筍暗闘   作:過労死志願

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愛の告白

正倉院付近の森の中。その樹上。

正倉院の警備状態を確認するため、ジョンたちはその森に潜伏し正倉院の監視を行っていた。

 

「意外と警邏は多いですね……」

「当然だ。あの中の3割が忍である」

「思ったより多い……」

「あの中には国宝をはじめとした、数千近い異界遺産が眠っているからな。いくつかの隠し保管場所を異界化して迷宮のように空間を広げているが……それでも警備が多いに越したことはない。一つでも持ち出されれば今の世界の法則を乱しかねないものの宝庫だ」

「それに今から我々は挑まないといけないわけですが……」

「宝物本体が奪取に協力してくれる。その現実がなければ某も挑もうとは思わん」

 

 密蔵番であり本来は正倉院を守らねばならない平次郎の言葉に、ジョンは視線を向ける。

 

(本来ならば、彼は私たちの味方になる余地のない方だったはず……。何故、今我らとともに行動しているのか?)

 

 怪しい……。といえば怪しい男なのだ。

 竹を割ったような性格に、小難しい思考をしないであろう態度に隠れているが、腹の内が読めていない唯一の仲間である。

 念のために調べておくに越したことはない。

 

「ん? どうした、ジョン殿」

「いえ、少し……どうしてそこまで私たちにしてくれるのか気になったので」

 

 ジャブのつもりで放った取り調べの始まりを告げる言葉。

 それに対する回答は、あっさりと帰ってきた。

 

「あぁ、そういえば言ってなかったな」

 

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・PC4の秘密:

実はあなたはPC3に惚れている。

そして、同時に今回の一件に関してPC3が並々ならぬ執念を燃やしているのも察していた。

 

なんとしてでも力になって好感度を稼ぎたいところだが……。

またあなたはPC3と互いにプラスの感情を持っていた場合プライズ『愛の告白』を使用することができる。

 

PC4の本当の使命は【PC3の使命を手助けする】ことだ。

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■愛の告白 推奨:プライズ

・設定:

戦果取得・受け渡し不可。

 

シーン終了時かクライマックス終了時に、プライズの使用を宣言できる。

互いにプラスの感情を結んでいる相手を目標にする。

 

このプライズを使用した場合、追加のシーンが発生し(メイン行動はできない)目標としたPCに愛の告白RPができる。

 

目標PCが受け入れた場合、互いの感情を愛情に変更することができる。

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「ふぁぁっ!?」

「なんだその声は……」

「いや、ちょ……えぇ。そんな理由で自分の組織を裏切ったのですか?」

 

 驚きを隠せないジョンの態度に、フンと鼻を鳴らしながら平次郎は言い放った。

 

「愛以上に重たい理由などこの世にはあるまい」

「重たい自覚はあったのですね」

「やかましい!」

 

 やや顔を赤らめ怒鳴ってくる平次郎に、ジョンはしばらく呆れながら……。

 

「まぁ、あなたらしいといえばらしいですね」

「まだ友人になって数日のくせに言うではないか」

「で、これは簪さんには教えるつもりですが朱鷺さんには」

「さすがにこれはこちらから言いたい。あれが終わったら渡してくれ」

「わかりました……。まったく、カグヤさんといいあなたといい……」

 

 たった一人の友人に会うために数千年の時を駆け抜けた少女を思い出しながら笑みを浮かべた。

 

「愛というのはいつでも人を狂わせますね」

「だが今回は悪い狂気ではあるまい」

「……そうですね」

 

 二人がそう笑いあっていると、登っていた木の下から声が聞こえてくる。

 

「おーい、そろそろ交代だぞ」

「あぁ、わかりました簪さん。すぐ降りますね」

 

 こうして、決戦前の緩やかな時間が過ぎていく。

 嵐の前の静けさ……というには、いささか緩い空気は否めないが。

 それがジョンには少しだけ、心地よかった。

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

 わずかに活気の足りない街並みを、平次郎と朱鷺が歩く。

 潜伏先の森の中に、滞在用の物資を運び込むための買い出しにきていた。

 

「食料はこのくらいでいいでしょう。兵糧丸はありますので、最悪なしでも問題ありませんが」

「あるに越したことはなかろう。そして、拠点の近くに川があったのはありがたいな。水浴びなどはそこで済ませるとしよう」

 

 ジョンからもらった手帳の切れ端を眺めながら、二人はそんな会話をし街を歩く。

 顔を隠した身ぎれいな巫女と日本軍の軍服を着た軍人のペアは、いかにも悪目立ちしそうだったが……幸いなことに彼らを気に掛ける人間はいない。

 単純に今日を生きるのでいっぱいいっぱいなのか、それとも二人の卓越した忍としての隠形術のたまものか……どちらが理由かは定かではないが、ともかく二人を邪魔するものは今はいなかった。

 

「それにしても朱鷺殿。つらい決断をなされましたな……」

「いいえ、私の決断なんて。カグヤ様の数千年に比べれば児戯にも等しいものですよ」

「思いの軽重に時は関係ありますまい」

 

 平次郎の言葉に、気の利いたセリフも言えたのかと朱鷺がわずかに瞠目したのがわかる。

 

「朱鷺殿……時折あなたは某を侮っておられるような気がするのですが」

「い、いえ……そんなことは」

「目を見ておっしゃってください。目を」

「いえ、顔を見せるとあなたを殺さざるを得なくなるので……」

「おのれ醜女衆!」

 

 ちなみに比良坂古神道戦闘部隊・醜女衆は素性を知られぬよう顔を隠して活動することが有名である。

 そして、自身の顔を見たものはだれであろうと殺さねばならないおきてがあることでも有名だった……。

 

「昔は愛らしい顔をしておられたのに、今ではそれを拝むことも許されぬとは……」

「む、昔の話は忘れてください。それに」

 

 いたずらっぽい口調で朱鷺は告げた。

 

「今は年を取り、流派の名の通り醜女になっているかもしれませんよ」

「ほう?」

 

 その言葉に少し考えこむそぶりを見せた平次郎。

 彼はその後に、変わらぬ表情で言ってのける。

 

「それは何か重要なのですかな?」

「殿方は奥方の美醜に一喜一憂されるものでしょう?」

「大半の男がそうであるのは否定はせぬが……某が好きになったのは、朱鷺殿ですからな。どんな顔をしておられようが、大した問題はございません」

「また……そんなお世辞……を」

 

 瞬間、朱鷺の動きが固まった。

 自分が何を言われたのかを察したのだろう。

 

「な、あ? へ、平次郎様」

「いかがなされた」

「今あの、私のことを好きだとおっしゃったのですか?」

「左様で」

「それは友人としてとか、仲間として的なあれですよね?」

「あぁ、うーん」

 

 朱鷺の問いかけに平次郎は少し悩んだ後。

 

「……ふむ、ジョン曰く。某の感情は【らいく】ではなく【らぶ】なのだそうですぞ」

「なぁっ!?」

 

 突然の平次郎の告白に、朱鷺は完全にフリーズしてしまった。

 そして、そんな朱鷺を見て平次郎は「少しことを焦りすぎたか……」と申し訳ない気持ちになる。

 そして、素直な自分の心持を告げた。

 

「朱鷺殿。当然、今すぐ答えをくれと某は言わぬ」

「え、いやでも……」

 

 迷っている自分に気を使われたことを察したのだろう。朱鷺はやや焦った様子で、

 

「あなたが私の味方をした理由なんて、十割これでしょう!?」

「無論それに関しては否定せぬが……どんな結果になろうとも、朱鷺殿の願いを助けてやりたいと思ったのは変わらぬ。だがこの場で了承をもらってしまっては、その言葉に信憑性がなくなる。朱鷺殿の願いを人質に、自らの恋心を無理やりかなえたとそしりを受けるのは、某としても不本意だ」

「…………」

 

「ゆえに、すべてが終わって落ち着かれてからの返事で構わぬ。某はいつまでも待とう。なに、カグヤ殿の願いに比べれば数年や数十年の待ち時間など、刹那に等しかろう!」

「……あのお方と比べれば大抵の方はそうなりますよ」

「それもそうであったな! かかかかか!」

 

 大笑する平次郎に少し呆れた顔をした後……。

 

「……平次郎さん」

「ん? 何でござろう?」

「気遣っていただきありがとうございます。先ほど言われた通りすぐには答えは出せませんが……」

 

 ほほを赤らめながら精一杯の返事を返した。

 

「必ず、あなたが納得できる答えを返すと、約束いたします」

「うむ。待っている」

 

 

…†…†…………†…†…

 

 

「ギブミーチョコレート!」

 

 視界の端を走り去っていく米軍のジープの後ろを、子供たちが声を上げながら追いかけている。

 

「チョコレート……ですか?」

「なんだ知らぬのか朱鷺殿?」

 

 聞きなれない言葉に首をかしげる朱鷺に、驚いた顔をした平次郎が尋ねた。

 

「うちはおやつまで純和風でしたから……」

「おやそれはもったいない。チョコのおいしさを知らないとは」

 

 ジョンにそこまで言われるとさすがの朱鷺も少し気になる。

 

「そんなこと気にしても仕方ないでしょう。とはいえ、あの米軍たちはちょうどいいですね」

「というと?」

「ジョンさんたちに横やりを入れてきたという謎のCIA。その人物に手がかりを持っているかもしれません。ちょっと話を聞いてみましょう」

 

 そういうと、朱鷺はするすると走るジープを追い越しそのまま前に飛び出した。

 

「Noooooo!」

「うわぁ……」

 

 大げさに吹っ飛ばされる朱鷺に悲鳴を上げる米軍兵士。

 若干それをかわいそうな目で見るジョンをしり目に、朱鷺は地面を転がり震える手で声を上げた、

 

「ぎ、ぎぶみー、チョコレート」

「Are you hurt!?」

 

 無事かどうか確認してくる米軍兵士たちの足元を、折り紙で作られた鼠がちょろちょろ動き、兵士たちから何かを抜き取っていった。

 

「わ、私はもうダメです……。だから、最後にチョコレートを」

「Chocolate, huh? If that's okay...」

 

 慌てた様子でジープからチョコを持ってくる米兵。

 それからチョコを受け取った瞬間、朱鷺はすぐさま立ち上がり一礼した。

 

「ありがとうございます。では」

「Wow! Oh my gosh!」

 

 轢かれて満身創痍と思った女が平然と立ち上がり走り去っていったのだ。

 米兵の驚きもひとしおだろう。

 

 茫然とした顔で置き去りにされた米兵に同情の視線を向けるジョンをしり目に、朱鷺は持ってきた情報とチョコレートをほおばり驚愕の声を上げる。

 

「あっっっっっっま!」

 

───────────────────

・キャプテンステイツの秘密:

実はキャプテンステイツは焦っている。

対ドイツ向けの諜報作戦が、すべてMI6に横取りされてしまったからだ。

 

第二次世界大戦が終わったのち、彼に残ったのは「役立たずのおいぼれ」という評価だけだった。

上層部がそれとなしに引退を進めてくるのに焦りを覚え、対照的にロゼルタが躍進をするのを妬んだ彼はふと思いつく。

 

そうだ。手柄がないならロゼルタの部下から奪えばいいじゃない。

これで任務に忠実な奴だったら付け入るスキはなかったが、任務を放棄するというのであればまだ言い訳も聞くだろう。

 

キャプテンステイツの本当の使命は【地球外生命体が搭乗したとされる宇宙船を奪取し、合衆国へ輸送する】ことだ。

 

 

 

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