禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第23話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第二十一章

 

《英雄達に乾杯》

 

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》。

 

銀河を漂う巨大墓標艦。

 

戦いから十数時間。

 

埋葬作業は続き。

 

医療区画には負傷者が溢れ。

 

礼拝堂には無数の棺が並んでいた。

 

 

食堂は静かだった。

 

普段なら。

 

オーク達の喧嘩。

 

人間達の笑い声。

 

酒樽の音。

 

馬鹿騒ぎ。

 

 

だが今日は違う。

 

誰も騒がない。

 

誰も笑わない。

 

 

それぞれが。

 

失った家族のことを考えていた。

 

 

その時だった。

 

 

艦内全域。

 

格納庫。

 

医療区画。

 

居住区。

 

礼拝堂。

 

厨房。

 

機関室。

 

難民居住区。

 

 

全てのスピーカーから。

 

ノイズが走る。

 

 

ブツッ。

 

 

静寂。

 

 

誰もが顔を上げた。

 

 

そして。

 

聞き慣れた低い声が響く。

 

 

ヴォルグラムだった。

 

 

「ネヴァーモーン及び。」

 

 

少し間が空く。

 

 

「難民諸君。」

 

 

「よく聞け。」

 

 

艦内全体が静まり返る。

 

 

医療区画。

 

重傷者達が顔を上げる。

 

 

礼拝堂。

 

埋葬作業をしていた者達が手を止める。

 

 

食堂。

 

オーク達が黙る。

 

 

難民区画。

 

子供達が耳を傾ける。

 

 

その声は。

 

いつものように乱暴だった。

 

 

「今回は。」

 

 

「久しぶりに。」

 

 

長い沈黙。

 

 

「家族がたくさん逝った。」

 

 

その言葉は。

 

誰の胸にも深く刺さった。

 

 

若い人間兵。

 

老いた傭兵。

 

オーク。

 

マリーン。

 

混沌種。

 

デーモン。

 

 

多くの仲間が帰ってきた。

 

だが。

 

もう二度と笑わない。

 

 

ヴォルグラムは続ける。

 

 

「正直に言う。」

 

 

「辛ぇ。」

 

 

「慣れねぇ。」

 

 

「何回経験しても。」

 

 

「慣れる気もしねぇ。」

 

 

艦内が静かになる。

 

 

誰もが知っている。

 

ヴォルグラムは滅多に弱音を吐かない。

 

 

その男が。

 

今。

 

正直に話していた。

 

 

「だがな。」

 

 

少しだけ声が強くなる。

 

 

「難民達に被害は無い。」

 

 

医療区画。

 

救出された子供達。

 

避難民。

 

老人達。

 

母親達。

 

 

誰も死んでいない。

 

 

「ガキは生きてる。」

 

 

「親も生きてる。」

 

 

「家族も生きてる。」

 

 

「街も守れた。」

 

 

「船団も守れた。」

 

 

その言葉に。

 

難民達の目から涙が流れた。

 

 

なぜなら。

 

それは事実だった。

 

 

自分達は生きている。

 

 

その代わりに。

 

彼らが死んだ。

 

 

ヴォルグラムの声が少し低くなる。

 

 

「あいつらは。」

 

 

「英雄だ。」

 

 

礼拝堂。

 

並ぶ棺。

 

 

オーク。

 

人間。

 

混沌種。

 

マリーン。

 

 

その全てへ向けた言葉。

 

 

「銀河は。」

 

 

「英雄の名前なんか覚えねぇ。」

 

 

「帝国も。」

 

 

「混沌も。」

 

 

「誰も覚えねぇ。」

 

 

「新聞にも載らねぇ。」

 

 

「銅像にもならねぇ。」

 

 

「勲章もねぇ。」

 

 

「誰も褒めてくれねぇ。」

 

 

長い沈黙。

 

 

そして。

 

ヴォルグラムは静かに言った。

 

 

「だから。」

 

 

「俺達が覚える。」

 

 

「俺達家族が忘れない。」

 

 

難民区画。

 

救出された少女エルナが泣いていた。

 

 

子供達も泣いている。

 

 

その時。

 

ヴォルグラムの声が響く。

 

 

「難民諸君。」

 

 

「お前達も忘れないでくれ。」

 

 

「名前を知らなくてもいい。」

 

 

「顔を覚えてなくてもいい。」

 

 

「だが。」

 

 

「今日、お前達が生きている理由だけは。」

 

 

「忘れないでくれ。」

 

 

沈黙。

 

 

誰も声を出せない。

 

 

格納庫では。

 

グラッグが涙を拭っていた。

 

 

リリスは煙草を吸えない。

 

 

カイウスは俯いている。

 

 

ドッグは帽子を深く被る。

 

 

マルケウスは目を閉じていた。

 

 

レオンは泣いていた。

 

 

そして。

 

ヴォルグラムが言う。

 

 

「総員。」

 

 

少しだけ。

 

いつもの団長の声に戻る。

 

 

「酒を持て。」

 

 

オーク達が顔を上げる。

 

 

「飲める奴は飲め。」

 

 

「飲めない奴は水でもいい。」

 

 

「茶でもいい。」

 

 

「コーヒーでもいい。」

 

 

「何でもいい。」

 

 

「手に持て。」

 

 

艦内全域。

 

兵士達が動く。

 

 

酒瓶。

 

マグカップ。

 

缶。

 

水筒。

 

 

重傷者ですら。

 

震える手でコップを持つ。

 

 

難民達も持つ。

 

 

子供達も持つ。

 

 

礼拝堂。

 

棺の前にも。

 

静かに酒が置かれる。

 

 

ヴォルグラムの声。

 

 

「逝った英雄達に。」

 

 

その瞬間。

 

全艦が立ち上がる。

 

 

「俺達家族に。」

 

 

静寂。

 

 

涙。

 

 

笑顔。

 

 

血。

 

 

傷。

 

 

その全てを抱えて。

 

 

ヴォルグラムが最後に言った。

 

 

「乾杯。」

 

 

その瞬間。

 

数万人の声が重なった。

 

 

「乾杯!!」

 

 

オークの咆哮。

 

人間の声。

 

デーモンの笑い。

 

マリーンの低い声。

 

子供達の小さな声。

 

 

全てが一つになる。

 

 

礼拝堂の炎が揺れる。

 

 

棺の前に置かれた酒。

 

 

帰ってきた英雄達。

 

 

彼らはもう飲めない。

 

 

だが。

 

きっと聞こえている。

 

 

グラッグが酒を掲げる。

 

 

「帰ッテ来タゾ。」

 

 

ドッグが静かに笑う。

 

 

「酒代は俺達が払う。」

 

 

リリスが微笑む。

 

 

「またいつか飲みましょう。」

 

 

カイウスが剣を置く。

 

 

「兄弟に。」

 

 

セトラが静かに言う。

 

 

「忘れない。」

 

 

そして。

 

ヴォルグラムは。

 

礼拝堂の棺達を見つめながら。

 

小さく呟いた。

 

 

「よくやった。」

 

 

「お前達のおかげで。」

 

 

「家族は今日も生きてる。」

 

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》は静かに進む。

 

暗黒の宇宙を。

 

生者と死者を乗せて。

 

 

その夜。

 

銀河で最も狂った傭兵達は。

 

泣きながら酒を飲んだ。

 

笑いながら酒を飲んだ。

 

死者の話をした。

 

生き残った話をした。

 

 

そして。

 

誰一人。

 

英雄達を忘れなかった。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第二十一章 完

 

――英雄達に、乾杯。――

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