現地ケイから送られてきた住所を頼りに、先生たちはミレニアム自治区の中をしばらく歩いていた。
先生が端末に表示された地図を確認しながら周囲を見渡す。
「ミレニアムのケイから送られてきた住所はこの辺りなんだけど…。確か、デカグラマトンが普段生活してる場所なんだよね?」
「そう聞いています。ただ、デカグラマトンが、ミレニアム自治区で普通に生活しているという時点で私からすると既に違和感しかありませんが」
「それについては私も同意します」
臨戦トキが真顔で頷いた。
「先生から以前聞いてはいましたが、未だにデカグラマトンがこの世界で普通に生活しているという事実そのものが信じ難いです」
「普通かどうかはちょっと怪しいけどね」
そんな会話をしながら歩いていると、やがて三人の前に一軒の店が見えてきた。
「……ここかな?」
先生は足を止め、建物を見上げる。
比較的新しい外観のハンバーガーショップだった。
入口の上には大きく店名が掲げられている。
――マルクトナルド。
「…………」
先生は数秒、その看板を無言で見つめた。
「どうしました、先生?」
「いや……店名に凄い既視感を感じちゃってね」
「そこですか?」
「だってマルクトナルドだよ?」
「先生、今は店名へ突っ込んでいる場合ではありません」
臨戦トキに冷静に窘められ、先生も「それもそうだね」と気を取り直した。
普段なら営業している時間帯のはずだが、店先には大きく『CLOSE』と書かれたプレートが立て掛けられている。店内の様子も外からは分からないようにカーテンが閉められており、人の気配もほとんど感じられない。
「休みなのかな?」
「恐らく、彼女の失踪が原因でしょうね」
ケイが静かに答える。
「一緒に暮らしている子たちが心配して営業どころでは無いと言った所ですかね」
「それは、そうだよね……」
先生は少し表情を曇らせると、現地ケイへ到着したことを伝えるメッセージを送った。
『着いたよ。店の前にいるよ』
送信してから、それほど時間は掛からなかった。
店内から小さな物音が聞こえ、少しして入口の鍵が開く。
「お待たせしました」
扉がゆっくり開き。中から一人の少女が姿を現した。
「…………あれ?」
先生はその姿を見た瞬間、思わず目を瞬かせた。
白く長い髪。
白を基調とした衣装。
そして何より、顔立ちがあまりにも見覚えのある人物と似ている。
頭には大きな帽子を被っているものの、それさえ無ければ、数日前に失踪したと聞かされたデカグラマトン本人にしか見えないほどだった。
「なんだ、見つかったんだ」
「……?」
少女が不思議そうに首を傾げていると。
「先生、違います」
店内の奥から現地ケイの声が飛んできた。
「え?」
「その人はデカグラマトンではありませんよ」
「先生、よく見てください」
臨戦トキまで横から補足する。
「帽子が明らかに違います。顔立ちは非常によく似ていますが、別人ですよ」
「…………」
先生は改めて目の前の少女を見てみると、確かに違う。
大きな帽子を被っていることもそうだが、ヘイローも先生が知っているデカグラマトンのものとは異なっている。
「あ……本当だ。ごめんね!」
「いえ、お気になさらず」
少女は特に気分を害した様子もなく、小さく首を横へ振った。
「我とデカグラマトン様を見間違える方は、時折いらっしゃいますので」
「そんなに似てる自覚はあるんだね」
「はい。外見上の共通点が多いことは理解しています」
そこへ現地ケイが店内から歩いてくる。
「先生、来てくれてありがとうございます。それと……そちらの二人も一緒なんですね」
「念のためね。二人なら何か分かるかもしれないと思って」
「なるほど」
現地ケイはケイと臨戦トキを一度見た後、すぐに中へ入るよう促した。
「立ち話も何ですし、入ってください。詳しい話は中でしましょう」
先生たちは頷き、休業中のマルクトナルドへ足を踏み入れた。
◆
店内は営業していないことを除けば、ごく普通のハンバーガーショップに見えた。
カウンター席とテーブル席。壁にはメニュー表まで掲げられている。
先生はそれらを眺めながら、本当にデカグラマトンがここで生活していたという事実を改めて実感していた。
「……本当にハンバーガーショップなんだ」
「先生、まだ疑っていたんですか?」
現地ケイが呆れたように尋ねる。
「疑ってたわけじゃないけど……実際見るとすごいなって」
「一応知ってはいましたが…何がどうなればデカグラマトンがハンバーガーショップを経営することになるんです?」
ケイも店内を見回しながら困惑している。
「そこについては失踪している本人から聞いてください」
「それもそうですね」
現地ケイに促され、一行は客席の奥にある広めのテーブルへ案内された。
そこには既に三人の少女が待っていた。
一人は、どこか不安そうに両手を胸元で組んでいる。
もう一人は腕を組みながら落ち着かない様子で入口の方を何度も確認しており、最後の一人は比較的冷静そうではあるものの、その表情には普段とは違う緊張感が見て取れた。
先ほど先生を迎えた少女も席へ戻る。
「まずは自己紹介からですね」
現地ケイがそう言うと、帽子を被った少女が先生へ向き直った。
「改めまして。我はマルクトと申します」
「マルクト……」
先生は店の名前を思い出す。
「だからマルクトナルド?」
「……店名に関してはあの方が面白がって名付けたので我はなんとも…」
「先生、店名の話は後にしてください」
「ごめんごめん」
現地ケイに注意され、先生も話を戻した。
「私は、シャーレで先生をしてる者だよ」
「存じています」
「私のこと知ってるの?」
「はい。デカグラマトン様から、何度かお話を伺っていました。いつか直接お会いする機会があるかもしれないとは思っていましたが……まさか、このような形になるとは考えていませんでした」
マルクトの声に僅かな陰りが落ちる。
それを聞いていた隣の少女が、少し慌てた様子で頭を下げた。
「わ、私はアインです! よ、よろしくお願いします、先生!」
「よろしく、アイン」
先生が笑顔で返すと、アインは緊張していた身体から少しだけ力を抜いた。
次に、腕を組んでいた少女が口を開く。
「私はソフ。先生のことは一応聞いてるよ。デカグラマトン様が時々話してたから」
「よろしくね、ソフ」
最後に。
「オウルです」
残った少女が静かに名乗った。
「先生については、我々の中でもそれなりに情報を共有しています。もっとも、実際にお会いするのは今回が初めてですが」
「よろしく、オウル」
「こちらこそ。出来れば、もっと穏やかな状況でお会いしたかったものですね。まぁ、どうでも良いのですが」
「最後にそれ付けるんだ……」
「癖のようなものです」
四人の自己紹介が終わると、現地ケイも席へ着いた。
「それでは、改めて最初から説明します」
店内の空気が自然と引き締まる。
「彼女がいなくなったのは、数日前です」
先生は黙って続きを待った。
「その前日の夜までは、特に変わった様子はなかったそうです。ただ――」
「……少しだけ違います」
マルクトが静かに口を挟んだ。
「我々が気付かなかっただけで、何か思い悩んでいた可能性はあります。後から振り返れば、あの日のデカグラマトン様は、いつもより静かだったようにも思えますので」
「お、お姉様……」
アインが不安そうにマルクトを見る。
ソフも小さく息を吐いた。
「でも、その時は誰も気付かなかったんだよね。普通に部屋に戻ったし、いつも通りだと思ってた」
「翌朝になっても降りてこないので、我々で様子を見に行きました」
オウルが続ける。
「部屋は普段とほとんど変わりませんでした。争った形跡もなく、大量の荷物をまとめた様子もなく、端末や資料もそのまま残されていました。それどころか、飲みかけのコーラまで置いたままです」
「飲みかけのコーラまで?」
先生が少し眉を寄せる。
「それは確かに変だね」
「先生までそこを重要視するんですか?」
ケイが何とも言えない顔になる。
「いや、だって彼女がコーラを残すなんて考えられる?」
「……否定出来ないのが悔しいですね!」
ケイも渋々納得した。
現地ケイは少し呆れながらも話を続ける。
「そして、部屋の床には一枚の書き置きが残されていました」
そう言われ書置きを見せられる。
「『探さないでくれ』……か」
「そうです」
「それ以外には何も?」
マルクトが悲しそうに首を振りながら答える。
「何もありません。理由も、行き先も、戻るのかすら書かれていませんでした」
「デ、デカグラマトン様が……あんな書き置きを残して消えるなんて……」
アインは今にも泣き出しそうな顔をしている。
「きっと何か理由がありますよね? 何もなくて、あんなことするはずありませんよね?」
「そう思うよ」
先生は安心させるように優しく答える。
「だから、その理由を探そう」
「先生……」
「まだ何が起きたのか分からないんだから、最初から悪い方に決めつけない方がいいよ」
アインは少しだけ表情を緩め、小さく頷いた。
ソフもそれを見てから、先生へ向き直る。
「だから私たちも探してるんだけど、本当に何も残ってないんだよ。外の監視記録も途中から追えなくなってるし、本人が意図的に消したとしか思えない」
「通信履歴についても同様です」
オウルが補足する。
「必要になりそうな記録は綺麗に消されています。あの方が本気で痕跡を隠すつもりだったのなら、我々だけで追跡するのは難しいでしょう」
「だから私に連絡したんだね」
現地ケイが頷いた。
「先生なら何か気付くかもしれないと思いました。それに……」
「それに?」
「こういう時、結局あのコーラ狂いを連れ戻せる可能性があるのは先生くらいでしょうから」
「買い被りすぎじゃない?」
「そうでしょうか?」
現地ケイは真顔だった。
その表情を見る限り、冗談ではないみたいだった。
◆
事情を一通り聞いた後、先生たちは実際にデカグラマトンが使っていた部屋を確認することになった。
二階へ上がり、マルクトに案内されて部屋へ入る。
数日前に四人が発見した時と同じように、室内は未だほとんど手を加えられていなかった。
「出来る限り、当時の状態を残しています。もしかすると、我々が見落としていたものがあるかもしれないと思いましたので」
「ありがとう。その方が助かるよ」
先生も部屋をゆっくり見回していく。
机の上には資料。棚には様々な物が整然と並び、端末類もほとんど残されている。
例のコーラも既に中身は処分されているものの、ボトル自体はそのまま置かれていた。
何も知らなければ、部屋の主が少し外出しているだけにしか見えない。
「本当に、何も持っていっていないように見えますね」
臨戦トキが棚を確認しながら呟く。
「逃亡や長期移動を前提に準備した痕跡が一切ありませんね」
「でも本人は、探さないでくれって書いてる」
先生も机の周囲を確認する。
「最初から戻るつもりがなかったわけじゃないのかな……」
「その可能性もありますね。ただ、意図的に追跡を避けているのは明らかです。何かから逃げているのか、それとも誰かに見つかること自体を避けているのか……」
ケイが資料をめくりながら答える。
「コーラの缶をダース単位で置いといたら帰ってきませんかね?」
「そんな、ナグサじゃないんだから…」
先生たちはしばらく手分けして部屋を調べ続けた。
マルクトは棚。
アインは機械類。
ソフは資料。
オウルは端末。
ケイたちもそれぞれ別の場所を確認する。
しかし、何の成果も得られずに、ただ無為に時間だけが過ぎていく。
「……本当に何もないね」
先生が小さく息を吐いた。
「本当に綺麗に消してます」
オウルも珍しく困った様子だった。
「残されている情報の大半は日常的な内容です。店の運営、在庫、機材、その他の雑務。失踪へ直接繋がりそうなものは見当たりません」
臨戦トキが立ち上がる。
「こっちも同じような感じですね。私物にも不自然な点はありません」
「資料も駄目。何か一枚くらい意味深なものを残しておいてくれればいいのに」
ソフが肩を落とす。
「それでは痕跡を消した意味がありませんからね」
「分かってるけどさぁ……」
全員の間に重い空気が流れ始めた。
このままでは、行き先を知る手掛かりすら掴めない。
先生も腕を組みながら考え込んでいると。
『先生』
「ん?」
頭の中に聞き慣れた声が響く。
『あのタブレットは調べたんですか?』
「タブレット?」
先生が机を見るとそこには、何台かの端末に混じって一台のタブレットが置かれている。
『はい。情報が消されているなら、表から見えないだけで何か残っている可能性もあるんじゃないでしょうか?』
「なるほど……」
先生はすぐにその提案を皆へ伝えた。
「このタブレット、もっと詳しく調べられないかな? 消された情報が残ってる可能性はない?」
「それなら既に確認しています」
オウルが答える。
「通常の履歴やファイルは確認しましたが、失踪に関連しそうな情報は何もありませんでした。削除された形跡もありますが、かなり丁寧に処理されています」
現地ケイも続けて言葉を続ける。
「復元も試しましたが、私の手では有益な情報までは戻せませんでした」
「そっか……」
先生が少し肩を落とす。
『うーん……先生!』
「どうしたの?」
『それなら、もっと情報関係に強い生徒さんへ頼んでみませんか?』
「情報関係に強い?」
『はい! 募集で呼んでみましょう!』
「募集……」
『今回はアロナちゃんもふざけませんよ! 本当にこの状況に合った生徒さんを呼びます!』
「……今回はって何?」
『…………あっ』
「アロナ?」
『と、とにかく! 今回は真面目ですよ!』
「やっぱり今まで何回かふざけてた自覚あるんだね……?」
『先生! 今はそれよりコーラさんの事ですよ!!』
「話逸らしたね?」
先生は少しだけ呆れたが、今回ばかりはアロナの提案も理に適っていた。
通常の手段では復元出来ない情報ならば、専門家を呼ぶのが一番早い。
「分かった。アロナを信じるよ」
『任せてください!』
光が室内へ広がる。
マルクトたちが驚いた様子でその光景を見守り、現地ケイだけは既に知っているのか、少し距離を取って結果を待っていた。
やがて、光の中から二人の少女が姿を現した。
「……ここは?」
一人は、長い髪と黒を基調とした戦闘用の装備を身に纏った少女。
臨戦リオ。
そして、その隣には車椅子に腰掛けた少女がいた。
「これはこれは。どうやら今回は随分と急な呼び出しのようですね」
臨戦ヒマリだった。
「リオ、ヒマリ!」
先生が二人を見て安堵する。
「急に呼んでごめん。ちょっと二人に頼みたいことがあるんだ」
リオが周囲を見回す。
「ここはどこかしら?」
「ハンバーガーショップだよ」
「…………なぜこんな所で?」
今度は臨戦ヒマリが僅かに眉を動かした。
「先生。念のため確認しますが、私たちは一体何のために呼び出されたのでしょうか?」
「デカグラマトンが失踪したんだ」
「…………デカグラマトン!?」
リオの表情が一瞬で険しくなる。
ヒマリも先ほどまでの余裕を消した。
「デカグラマトンが失踪…ですか?」
「うん。数日前からいなくなってる」
「何らかの作戦行動へ移ったのではないかしら?」
「分からない。書き置きには『探さないでくれ』って」
二人の様子は明らかに警戒していた。それでも構わず先生は説明を続けた。
「デカグラマトンは、ここでみんなと一緒に暮らしてて――」
「…………はい?」
「ハンバーガーショップも経営してて」
「…………なんて?」
「コーラが大好きで」
「…………は?」
「ケイからはコーラ狂いって呼ばれてる」
「…………?」
立て続けに理解不能な情報を浴びせられたからか、リオの反応が止まった。
臨戦ヒマリも、珍しく完全に無言になっている。
「リオ?」
先生が呼び掛けても反応がない。
「リオ様?」
臨戦トキがリオの前へ歩いていき。顔の前で手を左右にひらひら振った。
「…………」
「リオ様の機能が停止しました!」
「機能停止って言わないの」
「しかし反応がありません!」
「……リオの気持ちは分かりますよ」
臨戦ヒマリが額へ手を当てる。
「私も現在、先生から聞かされた情報をどのように処理すべきか悩んでいるところです。私たちの知るデカグラマトンと、今説明された存在が同一であると認識するには、少々……いえ、かなりの時間を要しますね」
「ですよね。私も最初に聞いた時はそうでした」
ケイが深く頷く。
「……ハンバーガーショップ?」
ようやくリオが呟く。
「コーラ……?」
「リオ様、戻ってきましたか!?」
「そこまで衝撃だった?」
「先生。本当に、あのデカグラマトンなのかしら? 間違いはない?」
臨戦リオが真剣な表情で問い掛ける。
「うん」
「…………そう」
まだ完全には納得していない様子だったが、今はそこへ時間を使っている場合ではない。
臨戦ヒマリが気持ちを切り替えるように息を吐いた。
「事情は理解しました。つまり我々に求められているのは、このタブレットから消去された情報の復元ですね?」
「そう。お願い出来る?」
「もちろんです。超天才清楚系病弱美少女ハッカーである私へ、依頼を任せるとは、先生もなかなか良い判断をされましたね」
臨戦リオもタブレットを受け取る。
「私も確認するわ。ヒマリ一人に任せるより、複数の視点から調べた方が合理的よ」
「珍しく、あなたと意見が一致しましたね」
「今は張り合っている場合ではないでしょう」
「それもそうですね」
二人はすぐに解析を始めた。
部屋の中へ再び静かな緊張が戻る。
臨戦ヒマリが端末を操作し、リオがデータ構造を確認する。
「予想はしていましたが履歴は完全に削除されていますね」
「削除方法もかなり慎重。通常の復元では無理そうね」
「ですが、完全ではありませんね!」
臨戦ヒマリの目が細くなる。
「データを消したところで、使用した記録そのものを全て無かったことにするのは難しいものです。ましてや、これだけ大量の情報を短時間で処理したのであれば、必ずどこかに痕跡が残ります」
臨戦リオが画面の一部を指差す。
「ここの外部への位置情報アクセス権。削除済みだけど、キャッシュの一部が残っているわ」
「流石ですね、リオ」
「あなたも気付いていたでしょう」
「あなたが腑抜けていないか試しただけです」
二人の作業速度が一気に上がる。
先生やマルクトたちは、何をしているのかほとんど理解出来ないまま見守るしかなかった。
「……出ました」
臨戦ヒマリがドヤ顔で静かに呟く。
「本当に!?」
先生が画面を覗き込むと数字の羅列が表示されていた。
「これは?」
「どうやらどこかの座標みたいね」
「失踪する少し前、この座標を複数回確認していた形跡があります」
「つまり、ここへ向かった可能性が…?」
「断定は出来ませんが、現時点では最も有力な手掛かりでしょう」
「それでこの場所は具体的にどこらへん?」
「少し待ってください。今、マップに反映させます」
臨戦ヒマリが座標データを地図に反映してくれた。
すぐに現地ケイが画面を見る。
「うーん? 私には心当たりはありませんね」
マルクトも静かに首を傾げる。
「我も、この場所には心当たりがありません」
「私もない」
ソフも続く。
「こ、こんなところ、聞いたことありません……」
アインも不安そうに画面を見つめた。
「少なくとも、我々の把握している通常の地域とは異なるようですね」
オウルもそう判断する。
その時、先生はふと違和感に気付いた。
募集組の四人だけが、何も言わず画面を見つめている。
その表情は、先ほどまでとは明らかに違っていた。
「……みんな? この場所の事知ってる感じ?」
先生が声を掛けてみても、すぐには返事がなかった。
ケイは僅かに眉を寄せ、臨戦トキも真剣な表情で地図上の赤い点を見つめていた。
臨戦リオも腕を組みながら、何かを考え込んでいた。
そして、臨戦ヒマリがゆっくりと先生へ顔を向けた。
「ええ。嫌というほど、知っていますよ。先生」
普段の軽い調子はなかった。
「どこなの?」
臨戦ヒマリは一度だけ画面へ視線を戻した後、静かにその名を口にした。
「……鋼鉄大陸と呼ばれている場所です。かつて、私たちがデカグラマトンとキヴォトスの命運をかけて戦った……決戦の地です」