《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第二十三章
《鋼の王国からの救難信号》
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《レクイエム・オブ・アッシュ》。
銀河辺境宙域。
帝国航路からも外れた暗黒の空間。
星は少なく。
光は遠い。
ただ巨大な墓標艦だけが、
静かに宇宙を進んでいた。
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戦いから数日。
艦内には再び日常が戻り始めていた。
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負傷者達は治療を受け。
難民達は落ち着きを取り戻し。
食堂には笑い声が戻り。
オーク達は喧嘩し。
人間達は酒を飲み。
子供達は走り回っている。
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だが。
死者達の名前は忘れられていない。
礼拝堂の炎は今も燃え続けていた。
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艦橋。
ヴォルグラムは黙って星を見ていた。
ドッグはコーヒーを飲み。
カイウスは報告書を読んでいる。
リリスは煙草を吸い。
グラッグは機関士達と口論していた。
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その時だった。
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ビーッ!!
ビーッ!!
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艦橋に警報音が響く。
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オペレーターが振り返る。
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「救難信号です!」
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全員が顔を上げる。
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「発信元不明!」
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「……いや。」
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「解析完了。」
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モニターへ奇妙な紋章が映る。
双頭の鷲ではない。
混沌の印でもない。
オークの戦旗でもない。
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金色の紋章。
中央には剣。
そして王冠。
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レオンが首を傾げる。
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「どこの国家だ……?」
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セトラが情報を読み取る。
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「未登録文明。」
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「名称。」
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少し沈黙。
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「アメストリア。」
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その名を聞き。
艦橋が静まり返る。
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「人類国家か?」
カイウスが問う。
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セトラが頷く。
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「人口約五千万。」
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「構成種族。」
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「人間のみ。」
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グラッグが驚く。
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「オークイナイノカ?」
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「いない。」
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「デーモンモ?」
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「いない。」
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「ネクロンモ?」
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「いない。」
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グラッグが頭を掻く。
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「変ナ国ダナ。」
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さらに情報が表示される。
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軍事国家。
中央集権。
近代兵器。
機甲戦力。
人類軍。
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だが。
その中でも。
ある地域だけが異質だった。
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「辺境軍事国家。」
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「惑星内でも異端。」
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「生身の人間のみで構成。」
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「代表者。」
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モニターに一人の男が映る。
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黒髪。
鋭い眼。
軍服。
口髭。
左右の眼が異様な輝きを放つ。
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キング・ブラッドレイ。
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ドッグが眉を上げる。
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「ただの人間か?」
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セトラ。
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「肉体改造なし。」
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「遺伝子強化なし。」
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「サイカー反応なし。」
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「純粋な人間。」
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グラッグが笑う。
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「弱ソウダ。」
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その瞬間。
モニターに映像が流れる。
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戦場。
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戦車。
砲火。
巨大な異形。
そして。
一人の男。
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剣を抜く。
走る。
斬る。
避ける。
撃つ。
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巨大な怪物が一瞬で倒れる。
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艦橋が静まり返る。
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ドッグが口を開く。
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「……おい。」
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カイウスが目を細める。
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「ただの人間ではない。」
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ヴォルグラムは黙って映像を見ていた。
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その男の目。
その剣。
その立ち姿。
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どこか。
ドッグに似ている。
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怪物ではない。
超人ではない。
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それでも最前線へ立つ。
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その時。
救難通信が再生される。
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ザー……
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ノイズ。
砲声。
悲鳴。
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そして。
低い男の声。
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『こちらアメストリア軍。』
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『指揮官キング・ブラッドレイ。』
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背後で銃声が響く。
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『敵性勢力による侵攻を受けている。』
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『民間人避難中。』
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『軍は最後まで抵抗する。』
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少し沈黙。
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『もしこの通信を受信した者がいるなら。』
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『民間人だけでも助けてほしい。』
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『以上だ。』
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通信が切れる。
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艦橋。
静寂。
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難民。
民間人。
最後まで戦う人間達。
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誰かに似ている。
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ドッグが帽子を被り直す。
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「気に入った。」
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グラッグが笑う。
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「強イ人間カ?」
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カイウス。
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「恐らく。」
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リリスが煙草を消す。
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「団長。」
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全員がヴォルグラムを見る。
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彼はしばらく黙っていた。
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窓の向こう。
遠い星。
アメストリア。
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そこでは今。
人間達だけが戦っている。
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怪物も。
超人も。
デーモンもいない。
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ただ。
人間だけ。
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ヴォルグラムが立ち上がる。
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巨大斧を肩へ担ぐ。
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「準備しろ。」
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グラッグが笑う。
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「救助カ?」
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ヴォルグラム。
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「違う。」
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赤い義眼が光る。
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「家族を迎えに行く。」
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誰も反対しない。
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なぜなら。
それがネヴァーモーンだからだ。
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《レクイエム・オブ・アッシュ》はゆっくり進路を変える。
暗黒宇宙。
辺境宙域。
未知の人類国家。
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その星の名は。
アメストリア。
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そして。
そこで待つ男。
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キング・ブラッドレイ。
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銀河最狂の家族達と。
異端の人間王。
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二つの運命が。
今。
交わろうとしていた。
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《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第二十三章 完
――次章《異端の王》へ続く――