禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第24話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第二十二章

 

《これが俺達の日常だ》

 

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》。

 

銀河を漂う巨大墓標艦。

 

その夜。

 

艦内の至る所で灯りが点いていた。

 

 

礼拝堂。

 

格納庫。

 

食堂。

 

機関室。

 

医療区画。

 

居住区。

 

展望デッキ。

 

貨物倉庫。

 

 

どこからも。

 

酒の匂いが漂っていた。

 

 

誰かが泣いている。

 

誰かが笑っている。

 

誰かが怒鳴っている。

 

誰かが昔話をしている。

 

 

そして。

 

その中心には。

 

帰ってきた家族達がいた。

 

 

第一節

 

《死者の席》

 

ネヴァーモーンでは。

 

戦死者の席を空ける。

 

 

食堂。

 

長いテーブル。

 

無数の椅子。

 

そのうち幾つかには。

 

誰も座っていない。

 

 

だが。

 

そこには酒が置かれていた。

 

料理が置かれていた。

 

グラスが置かれていた。

 

 

「あいつ酒弱かったよな。」

 

 

「三杯で寝てた。」

 

 

「オークに喧嘩売って殴られてたぞ。」

 

 

「料理だけは上手かった。」

 

 

笑い声。

 

 

涙。

 

 

そしてまた笑う。

 

 

若い傭兵達が。

 

死んだ仲間の話をしていた。

 

 

「あいつさ。」

 

 

「避難民のガキに木彫り作ってたよな。」

 

 

「毎日やってた。」

 

 

「ぶっきらぼうだったくせに。」

 

 

一人が泣く。

 

 

すると。

 

隣の男が笑う。

 

 

「泣くな。」

 

 

「本人が見たら笑うぞ。」

 

 

「お前また泣いてるって。」

 

 

泣きながら笑う。

 

笑いながら泣く。

 

 

それが。

 

ネヴァーモーンだった。

 

 

第二節

 

《オークの弔い》

 

格納庫。

 

 

巨大なオーク達が。

 

酒樽を囲んでいる。

 

 

グラッグが座っていた。

 

 

彼の前には。

 

戦死したオーク戦士の武器。

 

砕けたハンマー。

 

曲がった斧。

 

 

オーク達は酒を飲む。

 

 

「アイツ強カッタ。」

 

 

「喧嘩モ強カッタ。」

 

 

「酒モ強カッタ。」

 

 

「歌ハ下手ダッタ。」

 

 

突然。

 

全員が笑い出す。

 

 

「ヒドカッタナ!!」

 

 

「アレハ騒音ダ!!」

 

 

グラッグが酒を飲む。

 

 

そして。

 

静かに言う。

 

 

「次会ッタラ。」

 

 

「マタ喧嘩ダ。」

 

 

誰も否定しない。

 

 

オークにとって。

 

死とは終わりではない。

 

 

いつかまた。

 

どこかの戦場で。

 

もう一度会う。

 

 

だから。

 

泣きながら。

 

笑う。

 

 

第三節

 

《医療区画》

 

医療区画。

 

そこにも酒があった。

 

 

医師達は頭を抱えている。

 

 

「飲むな!!」

 

 

「傷が開くぞ!!」

 

 

しかし。

 

誰も聞かない。

 

 

腹を裂かれた兵士。

 

片腕を失った傭兵。

 

包帯だらけの混沌種。

 

 

全員が笑っている。

 

 

ドッグ・ハントが椅子に座る。

 

 

胸には包帯。

 

顔にも傷。

 

 

それでも酒を飲む。

 

 

「あいつ。」

 

 

「俺の借金まだ返してねぇんだ。」

 

 

周囲が笑う。

 

 

「隊長、それ言うか?」

 

 

「返してもらわねぇとな。」

 

 

すると。

 

重傷の兵士が笑う。

 

 

「向こうで待ってますよ。」

 

 

ドッグが帽子を被り直す。

 

 

「そうだな。」

 

 

「その時また取り立てる。」

 

 

笑い声。

 

 

痛み。

 

 

涙。

 

 

それでも。

 

笑う。

 

 

第四節

 

《難民達》

 

難民区画。

 

 

子供達も起きていた。

 

 

大人達も。

 

老人達も。

 

 

彼らは今日。

 

初めて知った。

 

 

怪物達が優しいことを。

 

 

オークが泣くことを。

 

 

デーモンが花を供えることを。

 

 

混沌種が子供を抱きしめることを。

 

 

マリーンが黙って涙を流すことを。

 

 

少女エルナが小さく言う。

 

 

「あの人達……怖くない。」

 

 

母親が頷く。

 

 

「優しい人達よ。」

 

 

「少し怖いけど。」

 

 

子供達が笑う。

 

 

遠くで。

 

オークが酔って歌っている。

 

 

誰も怒らない。

 

 

今日だけは。

 

それでいい。

 

 

第五節

 

《礼拝堂》

 

礼拝堂。

 

 

無数の棺。

 

静かな炎。

 

 

ヴォルグラムが座っている。

 

 

その横には。

 

リリス。

 

カイウス。

 

マルケウス。

 

セトラ。

 

 

誰も喋らない。

 

 

しばらくして。

 

マルケウスが笑う。

 

 

「覚えてるか?」

 

 

「あいつ酒場で暴れて。」

 

 

「店半分壊した。」

 

 

カイウスが頷く。

 

 

「修理代を全員で払った。」

 

 

リリスが笑う。

 

 

「三か月分のお給料が消えたわね。」

 

 

少しずつ。

 

思い出話が始まる。

 

 

あの時。

 

あいつが。

 

あの戦場で。

 

あの店で。

 

あの宴会で。

 

 

棺の前で。

 

笑い声が響く。

 

 

ヴォルグラムが酒を置く。

 

 

「聞いてるか。」

 

 

静かな声。

 

 

「お前らの悪口言ってるぞ。」

 

 

誰かが笑う。

 

 

誰かが泣く。

 

 

それでも。

 

その空気は温かかった。

 

 

第六節

 

《忘れない》

 

夜は深い。

 

 

だが。

 

誰も寝ない。

 

 

そこら中で酒を飲み。

 

弔い。

 

笑い。

 

語り合う。

 

 

それが。

 

ネヴァーモーンの日常だった。

 

 

戦う。

 

死ぬ。

 

泣く。

 

笑う。

 

飲む。

 

また生きる。

 

 

誰かが言う。

 

 

「忘れたくない。」

 

 

別の誰かが答える。

 

 

「忘れない。」

 

 

「絶対に。」

 

 

負傷者達も。

 

包帯だらけの兵士達も。

 

重傷者達も。

 

 

互いの手を握る。

 

 

「生きよう。」

 

 

「あいつらの分まで。」

 

 

「次の戦場まで。」

 

 

「また帰ってこよう。」

 

 

遠くで。

 

グラッグの大声が響く。

 

 

「飲メェェェ!!」

 

 

オーク達が笑う。

 

 

人間達も笑う。

 

 

医師達が怒鳴る。

 

 

デーモンが酒を注ぐ。

 

 

ネクロンのセトラだけが静かに見ている。

 

 

そして。

 

小さく呟いた。

 

 

「……いい夜だ。」

 

 

銀河は暗い。

 

戦争は終わらない。

 

死もなくならない。

 

 

だが。

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》の中だけは違う。

 

 

ここには。

 

家族がいる。

 

 

死んだ者も。

 

生きている者も。

 

 

誰も忘れない。

 

誰も置いていかない。

 

 

それが。

 

ネヴァーモーン。

 

 

銀河最悪の傭兵団。

 

銀河最狂の家族。

 

 

そして。

 

どこよりも温かい家だった。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第二十二章 完

 

――これが、俺達の日常だ。――

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