禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

20 / 39
第20話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第十八章

 

《血の宴》

 

 

敵旗艦《歓喜の聖堂》。

 

崩壊した艦橋。

 

炎。

 

煙。

 

紫色の瘴気。

 

血。

 

肉片。

 

死体。

 

そして。

 

その中央に立つ快楽の王子。

 

 

周囲を。

 

ネヴァーモーン全軍が包囲していた。

 

 

誰も喋らない。

 

誰も笑わない。

 

先程まで騒いでいたオーク達ですら、

静かだった。

 

 

なぜなら。

 

ここにいる全員が覚えている。

 

死んだ仲間達。

 

負傷した兵士。

 

燃えた居住区。

 

泣いていた子供達。

 

 

その全ての原因が。

 

目の前にいた。

 

 

ヴォルグラムが静かに言う。

 

 

「やれ。」

 

 

その瞬間だった。

 

 

グラッグ

 

最初に動いたのは。

 

オーク。

 

グラッグだった。

 

 

「オオオオオオオ!!」

 

 

巨大な筋肉が膨れ上がる。

 

床が割れる。

 

鋼鉄の甲板が陥没する。

 

巨大ハンマーを振り上げ。

 

まるで砲弾のような速度で突撃した。

 

 

快楽の王子が腕を振る。

 

紫色の衝撃波。

 

空気そのものが裂ける。

 

 

ドガァァァン!!

 

 

グラッグの身体が吹き飛ぶ。

 

数十メートル。

 

壁へ激突。

 

鉄骨が折れる。

 

 

しかし。

 

止まらない。

 

 

血だらけの顔で笑う。

 

 

「痛ェナ!!」

 

 

再び突撃。

 

ハンマーが横薙ぎに振るわれる。

 

 

轟音。

 

 

快楽の王子が受け止める。

 

しかし。

 

床が砕ける。

 

艦橋全体が揺れる。

 

 

「家族泣カセタナ!!」

 

 

さらに。

 

二撃。

 

三撃。

 

四撃。

 

 

まるで攻城兵器だった。

 

 

カイウス

 

その隙。

 

鋼鉄の巨人が動く。

 

 

カイウス。

 

 

パワーアーマーの駆動音。

 

ボルトピストル。

 

巨大なパワーソード。

 

 

「右から行く。」

 

 

マリーン達が展開。

 

銃撃。

 

爆発。

 

閃光。

 

 

快楽の王子が幻覚を放つ。

 

甘い声。

 

苦痛。

 

快楽。

 

精神汚染。

 

 

若い兵士が膝をつく。

 

 

しかし。

 

カイウスが肩を掴む。

 

 

「見るな。」

 

 

「前だけ見ろ。」

 

 

次の瞬間。

 

パワーソードが唸る。

 

 

ズガァァァァァ!!

 

 

紫色の腕が切断される。

 

血ではない。

 

光が飛び散る。

 

 

王子が絶叫した。

 

 

リリス

 

紫炎が舞う。

 

 

リリス=ヴァール。

 

 

悪魔の翼。

 

赤い瞳。

 

黒い炎。

 

 

彼女はゆっくり歩く。

 

まるで舞踏会のように。

 

 

「痛い?」

 

 

指先から黒炎が広がる。

 

 

炎が。

 

快楽の王子の足を焼く。

 

 

『ァァァァ!!』

 

 

「うちの子達はもっと痛かったわ。」

 

 

炎が増す。

 

紫の肉体が崩れていく。

 

 

その笑顔は優しい。

 

しかし。

 

瞳だけは冷たかった。

 

 

セトラ

 

静寂。

 

 

緑色の光。

 

 

セトラが前へ出る。

 

 

「終了する。」

 

 

杖を掲げる。

 

古代ネクロン文字が浮かぶ。

 

空間が歪む。

 

時間が軋む。

 

 

快楽の王子の身体の一部が消滅する。

 

 

『何だ……その力は……』

 

 

「文明だ。」

 

 

短い言葉。

 

そして。

 

再び光。

 

 

腕が消える。

 

肩が消える。

 

肉体が削られる。

 

 

まるで存在そのものを否定する攻撃だった。

 

 

マルケウス

 

そして。

 

狂人が笑う。

 

 

マルケウス。

 

 

チェインソード起動。

 

血まみれ。

 

片目から流血。

 

 

「隊長だけ楽させるなってな。」

 

 

その背後。

 

混沌種部隊。

 

ガルム。

 

部下達。

 

 

全員突撃。

 

 

「うおおおお!!」

 

 

「ぶっ殺せ!!」

 

 

「家族の仇だ!!」

 

 

斧。

 

剣。

 

銃。

 

拳。

 

牙。

 

 

快楽の王子へ殺到する。

 

 

何百もの刃。

 

 

王子は必死に抵抗する。

 

しかし。

 

止まらない。

 

 

ネヴァーモーンは。

 

一度怒ると止まらない。

 

 

ドッグ・ハント

 

その時。

 

一人の人間が歩く。

 

 

ドッグ・ハント。

 

 

弾はない。

 

ナイフも折れた。

 

拳だけ。

 

 

快楽の王子が笑う。

 

 

『人間が何を――』

 

 

ドッグは答えない。

 

 

ただ。

 

静かに歩く。

 

 

後ろには。

 

若い傭兵達。

 

レオン。

 

一般兵。

 

傷付いた仲間達。

 

 

ドッグが拳を握る。

 

 

「お前。」

 

 

王子が見る。

 

 

「死んだ奴の顔。」

 

 

「覚えてるか?」

 

 

沈黙。

 

 

「覚えてねぇだろ。」

 

 

次の瞬間。

 

 

ドガァァァ!!

 

 

人間の拳が。

 

快楽の王子の顔面を殴り飛ばした。

 

 

全員が驚く。

 

 

「これは。」

 

 

もう一発。

 

 

「死んだ家族の分。」

 

 

さらに。

 

 

「怪我した奴の分。」

 

 

さらに。

 

 

「泣いたガキの分。」

 

 

王子の顔面が砕ける。

 

 

「最後に。」

 

 

ドッグは笑う。

 

 

「俺達の分だ。」

 

 

渾身の拳。

 

 

王子が吹き飛ぶ。

 

玉座へ激突。

 

 

瓦礫。

 

炎。

 

崩壊。

 

 

そして。

 

静寂。

 

 

ヴォルグラム

 

最後に。

 

ヴォルグラムが歩く。

 

 

巨大斧。

 

赤い義眼。

 

血塗れの装甲。

 

 

快楽の王子は立ち上がれない。

 

 

『なぜ……』

 

 

『なぜここまで……』

 

 

ヴォルグラムは答える。

 

 

「家族だからだ。」

 

 

王子の目が揺れる。

 

 

「……理解できねぇか?」

 

 

斧を掲げる。

 

 

「なら。」

 

 

義眼が赤く燃える。

 

 

「地獄でゆっくり考えろ。」

 

 

巨大な斧が振り下ろされる。

 

 

轟音。

 

 

艦橋が割れる。

 

炎が吹き上がる。

 

紫色の光が消える。

 

 

そして。

 

長かった戦いは。

 

ついに終わった。

 

 

誰も喋らない。

 

 

しばらくして。

 

グラッグが言った。

 

 

「……腹減ッタ。」

 

 

ドッグが笑う。

 

 

「俺もだ。」

 

 

マルケウスが肩を竦める。

 

 

「酒あるか?」

 

 

リリスが微笑む。

 

 

「たくさんあるわ。」

 

 

カイウスが剣を収める。

 

 

「帰るぞ。」

 

 

セトラが静かに頷く。

 

 

「家へ。」

 

 

そして。

 

ヴォルグラムが振り返った。

 

 

血塗れの家族達。

 

傷だらけの仲間達。

 

それでも。

 

全員生きている。

 

 

「……帰って飲むぞ。」

 

 

その言葉に。

 

艦橋全体が笑いに包まれた。

 

 

銀河最悪。

 

銀河最狂。

 

銀河最強の傭兵団。

 

 

その名は。

 

 

NEVERMOURN

 

 

家族を傷付ける者にとって。

 

彼らこそが。

 

本当の地獄だった。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第十八章 完

 

――続く――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。