《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第八章
《笑う怪物達》
⸻
ネクロス=カーイン崩壊から、
七日後。
巨大移動要塞艦
《レクイエム・オブ・アッシュ》は、
静かに銀河外縁宙域を航行していた。
⸻
艦内は。
地獄だった。
⸻
「飲メェェェ!!」
「肉持って来ォォイ!!」
「誰ダ机壊シタ奴!!」
「オークです!!」
「オデじゃネェ!!」
⸻
爆笑。
怒号。
歌。
殴り合い。
宴会は未だ続いていた。
⸻
ネヴァーモーンの流儀。
“生き残ったら騒げ”
死んだ仲間の分まで、
笑って飲む。
それが彼らだった。
⸻
第一節
墓標の間
艦の最深部。
そこだけは静かだった。
⸻
巨大な鉄の部屋。
無数のドッグタグ。
折れた武器。
焼け焦げた軍旗。
死んだ仲間達の名前が、
壁一面に刻まれている。
⸻
ヴォルグラムが、
静かに歩いていた。
背中には、
いつもの巨大斧。
だが今日は、
酒臭かった。
⸻
部屋の中央には、
新しく増えた名前。
今回の戦いで死んだ、
ネヴァーモーン兵達。
人間。
オーク。
マリーン。
混沌兵。
デーモン。
種族は違う。
だが。
全員“家族”だった。
⸻
ヴォルグラムは、
墓標へ酒を置く。
⸻
「……悪かったな」
静かな声。
⸻
「でもまぁ」
苦笑する。
⸻
「テメェらのお陰で生き残った」
⸻
数秒の沈黙。
その時。
背後で金属音が響く。
⸻
セトラ=ヴェインだった。
無言で、
墓標を見つめる。
⸻
「……興味深い文化だ」
「死者を覚えているのか」
⸻
ヴォルグラムは鼻を鳴らす。
⸻
「当たり前だろ」
「忘れたら」
酒を飲む。
⸻
「独りになる」
⸻
セトラは沈黙した。
数千万年を生きた王族。
だが。
そんな発想は、
持った事が無かった。
⸻
第二節
新しい家族
医療区画。
若い兵士レオンは、
包帯だらけで寝ていた。
⸻
「いっっってぇ……」
肋骨八本骨折。
左腕火傷。
内臓損傷。
普通なら死んでいる。
だがネヴァーモーンでは、
軽傷扱いだった。
⸻
その時。
扉が開く。
巨大な影。
グラッグだった。
両手に、
大量の肉料理を抱えている。
⸻
「食エ!!」
⸻
「いや無理ですよ量が!!」
⸻
グラッグは真顔で言った。
⸻
「食ワネェト死ヌ」
⸻
「アンタ基準で言わないで下さい!!」
⸻
病室の外で、
人間兵達が笑う。
その時だった。
⸻
警報。
赤色灯。
艦全体が静まり返る。
⸻
【救難信号受信】
【発信源:辺境宙域ラグナ断層】
【帝国難民船団】
⸻
空気が変わる。
宴会が止まる。
笑い声が消える。
⸻
通信士が青ざめる。
⸻
「難民船団が……」
「混沌艦隊に追われています」
⸻
沈黙。
誰かが小さく舌打ちした。
そして。
全員が、
自然に立ち上がる。
⸻
オークが武器を取る。
マリーンが装甲を装着。
デーモン達が笑う。
人間兵が弾薬箱を持つ。
ネクロン達の瞳が点灯。
⸻
レオンが呆然と呟く。
⸻
「……また行くんですか」
⸻
すると。
病室入口に、
ヴォルグラムが立っていた。
⸻
「当たり前だろ」
⸻
ニヤリと笑う。
義眼が赤く光る。
⸻
「家族迎えに行くぞ」
⸻
その一言で。
ネヴァーモーン全軍が、
笑った。
⸻
第三節
出航
巨大艦《レクイエム・オブ・アッシュ》が、
ゆっくり進路を変える。
砲門展開。
ワープ機関始動。
エンジンが唸る。
⸻
艦橋中央。
ヴォルグラムが玉座へ座る。
⸻
「進路」
⸻
「ラグナ断層宙域」
オペレーターが答える。
⸻
「敵数」
⸻
「混沌艦隊二十七隻」
⸻
数秒沈黙。
そして。
ヴォルグラムは、
面倒臭そうに頭を掻いた。
⸻
「……多いな」
⸻
すると。
周囲から笑い声。
⸻
「足りねぇだろ」
「宴会の肴にもならん」
「全部沈めるか」
狂人達だった。
本当に。
⸻
ヴォルグラムは、
ゆっくり立ち上がる。
⸻
巨大斧を担ぐ。
⸻
「総員戦闘配置」
静かな声。
だが。
全員が笑っていた。
⸻
「――家族を迎えに行くぞ」
⸻
その瞬間。
巨大戦艦が、
ワープ空間へ突入する。
銀河の闇へ。
終わらない戦争へ。
それでも。
笑いながら。
⸻
《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第八章 完