《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第十一章
《掃除の時間》
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赤色警報。
火災警報。
減圧警報。
船内各区画から響く絶叫。
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巨大墓標艦
《レクイエム・オブ・アッシュ》は、
今や完全な戦場となっていた。
廊下は血で濡れ。
壁は裂け。
配管から火花が飛び散り。
機関部からは黒煙が立ち昇る。
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ここはもう艦ではない。
巨大な迷宮。
巨大な墓場。
巨大な戦場。
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そして。
その戦場で最も怒っている男が、
ゆっくりと歩き始めた。
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ヴォルグラム・ケイン。
巨大な黒斧。
血塗れの装甲。
赤く燃える義眼。
その姿はもはや人間ではない。
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「団長」
レオンが声を掛ける。
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「俺も行きます」
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ヴォルグラムは振り向いた。
しばらく黙る。
そして。
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「怖ぇか?」
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レオンは少しだけ震えた。
だが。
頷かなかった。
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「……怖いです」
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数秒。
静寂。
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ヴォルグラムは笑った。
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「そうか」
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巨大な手が、
レオンの頭を乱暴に撫でる。
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「なら正常だ」
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そして。
斧を担ぐ。
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「怖くても進め」
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「家族が後ろにいる」
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その言葉に。
レオンはゆっくり頷いた。
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第一節
第七甲板崩壊
第七甲板。
居住区。
そこは既に陥落寸前だった。
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スラーネッシュの狂信兵。
異形デーモン。
融合した混沌生物。
数百。
数千。
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『痛みを』
『愛を』
『快楽を』
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狂った歌声が響く。
負傷兵達は避難中。
避難民は泣き叫び。
看護兵達は最後の防衛線を築いていた。
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「弾切れだ!!」
「左通路突破された!!」
「駄目です!!」
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絶望。
その時だった。
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ズガァァァァァン!!!
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隔壁が吹き飛ぶ。
煙。
火花。
瓦礫。
その中から。
巨大な影が歩いてきた。
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ヴォルグラム。
その後ろには。
レオン。
数十名の人間兵。
そして。
オーク達。
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「……遅ぇぞ団長!!」
負傷兵達が叫ぶ。
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ヴォルグラムは肩を竦める。
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「飯食ってた」
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「嘘つけ!!」
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その瞬間。
敵軍が襲い掛かる。
数百。
狂気の波。
だが。
ヴォルグラムは斧を構えない。
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代わりに。
静かに言った。
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「レオン」
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「はい」
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「やれ」
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若い兵士は驚いた。
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「え?」
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ヴォルグラムは笑う。
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「家族守りたいんだろ?」
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レオンの手が震える。
銃を握る。
怖い。
足が動かない。
だが。
背後を見る。
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避難民。
負傷兵。
泣いている子供。
仲間達。
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レオンは。
ゆっくり前へ出た。
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「……ネヴァーモーン」
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銃を構える。
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「前進!!」
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発砲。
敵が倒れる。
そして。
人間兵達が続いた。
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「突撃!!」
「押し返せ!!」
「ここは家だ!!」
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その瞬間。
ヴォルグラムは笑った。
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第二節
鉄と酒と骸骨
食堂。
そこはもはや戦場ではない。
戦争そのものだった。
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オーク達が暴れ。
酒樽が飛び。
机が武器になり。
敵兵が壁に叩き付けられる。
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グラッグは。
巨大な敵デーモンを片手で持ち上げていた。
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「酒飲ムカ?」
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『グァァァァ!!』
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「飲マネェノカ」
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ドガァァァァン!!
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敵が床へめり込む。
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その時。
壁を突き破り。
新たな怪物が現れる。
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全高四メートル。
六本腕。
快楽神の上級悪魔。
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空気が変わる。
オーク達が武器を握る。
だが。
その前に。
緑色の光。
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セトラだった。
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「下がれ」
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「骸骨?」
グラッグが首を傾げる。
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セトラは静かに杖を向けた。
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「この程度」
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空間が歪む。
敵悪魔の身体が崩壊。
一瞬で消滅。
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食堂が静まる。
グラッグが数秒見つめ。
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「スゲェ」
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セトラが振り返る。
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「……そうか」
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その瞬間。
グラッグが酒樽を押し付けた。
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「飲メ」
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「私は機械だ」
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「細ケェ」
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周囲が爆笑する。
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第三節
医療区画の子供達
医療区画。
子供達は怯えていた。
泣き声。
震える肩。
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その中に。
以前救出された少女がいた。
ヴァル=シグマの生存者。
名前はエルナ。
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「お姉ちゃん」
幼い少年が泣く。
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「また怪物来る?」
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エルナは窓を見る。
外では。
砲撃。
火災。
戦争。
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だが。
彼女は笑った。
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「大丈夫」
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「なんで?」
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少女は答える。
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「だって」
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遠くから。
オークの笑い声。
人間兵の怒鳴り声。
マリーンの銃声。
ヴォルグラムの怒号。
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「家族がいるから」
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子供達は黙った。
そして。
少しだけ笑った。
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第四節
敵旗艦
その頃。
敵旗艦《歓喜の聖堂》。
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玉座の上で。
敵指揮官が笑っていた。
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両性具有。
白い肌。
長い髪。
紫色の瞳。
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混沌の王子。
快楽神の寵愛を受けた怪物。
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『面白い』
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『あの男は欲しい』
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『苦しませたい』
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『壊したい』
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その瞬間。
艦橋が揺れる。
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ドゴォォォォォン!!!
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警報。
絶叫。
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『なに?』
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通信兵が叫ぶ。
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「敵艦接舷!!」
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混沌兵達が驚く。
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「どこから!?」
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モニターに映る。
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巨大な黒い艦。
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《レクイエム・オブ・アッシュ》。
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そして。
艦首が。
敵旗艦へ。
真正面から突っ込んでいた。
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「正面衝突だァァァ!!」
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艦橋が揺れる。
敵兵が転倒する。
瓦礫。
煙。
炎。
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そして。
裂けた船体の向こう。
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黒い巨人が立っていた。
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ヴォルグラム。
その後ろには。
グラッグ。
セトラ。
マルケウス。
レオン。
ネヴァーモーン。
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全員。
血塗れ。
ボロボロ。
だが。
笑っていた。
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ヴォルグラムは巨大斧を担ぐ。
そして。
敵指揮官を見上げた。
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数秒の沈黙。
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そして。
いつものように。
少し面倒臭そうに。
こう言った。
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「……テメェ」
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義眼が赤く光る。
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「ウチの家、汚したな?」
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艦橋の空気が凍った。
混沌兵達が後退する。
快楽の王子が。
初めて笑みを消した。
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ネヴァーモーン。
最悪の家族達。
その逆襲が。
今。
始まる。
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《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第十一章 完