転生サトシの旅路   作:ナノブ

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9.涙は次への一歩

第15話 ポケモンリーグへの道 ポケモン必勝マニュアルを破れ

 

 

手持ちを入れ替えて、クチバシティに向けて出発した。

今の手持ちはピカチュウ、スイクン、エーフィ、太陽、ロコン、バタフリーだ。

ロコンは人間不信なところが抜けていないので、もうしばらく手持ちに入れておきたい。

クチバシティを目指して旅を続けていると、たくさんのポケモントレーナーを相手した。

カスミだけでなくタケシもバトルの特訓に巻き込みながら、十連勝、二十連勝、三十連勝としていく。

調子には乗らないが鼻高々に自分のポケモン達を自慢していると、猛獣使いのアキラというトレーナーが、非公認ジムを開いているという噂を聞いた。

 

せっかくなので行ってみると、手作りにしては中々しっかりした門が見える。

しかしその上の文字は、0連勝になっていた。

前は98連勝じゃなかったか?

シゲル達と戦ったのだろうか。

そんなことを考えていると、アキラが帰ってきた。

 

 

「何だ?お前達」

 

「俺はマサラタウンのサトシ。この辺で、非公認のジムを開いているっていう、猛獣使いのアキラがいるって聞いたんだけど、君か?」

 

「またマサラタウンのトレーナーか………この辺のトレーナーから、俺の噂を聞いたってわけだ。まぁ入れよ。ポケモンバトル、しようぜ」

 

 

やはりシゲル達が先に来てアキラを破っていったのか。

前戦った時、手も足も出なかったことを思い出して気を引き締める。

アキラは連勝が途切れたことに、どこか苛々しているようだった。

手作りのフィールドに立ち、アキラと向かい合う。

 

 

「いざ勝負!行け、サンド!」

 

「ロコン、君に決めた!」

 

 

サンドを繰り出してきたアキラに対し、こちらはロコンだ。

カスミはもう、俺がタイプ相性の悪いポケモンを出しても驚かない。

アキラはおもむろに鞭を取り出し、鞭で地面を打った。

 

 

「サンド!GO!」

 

 

その音に反応し、サンドが丸くなって突っ込んでくる。

 

 

「〝ころがる〟か!ロコン、〝でんこうせっか〟!」

 

「コン!」

 

「からの〝じんつうりき〟だ!」

 

 

得意のヒット&アウェイの動きでまず〝ころがる〟を避け、がら空きの背中に〝じんつうりき〟を当て空中に持ち上げた。

 

 

「なにっ!?」

 

「地面に叩き付けろ!」

 

「コン!」

 

「ッ!?」

 

 

背中から地面に叩き付けられ、サンドは丸くなった状態を解除する。

 

 

「しっかりしろ!サンド!」

 

 

アキラは再び鞭で地面を打つ。

その音でサンドはバッと立ち上がり、こちらに向かって〝こうそくスピン〟で突っ込んできた。

警戒はしていたものの、前よりもレベル上げを怠らなかった俺達なら、十分太刀打ちできた。

〝でんこうせっか〟を指示し、ヒット&アウェイで攻め続け、最後は〝でんこうせっか〟で吹っ飛ばしてこちらの勝利で終わった。

 

 

「また、マサラタウンから来たトレーナーに負けた……!」

 

 

サンドを労うでもモンスターボールに戻すでもなく、両拳を握りしめて悔しがるアキラ。

その様子は苦しそうで、不安定だった。

抱き付いて来たロコンを撫でながらその様子を見ていて、いい結果になるかはわからないが、一声かけていくことにした。

 

 

「アキラ、腐るなよ?」

 

「何!?」

 

「勝った俺が言うのもなんだけど、アキラはちゃんと強い。腐っちゃ勿体ないぞ?」

 

「うるさい!お前に何がわかる!」

 

 

随分気が立っているようで、声をかけただけで怒鳴られる。

それでも俺は苦笑してみせる。

 

 

「何もわからないさ。けど、ずっとここにいちゃ、自分の強さがわからなくて不安になるだろ?一回や二回の負けで揺らいでいるのがその証拠。世界の強さを見に行けよ。自分が今どのぐらいの位置にいるのか、ちゃんと確認するんだ。ここで焦って腐るよりは、その方がずっといいぞ」

 

「………」

 

 

俺の言葉に思うところがあったのか、アキラは静かに俯く。

そして申し訳なさそうに近寄ってきたサンドと目を合わせた。

 

 

「サンドと一緒に究極のトレーナーとポケモンになるのなら、世界の強さを肌で実感することも大事だぜ?」

 

「サトシの言うとおりだ。アキラ、君は強い。そして、まだまだ若い。これからのトレーナーだ。挫折を経験したなら、君はもっと強くなれる」

 

 

俺に続いて、タケシも声をかけてくれる。

目を合わせ、目だけで礼を言う。

気にするなと微笑まれた。

 

 

「腐るのは勿体ない、か…………礼を言うぜ、サトシ。ありがとな」

 

「別に礼はいいよ。俺はただ、ライバルが一人自滅しちゃうのは勿体ないなって思っただけだから」

 

「言ってくれる。ライバルか…………よし、サンド!俺達も旅立つぞ!世界の強さを見に行くんだ!」

 

「サン!」

 

 

サンドと抱き合い、決意を新たにしたアキラからは、もう苛立ちを感じなかった。

真っ直ぐな思いと、強くなるという決意を感じ取れる。

こうしてアキラを立ち直らせることに成功した俺は、アキラとポケモンリーグで会おうと約束して別れた。

 

 

 

旅を続けていると、妙な霧が出てきて前が見えなくなり、三人で道に迷う事態になった。

タケシがティータイムにしようと言うので、薪を拾いにうろついていると、集団虐めの現場を目撃する。

慌てて止めに入ったところ、ポケモンゼミナールなる場所の生徒同士の友情、愛のムチだと言ってくる。

 

そういえばいたなこんな連中。

あの時とは違い、前のサトシとしての記憶も転生者としての記憶もある分、知識では負けない。

そう思って知識バトルを仕掛けようとしたが。

 

 

「町場の不良から売られたもの、買っちゃいけないのは常識だろ」

 

 

と返され、すかされてしまった。

その後授業であったらしい霧が晴れ、なんだかんだでカスミが虐めの主犯に怒り、学校に入ることになった。

学校に入ると、初級、中級、上級卒業者に分かれた人達が大勢現れる。

前はこんなことなかったような、と思っていると、俺がバッジ二個分の初級実力者だと虐めから助けたジュンが話してしまったらしく、俺のポケモン達を馬鹿にしてきたのでさすがに頭にきた。

 

実戦で勝負を挑むと今度は中級、上級卒業者の人達も全員乗って来たので、全員と戦うことになる。

人数は多いが知識だけで実戦経験のない相手ということもあり、自分のポケモンを持たない人間に負けるわけもなく連勝する。

レベル差?

技は当たらなければ意味がないのだよ。

こっちは知識だけじゃなく、実戦経験だってそれなりに積めているのだ。

それに今回は、ちょうどよくエーフィと太陽が手持ちにいた。

どれだけの連戦でもスタミナには自信がある。

 

そんなこんなで全員を倒すと、ジュンや虐め主犯格であったはずのセイヨさんが尊敬のまなざしでこちらを見ていた。

 

 

「僕、自分の街に帰って、一匹目のポケモンからサトシ君のようにやってみるよ」

 

「わたくしも、教科書だけに頼るのをやめて、実戦経験をたくさん積むわ。教科書に乗っていないようなバトルをたくさんするためにね」

 

 

晴れやかな顔でそう言って、握手を求めてきたので何が何だかわからないまま応じる。

その際、俺のポケモン達が疲れたであろうタイミングを狙ってロケット団がやってきたが、比較的体力の残っていたピカチュウの〝10まんボルト〟で「「「やな感じーーーーー」」」にしてやった。

ジュンともセイヨさんとも、いつかポケモンリーグで会おうと約束して別れる。

 

ポケモンマスターを目指す旅は、まだまだ続くのだった。

 

 

 

 

 

第16話 隠れ里のフシギダネ

 

 

クチバシティを目指して旅をしている最中だったが、前と同じようにものの見事に道に迷ってしまった。

とりあえず休憩しようと腰を下ろしたときに、偶然水場で水を飲んでいるナゾノクサを見かける。

 

 

「可愛い!ナゾノクサは水辺のポケモン!あたしの守備範囲よ!行くのよ、マイ――」

 

「ちょ、ちょっと待ったカスミ!」

 

 

カスミがナゾノクサをゲットしようと、いきなり勝負を仕掛けようとしていたので、慌てて止めた。

ここの近くには傷付いたり捨てられたりしたポケモンの療養所があり、このナゾノクサは確かそこに所属しているポケモンだったはずなので、いきなり攻撃を仕掛けるのはよくない。

 

 

「何でよ?」

 

「ここら辺には、ポケモン達の傷を癒す療養所があるって聞いたことがある。あのナゾノクサは、もしかしたらそこのポケモンかもしれない。だから、一旦怖がらせることはやめておこう」

 

「へぇ、ポケモン達の療養所……」

 

 

俺が前の記憶から知っている事情を話すと、カスミは怒ることなく矛を収めてくれた。

 

 

「いつの間にそんな情報を仕入れたのかしら」

 

「サトシは数多くのトレーナーとバトルしている。だから、そういった噂を聞くことも多いんだろう」

 

「ふ~ん、なるほどね」

 

 

なんかコソコソとカスミとタケシが話している。

そんなことをしているうちに、ナゾノクサが俺達に気付いて怯えたように逃げていく。

ナゾノクサが向かっていた草むらから、フシギダネが飛び出してきた。

 

 

「!あれは―――!」

 

 

俺のフシギダネ。

フシギダネはナゾノクサを守るように立ち塞がって、俺達を威嚇してくる。

ナゾノクサもフシギダネの登場に安心したように、フシギダネの後ろに隠れてこちらの様子を窺っていた。

 

 

「驚かせてごめんな、フシギダネ、ナゾノクサ。俺達は何もしないよ」

 

 

そう言って両手を上げてみせるが、フシギダネの威嚇は止まらない。

怯えているナゾノクサを見て、カスミもばつが悪そうな顔をし、申し訳なさそうに謝った。

 

 

「ダネ……」

 

 

それでもフシギダネは威嚇を止めず、ナゾノクサの背を押してフシギダネは行ってしまった。

おそらく療養所がある場所に向かったのだろう。

 

 

「あ~あ。ナゾノクサ、可愛かったのになぁ」

 

「まぁ、仕方ないよ」

 

「サトシ。お前はフシギダネをゲットしなくていいのか?」

 

「無理強いはしたくない。フシギダネの心を無視してまで、仲間にしたいとは思わないかな。寂しいけど」

 

「……そうか」

 

 

本当に寂しい。

前にゲットした俺のポケモン達が、ゲットできないかもしれない世界線にいるかもしれないとは。

それでも、前の時とは世界が違うのだから仕方ない。

フシギダネにはフシギダネの人生がある。

 

道に迷ってしまったからか、地図にも載っていない場所を歩いているとつり橋を見つけたが、紐が切れそうな部分を見つけ迂回する。

川沿いに進んでいると、タケシが落とし穴に嵌ってしまったので手を貸して助け出した。

 

 

「ここは一体何なんだ……!」

 

「さっきも言っただろ?ここはポケモン達の療養所が近いんだ。ポケモントレーナーが近付かないようにしてるんだろ」

 

「そうは言っても…!」

 

 

さすがのタケシも落とし穴に落ちたとなれば、痛みで少しカリカリしているようだった。

そこへ一人の女性が駆けてくる。

 

 

「ごめんなさい!大丈夫?」

 

「あなたは……?」

 

「私はミドリ。この辺りに住んでいるの。ごめんね。この辺りにはポケモントレーナーが近付いてほしくなくて、色々仕掛けを作ってあるの。ささやかな自衛手段でね」

 

「そうだったんですか!自分は大丈夫です!」

 

 

綺麗なお姉さんに、タケシが痛みを忘れて鼻の下を伸ばしている。

 

 

「自衛手段、って……」

 

「戦いに傷付いたり、トレーナーに捨てられたりしたポケモン達が、逃げてくるの。それで、心や体が傷付いたポケモン達は、療養しているのよ」

 

「サトシが言ってた療養所!」

 

「あら。あなたはここのことを知ってたの?」

 

「ええと、まぁ、はい……。はじめまして。俺、マサラタウンから来たサトシです」

 

「あたしはカスミです」

 

「自分は、タケシといいます」

 

「悪い人達じゃなさそうね。ふふ、よろしくね」

 

 

そんなこんなで、ミドリさんに家まで案内してもらい、少しだけ厄介になることになった。

そこにはナゾノクサやフシギダネの姿もあり、こちらを見るや否やナゾノクサは震え、フシギダネは睨み付けてくる。

 

 

「フシギダネ、ナゾノクサ。この人達は大丈夫よ」

 

「やぁ。さっきは驚かせてごめんな。俺、サトシっていうんだ。こっちは相棒のピカチュウ」

 

「ピカ、ピカチュウ!」

 

「よろしくな、フシギダネ」

 

「ダネェ……」

 

 

握手をしようと手を差し出してみても、フシギダネは警戒態勢を解かない。

苦笑して手を引く。

仲間になることはない世界線でも、せっかくなら仲良くなりたい。

そう思ってミドリさんにフシギダネと交流してもいいかと聞いてみると、快い返事を貰えた。

 

 

「なぁフシギダネ。俺と少し、お話ししようぜ」

 

「ダネ?」

 

「ピカ!ピカピカチュウ!」

 

 

フシギダネから少し距離を置いた場所に腰掛け、フシギダネとの交流を試みる。

スイクンの時のように、俺から一方的に話すだけになりそうだが、それでも俺のことを知ってもらえれば十分だろう。

 

 

「俺さ、ポケモンマスターを目指してるんだ」

 

 

話しながら、ピカチュウのケアを忘れずマッサージしていく。

気持ちよさそうに鳴き体の力を抜いてぐでぐでになるピカチュウを羨ましく思ったのか、エーフィ、太陽、ロコン、バタフリーがモンスターボールから出てくる。

せっかくなのでエーフィ達にもマッサージしていき、日頃の特訓の疲れを少しでも癒す。

 

俺とフシギダネが会話(俺が一方的にだが)している間、カスミは俺を真似てナゾノクサと交流を試み、タケシはミドリさんに毒消し草や薬草について聞いていた。

 

 

「俺が目指すポケモンマスターは、世界中のポケモン達と友達になること。だからフシギダネ、俺は、君とも友達になりたい」

 

 

マッサージのためにずっとピカチュウ達に向けていた視線をフシギダネに向けると、何故かフシギダネは大きく口を開いて唖然としていた。

 

 

「フシギダネ?どうした?」

 

「ダネ、ダネ……」

 

「ん?」

 

 

どうやらフシギダネは、俺がピカチュウ達にマッサージしている姿に驚いたらしい。

トレーナーに捨てられたポケモンとなれば、トレーナーから優しくしてもらうこともなく、ろくなケアも貰えなかったことで、俺の行動に驚いたのだろう。

 

 

「………フシギダネ。トレーナーってさ。本来は、自分のポケモン達を大事にするもんだよ」

 

「ダネ!ダネダネ!ダネダネダネ!!」

 

 

そんな存在じゃなかった!信じるものか!とでも言わんばかりに、フシギダネの表情が険しくなる。

それだけで、フシギダネの元トレーナーがろくなトレーナーじゃないことが窺い知れ、やるせない気持ちになった。

 

 

「本当だよ。トレーナーが何より大事にしなきゃいけないのは、自分のポケモンなんだ。フシギダネの前のトレーナーがどうだったかは知らないけど、俺と一緒に旅をしているタケシもカスミも、皆自分のポケモンを第一に思う、優しいポケモントレーナーだよ」

 

「ダネ!ダネフシャ!」

 

 

知ったことか!とそっぽを向かれてしまった。

いなくならないだけマシだが、無意識にフシギダネの心の傷を抉ってしまったようだ。

申し訳なくなる。

 

 

「傷付けちゃったなら謝るよ、フシギダネ。ごめんな、無神経で。でもさ。俺は君のことも好きだよ?」

 

「ダネ………?」

 

「せっかくこの広い世界で会えたんだもん。俺は君と、他でもない君と、友達になりたい」

 

「…………ダネフシャ……」

 

 

俺の言葉に、フシギダネは驚いたように振り返って、俺の目を見つめた。

 

 

「嘘じゃないよ。俺は他でもない、君が好きだ。優しいし、強いし、立派だし、頼りになるし、カッコいいし………自分からこの場所の用心棒を引き受けたんだろう?誰にでもできることじゃない。ほんと、すごい存在なんだよ、フシギダネ」

 

 

前の時は、オーキド研究所のリーダーを務めてくれていたこともあり、頼りになることは一番よく知っているつもりだ。

言葉だけで思いの丈を伝えるのがこんなに難しいとは。

どう伝えようかとうんうん悩んでいると、急にエーフィが擦り寄り甘えてきた。

 

 

「ん、どうしたんだ、エーフィ」

 

「フィ~~~~」

 

 

エーフィは答えず、ただ甘えている。

それを見ていた太陽もロコンもバタフリーも、そしてピカチュウも急に甘えてきた。

 

 

「どうしたんだ、皆。構ってほしいのか?」

 

「ピカ、チャ~~~~」

 

「グォウ」

 

 

すりすり擦り寄ってくる皆を順番に撫でていく。

そんな俺達の様子を、フシギダネは呆然と見ていた。

 

 

「ピカ、ピカピ、ピカピカ、ピカチュウ」

 

「フィー。エフィ。エフィエフィ。フィ~~~」

 

「フリ~フリ~」

 

 

ピカチュウ達が、俺は嘘を吐かない、優しい人間だと話してくれる。

なるほど、甘えてきたのは俺達の絆を手っ取り早く見せるためか。

 

 

「ダネ………フシャ……」

 

 

勢いは落ちたものの、フシギダネはまだ「信じ、られない」と言う。

だいぶ心の傷は深いな。

ピカチュウ達に続き、ロコンも自分から話しかけに行った。

ポケモンハンターに狙われたことから、俺に助けられともにいきていくと決めたことまで。

フシギダネは唖然としながら聞いていた。

 

 

「……フシギダネ。ポケモンと人は、一緒に強くなるんだ。どちらか一方だけの力じゃダメだ。釣り合うように、お互いが努力して強くなっていくんだ。だから、気にすることないんだよ」

 

 

じわり、とフシギダネの目が見開かれる。

 

 

「ピカ!ピカッチュウ!」

 

「コン!」

 

 

ピカチュウ達も俺のあとに続いてくれた。

そっと、フシギダネの頭に手を伸ばす。

拒絶は、されなかった。

ぽん、と頭に手を置き、優しく撫でる。

 

 

「頑張ったな、フシギダネ」

 

「ダ、ネ………」

 

 

大きく見開かれていたフシギダネの瞳。

その瞳に、ゆるゆると雫が溜まり始めた。

 

 

「あ」

 

「ピ」

 

「フィ」

 

「グォ」

 

「コ」

 

「フリ」

 

 

っと思った時には、フシギダネは声を上げずにポロポロと涙を溢して泣き始める。

 

 

「ダネ!?ダネェ……ダネフシャ!!」

 

 

フシギダネは自分でもびっくりしたようで、ブンブンと首を横に振って雫を飛ばそうとしていた。

そんなフシギダネを、嫌がられないのをいいことにそっと抱き上げ、抱きしめる。

 

 

「泣いたっていいんだ。涙は、弱さの証明じゃないんだから」

 

「ダネ、ダ……」

 

 

この世界でフシギダネに初めて名前を呼ばれ、嬉しくてつい頬が緩んだ。

 

 

「なぁ、フシギダネ。俺と、友達になってくれ」

 

「…………ダネ!」

 

 

フシギダネは、涙を流しながらも笑みを浮かべて、しっかり頷いてくれたのだった。

 

 

 

 

 

そんな穏やかな時を邪魔するように、急に突風が吹いた。

 

 

「うわ!?」

 

「ダネ!?」

 

 

何だ何だと上を見れば、空からよくわからない機械でやってきたのは、いつものごとくロケット団。

いつもの名乗りを上げながら、よくわからない機械を使い、すごい勢いで吸い込み始める。

 

 

「あぁ!ダメ!!!」

 

 

カスミの叫び声が聞こえたので何だと思ったら、ナゾノクサが吸い込み機に吸い込まれそうになっていた。

 

 

「フシギダネ、〝つるのムチ〟だ!」

 

「ダネフシャ!」

 

 

慌ててフシギダネの〝つるのムチ〟をナゾノクサに巻き付けてもらい、吸い込まれることを阻止する。

 

 

「諦めなさい、ジャリボーイ」

 

「さっさとおみゃーのポケモンも寄越すニャ」

 

「誰が!俺の仲間は絶対に誰一人として渡さない!絶対に守ってみせる!」

 

「…………ダネダ……」

 

 

タケシとミドリさんが他のポケモン達を小屋に避難させているのを横目に、太陽の〝りゅうのいかり〟、エーフィの〝サイケこうせん〟、ロコンの〝ひのこ〟で噴射口を破壊する。

 

 

「「ゲゲッ!?」」

 

「まずいニャ、これじゃ吸い込めないニャ!」

 

「行け、ピカチュウ!〝10まんボルト〟!」

 

「ピィカァチュウウウウウウ!!」

 

 

ろくなバトルにもならず、ロケット団を吹き飛ばした。

「「「やな感じーーーーー」」」の声を聞き届け、ロコン達を見渡し、小屋から出てきたタケシの方に振り向く。

 

 

「よし!皆、大丈夫か?」

 

「あぁ!皆無事だ!」

 

「よかったぁ!」

 

 

タケシにポケモン達の安否を確認し、ホッと胸をなでおろした。

一件落着である。

 

旅を再開させようと準備していると、ミドリさんがフシギダネとナゾノクサを連れてやってきた。

 

 

「サトシ君、カスミちゃん。よかったら、フシギダネとナゾノクサを連れて行ってもいいのよ?」

 

「えっ?」

 

「あたしも!?」

 

 

ミドリさんの申し出に、カスミと一緒に驚く。

 

 

「俺、フシギダネと友達にはなったけど、無理して連れて行きたいわけじゃ……」

 

「ううん。フシギダネを見ればわかる。サトシ君、フシギダネは、あなたと一緒なら幸せになれるわ。ここにいるよりも、もっともっと成長できると思う。フシギダネはここの弱いポケモンを助けて、自分を犠牲にしているの。だから、フシギダネをよその世界に連れて行ってもらいたいの」

 

「でもそれじゃ、この村が困るんじゃ」

 

「そうですよ、ミドリさん」

 

「確かに、フシギダネにはいろいろと守ってもらったけど。ポケモン達も、いつまでもここにいるわけにはいかないのよ。私としては、元気になったら元の場所に戻ってもらいたいの。ここのポケモン達も、野生に帰ってもらいたいの。もちろん、傷付いたポケモンが来たら、精一杯手当てしてあげるけど。手当てが終わったら、元居た場所に帰ってもらいたい。それが私の願いなの」

 

「ミドリさん……」

 

 

ポケモン達を想う優しいミドリさんに、タケシが感動している。

傷付いたポケモン達は、そう簡単には野生に戻れない。

恐怖がある、憎しみがある、抵抗がある。

全てを乗り越えて野生に戻っても、人間の臭いが付いたポケモンは群れに歓迎されないかもしれない。

他のポケモンに虐められるかもしれない。

様々な要因があって、完全に野生に戻ることは難しい。

 

おそらくミドリさんも、それをわかっている。

わかっていて、ここにいるポケモン達が野生復帰することを望み、願っているのだ。

優しい人だ。

 

ミドリさんは、フシギダネに視線を向ける。

 

 

「フシギダネはこんなところで、用心棒をしているようなポケモンじゃないわ。この子は、もっともっと成長しなきゃいけない。フシギダネが、活躍出来る場所があるはずよ。お願い、サトシ君」

 

「ミドリさん…………フシギダネ、俺と一緒にくるか?」

 

「ダネ!ダネダネ!」

 

 

フシギダネは悩むこともなく、俺の腕の中に飛び込んできた。

 

 

「フシギダネ………よーし、俺と一緒に行こうぜ、フシギダネ!」

 

「ダネ!」

 

 

笑顔で頷いてくれたフシギダネに、空のモンスターボールを当てる。

一回揺れただけですぐに揺れが止まり、オーキド研究所に転送されていった。

 

 

「フシギダネ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「あの…………フシギダネはわかるけど、あたしがナゾノクサをゲットしちゃってもいいんですか?」

 

「もちろんよ。このナゾノクサと仲良くなってくれたでしょう?この子もいつまでもここにいないで、外の世界に旅立つべきなのよ。連れて行ってくれるトレーナーが、ジムリーダーのカスミちゃんなら、これほど心強いことはないわ」

 

 

カスミの不安を払拭するように、ミドリさんは笑顔で告げる。

ミドリさんの笑顔を見て、ナゾノクサの控えめながら勇気を出して一歩を踏み出す姿を見て、カスミも意を決したようだった。

 

 

「ナゾノクサ、あたしと一緒に来てくれる?」

 

「ナゾ!」

 

「ふふ。ナゾノクサ、ゲットよ!」

 

 

ナゾノクサも笑顔でカスミに抱き付き、ともに来る道を選んだ。

こうして新たな仲間を加え、ミドリさんや他のポケモン達と別れ、旅を再開したのだった。

 

 









スイクン(色違い) Lv.45

エーフィ♀  Lv.22→35

リザード♂  Lv.23→36 -太陽-

ピカチュウ♂ Lv.22→34

ロコン♂(色違い) Lv.18→28

バタフリー♂ Lv.16→27

ピジョン♂  Lv.20→22

ニドラン♂  Lv.18→20

フシギダネ♂ Lv.18 NEW!

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