワシティのポケモンセンターを目指す。

途中ジュンサーさんに止められたが、ポケモン図鑑を見せて身分証明を果たせばすぐに解放され、無事に着くことができた。

夕暮れ時にもかかわらず、誰もいない。

 

 

「ジョーイさん!ポケモン達をお願いします!」

 

「はい、お預かり―――まぁ!?」

 

 

にこやかな笑顔で出迎えてくれたジョーイさんは、ロコンを視界に捉えた瞬間怖い顔になる。

 

 

「どうしてこんな傷を負わせたの!」

 

「違うんです!俺が見つけた時には、既にこの状態で………とにかく治療をお願いします!」

 

「!そうだったの………わかりました、最善を尽くします!」

 

 

ロコンは緊急治療室に運ばれて行った。

俺のポケモン達も傷付いているとはいえ、ロコンの傷に比べればかすり傷も同然なので、治療は後回しだ。

電話ボックスでオーキド博士と母さんに連絡を入れてから、せめてものケアをと、エーフィと太陽を出してできる範囲で俺自身が手当てを行う。

ついでに俺の腕の傷も手当てする。

 

 

「どうだ?痛いところ、もうないか?」

 

「ピカピカチュウ!」

 

「フィ~!」

 

「グォウ!」

 

 

一通りの手当てを終えて尋ねてみれば、全員からいい返事を貰った。

元々ピカチュウ以外はそこまでダメージを負っていなく、ピカチュウも自然の雷に打たれた傷程度なので、手当ては本当に簡単なものだ。

 

 

「そうか。良かった―――」

 

「見つけたわよ!あんた!」

 

 

微笑んでエーフィを撫でていると、突然鋭い声が飛んだ。

この声は、と思って声がした方を見ると、予想通りカンカンに怒っているカスミの姿があった。

 

 

「あっ、き、君は…!」

 

「この自転車泥棒!あたしの自転車勝手に乗ってくなんて!どれだけ探したと思ってるの!探し疲れて泊まるためにポケモンセンターに来てみれば、停めてある自転車を見てどれだけ気が抜けたか!ここまでくるのだって大変だったんだから!」

 

 

怒り心頭で詰め寄られ、まともに謝ることもできない勢いでまくしたてられる。

エーフィとピカチュウはびっくりして俺の後ろに隠れた。

 

 

「わ、悪かった!あの時は緊急事態だったんだ!どうしても、急がなきゃいけない理由があって―――!」

 

「急がなきゃいけない理由があれば、他人の自転車勝手に持って行っていいわけ!?挨拶もなく理由も話さず勝手に持ち出して!大体あんた、どこの誰なのよ!」

 

「お、俺はマサラタウンのサトシ。今日旅立ったんだ。よろしく―――」

 

「新人トレーナー!どうりで常識がなってないわけだわ!人のものを勝手に盗ったら泥棒なのよ!」

 

 

話の流れに任せて自己紹介すれば多少は落ち着くかと思ったカスミの勢いは、いまだに止まらない。

何度謝っても怒りに任せてまくしたててくるので、ほとほと困っていると緊急治療室からロコンが出てきた。

 

 

「あっ!ちょ、ちょっとタンマ!」

 

 

慌ててそう言って、エーフィ達と一緒にジョーイさんに走り寄る。

怒鳴っていたカスミも緊急治療室から出てきたポケモンがいることに気付き、一旦矛を収めて付いて来た。

 

 

「ジョーイさん!ロコンの容体は!?」

 

「ロコン?……って、色違いのロコン!」

 

 

カスミが驚いたように声を上げる。

 

 

「危機は脱したわ。ポケモンの技による傷だと思うんだけど、一番酷かったものは塞げたし、応急処置の仕方がとてもよかったから特に後遺症とかも残らないと思う。あとは、病室の方で回復を待つだけ」

 

「よかったぁ…」

 

 

ジョーイさんの言葉に心から安堵して、ピカチュウ達と一緒に胸をなでおろした。

 

 

「あなた、この子のトレーナーってわけじゃないのよね?」

 

「はい。俺が見つけた時には、もう既に今の状態で、倒れていたんです。誰がこんなことをしたのかもわからなくて…」

 

「そう………この子は今、酷く不安定な環境にいるわ。頼れるものもおらず、怖い思いをして辛かったでしょう。トレーナーになるかはともかく置いておいて、一先ずはこの子の傍にいてあげて?」

 

「はい」

 

 

ストレッチャーの上で包帯だらけのロコンを見て、心が痛む。

そういえばと思い、カスミの方を振り返った。

 

 

「悪い、こんな場合だから、自転車のことは許してくれたら嬉しいんだけど――」

 

「何言ってんのよ!」

 

「っえ?」

 

「早く看病してあげて!自転車のことはもういいから、早くったら早く!」

 

 

前と同じ物言いに、カスミの優しさを感じ取ってつい頬が緩む。

 

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

そう言った直後、警報が鳴り響いたかと思えば天井のガラス窓からモンスターボールが二つ振ってきて、ドガースとアーボが現れた。

そう言えばこのタイミングだったな。

ドガースが〝どくガス〟を煙幕代わりにばら撒き、視界が悪くなる。

 

 

「な、何なのよ、これ!?」

 

「なんだかんだと聞かれたら」

 

「答えてあげるが世の情け」

 

「世界の破壊を防ぐため」

 

「世界の平和を守るため」

 

「愛と真実の悪を貫く」

 

「ラブリーチャーミーな敵役」

 

「ムサシ」

 

「コジロウ」

 

「銀河を駆けるロケット団の二人には」

 

「ホワイトホール白い明日が待ってるぜ」

 

「ニャーんてニャ」

 

 

俺にとっては聞き慣れた、前の時には聞き飽きた名乗りで登場するロケット団。

 

 

「あなた達は、ロケット団!ポケモン泥棒ね!」

 

 

知っていたのか、ジョーイさんがそう声を上げる。

 

 

「ご名答。とびっきり底抜けに珍しいポケモン、そして強いポケモンは全て我らのもの」

 

「痛い目にあいたくなければ、大人しく従いなさい?」

 

「誰が!」

 

 

とは言っても、簡単な手当てをしたとはいえエーフィと太陽はオニスズメとの連戦で疲れている。

ピカチュウもそこまでレベルが高くないし、上手く撃退できるかどうか。

こいつらにスイクンはまだ見せたくないしな。

 

 

「ピカチュウ、エーフィ、太陽、頼むぞ!」

 

「フィ!」

 

「グォウ!」

 

「ピッカー!」

 

 

疲れているだろうに元気よく飛び出していったピカチュウ達。

ドガースとアーボ、そしてニャースを相手していく。

今さらだが波導の力を使ってピカチュウの技と技スロットを見ていくと、技スロットは四つで、なんと〝でんきショック〟の他に〝でんじふゆう〟を覚えていた。

何故そんなものを覚えている。

疑問は一先ず後だ。

 

エーフィの〝でんこうせっか〟で撹乱しながらピカチュウの〝でんきショック〟と太陽の〝りゅうのいかり〟でダメージを入れていく。

しかし疲れているからか、技と技の相殺ばかりで中々ダメージをいれられない。

 

 

「ならエーフィ、〝あくび〟だ!」

 

「フィ~~~~」

 

 

〝あくび〟が決まり、〝どくガス〟を撒いていたドガースの動きが鈍くなる。

 

 

「眠るニャァ!眠ったらニャーの爪の餌食ニャ!」

 

 

しかしニャースがドガースの顔に〝みだれひっかき〟したことで、早々にドガースは目覚めてしまった。

まさかの起こし方ではあるが、ロケット団らしくもある。

もう〝あくび〟は通用しないと思った方がいいな。

そんなことを考えていると、見かねたカスミがモンスターボールを手に取って前に出た。

 

 

「悪役さん?私が相手をするわ」

 

「あ~ら。なんだかわけのわからないのが出てきたわ」

 

「私は世界の美少女。名はカスミ。行けぇ!マイステディ!」

 

 

名乗りの後放られたモンスターボールからは、ヒトデマンが出てくる。

さすがにジムリーダーなだけあって、カスミは強い。

その強さにロケット団全員の意識がヒトデマンに向いたところを、ピカチュウ、エーフィ、太陽の攻撃で一気に戦闘不能に持って行った。

 

 

「行け、ピカチュウ!思いっ切り〝でんきショック〟だ!」

 

「ピィィカチュウウウウウ!!!」

 

 

「「「やな感じーーーーーー!!!!」」」

 

 

つい前の癖でロケット団に思い切り〝でんきショック〟を浴びせ、入ってきた天窓から吹っ飛ばしてしまった。

まぁ、ポケモンセンターは壊れなかったからいっか。

 

 

「ふぅ…………皆、ありがとな。大丈夫だったか?」

 

「ピカ!」

 

「フィー!」

 

「グォウ!」

 

「ヘァ!」

 

 

何故かカスミのヒトデマンまで返事をして、全員の無事を確認する。

ジョーイさんもカスミも、ポケモンセンターも全て無事だった。

ホッ――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

っとしたところで、ポケモンセンターの入り口のガラス扉が派手に吹き飛んだ。

 

 

「!!?」

 

「何!?」

 

「またロケット団!?」

 

 

ジョーイさんとカスミと三人で驚いて入り口の方を見れば、いかにも強そうなレベルの違うニドキングと、ゴローニャを従えた一人の人間。

 

 

「ロケット団?俺はそんなちっぽけな存在じゃあない。珍しいポケモンをコレクションとして保管しているただのポケモンコレクターさ」

 

 

そう言って現れたのは、丸坊主の巨漢だった。

 

 

「ポケモンコレクター!?」

 

「コ……………コンッ!?」

 

 

カスミが驚きの声を上げる。

その拍子に寝ていたロコンが起きてしまい、ポケモンコレクターの姿を視界に捉え、途端に震え始めた。

 

 

「その通り。ここに、色違いのロコンが逃げ込んだだろう?それは俺のでね。返してもらおう」

 

「お前か!ロコンをこんなに傷付けたのは!ポケモンを何だと思ってやがる!」

 

 

ロコンを庇うように立って、久々に震えてくる足を奮い立たせる。

エーフィも太陽も、あのニドキングとゴローニャ相手ではレベルが違い過ぎてすぐ戦闘不能にされてしまうだろう。

肌でニドキングとゴローニャの強さを感じ取っているのか、エーフィも太陽もピカチュウも、顔色が悪い。

冷や汗を流して、体を固くさせている。

 

カスミのヒトデマンでも、正直無理だ。

文字通り、レベルが下手すれば30近く違う。

それをカスミもわかっているのか、しっかり立っているもののヒトデマンを抱えて震え始めている。

カスミが震えていることに気付いたポケモンコレクターも、いやらしい笑みを浮かべた。

 

 

「安心しろ。俺は優しい。目的のポケモンを渡してもらえれば、他には手を出さない。さぁ、ロコンを渡せ」

 

「渡すもんか!」

 

 

慌ててストレッチャーの上から逃げようとしたロコンは、間髪入れず言い返した俺にびっくりして動きを止めた。

 

 

「ロコンをこんな目に遭わせたお前に、ロコンは渡さない!これ以上傷付けられてたまるか!ロコンは絶対、俺が守る!」

 

 

俺の言葉にじわりと目を見開いて、ロコンは俺の後姿を見つめている。

全開にした波導でわかったことだ。

カスミが息を呑んだことも、手に取るようにわかる。

 

 

「ふむ………ではどうするかね?こちらとしては力尽くで奪っても良いのだが、君が俺の相手をすると?」

 

「望むところだ!」

 

 

勝負できるのは、スイクンだけ。

しかし。

それで負ければ、どうなる?

 

俺達は殺され、スイクンもあいつのコレクションの一つにされる。

 

 

「(そんなことがあってたまるか!)」

 

 

俺はスイクンのモンスターボールを取り出した。

 

 

「サトシ……」

 

 

カスミが心配そうに俺の服の裾を掴む。

 

 

「大丈夫だ」

 

 

今日何度目になるかわからないその言葉を、今回も確信をもって返した。

そう、大丈夫だ。

俺とスイクンならば。

きっと。

 

 

「行くぞ」

 

 

あの時のように。

あの時、ポケモンハンターと対峙した時のように。

スイクンのモンスターボールに向かって呟いた。

カタリと、モンスターボールが揺れる。

 

 

「君に決めた!」

 

 

放り投げたモンスターボールから出てきたその存在に、その場にいた者達全ての言葉を奪う力があった。

 

 

「なっ!?」

 

「えぇ!!?」

 

「まぁ!?」

 

 

上からポケモンコレクター、カスミ、ジョーイさんである。

静かにその姿を現したスイクンは、状況を理解しているようで最初からプレッシャー全開でニドキング、ゴローニャと対峙する。

 

 

「素晴らしい!!!!」

 

 

逸早く驚きから立ち直ったのはポケモンコレクターだった。

 

 

「色違いのスイクンとは!是非とも俺のコレクションに加えたい!こんなところでお目にかかれるとは、幸運の極み!なんという美しさなんだ!」

 

 

騒ぎ出したポケモンコレクターに、カスミとジョーイさんの意識も戻ってくる。

 

 

「ちょ、ちょっとサトシ!あんた、なんてポケモンを仲間にしてるの!伝説のポケモン、スイクンなんて…………ちゃんと扱えるの!?」

 

「扱う気はない。スイクンは、俺の大切な友達であり仲間であり恩師であり同志だ。俺が扱うんじゃなく、一緒に戦うんだ。絶対に負けない!」

 

「っ!」

 

 

俺の気迫に再びカスミが息を呑む。

気分が高揚して高笑いしていたポケモンコレクターも、ようやく落ち着いたようで目があった。

 

 

「まさか、こんなところでスイクンを手に入れることができるとはな」

 

「まだ始まってもいないのに、いい気なもんだな」

 

「当然だろう!俺のポケモン達は強い!そんじょそこらのポケモンとはわけが違う!その相手がたとえ、伝説のポケモン、スイクンであろうと負けることはない。何せそのトレーナーが、今日トレーナーになったばかりの初心者なのだからな」

 

 

くくく、と再び笑いが込み上げてきたらしいポケモンコレクター。

言い返そうとして、やめた。

油断してくれているならしめたものだ。

その方がこちらに有利で有難い。

スイクンの方を見ると、こちらを見ることなく頷きが返ってきてつい笑みが浮かぶ。

 

 

「何を笑っている?まさかこのニドキングとゴローニャ相手に、本気で勝てると思っているのか?」

 

「だったらなんだよ」

 

「笑わせる。いかに楽観的であるかということを、思い知らせてやろう!ニドキング、〝かみなり〟!ゴローニャ、〝じしん〟だ!」

 

「〝しんそく〟!」

 

 

一気に仕掛けてきたニドキングの〝かみなり〟を〝しんそく〟ですかし、〝じしん〟は届く前に〝しんそく〟を発動したままジャンプすることでかわす。

技名だけの指示でも、通じ合えていることで俺がしたい動きを理解してスイクンは動いてくれた。

 

 

「ほう、避けたか。だが空中では逃げ場はない!ニドキング、もう一度〝かみなり〟だ!」

 

「〝ほえる〟!」

 

 

ものすごい咆哮が響き渡った。

放たれた〝かみなり〟すら、音の衝撃波でかき消されスイクンまで届かない。

スイクンの方がレベルが下なのかモンスターボールに戻すことはできなかったが、十分である。

 

 

「なに!?」

 

「〝ほえる〟にそんな使い方が!?」

 

「〝めいそう〟だ!」

 

 

ポケモンコレクターとついでにカスミが驚きで動きを止めた瞬間を狙い、〝めいそう〟を積んでいく。

 

 

「ゴローニャ、もう一度〝じしん〟だ!」

 

 

空中で技を当てる狙いでもあるのか、再び〝じしん〟が放たれる。

スイクンと目が合ったので、頷くことで返しジャンプして避けてもらう。

 

 

「ニドキング、〝がんせきふうじ〟!」

 

「〝しんそく〟で岩を足場にして避けろ!」

 

 

カロス地方でケロマツと一緒に生み出した、“岩石封じ封じ”で相手の技を無効化していく。

 

 

「ハッ!ゴローニャ、〝ストーンエッジ〟!」

 

「〝エアスラッシュ〟!」

 

 

ゴローニャの周りに浮かび飛んできた〝ストーンエッジ〟の鋭利な岩を、〝エアスラッシュ〟で全て粉砕した。

何故か楽しそうに鼻で笑うポケモンコレクターに、あいつはバトルが好きなのかもしれないと錯覚する。

ポケモンを傷付けさえしなければ、楽しいバトルができたかもしれないのにという考えが一瞬浮かび、すぐにその考えを振り払った。

 

相手はポケモンコレクター。

気を緩めていい相手ではない。

後ろ手でエーフィに合図を出す。

 

 

「!」

 

「スイクン、〝めいそう〟だ!」

 

 

〝がんせきふうじ〟の岩を上り空中の高い位置にいるスイクンが、再び〝めいそう〟を積んでいく。

 

 

「落ちてきた時が運のつきだ。ゴローニャ、用意!追い込めニドキング!〝ヘドロばくだん〟!」

 

「〝みずのはどう〟!」

 

 

〝ヘドロばくだん〟と〝みずのはどう〟がぶつかり、〝みずのはどう〟が貫いてニドキングに命中した。

 

 

「威力の高さは伊達ではないか。だが……」

 

 

技と技が一瞬でもぶつかり合った時に生じた爆発の煙の中から、スイクンが地上付近に落下する姿が浮かび上がった。

 

 

「そこだ!行け、ゴローニャ!」

 

「ゴローニャ!!!!」

 

 

姿を捉えた途端、スイクンに向かって特攻する勢いで走り出すゴローニャ。

用意、というのは〝ロックカット〟を積めという意味だったらしく、かなりのスピードだ。

 

 

「な、何をする気!?」

 

カスミの動揺している声を背に、俺はエーフィに合図を送った。

 

 

「〝でんこうせっか〟!」

 

 

途端、俺の後ろから飛び出してく影。

 

 

「〝でんこうせっか〟だと?」

 

 

〝しんそく〟ではないのかと油断していたポケモンコレクターは、飛び出したエーフィを視界に捉えるのに時間がかかった。

 

 

「〝あくび〟!」

 

「!」

 

 

ポケモンコレクターにニドキングにゴローニャ、全員の意識外にいたエーフィが見事ゴローニャに〝あくび〟を決め、何も言わずとも〝でんこうせっか〟で傍に戻ってくる。

ヒット&アウェイの洗練された動きで、ダメージを負うことなく邪魔になることもなく戦闘に参加して離脱した。

 

 

「なに!?貴様、使うのはスイクンだけではなかったのか!」

 

「卑怯とは言うなよ!お前はニドキングとゴローニャ、二体も使ってるんだからな!」

 

「くっ………眠る前に決めろ!ゴローニャ、〝だいばくはつ〟!」

 

「「!!!!」」

 

 

カスミとジョーイさんの目が驚愕に見開かれる。

まずい。

〝あくび〟が発動されるまでまだタイムラグがある。

 

 

「サトシ!」

 

「まずいわ!」

 

 

なーんてね。

 

 

「〝ぜったいれいど〟!!」

 

「「「!」」

 

 

〝だいばくはつ〟を確実に当てようと、わざわざ近付いてくれたのだ。

距離が近ければ外すこともない。

〝ぜったいれいど〟の白い冷気がゴローニャに襲い掛かった。

 

 

「ゴローニャ!」

 

 

ポケモンコレクターが慌てて叫ぶが、もう無駄だ。

一撃必殺。

ゴローニャは爆発寸前で氷に閉じ込められたまま戦闘不能になった。

 

 

「ほう……中々やるな、小僧。エーフィの〝あくび〟ですら俺達の余裕を奪い、確実に〝ぜったいれいど〟を当てるための囮だったわけだ」

 

「まーね」

 

 

そっけなく返す俺に、ポケモンコレクターは肩をすくめてゴローニャをボールに戻す。

 

 

「油断していたことを詫びよう。お前は確かに強いようだ」

 

「別にけっこうだ。詫びるぐらいなら大人しく捕まってくれ」

 

「それはできない相談だ」

 

 

一体倒されたというのに、まだまだ余裕を崩さないポケモンコレクター。

ゴローニャは元々〝だいばくはつ〟要員だったのだろう。

それであのレベルの高さなのだ。

ニドキングの強さは計り知れない。

緊迫感は増すばかりだった。

 

 

「ニドキング、〝じしん〟!」

 

「跳べスイクン!〝しんそく〟!」

 

ゴローニャだけではなくニドキングも使える〝じしん〟を跳んですかし、〝しんそく〟で一気に距離を詰める。

 

 

「ふっ。〝つのドリル〟!」

 

「五つ目の技!?」

 

「!〝エアスラッシュ〟!目に当てろ!」

 

 

ニドキングも早々に〝ぜったいれいど〟で〆たかったが、さすがにもう警戒されてしまっていた。

一撃必殺技を返され、咄嗟の判断で〝エアスラッシュ〟を目に当てて目を瞑らせ、技を外させる。

近距離に持ち込んでしまえば〝ぜったいれいど〟で一気に終わらせられると踏んでいたが、相手にも一撃必殺技があるならこちらも警戒しなければいけない。

 

 

「厄介だな……」

 

「ふっ。俺のニドキングは、一筋縄ではいかないぞ」

 

「そのようで」

 

 

距離を取って戻ってきたスイクンに目配せして、迂闊に近寄らないよう合図する。

頷いたスイクンに頷き返して、改めてポケモンコレクターと対峙した。

 

 

「随分と信頼し合っているようだな。そのスイクンと」

 

「まぁな。あんたとニドキングも相当長いようだけど」

 

「どうだろうな」

 

 

お互いを探り合う会話は、疲れるからあまりしたくないんだけどな。

相手の行動を探る意味でも、出方を窺う意味でも、応じるしかない。

動くタイミングを探っているのはあちらも同じようで、むやみやたらに攻撃してこない。

本当に厄介だ。

 

つーっと汗が頬をすべり、顎から地面に落下する。

落下した音が響いたわけでもないのに、その瞬間、事態が動いた。

 

 

「〝りゅうのはどう〟!」

 

「〝みずのはどう〟!」

 

 

波導技同士がぶつかり合い、大きな爆発が起こる中〝めいそう〟で威力の上がった〝みずのはどう〟が〝りゅうのはどう〟を突き破り、ニドキングに命中した。

代わりに〝りゅうのはどう〟が霧散したことで生じた爆発の煙で視界が悪くなる。

 

 

「〝ロッククライム〟!」

 

「あいつのニドキング、どんだけ技を覚えてるのよ!?」

 

 

悲鳴のように声を上げるカスミ。

もう七つ目の技だ。

鍛えれば技スロットが増える理論、あっているかもしれない。

さて、〝しんそく〟で逃げたり迎え撃ったりしてもいいが、PPがあともう一しかない。

まだ足は取っておきたい。

 

 

「スイクン、〝ほえる〟だ!」

 

 

再びものすごい咆哮が響き渡る。

音の衝撃波がニドキングを襲い、スピードを緩めさせる。

シンオウ地方のジムリーダー、ヒョウタやトウガンがやっていた〝いやなおと〟で相手の足を止めさせる〝ほえる〟バージョンだ。

 

 

「〝れいとうビーム〟!」

 

「〝ドリルライナー〟!」

 

 

スピードが落ちた瞬間を狙い放った〝れいとうビーム〟は、〝ドリルライナー〟の角で受けられる。

回転する角で〝れいとうビーム〟が拡散された。

多少のダメージは負ったようだが、効果抜群の技にしてはそこまでダメージが入っていない。

 

 

「〝ねっとう〟だ!」

 

「〝だいちのちから〟!」

 

 

〝ねっとう〟を放とうとした瞬間を狙われ、スイクンの真下に〝だいちのちから〟を発動された。

スイクンは体勢を崩し、〝ねっとう〟は見当違いの方向へと放たれる。

 

 

「狙え!〝かみなり〟だ!」

 

「〝しんそく〟!」

 

 

体勢を崩されたのは予想外で、慌てて〝しんそく〟で避けた。

スイクンに目で合図を送ると、スイクンはそのままニドキングとの距離も詰める。

 

 

「ほう、先ほどと同じ展開だな。だが、今回は外さん!ニドキング、〝かみなり〟からの〝つのドリル〟だ!」

 

 

ただ単純に〝つのドリル〟を放つのではなく、〝かみなり〟を放って自分の身を電撃で覆い守りながら〝つのドリル〟の体勢に入った。

高度な技術を軽々とやってのけることに腹が立つ。

 

 

「準備はとうにできてんだ。あとはタイミングだけ!スイクン悪い、耐えてくれ!」

 

 

スイクンは〝かみなり〟を敢えて受け、〝ぜったいれいど〟の体勢に入る。

 

 

「一騎打ちか!面白い!」

 

 

ポケモンコレクターが高揚したように叫ぶが、残念。

俺達は、危ない橋を渡るつもりも一騎打ちをするつもりもない。

 

 

「〝アシストパワー〟!」

 

「!」

 

 

今度は〝でんこうせっか〟をする必要はなく。

エーフィに合図を送ってから積んでもらっていた〝めいそう〟六積みの〝アシストパワー〟が、真っ直ぐに放たれニドキングに直撃した。

レベル差があるとはいえ、効果抜群の技だ。

 

 

「ニドッ!?」

 

 

〝かみなり〟を纏っていたとはいえ再びの意識外からの攻撃に、ニドキングは思わず怯む。

〝つのドリル〟は、不発に終わる。

 

 

「〝ぜったいれいど〟!!!」

 

 

瞬間、真っ白な冷気がポケモンコレクター共々に襲い掛かった。

吐く息が白くなるほど辺り一帯が寒くなり、カスミが身震いしている中ゆっくりと視界が晴れていく。

目にしたのは、〝ぜったいれいど〟で凍り付き戦闘不能になったニドキングに、下半身と両手が凍り付き動けなくなっているポケモンコレクターの姿。

スイクンは〝かみなり〟を受けて大ダメージは負ったものの、凛とした姿で立っていた。

 

勝った。

 

 

「よし!スイクン、大丈夫か!?」

 

 

勝利した喜びに浸る間もなく、無理をさせたスイクンに駆け寄って体の傷を確認する。

大丈夫とばかりにスイクンは俺の頬に頬を寄せてくれた。

 

 

「よかった………ありがとな、スイクン。戦ってくれて」

 

 

お礼を言うと、スイクンは気にするなと言ってくれる。

 

 

「ピカピカチュウ!」

 

 

スイクンと頬を寄せ合っていると、ピカチュウにエーフィ、太陽も駆け寄って来て自分も自分もと擦り寄ってきた。

 

 

「よしよし。皆も頑張ったな。エーフィ、よく俺の合図に気付いてくれたな。よくやったぞ!」

 

「フィー!エフィ!」

 

 

俺が褒めると、エーフィは頬を染めて笑顔を浮かべてくれる。

ジョーイさんとカスミも、呆然とした様子でロコンの乗ったストレッチャーを押しながら近くに寄ってくる。

 

 

「くくく………小僧、お前強いな。この調子ならポケモンリーグでもいいところまで行けるんじゃないか?」

 

 

そんな和やかな空間で、上半身は動けるため口の開けるポケモンコレクターの声が響いた。

バッと全員でポケモンコレクターの方を見れば、捕らえられているというのにポケモンコレクターは何処か晴れやかな笑みを浮かべていた。

 

 

「……スイクンだけを贔屓するつもりはないし、スイクンだけのチームにするつもりもない。だから、まだまだわからないよ」

 

「ふん、謙虚だな。伝説のポケモンであるスイクンと心を通わせていること、こちらが二体でも怯まず状況をよく理解して低レベルのポケモンすら無傷で使ってみせること。どれを取ってもトレーナーとしての腕は相当だろうに。伝説のポケモンに頼らず、自分のトレーナーとしてのレベルも自分のポケモン達のレベルも上げるとぬかすか。生意気め」

 

 

饒舌に語るこいつの気持ちがわからない。

 

 

「……………あんた、本当はポケモンバトルが好きなんじゃないか?」

 

「あぁ、好きさ。好きだった。ポケモン達の美しさに魅入られてからは、表舞台に立つことはなくなったがな。ニドキングは、俺が表舞台に立っていた頃からのポケモンだ」

 

「どおりで。よく育てられてるな」

 

「小僧に褒められるとはな。光栄だよ」

 

 

ロコンを傷付けた存在。

ロコンを守るために戦った存在。

自分達を殺していたかもしれない存在。

違う形で出会えていれば、ライバルにでもなっていたかもしれない存在。

 

それでも今は、犯罪者だ。

 

 

「俺は、お前を許さない」

 

「当然だな。ムショに入る前に、最後にいいバトルをさせてもらった。それだけは礼を言っておこう」

 

 

ポケモンコレクターも、さも当然とばかりに返してきた。

犯罪者との会話はこれで終わりだ。

ようやく外からサイレンの音が聞こえてきたので、スイクンを労ってモンスターボールに戻す。

安心からか気が抜けてへたり込むカスミも労い、呆然としているロコンと顔を合わせた。

 

 

「お疲れさん。これで、お前は自由だよ」

 

「…………コン……」

 

 

信じられない、という顔をして見てくるロコンに微笑んで、優しく頭を撫でる。

バタバタと駆け込んでくるジュンサーさん達に、ようやく一息付けそうだった。

 

 









スイクン(色違い) Lv.43→45

エーフィ♀  Lv.16→18

リザード♂  Lv.18→19 -太陽-

ピカチュウ♂ Lv.8→12

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