[ブルーアーカイブ] トリニティのブドウ農園主   作:ancoracor08

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第4章 ワイルドハント芸術学院 第2話:ハムスター彫刻家の天使像

 

広場の冷たい噴水脇のベンチ。ナホトが噛んで飲み込む「ブラックベルベット」の甘い果汁の香りが、初冬の冷たい空気に乗って、ほのかに広がっていった。

「……」

ナホトは、つい先ほど自分に致命的な「おじさん」呼びを突き刺してきた幼い少女が、今度は自分の手にある葡萄の房をじっと見つめていることに気づいた。彼女の視線は、まるでどんぐりを見つけたリスのように、強烈な好奇心と食欲で輝いていた。

普段であれば、たとえ幼い生徒であっても、初対面の相手には丁寧に敬語を使っていたはずのナホトだった。だが、餌を狙う小さな野生動物のような、その猛烈で可愛らしい勢いの前では、無意識のうちに大人としての警戒心が崩れてしまった。

結局、そのあまりにも露骨な視線に、ナホトの方が先に降伏を宣言するように、ぽつりと砕けた口調で言った。

「……食べるか?」

「えっ、本当!? やったー! モデルのおじさん、いただきまーす!」

言葉が落ちるや否や、少女はとてとてと駆け寄ってきて、ナホトの隣にすとんと腰を下ろした。ナホトがよく熟した葡萄の粒をいくつか取ってやると、彼女はもぐもぐと葡萄を噛みしめながら、目を丸くした。

「うわ、すごっ! めちゃくちゃ美味しい!」

初対面にもかかわらず、少しも遠慮なく近づいてくる人懐っこさ。ナホトは頬をいっぱいに膨らませて葡萄を食べる少女のつむじを見下ろしながら、先ほどアトリエで味わった冷や汗ものの記憶を引っ張り出した。

「さっきアトリエにいた生徒だよな? ちょこまか場所を移動していた子」

「あはは、覚えてるんだ?」

「覚えてるさ。床にぴったり伏せて、下から見上げてきた時は……本当に冷や汗を大量にかいたからな。いったいどうしてあんなことをしたんだ?」

ナホトの率直で痛烈な小言に、少女は「えへへ!」と、まったく堪えていない笑い声を上げながら後頭部を掻いた。

「重かった? ごめん! 私の専攻、彫刻だから!」

「彫刻専攻なのに、どうして絵を描くんだ?」

「一年生は専攻に関係なく、基礎課程でドローイングをやらなきゃいけないんだよ!」

リツは葡萄を一粒、ぽいと口に入れると、片方の頬の中へと移した。頬袋がぷっくり膨らんだハムスターのような姿で、彼女は言葉を続けた。

「私は彫刻専攻だから、いろんな角度から見たかったの!」

リツは指で空中に立体をこねる真似をしながら、弾むような声で付け加えた。彼女の単純明快な答えに、ナホトは頷いて納得した。

そりゃ、立体を扱うなら、いろいろな面から見た方がずっと役に立つはずだった。

リツは頬に寄せていた葡萄を再びもぐもぐと噛み、飲み込んでから言った。

「あ、そうだ! 私は『ウスバ・リツ』! 今言った通り、彫刻専攻のワイルドハント芸術学院一年生!」

「俺はイズレ・ナホト。トリニティ自治区の外れで葡萄農園を営んでいる農夫だ」

「イズレ・ナホト? わ! あの葡萄ブロック、『ヴィティス・グロリア』を作った人!?」

葡萄を食べていたリツの両目が、一瞬飛び出しそうなほど大きくなった。彼女はナホトの顔と、彼の手にある黒葡萄を交互に指さしながら、大げさに騒ぎ立てた。

「すごっ! どうりで葡萄がめちゃくちゃ美味しいと思った! 短い間だったけど、ワイルドハントでもあれ、すっごく流行ってたんだよ!」

リツは晴れやかに笑いながら、ナホトの腕をがしっと掴んだ。

「あのブロックのおかげで、うちの部活、すっごくお金稼げたんだ!」

『部活が金を稼ぐ?』

ナホトは内心で小さく疑問を抱いたが、すぐに大したことではないと流した。せいぜい文化祭の屋台のような場所で、部活の友人たちと一緒に冷たい葡萄ジュースでも作り、他の部に売っていた程度だろうと見当をつけたからだ。何より、リツの幼い外見を考えれば、まさかこっそり酒を仕込んで売っていたなどということはあるまいとも思った。自分が作った農産物が、他校の生徒たちのささやかな小遣い稼ぎになったのなら、農夫としてはそれなりに誇らしいことだった。

「まあ、役に立ったなら何よりだな」

ナホトが人のよい笑みを浮かべて頷いた時だった。リツの視線が葡萄から離れ、厚いチャコールグレーのロングコートに包まれたナホトの背中の方へと向かった。

「ところで、モデルのおじさん!」

リツは上半身をぐいっと傾け、彼女特有の猛烈で好奇心に満ちた眼差しで尋ねた。

「さっきアトリエで見たんだけど、肩甲骨の下角の下に、傷跡が二つあったよね」

彼女はナホトの目をじっと見上げながら、ぽつりと言った。

「あれ、翼があった場所?」

風の音だけが巡る冬の広場。ナホトの澄んだ淡い緑色の瞳が、一瞬、虚空に止まった。息すら止まったような静寂の中で、ナホトはゆっくりと口を開いた。

「……どうして分かった? 翼があったはずだって。ただ怪我の痕だったかもしれないだろ」

「ん?」

リツは、自分がどうして彼をトリニティ出身だと推測し、その傷跡が翼の名残だと確信したのか、その一連の推論の過程をうまく説明することができなかった。いや、あえて口に出して説明する必要を感じなかったと言う方が正しかった。荒い石塊の中に閉じ込められた生命の形を、一目で見抜く彫刻家のように、彼女の目には「外部の人」という粗削りな原石の中に隠されたナホト本来の形が、すでにくっきりと見えていたのだから。

「なんとなく!」

リツのあっさりした答えに、ナホトはしばらく言葉を止めたが、やがて自分でそれらしい理由を見つけ出した。

『おそらく彫刻専攻だから、人体解剖学を深く学んでいるおかげだろう』

そう考えると、辻褄が合った。ナホトは一人静かに頷いて納得すると、リツの問いに淡々と答えた。

「いろいろあって、失くした」

悲しみや苦痛の気配など一切ない、ひどく淡々とした無味乾燥な答え。

痛いと叫ぶにはあまりにも古い傷だったから、ナホトは軽く乾いた笑みを漏らしながら、平然とそう言うことができた。

その乾いた答えに、リツの眼差しがわずかに揺れた。空白の質感を扱う彫刻家として、彼女はその傷跡が抱えている重い空洞を直感したようだった。しばらく唇を開きかけて迷っていたリツは、やがて決心したようにぱっと顔を上げて叫んだ。

「モデルのおじさん! 私、一つお願い!」

「何だ?」

「おじさんをモデルにして……彫刻を一つ作らせて!」

ナホトは葡萄を飲み込む口の動きを止めた。アトリエでスケッチモデルを務めたことで終わりではなく、自分の姿を大理石の恒久的な作品として残すという提案。ナホトはしばらく考え込んだが、やがて頷いた。

「まあ……侮辱的な形や象徴じゃなければ、構わない」

ナホトが肩をすくめて許可の意を示すと、リツの顔がぱっと明るくなった。だがナホトは、そばに立てかけていた自分の銃身に手を置きながら、半分冗談めかした口調で付け加えた。

「ただし、変なのを作ったら……俺が物理的に撤去するから、そのつもりでいてくれ」

リツは怖がるどころか、むしろ挑戦状でも受け取って闘志を燃やしたのか、「ふふんっ!」と自信満々に鼻を鳴らし、ポケットからスマートフォンを取り出した。

「変に作ったら壊してもいいよ! でも私の実力を見たら、そんなこと言えなくなると思うけど? じゃじゃーん!」

リツが差し出したスマートフォンの画面には、彼女のポートフォリオ写真がぎっしり詰まっていた。ナホトは何気なく写真をめくっていたが、やがてびくりと目を見開いた。写真の中の作品は、粘土や石膏ではなかった。硬い大理石の原石を削り出して作られた彫刻像だった。

だが、その大理石が表現している質感は、驚異そのものだった。眠る天使の顔を覆う薄く透明な布のひだ、押しつぶされた枕の柔らかな皺、そして肌に食い込む縄の張力まで。大理石という冷たく硬い媒体を、まるで柔らかな綿や絹のように自在に操った、目を疑うほど圧倒的な技巧だった。

『これが一年生の実力だと?』

審美眼のないナホトでさえ、純粋に舌を巻くしかない完璧な腕前だった。

「どう? すごいでしょ?」

リツが得意げに胸を張って尋ねた。ナホトは素直に敗北を認め、スマートフォンを返した。

「分かった。彫刻ができるのを楽しみにしている」

「へへっ、任せて! じゃあ、私、インスピレーションが逃げる前に今すぐ作業室に行くね! モデルのおじさん、葡萄ごちそうさま!」

リツはベンチからぴょんと飛び降り、ナホトに元気よく手を振ると、振り返りもせず作業室へ向かって小走りに駆けていった。遠ざかっていく小さな背中を眺めながら、ナホトは残っていた葡萄を口に放り込み、立ち上がった。コンクールでは手痛い落選の苦杯を舐めたものの、それなりに興味深く奇妙な縁を結んだ一日だった。

時は容赦なく流れ、殺風景だったワイルドハントの校庭にも、そしてトリニティ外れの葡萄農園にも、いつの間にか厚い雪がふんわりと積もった十二月の末。

真冬の農園は、例年通りかなり静まり返っていた。ナホトは鋭い刃のような寒風を受けながら、農園の一角を巡回していた。寒波の中でも、痩せた枝にぶら下がったままかちこちに凍りついた黒葡萄の房。アイスワインを造るため、あえて収穫時期を大きく過ぎても残しておいたものだった。

「うん、よく凍っているな」

満足げに葡萄の状態を確認したナホトは、葡萄の粒を一つ摘んで口に入れると、両手に息を吹きかけながら自宅へと足を向けた。その時だった。

何気なく覗き込んだ自宅の郵便受けの中には、普段差し込まれている請求書や農機具カタログの代わりに、上品な銀箔の施された黒い封筒が一つ、丁寧に置かれていた。

封筒の中には、ワイルドハント芸術学院が主催する冬季展覧会の招待状とともに、裏面に元気な筆跡が記された小さなチケットが一枚同封されていた。

[モデルのおじさん! ついに完成したよ! 絶対見に来ること! 約束!]

ナホトは、彼女特有の快活さが滲むそのメモを見て、かすかに口角を上げた。自分が残したシルエットが、彼女の鑿と槌を経て、どのような大理石の質感として生まれ変わったのか。久しぶりに、静かな期待が胸の内に芽生えた。

数日後、ナホトは約束通り、ワイルドハント芸術学院の展示館を訪れた。展示場の入口でパンフレットを受け取った彼は、リツが教えてくれた区域へと向かった。遠目にも分かるほど、雲のように群がった人だかりが、まず彼の視線を捉えた。

「まさか、これが本当に一年生の作品なの?」

「大理石だなんて信じられない質感だわ。あのチュニックの皺の布地を見て」

「剣に揺らめく炎の表現もすごい。これは本当に将来が楽しみね」

人々の低い感嘆は波のように押し寄せては消え、ナホトはリツの言っていた「インスピレーション」の結果が何なのか、内心で期待混じりの好奇心を抱きながらそこへ近づいた。

「……?」

だが、人垣の隙間から彫刻像のシルエットが少しずつ姿を現すにつれて、軽やかだったナホトの足取りは目に見えて鈍くなっていった。

彼の視界に最初に入ってきたのは、彫刻像の「翼」だった。眩しいほど白い大理石を削り出して作られたその彫刻像の背には、一対の翼が大きく広がっていた。見る者に、これ以上先を覗き込むことを許さないという無言の警告を発していると同時に、展示場の照明を受けてほのかに輝くその形は、聖性と敬虔さを漂わせていた。

ただ、ナホトは聖性ではなく、胃の奥がうねり、頭がくらりとし、吐き気がこみ上げてくるのを感じた。彼は本能的に立ち止まった。

『あれはただの石塊だ。翼はただ、リツの想像力が加えられた彫刻にすぎない……』

彼は震える息を吐きながら、理性的に考えようと努めた。リツが自分の体型を借りて創作した、別個の芸術品にすぎない。自分とは何の関係もない架空の存在なのだと、自分に言い聞かせながら、こみ上げる吐き気を鎮めようとした。

ナホトは必死に心を整え、人垣を抜けて彫刻像の正面に立った瞬間、そのかすかな自己暗示は無惨に砕け散った。大理石で形作られたチュニック姿の、炎の剣を握る天使像。薄い布の質感を模した大理石の下には、ナホトの骨格、骨格と硬い筋肉の比率が作り出す体型が、嫌になるほど精密に再現されていた。

ただの石塊だと切り捨てるには、彫刻像の顔と体型、さらには皮膚の上に浮き出た血管や腱の位置に至るまで、自分の痕跡があまりにも鮮明だった。ナホトが必死に保っていた理性は、自分と酷似した形の前で無力に崩れ落ち、視線が再びその輝かしい背の翼へと向かうと、飲み込んだはずの吐き気が再び食道を這い上がってきた。

ナホトは、この彫刻がただ自分をモデルにした石像にすぎないと必死に否定した。だが、無理やり麻痺させていた感覚が目覚め、彼の理性をずたずたに引き裂いた。他人の目には聖らかで荘厳な翼だった。だが当事者であるナホトにとって、それは無理やり瘡蓋が張って固まっていた傷を、最も華やかな形で再び抉り返されたも同然だった。

『ぷつり――』

それは単に理性が死滅する音ではなかった。

翼に対する、凄絶な喪失感。

諦めや受容ではなく、感情的麻痺という防衛機制によって目を背けてきた防衛線が、崩れ落ちる音だった。

ナホトの澄んだ淡い緑色の瞳の奥で、今にも爆発しそうな眼光が、冷たく揺らめき始めた。

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