禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第26話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第二十四章

 

《異端の王》

 

 

辺境宇宙。

 

暗黒の星海。

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》は静かに航行していた。

 

かつての戦いの傷跡はまだ残っている。

 

艦首の装甲は焼け焦げ。

 

砲塔の半数は修理中。

 

格納庫には傷付いた戦車が並び。

 

礼拝堂では、今も英雄達の名前が読み上げられていた。

 

 

だが。

 

ネヴァーモーンの家族達は前を向いていた。

 

失った者達の分まで生きる。

 

それが彼らの誓いだった。

 

 

その時。

 

オペレーターが叫ぶ。

 

 

「アメストリア星系に到達!」

 

 

巨大なホロマップ。

 

一つの惑星が映る。

 

灰色の雲。

 

黒い大陸。

 

無数の要塞。

 

防衛砲台。

 

そして。

 

その周囲を埋め尽くす敵艦。

 

 

混沌。

 

オーク。

 

海賊。

 

異形。

 

 

辺境の世界に群がる死肉漁り。

 

 

ドッグが眉をひそめる。

 

 

「酷ぇな。」

 

 

カイウスが静かに言う。

 

 

「完全包囲だ。」

 

 

セトラの瞳が緑に光る。

 

 

「アメストリア軍の残存率三十四パーセント。」

 

 

「主要都市六か所陥落。」

 

 

「なお戦闘継続中。」

 

 

グラッグが牙を見せる。

 

 

「マダ戦ッテルノカ。」

 

 

その時。

 

通信が入る。

 

 

『こちらアメストリア中央司令部。』

 

 

『識別信号を送れ。』

 

 

ノイズの向こう。

 

砲声。

 

警報。

 

怒号。

 

 

戦場の音が聞こえる。

 

 

ヴォルグラムが通信機の前に立つ。

 

 

「こちらネヴァーモーン。」

 

 

沈黙。

 

 

『……傭兵か。』

 

 

低い声。

 

落ち着いた声。

 

 

『キング・ブラッドレイだ。』

 

 

艦橋が静まり返る。

 

 

その声には恐怖がなかった。

 

絶望もなかった。

 

 

ただ。

 

冷静だった。

 

 

『状況は最悪だ。』

 

 

『敵は北方防衛線を突破した。』

 

 

『現在セントラル要塞にて防衛中。』

 

 

『民間人の避難は継続している。』

 

 

その後ろで。

 

銃声。

 

悲鳴。

 

爆発。

 

 

それでも声は揺れない。

 

 

『援軍なら歓迎する。』

 

 

『ただし。』

 

 

少し沈黙。

 

 

『我々は最後まで戦う。』

 

 

通信が終わる。

 

 

ドッグが笑う。

 

 

「気に入った。」

 

 

リリスが微笑む。

 

 

「死ぬ気満々ね。」

 

 

カイウスが頷く。

 

 

「兵士の声だ。」

 

 

ヴォルグラムは静かに言った。

 

 

「降下準備。」

 

 

その瞬間。

 

ネヴァーモーン全軍が動き出す。

 

 

オーク達が武器を担ぐ。

 

マリーンが装甲を装着する。

 

デーモン達が笑う。

 

混沌種が牙を鳴らす。

 

人間兵が銃を確認する。

 

 

しかし。

 

その時。

 

ホロスクリーンに地上映像が映し出された。

 

 

燃える都市。

 

崩壊した城壁。

 

死体の山。

 

 

そして。

 

その中心。

 

 

黒い軍服。

 

二振りのサーベル。

 

眼帯。

 

 

キング・ブラッドレイ。

 

 

数百のオーク。

 

異形。

 

混沌兵。

 

 

その中心を。

 

一人で駆ける。

 

 

斬る。

 

 

右。

 

 

左。

 

 

血。

 

肉。

 

骨。

 

 

オークの首が飛ぶ。

 

混沌兵の腕が落ちる。

 

異形の頭部が真っ二つになる。

 

 

銃弾が飛ぶ。

 

 

避ける。

 

 

砲弾。

 

 

走る。

 

 

巨大なオークが斧を振るう。

 

 

ブラッドレイが踏み込む。

 

 

二本のサーベル。

 

 

閃光。

 

 

巨体が崩れ落ちる。

 

 

誰も喋れない。

 

 

グラッグですら。

 

口を閉じていた。

 

 

「……人間カ?」

 

 

ドッグが帽子を深く被る。

 

 

「生身だ。」

 

 

カイウス。

 

 

「サイカーではない。」

 

 

リリス。

 

 

「デーモンでもない。」

 

 

セトラ。

 

 

「純粋な人間。」

 

 

ヴォルグラムが静かに映像を見つめる。

 

 

その男は。

 

自分達と似ていた。

 

 

最前線に立つ。

 

部下の先頭を歩く。

 

死を恐れない。

 

 

そして。

 

家族を守る。

 

 

その時。

 

アメストリア側の映像が切り替わる。

 

 

兵士達。

 

全員が人間。

 

 

誰一人改造されていない。

 

誰一人強化されていない。

 

 

それでも。

 

怪物達へ突撃している。

 

 

一人の若い兵士が叫ぶ。

 

 

「総統の後ろに続け!!」

 

 

「アメストリアはまだ終わらん!!」

 

 

オークの斧が振り下ろされる。

 

 

兵士が受け止める。

 

 

倒れる。

 

 

それでも。

 

立ち上がる。

 

 

ネヴァーモーンの艦橋。

 

誰も笑わない。

 

 

彼らは知っている。

 

 

こういう連中は。

 

絶対に逃げない。

 

 

だから。

 

たくさん死ぬ。

 

 

ヴォルグラムが立ち上がる。

 

 

「全部隊。」

 

 

赤い義眼が光る。

 

 

「降下する。」

 

 

グラッグが笑う。

 

 

「助ケルノカ?」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「ああ。」

 

 

巨大斧を担ぐ。

 

 

「死なせるには惜しい。」

 

 

その瞬間。

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》の巨大格納庫が開く。

 

数百の降下艇。

 

戦車。

 

輸送機。

 

歩兵。

 

オーク。

 

マリーン。

 

混沌種。

 

デーモン。

 

ネクロン。

 

 

銀河最悪の傭兵団。

 

 

その全軍が。

 

炎に包まれたアメストリアへ向かう。

 

 

地上。

 

 

キング・ブラッドレイは血まみれだった。

 

右腕に傷。

 

頬に裂傷。

 

軍服は破れ。

 

剣には血がこびりついている。

 

 

だが。

 

その眼だけは死んでいない。

 

 

部下が叫ぶ。

 

 

「総統!!」

 

 

「敵増援です!!」

 

 

空を見る。

 

 

燃える空。

 

 

そこに。

 

巨大な影。

 

 

黒い墓標艦。

 

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》。

 

 

アメストリア兵達が息を呑む。

 

 

オークがいる。

 

デーモンがいる。

 

異形がいる。

 

 

まさに怪物の軍隊。

 

 

だが。

 

その先頭。

 

降下艇の扉が開く。

 

 

赤い義眼。

 

巨大斧。

 

黒い装甲。

 

 

ヴォルグラム・ケイン。

 

 

その視線の先。

 

 

キング・ブラッドレイ。

 

 

二人の男。

 

 

片方は。

 

様々な種族を家族にした怪物。

 

 

片方は。

 

人間だけで怪物を超えた王。

 

 

戦場の炎の中。

 

二人の視線が交わる。

 

 

ブラッドレイが静かに言う。

 

 

「……なるほど。」

 

 

ヴォルグラムが答える。

 

 

「随分無茶してるな。」

 

 

ブラッドレイ。

 

 

「部下を守るのは指揮官の仕事だ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「同感だ。」

 

 

そして。

 

二人は同時に武器を構える。

 

 

背後には。

 

家族達。

 

兵士達。

 

守るべき人々。

 

 

銀河最強の人間。

 

そして。

 

銀河最狂の家族。

 

 

その共闘が。

 

今。

 

始まろうとしていた。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第二十四章 完

 

――次章《二人の怪物》へ続く――

 

 

 

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