《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第十七章
《外道ではない》
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敵旗艦《歓喜の聖堂》。
艦橋。
崩壊した玉座。
燃え続ける紫炎。
砕けた柱。
血に濡れた床。
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快楽の王子は、
初めて理解していた。
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自分は追い詰められている。
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周囲を見渡す。
逃げ道はない。
親衛隊はいない。
艦隊は壊滅。
悪魔達も死んだ。
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残ったのは。
自分一人。
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そして。
目の前には。
銀河最悪の傭兵部隊。
ネヴァーモーン。
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オーク。
ネクロン。
マリーン。
デーモン。
混沌種。
人間。
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本来なら決して共存しない怪物達。
だが。
その全員が。
静かに武器を構えていた。
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その時。
ドッグ・ハントが、
ゆっくり前へ出る。
帽子を深く被る。
血塗れのコート。
弾切れの拳銃。
傷だらけの顔。
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静かな声だった。
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「安心しな。」
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誰も喋らない。
艦橋全体が静まり返る。
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ドッグは煙草を噛み潰した。
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「化け物ども。」
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快楽の王子が睨む。
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「俺達はイカれてる。」
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背後を振り返る。
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グラッグがいる。
マルケウスがいる。
セトラがいる。
リリスがいる。
カイウスがいる。
ヴォルグラムがいる。
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そして。
血塗れの家族達。
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「だが。」
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静かな声。
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「外道じゃねぇ。」
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その一言に。
ネヴァーモーン全員が黙った。
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ドッグはゆっくり歩く。
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「楽に終わらせてやる。」
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「死んだうちの家族の仇だ。」
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帽子を上げる。
その瞳に宿るのは。
怒りだった。
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「容赦しないがな。」
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数秒。
沈黙。
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快楽の王子は、
初めてその言葉を理解できなかった。
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何故。
ここまで怒る。
何故。
そこまで死者を想う。
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セトラが静かに言う。
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「彼らは忘れない。」
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グラッグがハンマーを担ぐ。
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「仲間ハ家族ダ。」
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カイウスが剣を握る。
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「死んでも兄弟だ。」
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リリスが微笑む。
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「だから怒っているのよ。」
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マルケウスが笑う。
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「ウチは執念深い。」
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そして。
ヴォルグラムが前へ出る。
巨大斧。
血塗れの装甲。
赤く燃える義眼。
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快楽の王子が震える。
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『何故だ……』
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『何故そこまで……』
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ヴォルグラムは少しだけ考えた。
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そして。
静かに答える。
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「簡単だ。」
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後ろを見る。
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傷付いた家族達。
生き残った者。
死んでいった者。
全員の顔を思い出す。
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「俺達は。」
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「あいつらの分まで生きてる。」
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その瞬間。
レオンが前へ出た。
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若い人間兵。
恐怖に震えていた少年。
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だが。
今は違う。
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「……俺も。」
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銃を握る。
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「俺も撃ちます。」
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ドッグが笑う。
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「一人前だな。」
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その時。
ヴォルグラムが斧を肩へ担いだ。
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そして。
全員へ向けて。
ゆっくりと言う。
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「やれ。」
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その瞬間。
ネヴァーモーンが動いた。
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グラッグが吼える。
マルケウスが突撃する。
リリスの炎が舞う。
セトラの光が走る。
カイウスが剣を振るう。
混沌種達が咆哮する。
人間達が前進する。
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そして。
その先頭を歩くのは。
ただの人間。
ドッグ・ハント。
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銀河は怪物で溢れている。
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だが。
怪物と外道は違う。
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ネヴァーモーンは狂っている。
イカれている。
戦争を愛している。
酒を愛している。
戦場を笑う。
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それでも。
家族を傷付ける者だけは。
決して許さない。
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その日。
《歓喜の聖堂》の艦橋で。
快楽の王子が見た最後の光景は。
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笑いながら進む。
血塗れの家族達だった。
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《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第十七章 完
――続く――