アトラ・ハシースの箱舟では、ケイとアリス、そしてアリスの中にいる現地ケイによる制御系の解析が続いていた。
目の前に並ぶ大量のスイッチやレバーには極力触れず、外部端末から直接システムへ接続して制御権限を奪い取るという方針に切り替えたことで、作業そのものは順調に進んでいる。
「高度制御系へのアクセスに成功しました。推進系も最低限は動かせそうですね」
『こちらも確認しました。完全な修復は無理ですが、現在の高度から地上まで降ろす程度なら出来そうです』
「やりました!」
アリスが嬉しそうに両手を上げる横で、プレナパテスも露骨に安堵した表情を浮かべた。
「本当に!? もう自転車漕がなくていい!?」
「そこが一番気になっていたんですか?」
「気になるよ! あれ結構疲れるんだから!」
「私はもう二度と漕ぎたくないかな……」
ユメも思い出したのか、膝へ手を置きながら小さく震えている。
「それで、どこなら下ろせそう?」
プレナパテスの問いかけに、ケイは表示されたキヴォトスの地図を確認した。
「これだけ巨大なものを市街地へ降ろすわけにはいきません。周囲に十分なスペースがあり、多少着陸地点がズレても大きな被害が出ない場所が望ましいですね」
『それならアビドス砂漠が最適でしょう』
「アビドス……」
シロコテラーが少しだけ目を細める。
人の少ない広大な砂漠なら、確かに不時着場所としては申し分ない。
「じゃあアビドスにしようか」
プレナパテスも特に反対しなかったため、目的地はすぐに決まった。
ケイたちが降下プログラムを組み始める一方、シロコテラーは少し離れた場所からプレナパテスとユメを眺めていた。
つい先ほど聞かされた事実が、まだ頭の中に残っている。
本来プレナパテスになるはずだったのはこの世界の先生。そしてユメの代わりにプレナパテスの隣に立つはずだったのは自分。
しかし募集によって未来が大きく変わり、その役割を埋めるために目の前の女性とユメが生み出された。
先生はまだ何も知らない。今も地上で、普段通り先生として過ごしている。
この事を言うべきか、言わないべきか……。
「シロコちゃん?」
「ん。……何でもない」
ユメに声を掛けられ、シロコテラーは静かに首を振った。
「降下を開始します!」
ケイの声と共に、箱舟全体がゆっくりと動き出す。
遥か上空に停止していたアトラ・ハシースの箱舟は、少しずつ高度を下げていった。
長い間まともに動力を供給されていなかったとは思えないほど降下は安定しており、当初の不安をよそに箱舟は予定していたアビドス砂漠へ真っ直ぐ近づいていく。
『速度安定しています』
「残存電力もギリギリ持ちそうですね」
「おぉ~」
プレナパテスは操作盤を覗き込みながら感心していた。
「こんなに普通に動くんだ」
「あなた、本当に今まで何も操作してなかったんですね……」
「変なスイッチ押してまた何か起きたら怖いじゃん」
「既に一度押してますけどね」
「あれは事故だから!」
「あなたの不注意でしょうが!」
ケイは冷たく返しながらも、表示されている数値から目を離さない。
高度500。
300。
200。
「もう地面が見えますよ!」
ユメが窓の外を覗き込むと、広大なアビドス砂漠が眼下いっぱいに広がっていた。
「これなら普通に着陸できそうですね!」
「油断しないでください。最後まで何が起こるか分かりません」
「ケイは心配性だね~」
その呑気な言葉を半ば無視しながら、ケイが最後の着陸操作へ入る。
「高度五十。速度をさらに落とします」
『……待ってください』
「何です?」
『電力消費量が想定より――』
その瞬間。操作盤に並んでいた光が一斉に明滅した。
「えっ?」
『残存電力、急速低下、アトラ・ハシースの箱舟の存在を維持出来ません!』
「何故ですか!?」
「私何も押してないよ!?」
「今回は疑ってません!」
高度30。
推進出力低下。
高度20。
「ケイ!」
「分かってますよ!」
『姿勢制御がもうまともに機能していません!』
「全員何かに掴まってください!!」
ケイの叫びと同時に、箱舟が大きく傾いた。
「ひぃん!?」
「ちょっ!?」
「うわぁ!?」
『うそでしょ!?』
次の瞬間、アトラ・ハシースの箱舟は最後の十数メートルを重力に従って落下した。
巨大な船体が砂漠へ叩きつけられ、轟音と共に大量の砂煙が舞い上がる。
そのタイミングで箱舟の動力も底を突きまるで幻であったかの様に消えていく。
暫くして砂煙がゆっくり晴れていくと、墜落地点のすぐ近くには、妙なものがいくつも砂から生えていた。
「…………」
最初に顔を上げたのはシロコテラーだった。
墜落の衝撃で箱舟の外へ投げ出され、そのまま顔から砂へ突っ込んだらしい。
「ぺっ……」
口に入った砂を吐きながら周囲を見る。
すぐ横にはアリスの下半身だけが砂から飛び出していた。
「アリス、大丈夫?」
「大丈夫です! ちょっと埋まっていますが!」
「ん。意外に大丈夫そうだね」
さらに少し離れた場所では、ケイがゆっくり砂から顔を上げている。
「……無事に着陸とは何だったのでしょうか?」
『全員生存していますので、実質的には成功という事で!』
「最後は墜落だったと思うんですが!?」
「うぅ……」
ユメも砂から顔を上げる。
「ひどい目に遭いましたぁ……」
「でも無事に地上に着いたからヨシ!」
プレナパテスは元気よく謎のポーズをしていた。
「全然よくありませんよ!!」
ケイの怒声がアビドス砂漠へ響き渡った。
紆余曲折はあったものの、少なくともアトラ・ハシースの箱舟を地上へ降ろすという目的そのものは達成した。
シロコテラーは身体についた砂を払い落とすと、シャーレへ繋ぐため片手を前へ出した。
「じゃあ戻ろうか」
「待って」
黒い穴が開きかけたところで、プレナパテスが声を掛けた。
「……?」
シロコテラーが振り返ると先ほどまで砂まみれになりながら騒いでいた女性は、いつの間にか真面目な表情へ変わっていた。
「どうしたの?」
「まだ私の役目は終わってないんだ」
「役目?」
ケイが眉を寄せる。
「虚妄のサンクトゥムは消滅しました。あなたを乗せていた箱舟も消えてしまいましたが、地上へ降ろしました。これ以上何が残っているんです?」
「最後に一つだけ、終わらせなくちゃいけない事があるんだ」
プレナパテスは周囲へ広がる砂漠を見渡すと、少しだけ笑った。
「それにアビドス砂漠ならちょうどいいしね」
「何がです?」
プレナパテスはそう言いながら、静かに砂漠の向こうへ視線を向けた。
「先生の始まりの地。このアビドス砂漠で、最終決戦をするよ!」
「…………はぁ!?」
ケイとアリスが揃って固まる。
「何を言ってるんですか!?」
「あなたは先生たちに泣きついたんじゃなかったんですか!? もしかして裏切りですか!?」
「別に裏切ってないよ」
「だったら何故戦うんです!?」
プレナパテスは困ったように笑うだけで、詳しい理由を説明しようとはしなかった。
「強いて言うなら、この世界を守るためだよ」
「説明になっていません!」
「今はそれしか言えないんだ、ごめんね」
「どういうことですか!?」
ケイがさらに追及しようとしたところで、シロコテラーが静かに口を開いた。
「……分かった」
「シロコ?」
「あなたの挑戦を受ける」
ケイが驚いて彼女を見る。
しかしシロコテラーはプレナパテスから聞かされた話を思い返していた。
この女性は役割を埋めるために生まれた。
プレナパテスとして箱舟へ乗りプラナと代役の生徒を伴いこの世界へやって来た。
ならば最後に残っているのは先生との対峙。恐らくプレナパテス自身も、それが何を意味するのか完全には分かっていない。
ただここまで来たなら最後まで終わらせた方がいい。
「すぐに先生を呼ぶから待ってて」
「よろしくね」
シロコテラーが片手を伸ばすと、今度こそ砂漠に大きな黒い穴が開いた。
◆
「先生」
「ん?」
シャーレの休憩スペースでは、先生が未だ完全復活していない三人のうつ伏せピンクを相手にしていた。
現地ホシノと臨戦ホシノは先ほどより幾分落ち着いてきたものの、先生と目が合うと何となく気まずそうに視線を逸らす。
ミカもようやくクッションから顔を上げた程度である。
そんな中、突然床へ黒い穴が開き、シロコテラーが帰ってきた。
「シロコ!」
「先生、来て」
「どうしたの? 箱舟は?」
「無事に地上に降ろした。消えたけど…」
「本当!?」
先生の顔が明るくなる。
「良かったぁ。じゃあプレナパテス達も――」
シロコテラーが少しだけ言葉を選ぶ。
「その事で先に伝えたい事がある。プレナパテスが先生と戦いたいって言ってる」
シロコテラーが言った言葉に休憩スペースが静まり返った。
「……なんで?」
「最終決戦だって」
「本当になんで!?」
「この世界を守るためって言ってた」
「説明が足りないよ!」
「私もそう思うけど――」
「シロコも!?」
先生が混乱する中、シロコテラーは穴をさらに広げた。
「でも受けてあげて」
「え?」
「…お願い」
普段なら理由もなく危険なことを勧めるような生徒ではない。
先生は暫くシロコテラーの目を見つめた後、困ったように頭を掻いた。
「……分かったよ」
「ん」
「まずは話だけでも聞いてみよう」
結局、シャーレにいた募集生徒たちや対策委員会も何事かと同行することになり、一行はシロコテラーのワープを通ってアビドス砂漠へ移動した。
黒い穴から出た先生が最初に目にしたのは、砂漠にぽっかりと空いたクレーターの様な物だった。
「……深くない? ちょっと待って本当に安全に着地出来たの?」
「最後だけ墜落ですね」
ケイが即座に訂正する。
「でも『実質成功』って言ってました!」
アリスも胸を張る。
「あっ……」
「察しないでください」
そして先生は少し離れた場所に立っている女性へ視線を向けた。
ビデオメッセージで何度も見た顔。
「……あなたがプレナパテス?」
「そういう君がこの世界の先生?」
二人は暫く互いを見つめた。なんとも奇妙で不思議な感覚だった。
顔立ちも性別も違うのに、立ち方や表情や雰囲気やふとした時に出る仕草まで妙に似ている。
「初めまして」
「うん。初めまして……かな?」
「なんで疑問形なの?」
「それは…禁則事項です!」
「何それ怖い」
「説明すると長くなるから、また今度ね」
「今説明してほしいんだけど……」
シロコテラーだけが、二人の会話を静かに見守っていた。
「それで私と戦いたいって聞いたんだけど」
「うん」
「理由を聞いてもいいかな?」
「この世界を守るため…としか言えない」
「シロコと同じこと言ってる……」
「それ以上は今は秘密」
「じゃあ断ってもいい?」
「えっ!?」
「だって戦う理由がないじゃん」
先生は至極当然のことを言った。
「私は君を倒したいわけじゃないし、君も私を殺しに来たわけじゃないんでしょ?」
「まあ……そうだけど」
「なら戦わなくていいじゃん」
「正論が胸に刺さる!」
プレナパテスが思わず叫ぶ。
「自分で言い出したのに正論と感じるのかい!!」
「そうなんだけど、改めて言われると本当にその通りだなって」
「じゃあ一緒に帰ろうよ」
「……先生」
先生が話を終わらせようとしたところで、シロコテラーが再び声を掛けた。
「何も言わずに受けてあげて」
「……シロコ?」
「お願い」
先生は何故そこまでシロコテラーがこの戦いを必要としているのか分からなかった。
けれど、シロコテラーが真剣にそう言うのなら何か理由があるはずと考えた。
生徒のわがままを叶えてあげるのも自分の役目かと考えた先生は大きく息を吐いた。
「……分かった。やるよ」
「ごめんね、感謝するよ」
プレナパテスの表情から僅かに力が抜ける。
「ルールは簡単」
彼女は指を一本立てた。
「互いに生徒を一人選ぶ。その子に指示を出して戦わせる」
「一対一?」
「そう」
「危ないことはなしだよ?」
「もちろん。戦闘不能になった時点で終了」
「なら……まあ」
先生も渋々頷く。
「じゃあ私から選んでいい?」
「どうぞ」
プレナパテスは迷わなかった、すぐ隣にいる少女へ視線を向ける。
「私が選ぶ生徒は――梔子ユメ」
「…………」
二人のホシノの表情が変わった。
「やっぱりユメ先輩……?」
現地ホシノが思わず声を漏らす。
「本当にやるの?」
臨戦ホシノも少し心配そうにユメを見る。
しかし、いつもなら少し頼りなさそうに笑い、泣き言を漏らしている少女が。
今だけは真剣な表情をしていた。
「大丈夫だよ、ホシノちゃん…達?」
「……」
「私も、やらなくちゃいけないみたいだから」
その姿を見て、二人のホシノはそれ以上止めることができなかった。
「……分かりました」
「無茶だけはしないでくださいね」
「うん!」
ユメがプレナパテスの前へ歩いていく。
「先生は?」
「……」
先生は改めて周囲を見渡した。
臨戦ホシノ。
ケイ。
臨戦トキ。
ナギサ。
セイア。
ミカ。
水着サオリ。
アツコ。
ニコ。
クルミ。
誰もが十分過ぎるほど強い。
しかし先生が最後に視線を向けたのは自分のすぐ隣。
「シロコ」
「ん」
「お願いできる?」
「任せて」
シロコテラーは最初から分かっていたように、迷うことなく先生の前へ歩き出した。
プレナパテスが少しだけ目を細める。
「やっぱり君なんだね」
「何か言った?」
「何でもないよ」
プレナパテスの隣にユメ。
先生の隣にシロコテラー。
本来ならそこに立つ者は逆だったのかもしれない。
しかし今はこれが、この世界で選ばれた形だった。
両者が十分な距離を取り対峙すると、砂漠に一瞬だけ静かな空気が流れた。
「……なんか緊張するね」
「ん。大丈夫」
「シロコはいつも頼もしいなぁ」
「先生の指示があれば負けない」
「おぉ……プレッシャーがすごいや!」
一方のプレナパテスもユメへ声を掛ける。
「準備はいいかな?」
「はい!」
「本当に無理しなくていいからね?」
「もうちょっと信頼してください!」
「いやぁ、だってユメちゃんだし……」
「ひどい!」
最終決戦直前とは思えない会話をしていた、その時。
遠くから聞き覚えのある音が近づいてきた。
バラバラバラバラバラ――。
「……何?」
全員が空を見上げると遠くから一機のヘリコプターが飛んできていた。
機体には、クロノススクールのマーク。
「……嫌な予感がする」
『こちらクロノススクール報道部です!』
ヘリから大音量の声が響く。
『先ほどアビドス砂漠へ墜落した正体不明の巨大構造物は座標的にはここなんですが、未だ確認できません! しかし現場には、今朝から一連の異変への対応を行っていたシャーレの先生の姿も確認できます!』
「なんで来たの!?」
先生の声など聞こえていない。
『そして先生と対峙している謎の女性! これは一体何が起きているのでしょうか!? 現在の映像はクロノスネットワークを通じてキヴォトス全域へ生中継されています!』
「生中継!?」
先生が頭を抱える。
「今からやめてもいい?」
「駄目」
「シロコぉ……」
逃げ道はなかった。
◆
キヴォトス各地で、突然始まったクロノスの緊急中継へ多くの生徒たちが視線を向けていた。
ミレニアムでは、ユウカが端末へ映し出された先生の姿を見て思わず仕事の手を止め、その隣ではリオや現地トキ、モモイ、ミドリ、ユズたちも画面を覗き込んでいた。
「先生、大丈夫かしら…?」
「今回の事件の元凶と対峙しているようね」
「いいなぁ~アリスもこれで有名人じゃん!」
「お姉ちゃん、注目するポイントそこじゃないよ」
「アリスちゃんも、先生も大丈夫でしょうか…」
「あっ向こうの私が居ましたよ! リオ様見てください! これでは同じ容姿の私がミレニアムの凄腕激可愛最強エージェントとしてキヴォトス中に警戒されてしまいますね!」
「あなた…ヒマリに少し似て来たかしら?」
トリニティでは、現地ナギサ、現地ミカ、現地セイアを始め、補習授業部の面々までが中継を見守っていた。
「先生!? 何故また危険なことを!」
「え、何これ? 先生の決闘?」
「相手の女の人、先生に雰囲気が似ていないかい?」
「それより先生の隣にいるシロコさんは……」
「あの時、援軍で来てくれた大きい方のシロコさんですね」
アリウスでは、現地サオリを始めとするスクワッドの面々が一台の端末を囲んでいた。
「先生が戦うのか?」
「先生自身は戦わないみたい」
「なら大丈夫……なのか?」
「シロコなら問題ないと思う」
「なんか先生の対面に私に似ている人が居るのですが…?」
「向こうは陽キャっぽいし別人でしょ? ヒヨリは陰キャだし」
「ひどい!」
ヴァルキューレでは、カンナとカヤが復旧対応の手を一時止め、FOX小隊とRABBIT小隊も集まって中継へ視線を向けていた。
「先生は一体何をしているんですか!?」
「私に聞くな!」
「先生なら何か考えがあるはずです」
「ミヤコ、それ何でも先生ならで済ませてない?」
「私たちは先生の言う事に盲目的に従っていればいいんですよ?」
「凄い澄んだ目でなんてことを言うんだ!?」
「あぁ、月雪小隊長の言う通りだ!」
「お前もか!?」
「ハイハイ、ミヤコちゃんもユキノちゃんも少し落ち着いてね~。すいませんねカンナ局長」
さらにゲヘナでも、ヒナ、アコ、イオリ、チナツが同じ映像を見つめ、その少し離れた場所ではマコトまで腕を組んで画面へ食い入るような視線を向けている。
「ふははは! 遂に最終決戦というわけか!」
「どうしてあなたが嬉しそうなんですか……」
「先生……」
ヒナは何も言わず、ただ画面の中にいる先生を見つめていた。
その他にも、これまで先生と関わってきた多くの生徒たちが、それぞれの場所で突然始まった中継を見守っていた。
キヴォトス中の注目がアビドス砂漠へ集まっていた。
◆
「……とんでもないことになっちゃったよ」
先生は遠くに浮かんでいるクロノスのヘリを眺めながら乾いた笑いを浮かべた。
「もう始めていいかな?」
「そうだね、そろそろやりますか!」
プレナパテスも小さく息を吐き、表情を引き締める。
ユメが盾を構える。シロコテラーも自分の愛銃を握る。
二人の間に広がる砂漠を、風が静かに吹き抜けていった。
現地ホシノと臨戦ホシノは、いつになく真剣な表情を浮かべるユメから目を離さない。
周りに居る募集生徒たちや対策委員会の生徒達。
そしてクロノスの中継を通して見守るキヴォトス中の生徒たち。
この戦いを見ている者の誰もが固唾を飲んで、その瞬間を待っていた。
「シロコ、無茶はしないでね」
「ん。先生の事を信じてるから大丈夫」
プレナパテスもユメへ視線を向けた。
「ユメちゃん、行ける?」
「もちろんです!」
先生とプレナパテスは互いに相手を見た。
そして同時に指示を出した。
「「お願い!」」
二人の声が重なる。
シロコテラーが地面を強く蹴り、一瞬で距離を詰める。
ユメも真剣な表情のまま砂を蹴り、真正面から迎え撃つように駆け出した。
先生とプレナパテスがそれぞれが選んだ生徒が世界の命運すら懸かっているのかもしれない最終決戦が、遂に始まるのだった――――。
――――ガァン!!
「ひぃん!」