新人先生、シャーレの健全さを証明する
百鬼夜行での一件が終わり、先生がようやくしばらくは平和に過ごせそうだと思い始めた頃。
ネットではシャーレそのものについて、妙な噂が広まり始めていた。
「なになに……シャーレはクローン生産工場!?」
執務室の椅子に座りながら、先生は端末に表示された掲示板の書き込みを何とも言えない顔で眺めていた。
『この前シャーレの近くで同じ顔の生徒を二人見た』
『ミレニアムの生徒が二人いたって話もあるぞ』
『百鬼夜行でも同じ顔の奴が目撃されてなかった?』
『あそこ何かの実験施設なんじゃないの?』
『先生って実は生徒を複製してる?』
「してないよ!?」
思わず画面へ突っ込むが、当然ネットの向こうには届かない。
しかも疑惑はそれだけではなかった。
『カイザーPMCの元理事がシャーレで働いてるらしい』
『あのカイザー系列の?』
『便利屋68も頻繁に出入りしてるぞ』
『アリウスの連中も見た』
『この前百鬼夜行で騒ぎ起こした奴等まで居るって聞いた』
『もしかしてシャーレって犯罪者の駆け込み寺?』
「違う! ……いや、違うよね?」
途中から自信がなくなり、先生はそっと端末を伏せた。
冷静に考えるとカイザーPMCの元理事も便利屋68もいるし。
アリウススクワッドもいる、なんならFOX小隊やRABBIT小隊もいる。
つい最近、百鬼夜行の祭りを大混乱に陥れた花鳥風月部の面々まで、シュロの部屋を建前にして頻繁に入り浸っている。
さらにシャーレには先生とは別にテスというもう一人の先生までいるが、彼女がいつかの騒動を起こしたプレナパテスと同一人物だとは知られていないはず。
それでもネットではいつの間に先生が増えたんだ。という別方向の疑惑は生まれていた。
先生は腕を組み、天井を見上げる。
「冷静に考えるとうちって外から見たら結構ヤバい機関なのでは……?」
今更すぎる気付きだったが、このまま妙な噂だけが独り歩きするのもよろしくない。
シャーレは決して怪しい施設ではない。生徒たちが依頼をこなしたり、遊んだり、昼寝をしたり、お菓子を食べたり、たまに賞金稼ぎをして資金洗浄してたりするだけの極めて健全な場所である。
先生は何か妙案を思いついたように手を叩いた。
「そうだ! 普段のシャーレをそのまま見せればいいんじゃない?」
何も隠していないのだから、日常を知ってもらえば誤解も自然と解けるはず。
そう考えた先生は、この時点ではまだ気づけなかった。
ありのままを見せることこそ一番まずい可能性があるということを。
◆
「配信ですか?」
思いついたその日のうちに、先生はユウカへ相談していた。
「シャーレの日常を配信してさ。別に怪しいことしてるわけじゃないって知ってもらおうと思って」
「発想そのものは分からなくもないですけど……」
ユウカは先生の短絡的な思い付きに何とも言えない顔をした。
シャーレへ出入りしている人間をある程度知っているからこその反応だったが、先生はそこには気付かない。
「配信機材とか用意できる?」
「それならミレニアムにあります。準備もこちらで出来ますけど……」
そこでユウカが少し考え込み、やがて何かを思いついたように先生を見る。
「先生、一つお願いしてもいいですか?」
「配信機材のお礼なら何でもするよ」
「今、何でもって言いましたね?」
「……怖い言い方しないでくれる?」
ユウカは苦笑しながら端末を取り出した。
表示された設計図を先生へ見せる。
「最近ミレニアムで、新しい戦闘シミュレーション機器が完成したんです」
「へぇ、相変わらずミレニアムはハイテクだね~」
「フルダイブ型で、使用者の意識を仮想空間へ接続して、現実とほとんど変わらない感覚で模擬戦を行える装置です。現実で怪我する危険もありませんし、市街地戦から山岳戦、屋内戦まで色々な環境を再現できます」
「すごっ!」
「リオ会長とヒマリ部長の合作です」
その二人の名前を聞いてから先生の顔から少しだけ感心が消えた。
「安全だよね…?」
「それを確認するための性能試験です」
「まだ完成してないじゃん!?」
「完成はしてます!」
ユウカが机を叩いた。
「ただ、大人数や高レベルの戦闘を再現した時にどの程度の負荷まで耐えられるのか、実地データがまだ足りないんです。それでシャーレの生徒たちに協力してもらえないかと」
「なるほど」
「それと、せっかく配信するならシミュレーターも映してもらえませんか? 性能の宣伝にもなりますから」
「配信機材を借りる代わりにそのシュミレーターの宣伝ってことだね?」
「そういうことです。ミレニアムはシャーレを高く評価しています。よいお返事を期待していますね」
「ユウカにそこまで言われちゃったら断れないな。シャーレの健全さを見せつけるついでに、ミレニアムの技術力もがんばって宣伝してみるよ!」
「流石先生! では私はいろいろ手配して来ますね!」
◆
数日後。
シャーレには大量の配信機材と、部屋一つを占領するほど大掛かりなシミュレーション装置が運び込まれていた。
「配線は完了しました」
リオが端末を確認する。
「同期率も問題ないわね。最大同時接続人数も問題なさそう」
「ふふふ。超天才清楚系病弱美少女ハッカーたる私とリオの合作なのですから、この程度当然でしょう」
「ヒマリ先輩、設置作業はほとんど私と先生でやったんですが」
「ユウカ。細かいことを気にすると老けますよ」
「誰のせいで細かいところまで管理してると思ってるんですか!?」
早速始まった言い争いを横目に、先生は配信用のカメラを手に取った。
「よーし」
画面にはすでに待機中の視聴者数が表示されていた。
その数は先生が想定していたよりずっと多かった。
「結構見に来てるね」
ユウカが呆れながら答える。
「変なこと言わないでくださいよ?」
「任せて!」
「それが一番不安なんですけど」
そんな言葉を背中で聞き流しながら、先生は配信開始のボタンを押した。
「こんにちはー。連邦捜査部シャーレの先生です」
コメント欄が一気に流れ始める。
『始まった!』
『先生だ』
『シャーレ配信マジで始まったぞ』
『ドッペルゲンガー見せて~!』
「初手から質問が物騒だなぁ……」
先生は苦笑しながらこの配信の説明を始める。
「最近シャーレについて変な噂が多いみたいなので、今日は実際どんなところなのか皆さんに見てもらおうと思います」
『家宅捜索配信?』
「違うよ!」
『証拠隠滅終わった感じ?』
「何も隠してないから!」
先行きが不安だった。
「まずここが執務フロアです」
カメラを持ちながら先生が歩いていく。
「シャーレと言っても、普段は書類仕事が大半でみんなが思ってるほど怪しいことはしてないよ」
そう言って一つの執務室を映す。
そこではカヤと元理事が向かい合う形で、大量の書類を処理していた。
「今の時間帯だとカヤと元理事が手伝ってくれてるね」
「オイ」
カメラを片手にウロウロしている先生に気づいた元理事が顔を上げる。
「何故カメラをこちらへ向けている」
「シャーレの日常を配信してるんだよ」
「何も聞いていないぞ!」
「今言ったからね!」
「コイツ…!」
「そんなアホなことしてないで書類を片付けてくださいよ!」
コメント欄が爆発した。
『待って』
『カイザーPMC理事!?』
『あれ? でも解任されてなかったっけ?』
『カイザー系列の偉い奴が何でシャーレにいるんだよ』
『しかも普通に働いてるし』
『防衛室長までいるじゃん』
『この組み合わせ何?』
先生はコメントを読みながら胸を張る。
「ほら。ちゃんと真面目に働いてるでしょ?」
『否定材料になってない』
『むしろ疑惑増えた』
「なぜ……?」
元理事が大きな溜息を吐く。
「先生。今すぐ配信を止めた方がいいんじゃないか?」
「まだ始まったばっかりだから!」
先生は逃げるように部屋を後にした。
◆
「次は休憩スペースです」
気を取り直して別の階へ移動する。
「ここではみんな自由に休んだり、お茶したりしてるんだよ。本当に普通だからね!」
カメラを向けると、ちょうどテーブルを囲んでいたのはユメ、テス、コクリコの三人だった。
「それでね~、海でユメちゃんが――」
「あ、先生じゃん! なにしてんの~?」
「配信中だよ~」
テスがカメラへ気付き、軽く手を振る。
ユメも笑顔でこちらへ手を振った。
「こんにちはー!」
コクリコは湯呑みを片手に、面白そうに目を細める。
「おやおや。思いつきで変なこと始めたもんだねぇ」
『どこがとは言わないけど…でっか…』
『エ駄死!』
『待ってこの前TVで見た顔がいるぞ!?』
『百鬼夜行のニュースに出てた組織の人じゃん!』
『全然普通じゃないんですが?』
「…………」
先生の額に冷や汗が浮かんだ。
「次行こうか!」
「逃げたねぇ」
コクリコの楽しそうな声を背中に受けながら、先生は足早に移動した。
その後も休憩スペースで便利屋68を映せば。
『ゲヘナで指名手配されてた人たちじゃない?』
アリウススクワッドを映せば。
『どうしてアリウスの子たちまでいるんだ?』
FOX小隊とRABBIT小隊が同じ部屋にいるところを映せば。
『シャーレって何の組織なんだよ』
と、配信を続ければ続けるほど疑惑が深まっていった。
「……おかしいな」
先生はカメラを見つめる。
「日常を見せれば安心してくれると思ったんだけど」
横にいたユウカが無言で先生を見る。
「何?」
「いえ。最初からこうなる気はしていました」
「そう思ってたなら言ってよ!」
「言ってもやったでしょう?」
「…………あー」
「ほら」
「うす」
◆
「さて!」
半ば強引に話題を変えるため、先生は例のシミュレーション装置が設置された部屋へ移動した。
「ここからは今日のもう一つの目玉です」
巨大な装置をカメラへ映す。
「ミレニアムで開発された最新のフルダイブ型戦闘シミュレーター!」
「正式名称で言ってちょうだい」
リオが横から補足する。
「ちなみに命名したのは誰?」
「私よ」
「じゃあシミュレーターで」
「先生!?」
少し不満そうなリオを無視し、先生は説明を続けた。
「現実では一切怪我をせずに、本物とほとんど同じ感覚で戦闘訓練が出来るらしいです」
コメント欄も先ほどまでとは違い、純粋に技術への驚きで流れ始める。
『これミレニアム製?』
『フルダイブってマジ?』
『訓練用に欲しい』
『ゲームとして売って』
「それでは性能を見てもらいましょう!」
先生が手を上げる。
「最初のテストは――便利屋68対アリウススクワッド!」
「フッフッフ!」
アルが胸を張る。
「ついに我々便利屋68の実力を全キヴォトスへ知らしめる時が来たわ!」
「了解した」
向かいに立つ現地サオリが静かに武器を確認する。
「実戦と同様に対応する」
「…………」
「アル?」
「ちょ、ちょっと待って? 模擬戦よね?」
「もちろんだ」
「その目、本気すぎない!?」
横ではムツキが腹を抱えて笑い、カヨコは最初から結果を察したように遠い目をしていた。
仮想空間への接続が開始される。
市街地を模したフィールドで銃声が鳴り響き始めると、視聴者のコメントも一気に盛り上がった。
最初は宣伝も兼ねたお遊びに近い試験だったが、実際に動作させてみれば、その再現度は先生が想像していた以上だった。
弾道。
遮蔽物。
爆発。
生徒それぞれの戦闘感覚までほぼ完璧に再現されている。
「凄いなこれ……」
その先生の言葉にリオとヒマリがドヤ顔で胸を張る。
「そこまで本気じゃなくていいわよぉぉぉ!!?」
仮想空間から爆発に巻き込まれたアルの悲鳴が響いた。
次のテストに選ばれたのはRABBIT小隊対FOX小隊。
こちらは最初の模擬戦よりもシステム負荷を上げ、より複雑な地形と多数の障害物、環境変化まで加えた本格的な試験となった。
開始直後こそ軽口もあったものの、戦闘が始まった瞬間に空気が変わる。
互いに部隊単位で動き、相手の位置を読み、射線を管理しながら陣地を奪い合う。先ほどまで笑っていた視聴者も、次第にコメントを忘れるほど戦闘へ見入っていた。
「負荷率は大丈夫ですか?」
「これなら問題にすらならないわ」
ユウカの問いにリオが答える。
「流石私ですね」
「ヒマリ先輩、さっきから何もしてませんよね?」
「こうして問題なく稼働できているだけで、私の働きは完成されているのですよ」
「便利な言葉ですね……」
先生はそんなやり取りを聞きながら、改めてシミュレーターを見る。
「これならかなり激しい戦闘でも大丈夫そうだね」
この何気ない一言が後ほど自分の首を絞めることになるとは、この時まだ思ってもいなかった。
「さてと」
模擬戦が一段落したところで、先生はカメラの前へ戻った。
「せっかくなので、最後に最近ネットで一番言われてる噂について説明しようと思います」
『ドッペルゲンガー?』
『ついに来たか!』
『同じ顔の謎』
「そう、それそれ」
先生は苦笑しながら話を続ける。
「シャーレ…というか私には『募集』っていう特殊な機能があってね」
詳しい原理までは先生自身にも分からない。
ただ、入部届を提出している生徒の中から、時折特殊な形で生徒がシャーレへ来る。
先生が説明できるのはその程度だった。
「色々事情があるので全部を話すことは出来ないんだけど、少なくとも私が生徒を複製してるとか、地下で何か怪しい実験してるとかではないんだ」
『絶対嘘じゃん』
『怪しい』
「何で!?」
そんな中アロナの声が先生にだけ聞こえる。
『先生! それなら実際に募集して見せれば一番分かりやすいですよ!』
「……確かにそうだね。じゃあ、実演してみようか」
『!?』
視聴者数が一気に跳ね上がった。
「アロナ、お願い」
『はい!』
先生にとってはもう何度も見慣れた光景だったが、視聴者にとっては違う。
配信画面が眩い光に包まれ、その中心に一人の少女の姿が形作られていく。
長い白髪に特徴的な角と大きな翼。
そうして光の中から現れた少女は一瞬周囲を見回した後、真っ先に先生へ視線を向けた。
「……先生!」
ゲヘナ学園の風紀委員長の空崎ヒナの登場にコメント欄が完全に壊れた。
『??????』
『ゲヘナ最強の!?』
『風紀委員長!?』
『今どこから出てきた』
『瞬間移動?』
『募集って何なんだよ』
『私にもわからん』
先生がコメントを見て。
「あれ……逆に謎が増えちゃった?」
ヒナが声を掛ける。
「先生が元気そうで良かった」
「え?」
ヒナは僅かに目を逸らした。
「ごめんなさい。気にしないで」
その表情に何か引っ掛かるものを感じたものの、先生は深く追及しなかった。
「えーっと」
先生は再びカメラへ向き直る。
「こんな感じで募集された生徒がシャーレに来るわけで。募集できたヒナとこの世界に元々いたヒナは別人なんだよね。それがみんなが言っていたドッペルゲンガーの噂の正体なんだよ」
『こんな感じで済ますな』
『何一つ分からない』
『むしろドッペルゲンガーより怖くなったんだが』
「なんで!?」
シャーレの健全さを証明するという当初の目的は、既にかなり怪しくなっていた。
先生は諦め気味に笑う。
「まあ……これで少なくとも、ドッペルゲンガーが勝手に湧いてるわけじゃないって分かってもらえたかな?」
『結局湧いて来ているのは変わらないのでは?』
「言い方!」
そろそろ配信を終わろうとそう思った時だった。
一つのコメントが目に入る。
『ところでその募集で呼んだ生徒の中で一番強いのって誰なの?』
「募集で呼んだ生徒の中で一番強い人?」
先生は顎に手を当てて少し考える。
「う~ん誰なんだろうね?」
純粋な疑問を本当に軽い気持ちで口にしただけだった。
その言葉に少し離れたところで寛いでいた臨戦ホシノが反応する。
「ん~まあ、おじさんは上から数えた方が早いとは思うけどねぇ~」
その隣でシロコテラーが即座に顔を上げた。
「ん、私以外に考えられない」
「随分自信満々だね!?」
「当然」
さらにミカまで楽しそうに割り込んできた。
「え~? それなら私じゃない? 私、本気出せば結構強いよ☆」
「ミカも!?」
三人の視線が自然と交差する。
「…………」
そして、つい先ほど募集されたばかりのヒナが、その様子を黙って見ていた。
「そういえばヒナってゲヘナ最強だよね…?」
先生の言葉を否定も肯定もせずにヒナは小さく息を吐く。
「私は別に誰が最強なのかなんてあまり興味はないけど。先生が気になるなら試してみてもいいわ」
少しだけ眼光を鋭くしたヒナが言い争っていた三人に向けられた。
「…………」
先生は四人を見る。
臨戦ホシノ。
シロコテラー。
ミカ。
ヒナ。
「いやごめん待って! 私もコメントに乗っかったけど、君たちが戦うのはヤバいってことはわかるからやめよ?」
先生が説得しようとするが、コメント欄は逆に大盛り上がりだった。
『見たい!』
『最強決定戦』
『正直風紀委員長とティーパーティー以外知らないけど強者のオーラでわかるから是非お願いします!』
『四つ巴』
『今シミュレーターあるじゃん』
『絶対見たい』
「みんな落ち着こう!?」
ものすごい勢いで視聴者数が増えていく。
「私は軽い気持ちで聞いただけで――」
「先生」
ユウカが声を掛けた。
「ユウカ助けて!」
助け船だと先生はそう思った。
「シミュレーターなら施設への被害は出ません」
「ユウカ!?」
「高負荷試験としても理想的ね」
リオまで乗ってくる。
「リオ!?」
「ふふふ、これほど素晴らしい被験者が一度に四人も揃うとは。やはり天はこの超天才清楚系病弱美少女を祝福しているようですね」
ヒマリが満足そうに笑った。
「外堀を埋めないで!」
先生の抗議は誰にも聞いてもらえなかった。
◆
数分後。
シミュレーション装置の前で四人がそれぞれ接続用の機器へ入っていく。
「本当にやるの……?」
先生が最後の抵抗を試みる。
「ここまで来てやらないの?」
ミカが楽しそうに笑う。
「ん、問題ない」
シロコテラーは完全にやる気だった。
「おじさんも少し運動したかったところだしねぇ~。手加減はしてあげるよぉ~」
臨戦ホシノも肩を回す。
「……すぐ終わらせるわ」
ヒナだけはいつも通り落ち着いている。
「みんな自信ありすぎない?」
先生の前に、シミュレーターの管理画面が表示される。
フィールド選択。
制限なし。
全装備使用可能。
四人による完全なバトルロイヤル。
ユウカが端末を確認する。
「同期率正常」
リオも続ける。
「特に問題はないわ」
ヒマリが笑う。
「それでは始めましょうか」
「まだ心の準備が!」
配信画面には、大きな文字が表示された。
『シャーレ最強決定戦』
「誰がタイトル付けたの!?」
『開始まで――10』
「待って!」
『9』
コメント欄は完全にお祭り状態だった。
『ヒナ委員長!』
『ミカ様でしょ!?』
『黒いドレスの子だろ!』
『小さいピンク髪の子に一票』
『全員怪物じゃね?』
『8』
仮想空間に広がる広大な廃都市にそれぞれ向かいあう様に四人が転送される。
臨戦ホシノは愛用の武器を肩へ乗せ。
シロコテラーは静かに銃を構え。
ミカは楽しそうに笑い。
ヒナは長い白髪を風に揺らしながら、ゆっくりと前を見据えた。
『3』
「……もう止まらないか」
先生は諦めた。
『2』
画面の中の四人を見る。
「でもまあ私もちょっと気になるのは本当なんだよね」
ユウカが横から先生を見る。
「楽しそうですね」
「ある意味でね」
『1』
カウントが消える。
『――START』
次の瞬間ほぼ同時に、凄まじい爆音が響き渡った。