《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第十八章
《血の宴》
⸻
敵旗艦《歓喜の聖堂》。
崩壊した艦橋。
炎。
煙。
紫色の瘴気。
血。
肉片。
死体。
そして。
その中央に立つ快楽の王子。
⸻
周囲を。
ネヴァーモーン全軍が包囲していた。
⸻
誰も喋らない。
誰も笑わない。
先程まで騒いでいたオーク達ですら、
静かだった。
⸻
なぜなら。
ここにいる全員が覚えている。
死んだ仲間達。
負傷した兵士。
燃えた居住区。
泣いていた子供達。
⸻
その全ての原因が。
目の前にいた。
⸻
ヴォルグラムが静かに言う。
⸻
「やれ。」
⸻
その瞬間だった。
⸻
グラッグ
最初に動いたのは。
オーク。
グラッグだった。
⸻
「オオオオオオオ!!」
⸻
巨大な筋肉が膨れ上がる。
床が割れる。
鋼鉄の甲板が陥没する。
巨大ハンマーを振り上げ。
まるで砲弾のような速度で突撃した。
⸻
快楽の王子が腕を振る。
紫色の衝撃波。
空気そのものが裂ける。
⸻
ドガァァァン!!
⸻
グラッグの身体が吹き飛ぶ。
数十メートル。
壁へ激突。
鉄骨が折れる。
⸻
しかし。
止まらない。
⸻
血だらけの顔で笑う。
⸻
「痛ェナ!!」
⸻
再び突撃。
ハンマーが横薙ぎに振るわれる。
⸻
轟音。
⸻
快楽の王子が受け止める。
しかし。
床が砕ける。
艦橋全体が揺れる。
⸻
「家族泣カセタナ!!」
⸻
さらに。
二撃。
三撃。
四撃。
⸻
まるで攻城兵器だった。
⸻
カイウス
その隙。
鋼鉄の巨人が動く。
⸻
カイウス。
⸻
パワーアーマーの駆動音。
ボルトピストル。
巨大なパワーソード。
⸻
「右から行く。」
⸻
マリーン達が展開。
銃撃。
爆発。
閃光。
⸻
快楽の王子が幻覚を放つ。
甘い声。
苦痛。
快楽。
精神汚染。
⸻
若い兵士が膝をつく。
⸻
しかし。
カイウスが肩を掴む。
⸻
「見るな。」
⸻
「前だけ見ろ。」
⸻
次の瞬間。
パワーソードが唸る。
⸻
ズガァァァァァ!!
⸻
紫色の腕が切断される。
血ではない。
光が飛び散る。
⸻
王子が絶叫した。
⸻
リリス
紫炎が舞う。
⸻
リリス=ヴァール。
⸻
悪魔の翼。
赤い瞳。
黒い炎。
⸻
彼女はゆっくり歩く。
まるで舞踏会のように。
⸻
「痛い?」
⸻
指先から黒炎が広がる。
⸻
炎が。
快楽の王子の足を焼く。
⸻
『ァァァァ!!』
⸻
「うちの子達はもっと痛かったわ。」
⸻
炎が増す。
紫の肉体が崩れていく。
⸻
その笑顔は優しい。
しかし。
瞳だけは冷たかった。
⸻
セトラ
静寂。
⸻
緑色の光。
⸻
セトラが前へ出る。
⸻
「終了する。」
⸻
杖を掲げる。
古代ネクロン文字が浮かぶ。
空間が歪む。
時間が軋む。
⸻
快楽の王子の身体の一部が消滅する。
⸻
『何だ……その力は……』
⸻
「文明だ。」
⸻
短い言葉。
そして。
再び光。
⸻
腕が消える。
肩が消える。
肉体が削られる。
⸻
まるで存在そのものを否定する攻撃だった。
⸻
マルケウス
そして。
狂人が笑う。
⸻
マルケウス。
⸻
チェインソード起動。
血まみれ。
片目から流血。
⸻
「隊長だけ楽させるなってな。」
⸻
その背後。
混沌種部隊。
ガルム。
部下達。
⸻
全員突撃。
⸻
「うおおおお!!」
⸻
「ぶっ殺せ!!」
⸻
「家族の仇だ!!」
⸻
斧。
剣。
銃。
拳。
牙。
⸻
快楽の王子へ殺到する。
⸻
何百もの刃。
⸻
王子は必死に抵抗する。
しかし。
止まらない。
⸻
ネヴァーモーンは。
一度怒ると止まらない。
⸻
ドッグ・ハント
その時。
一人の人間が歩く。
⸻
ドッグ・ハント。
⸻
弾はない。
ナイフも折れた。
拳だけ。
⸻
快楽の王子が笑う。
⸻
『人間が何を――』
⸻
ドッグは答えない。
⸻
ただ。
静かに歩く。
⸻
後ろには。
若い傭兵達。
レオン。
一般兵。
傷付いた仲間達。
⸻
ドッグが拳を握る。
⸻
「お前。」
⸻
王子が見る。
⸻
「死んだ奴の顔。」
⸻
「覚えてるか?」
⸻
沈黙。
⸻
「覚えてねぇだろ。」
⸻
次の瞬間。
⸻
ドガァァァ!!
⸻
人間の拳が。
快楽の王子の顔面を殴り飛ばした。
⸻
全員が驚く。
⸻
「これは。」
⸻
もう一発。
⸻
「死んだ家族の分。」
⸻
さらに。
⸻
「怪我した奴の分。」
⸻
さらに。
⸻
「泣いたガキの分。」
⸻
王子の顔面が砕ける。
⸻
「最後に。」
⸻
ドッグは笑う。
⸻
「俺達の分だ。」
⸻
渾身の拳。
⸻
王子が吹き飛ぶ。
玉座へ激突。
⸻
瓦礫。
炎。
崩壊。
⸻
そして。
静寂。
⸻
ヴォルグラム
最後に。
ヴォルグラムが歩く。
⸻
巨大斧。
赤い義眼。
血塗れの装甲。
⸻
快楽の王子は立ち上がれない。
⸻
『なぜ……』
⸻
『なぜここまで……』
⸻
ヴォルグラムは答える。
⸻
「家族だからだ。」
⸻
王子の目が揺れる。
⸻
「……理解できねぇか?」
⸻
斧を掲げる。
⸻
「なら。」
⸻
義眼が赤く燃える。
⸻
「地獄でゆっくり考えろ。」
⸻
巨大な斧が振り下ろされる。
⸻
轟音。
⸻
艦橋が割れる。
炎が吹き上がる。
紫色の光が消える。
⸻
そして。
長かった戦いは。
ついに終わった。
⸻
誰も喋らない。
⸻
しばらくして。
グラッグが言った。
⸻
「……腹減ッタ。」
⸻
ドッグが笑う。
⸻
「俺もだ。」
⸻
マルケウスが肩を竦める。
⸻
「酒あるか?」
⸻
リリスが微笑む。
⸻
「たくさんあるわ。」
⸻
カイウスが剣を収める。
⸻
「帰るぞ。」
⸻
セトラが静かに頷く。
⸻
「家へ。」
⸻
そして。
ヴォルグラムが振り返った。
⸻
血塗れの家族達。
傷だらけの仲間達。
それでも。
全員生きている。
⸻
「……帰って飲むぞ。」
⸻
その言葉に。
艦橋全体が笑いに包まれた。
⸻
銀河最悪。
銀河最狂。
銀河最強の傭兵団。
⸻
その名は。
⸻
NEVERMOURN
⸻
家族を傷付ける者にとって。
彼らこそが。
本当の地獄だった。
⸻
《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第十八章 完
――続く――