禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第17話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第十五章

 

《家族の地獄》

 

 

敵旗艦《歓喜の聖堂》。

 

艦橋。

 

数時間前まで快楽神の信徒達が歌い、

狂気の宴を開いていたその場所は、

今や血と炎に満ちた墓場へ変わっていた。

 

紫色の炎が燃える。

 

崩壊した天井。

 

転がる死体。

 

割れた玉座。

 

悲鳴。

 

蒸気。

 

そして。

 

その中央で。

 

快楽の王子は、

初めて恐怖という感情を知っていた。

 

 

目の前には。

 

ヴォルグラム。

 

グラッグ。

 

マルケウス。

 

セトラ。

 

リリス。

 

カイウス。

 

ドッグ・ハント。

 

レオン。

 

そしてネヴァーモーン。

 

 

オーク。

 

人間。

 

ネクロン。

 

マリーン。

 

デーモン。

 

混沌種。

 

本来なら決して共存しない者達。

 

だが。

 

彼らは笑っていた。

 

 

「……化物共め……」

 

快楽の王子が呟く。

 

 

ドッグ・ハントが帽子を押し上げた。

 

 

「違うな。」

 

煙草を噛み潰す。

 

 

「ただの家族だ。」

 

 

第一節

 

人間の戦場

 

快楽の王子が腕を振る。

 

その瞬間。

 

数百の狂信兵が現れる。

 

肉。

 

刃。

 

絶叫。

 

香。

 

快楽。

 

狂気。

 

 

「来るぞ!!」

 

レオンが叫ぶ。

 

 

だが。

 

ドッグは前へ出た。

 

拳銃三発。

 

ナイフ一本。

 

それだけ。

 

 

「隊長!!」

 

部下が叫ぶ。

 

 

「生身の人間は下がれ!!」

 

 

ドッグは笑った。

 

 

「馬鹿言え。」

 

 

「人間だから戦うんだろ。」

 

 

敵が突撃する。

 

ドッグは撃つ。

 

一発。

 

二発。

 

三発。

 

全弾命中。

 

 

弾切れ。

 

 

その瞬間。

 

ナイフを抜く。

 

肉を裂く。

 

首を切る。

 

敵の武器を奪う。

 

殴る。

 

蹴る。

 

撃つ。

 

 

周囲の傭兵達も続く。

 

 

「隊長について行け!!」

 

 

「ネヴァーモーン前進!!」

 

 

ただの人間達が。

 

怪物の群れへ突撃した。

 

 

レオンは気付く。

 

 

オークも。

 

ネクロンも。

 

デーモンも。

 

確かに強い。

 

だが。

 

 

最も諦めないのは。

 

この生身の人間達なのだと。

 

 

第二節

 

骸骨と悪魔

 

その頃。

 

左翼戦線。

 

 

巨大悪魔が現れる。

 

高さ八メートル。

 

六本腕。

 

紫色の翼。

 

 

リリスが笑う。

 

 

「あら。」

 

 

「少し大きいわね。」

 

 

セトラが隣へ立つ。

 

 

「排除する。」

 

 

リリスが笑う。

 

 

「一緒に?」

 

 

「……仕方ない。」

 

 

悪魔と骸骨。

 

本来なら敵。

 

永遠の仇。

 

 

しかし。

 

今は違う。

 

 

悪魔の炎。

 

ネクロンの光。

 

二つの力が重なる。

 

 

巨大悪魔が咆哮する。

 

 

その瞬間。

 

セトラの光線が脚部を切断。

 

リリスの炎が胸を焼く。

 

 

爆発。

 

 

オーク達が歓声を上げる。

 

 

「骸骨ト悪魔ガ仲良シダ!!」

 

 

セトラが少しだけ黙る。

 

 

「……仲良くはない。」

 

 

リリスが笑う。

 

 

「そういう事にしておきましょう。」

 

 

第三節

 

鋼鉄の兄弟達

 

右翼。

 

カイウスとマリーン達。

 

 

重装歩兵。

 

パワーアーマー。

 

ボルトライフル。

 

 

敵は快楽神の精鋭兵。

 

 

だが。

 

カイウスは止まらない。

 

 

「押し返せ。」

 

 

「ここは家だ。」

 

 

その言葉だけで。

 

マリーン達が前進する。

 

 

ボルト弾。

 

爆発。

 

血。

 

肉片。

 

 

ある若いマリーンが倒れる。

 

敵が迫る。

 

その時。

 

 

グラッグが飛び込む。

 

 

「死ヌナ。」

 

 

巨大ハンマー。

 

敵を粉砕。

 

 

若いマリーンが呆然とする。

 

 

「……スマン」

 

 

グラッグが首を傾げる。

 

 

「家族ダロ?」

 

 

その一言に。

 

若い戦士は笑った。

 

 

第四節

 

王子の恐怖

 

艦橋中央。

 

快楽の王子は後退していた。

 

 

『何故だ。』

 

 

『何故壊れない。』

 

 

『何故笑う。』

 

 

その前へ。

 

ヴォルグラム。

 

ドッグ。

 

マルケウス。

 

三人が並ぶ。

 

 

怪物。

 

狂人。

 

人間。

 

 

奇妙な三人。

 

 

ドッグが煙草を投げ捨てる。

 

 

「団長。」

 

 

「俺が先に行く。」

 

 

ヴォルグラムが眉を上げる。

 

 

「死ぬぞ。」

 

 

ドッグは笑う。

 

 

「人間だからな。」

 

 

「いつか死ぬ。」

 

 

少しだけ静かになる。

 

 

そして。

 

ドッグは前へ出た。

 

 

「だがよ。」

 

 

帽子を深く被る。

 

 

「家族の前では格好つけたい。」

 

 

快楽の王子が咆哮する。

 

精神攻撃。

 

幻覚。

 

絶望。

 

 

だが。

 

ドッグは止まらない。

 

 

恐怖で足が震える。

 

汗が流れる。

 

呼吸が苦しい。

 

 

それでも。

 

前へ。

 

 

レオンが震えながら呟く。

 

 

「……すげぇ……」

 

 

ヴォルグラムが笑った。

 

 

「ウチの人間共は頑丈だろ。」

 

 

第五節

 

家族

 

快楽の王子が叫ぶ。

 

 

『理解出来ない!!』

 

 

『何故そこまで!!』

 

 

『何故そこまで他人のために!!』

 

 

静寂。

 

 

ヴォルグラムが答える。

 

 

「他人じゃねぇ。」

 

 

グラッグが言う。

 

 

「家族ダ。」

 

 

リリスが笑う。

 

 

「帰る場所よ。」

 

 

セトラが静かに言う。

 

 

「私の居場所だ。」

 

 

カイウスが剣を握る。

 

 

「兄弟達だ。」

 

 

ドッグが笑う。

 

 

「飲み仲間だ。」

 

 

レオンが涙を拭う。

 

 

「俺の家です。」

 

 

快楽の王子は。

 

理解出来なかった。

 

 

何万年生きても。

 

何百万の魂を味わっても。

 

決して得られなかったもの。

 

 

それが。

 

目の前にあった。

 

 

ヴォルグラムが巨大斧を構える。

 

 

「行くぞ。」

 

 

ネヴァーモーン全員が武器を握る。

 

 

銀河最悪。

 

銀河最狂。

 

銀河で最も狂った家族。

 

 

その全員が。

 

最後の一歩を踏み出した。

 

 

そして。

 

快楽の王子へ向かって。

 

地獄そのものが動き始めた。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第十五章 完

 

――続く――

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