実はプライズに関してはもう少し詳細な説明を受けている。
『正倉院に収められているのは、地球外生命体が乗船し不時着したといわれている宇宙船である可能性が高い。より早く宇宙開発の力を合衆国が得るために、なんとしてでも我らの手元にそれがほしいのだ』
貴方の本当の使命は【地球外生命体が搭乗したとされる宇宙船を奪取し、合衆国へ輸送する】ことだ。
またあなたはプライズ【輸送機】を所持しており、ED時にどのような状態であっても日本からは問題なく出国できる。
■輸送機 推奨:プライズ
・設定:
戦果取得・受け渡し不可。
CIAが用意した航空輸送機。
ED時これを手にしているPCは日本を出てアメリカへ行くことができる。
また任意のキャラクターを同乗させることができる。
「不死さん! 無事でしたか!」
「当たり前だろ! だてに長生きしてねーよ」
奈良近辺にある疎開してきた人たちが建てた襤褸小屋の集落。
はぐれた時の合流場所としてそこを選んでいたジョンたちは、無事合流を果たすことができた。
何ならはぐれたはずの不死のほうが先についていたらしく、何やら子供たちと追いかけっこをして遊んでいたようだった。
「どこか怪我などは……無いようですね」
「俺を傷つけられる奴のほうがまれだよ」
『だねー。一応不死ってばこう見えて不死身ボディーなわけだし』
「なるほど……。ん?」
聞き慣れない声が聞こえ、ジョンが首をかしげる。
あたりを見回しても姿は見えない。
「む? お前は」
だがどうやら簪には違う光景が見えているらしく、不死の頭上あたりに視線を固定し、いぶかしげな視線を向けていた。
「簪さん? いったい何が」
「金髪の半透明の女子が不死の頭上に浮いている。妙な力を感じるが」
『うっそ! 簪ってば私見えるの!? うわー! 見える人久々に見た! 前見えた人は江戸時代の人だったからねぇ。よっしーが将軍だったころ』
「よっしー呼ばわりできる将軍結構いるだろ」
警戒していた簪が呆れたような声とともにわずかに力を抜いた。
どうやら怪しい人物ではないらしい。と、ジョンも警戒度を一つ下げる。
……いや半透明の女子という時点で怪しくないか?
『カグヤはねぇ、カグヤって言います! 不死を使って現実世界を見て回っている、なんていえばいいかなぁ……。風来坊? みたいな人です』
「風来坊はたぶん違うと思うぞ……」
「要するに不死さんのご主人様というわけですか」
『そういうことです』
どうやら透明な胸を張っているらしい、何やら自慢げな雰囲気が虚空から流れてくる。
が、やっぱり見えないジョンにはリアクションも難しく、
「とりあえずカグヤさん。お初にお目にかかります。ジョン・カーターと申します」
『はい、こんにちはー!』
「で、なぜ今になって顔出しを?」
『私がいる正倉院が近くなったっていうのもあるんだけど、さっきの襲撃してきた子が私の知り合いで……』
「カグヤさんが正倉院に? それも知り合いが襲撃を?」
何やら事態が混迷してきたらしい。
いったい何がどうなっているのか……カグヤの説明だけでは要領を得なかった。
「わかりましたカグヤさん」
『わかってくれたの!?』
「えぇ、あなたに説明させていてはらちが明かないということがわかりました」
『ひどい!』
しょうがないので、言いたいことは自力で調べることにする。
「さて、カグヤさんお座りください」
『え、あ、はい』
「ご職業は?」
『あ、これガチの尋問だ!』
とはいえ順序だてて説明するにはこれが一番手っ取り早いのもカグヤは悟っていたらしい。
意外とおとなしく、ジョンの詰問に応えてくれる。
そんな中、見えてきた真実は……。
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・カグヤの秘密:
拡散情報
実はカグヤは一度2030年の日本に渡航した経験がある。
その際できた友人に再び会いたくて、月人社会でやるべき仕事をすべて終え地球へと旅立ち――七千九百余年前の日本に不時着してしまった。
友人に会う。ただそれだけの願いを胸に七千年の時を様々な友人を作り駆け抜けたが――第二次世界大戦の折、友人とともに過ごした東京が火の海となり、広島長崎で行われた原爆による大量虐殺に絶望した。
もしかしたら友人の先祖はこの戦いで死んだかもしれない……。
そんな絶望が脳裏をよぎる中……それでも、友人を諦めきれない。
『あの子にまた会いたい』
そう願ったカグヤは、友人に会う一縷の希望をかけ正倉院から飛び出し外に出ることを決意した。
カグヤの本当の使命は【正倉院から外に出て日本で友人に会うための準備を日本で整える】ことだ。
─────────────────────────
「これ……は」
瞬間、ジョンの視界が暗転する。
…†…†…………†…†…
「……こ、こは」
朱鷺が目を開けると、そこは一面の焼け野原だった。
『い、ろ……は』
絶望に染まった声が響く。
振り返ると、そこには茫然と燃える大地を見つめる黄金の髪の少女の姿があった。
「カグヤ様?」
この姿は初めて見る。
いつも不死越しに語り掛けてくれていた、優しく明るい少女の声の本当の姿。
だが、今の少女にいつも感じていた天真爛漫さは感じられなかった。
「うそ、うそ……いやだぁっ。いやだよイロハ……。こんなの、イロハのご先祖様、生きていられるわけ……」
ひざを折り、静かに涙を流しながらうなだれるカグヤ。
その絶望が打ち寄せる波のように押し寄せ、朱鷺の精神を犯していく。
「あぁっ! だめ……。まって、カグヤ様ぁッ!」
私がいる! ずっとそばにいる! どんな恐怖からも、あなたを守って見せるから!
そういいたくて手を伸ばし――朱鷺の視界は暗転した。
…†…†…………†…†…
何も残っていない空襲後の瓦礫の大地。
そこに一人たたずむ花売りの少女に、不死から声を発したカグヤは語りかけた。
『何も……。なくなっちゃったね』
「うん、そうだね」
家族も何もかも、戦争で失ってしまった少女。
普通なら精神が崩壊してもおかしくない現状に、それでも少女は笑って立っていた。
『ねぇ……もう、逃げようよぉ』
「……カグヤ」
涙がにじんだカグヤの声に、困ったように少女は眉尻を下げる。
『もう、ここには何もないじゃん! 何にも、なくなっちゃったじゃん! 残る理由も、こだわる理由もないじゃん!』
「そうだね……」
『だったら、全部忘れて……。なかったことにして……ここから逃げよう? 私も、私も』
「カグヤ……。できもしないこと、言っちゃだめだよ」
『――っ』
「本当にカグヤは、イロハさんのこと忘れられるの? 出会ったときから好きだったって。7000年の時代を駆け抜けた後でも、全然変わってないって言ってたじゃない」
『それ……は』
「私も同じ。どんなにつらい思い出が重なっても。どれだけひどい目にあわされても……母さんや、お父さん。弟たちと過ごして、生きてきたのはここ」
少女はそういい笑いながら振り返った。
「カグヤの忘れられない場所がイロハさんなのと同じように……」
「私には……ここなの」
強い、あまりにも強い少女からの輝きにカグヤの瞳に光が戻る。
「もうちょっとだけ頑張ってみよう。カグヤ! 私もこっから、頑張るからさ!」
…†…†…………†…†…
「強い子でしたね」
同じ光に焼かれたジョンと、涙を流しながらうずくまる朱鷺が最後に残った。
壁の薄い、おんぼろアパートの小さな一室。
二人が最後にたどり着いたのはそこだった。
「つまり、カグヤさんの目的は」
「うん。ごめんねジョンさん。正倉院から出してもらった後、アメリカに行く気は実はないんだ」
「……正倉院に、残ってもくれないのですか」
「……ごめんね、朱鷺ちゃん。イロハに会うためには、正倉院の外でいろいろ準備しないといけないの。国宝になっちゃった私が外に出られるタイミングはもうここしかないかなって」
「そんなの、私が……私がもっと偉くなって」
「朱鷺ちゃん。もうわかっているでしょ? 私が出ていく、もう一つの理由」
カグヤがそういうと、朱鷺の視線がジョンに向く。
「……私たちCIA。もしくは他国の諜報機関ですね」
「うん。なんといっても私ガチの地球外生命体だからねぇ。おまけに宇宙船も、壊れちゃって空は飛べないけど、機能のいくつかは残っている。本物だってバレちゃったら、それこそ敗戦国の日本にどんな無茶を仕掛けて奪いに来ようとするかわかったもんじゃないじゃん」
ひどくシリアスなことを、あっけらかんとカグヤは告げた。
「だから、ずっと守ってきてくれたのはありがたいけど……私もそろそろ潮時。一足先に逃げさせてもらいま~す」
わざとらしく軽い口調でそう言いながら敬礼し、カグヤは舌を出す。
そしてその直後小さな声でつぶやいた。
「恩知らずで、ごめんね?」
「っ!」
瞬間、朱鷺がカグヤに抱きつく。
「Oh……。日本の女性はつつましいと聞いていましたが……意外と大胆ですね」
感心するジョンを無視して朱鷺は叫ぶ。
「そんなこと、言わないでください!」
「朱鷺ちゃん……」
「あなたがどれほどの愛をもって我が国に接してくれていたかは、関係者の皆は心得ています! だから、ずっとあなたをこの国の宝物として守ってきたんです!」
赤いベールを涙で濡らしながら、震える声で思いを告げる。
「今回のことで、あなたのことを恩知らずだとののしる者がいれば、私が……全力で殴ってやります! どれだけ助けられたかも知らないくせにって、泣いて謝るまで殴りつけます! だからっ!」
ずっと言いたかったことを……。
ずっと自分のために言えなかったことを、ようやく口に出すことができた。
「ここからは、日本を見守ってくれなくていいです。あなたのために、生きてください――カグヤ様!」
「――っ」
狭い一室に、二人の少女の泣き声が響き渡った。
…†…†…………†…†…
「うぅ、ごめんね……ジョンさん。恥ずかしい所見せちゃった」
「いいえ。子供が泣く姿はつらいですが、うれし泣きなら私は嫌いではありませんよ」
「……ありがとう。そして、ずうずうしいお願い一ついい?」
「わかっていますよ。正倉院から持ち出した後、あなたをアメリカに連れて帰るなといいたいんでしょう?」
「うっ……。ごめん。聞いてくれる?」
「……はぁっ」
ため息とともに少し頭を掻き、数分考えたのち。
「構いません」
「やっぱだめだよね……。え、いいの!?」
「えぇ。もとよりうちの上司はガセネタの可能性が高いとみていましたし……。まぁそれに」
夢で見た、あの瓦礫の荒野。
友人の親類が消えてしまった恐怖におびえる少女の姿に、さすがのジョンも思うところはあった。
「我々の国は多くの爪痕をこの国に残した。それに関して後悔はありません。戦を仕掛けてきたのはこの国です。我々は振りかかった火の粉を払いのけたにすぎません。ですが……」
ジョンは言葉をきり、帽子を脱ぐ。
胸に帽子を抱えて深々と頭を下げた。
「その爪痕があなたに与えてしまった痛みは、本来あなたが得るべきものではなかったのも事実です……。故国の暴挙によって、その美しい心に傷をつけてしまったこと、合衆国の人間を代表し、謝罪させていただきます」
そして、顔を上げたのち微笑んだ。
「罪滅ぼしにすらならないかもしれませんが、あなたの一世一代の大冒険。私もお手伝いさせてください」
カグヤの願いをかなえる。
そう決意したジョン・カーターの秘密が変更される。
・ジョン・カーターの変更後のの秘密:
ジョン・カーターはカグヤの話を聞きカグヤの願いをかなえたいと願った。
元より自分の祖国が行った空襲や原爆投下で傷ついた彼女を、どうしてこれ以上傷つけられようか。
パールハーバーは満州事変など、日本も相応の所業を行ったがそれとこのカグヤの願いは無関係だ。
なら自分も祖国がカグヤを傷つけた罪滅ぼしとして、カグヤの願いをかなえるべきだろう。
ジョン・カーターの本当の使命は【カグヤを正倉院から奪取し、2030年に友人に会える状態にする】ことに変更される。