《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第二十章
《帰還する者達》
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戦いは終わった。
《歓喜の聖堂》は燃えていた。
紫色の炎が宇宙空間へ漏れ出し、
巨大な敵旗艦はゆっくりと崩壊を始めている。
無数の破片。
漂う残骸。
冷たい星々。
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その中心から。
巨大墓標艦。
《レクイエム・オブ・アッシュ》が静かに離脱していく。
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もはや砲撃はない。
敵艦隊は存在しない。
混沌の軍勢も消えた。
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ただ。
無数の死だけが残された。
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艦橋。
ヴォルグラムは最後に戦場を見ていた。
巨大な窓の向こう。
燃える敵旗艦。
散らばる味方の残骸。
無数の命が失われた場所。
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ドッグが隣へ来る。
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「終わったな。」
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ヴォルグラムは答えない。
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しばらくして。
小さく言った。
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「ああ。」
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「帰る。」
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それだけだった。
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第一節
《全員帰還》
《レクイエム・オブ・アッシュ》内部。
巨大格納庫。
普段なら。
オーク達が酒を飲み。
人間達が笑い。
子供達が走り回る。
そんな場所。
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だが。
今は違った。
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数百の担架。
数千の負傷者。
白い布。
並べられた遺体。
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誰一人として。
置いてこなかった。
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若い人間兵。
老いた傭兵。
オーク。
混沌種。
マリーン。
ネクロンに付き従った機械兵。
デーモン。
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全員が帰ってきた。
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生きている者も。
死んだ者も。
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それがネヴァーモーンだった。
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レオンは震える手で、
一人の兵士の名札を外していた。
まだ若い。
昨日まで笑っていた男。
食堂で酒を飲み。
くだらない話をしていた。
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「帰ろう。」
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その言葉だけが口から出た。
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第二節
《埋葬》
ネヴァーモーンには。
墓地がある。
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艦内深部。
巨大な礼拝堂。
無数の名前が刻まれた壁。
静かな炎。
金属の床。
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戦死者達はそこへ運ばれていく。
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しかし。
その作業を行う者達も。
傷だらけだった。
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腕を失ったオーク。
腹を貫かれた人間兵。
肩を砕かれた混沌種。
重傷のマリーン。
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医療班が叫ぶ。
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「治療を優先しろ!!」
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だが。
誰も従わない。
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「後だ。」
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「先にあいつを寝かせる。」
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「あいつ寒がりなんだ。」
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「置いていけるか。」
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血が床へ落ちる。
包帯が赤く染まる。
呼吸は苦しい。
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それでも。
誰も手を止めない。
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優しい手で。
家族を運ぶ。
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グラッグが巨大なオークの遺体を抱えていた。
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「重イナ。」
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しかし。
その声は震えている。
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「酒……飲ム約束ダッタ……」
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誰も笑わない。
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カイウスは、
戦死したマリーンの剣を磨いている。
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「よく戦った。」
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ただそれだけ。
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リリスは、
若い女性兵士の髪を整える。
血を拭き。
服を直し。
優しく微笑む。
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「綺麗なまま帰りましょう。」
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セトラは無言だった。
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だが。
機械の指先で。
一つ一つ名札を確認している。
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決して間違えないように。
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決して忘れないように。
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第三節
《重傷者達》
医療区画。
そこもまた静かだった。
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重傷者が並ぶ。
意識を失った者。
呼吸が浅い者。
死の淵にいる者。
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だが。
その中には。
先ほどまで埋葬をしていた者達もいた。
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腹部を裂かれた傭兵。
片腕を失った兵士。
内臓を損傷した混沌種。
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医師が怒鳴る。
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「何故動いた!!」
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若い兵士が笑う。
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「……仲間、運ばなきゃ……」
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「馬鹿か!!」
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「そうですよ。」
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血を吐きながら。
男は笑った。
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「俺達、馬鹿なんです。」
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医師は言葉を失う。
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それが。
ネヴァーモーンだった。
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自分より。
仲間。
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自分の命より。
家族。
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だから。
重傷者達ですら。
最後まで死者を運んでいた。
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第四節
《団長》
ヴォルグラムは礼拝堂へ来ていた。
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無数の棺。
並ぶ名前。
静かな炎。
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彼は一つ一つを見る。
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誰がどんな酒を好きだったか。
誰が喧嘩好きだったか。
誰が子供好きだったか。
誰が料理を作っていたか。
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全部覚えている。
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レオンが隣へ来た。
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「団長。」
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「どうして全部覚えてるんですか?」
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ヴォルグラムは少し考える。
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「家族だからだ。」
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それだけだった。
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「団長……辛くないんですか?」
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長い沈黙。
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遠くで祈りの鐘が鳴る。
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ヴォルグラムは答えた。
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「辛い。」
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「毎回だ。」
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「慣れねぇ。」
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レオンは驚いた。
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最強の男。
怪物。
英雄。
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そう思っていた。
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だが。
目の前にいるのは。
ただ家族を失った男だった。
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「だから。」
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ヴォルグラムが言う。
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「忘れない。」
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「全員連れて帰る。」
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「それが俺の仕事だ。」
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第五節
《静かな夜》
その夜。
《レクイエム・オブ・アッシュ》は静かだった。
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食堂に酒はない。
笑い声もない。
オーク達も騒がない。
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誰もが疲れていた。
誰もが傷付いていた。
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しかし。
誰も孤独ではなかった。
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重傷者の傍には仲間がいる。
死者の傍には家族がいる。
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人間。
オーク。
マリーン。
デーモン。
混沌種。
ネクロン。
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種族は違う。
神も違う。
信仰も違う。
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だが。
皆。
同じ場所へ帰ってきた。
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家。
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《レクイエム・オブ・アッシュ》。
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銀河を漂う巨大な墓標。
狂人達の船。
怪物達の家。
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その静かな廊下を。
ヴォルグラムは一人歩く。
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遠くで。
子供達の寝息が聞こえる。
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難民達は生きている。
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それだけで。
十分だった。
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彼は立ち止まり。
窓の外の星々を見つめた。
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そして。
小さく呟く。
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「……お疲れ。」
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それは。
生き残った者達へ。
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そして。
帰ってきた英雄達へ向けた言葉だった。
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《レクイエム・オブ・アッシュ》は静かに進む。
暗黒の銀河を。
家族を乗せて。
生者と死者を乗せて。
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その巨大な艦は。
まるで。
全ての魂を抱きしめるように。
ゆっくりと。
故郷のない家族達を乗せて。
星の海を進み続けた。
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《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第二十章 完
――家へ帰るまでが戦争である――