禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第29話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第二十七章

 

《死ぬな》

 

 

アメストリア中央戦線。

 

黒煙。

 

炎。

 

瓦礫。

 

死。

 

 

都市は既に半壊していた。

 

巨大な建造物は崩れ落ち。

 

道路は砲撃で砕け。

 

血と灰が雪のように降り積もる。

 

 

それでも。

 

戦線はまだ崩れていなかった。

 

 

ネヴァーモーン。

 

アメストリア。

 

 

二つの軍勢は肩を並べていた。

 

 

オークの横で人間が戦い。

 

デーモンの後ろをアメストリア兵が駆ける。

 

ネクロンが負傷兵を守り。

 

混沌種が民間人を避難させる。

 

 

銀河の常識ではあり得ない光景。

 

 

だが。

 

今、この戦場では。

 

それが当たり前になっていた。

 

 

ヴォルグラムは瓦礫の上に立っていた。

 

巨大斧には血。

 

装甲は傷だらけ。

 

赤い義眼は燃える戦場を見渡している。

 

 

その隣。

 

キング・ブラッドレイ。

 

 

黒い軍服。

 

血塗れのサーベル。

 

無数の傷。

 

 

二人とも満身創痍だった。

 

 

その時。

 

敵の第二波。

 

第三波。

 

第四波。

 

 

無数の赤い光が地平線を埋め尽くす。

 

 

オーク。

 

混沌兵。

 

異形。

 

悪魔。

 

 

数十万。

 

 

まだ終わらない。

 

 

若いアメストリア兵の手が震える。

 

 

ネヴァーモーンの新兵も息を呑む。

 

 

疲労。

 

恐怖。

 

絶望。

 

 

誰もが限界に近い。

 

 

その時だった。

 

 

ヴォルグラムが通信機を掴む。

 

 

全軍回線。

 

 

アメストリア。

 

ネヴァーモーン。

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》。

 

 

全ての通信機に声が響く。

 

 

『ネヴァーモーン及びアメストリア全軍に告ぐ。』

 

 

砲声の中。

 

その声だけが静かだった。

 

 

兵士達が顔を上げる。

 

 

負傷者も。

 

医療兵も。

 

砲兵も。

 

避難中の市民達も。

 

 

全員が耳を傾ける。

 

 

ヴォルグラムが続ける。

 

 

『生き残って。』

 

 

少し間。

 

 

『宴だ。』

 

 

戦場が静かになる。

 

 

グラッグが笑う。

 

 

ドッグが帽子を深く被る。

 

 

リリスが微笑む。

 

 

ブラッドレイも黙って聞いている。

 

 

『酒なら奢りだ。』

 

 

アメストリア兵達の表情が変わる。

 

 

『だから。』

 

 

ヴォルグラムが巨大斧を肩に担ぐ。

 

 

『死ぬな。』

 

 

その一言。

 

 

それだけだった。

 

 

英雄の演説ではない。

 

帝王の言葉でもない。

 

 

ただ。

 

家族に向けた言葉。

 

 

アメストリア軍の若い兵士が笑う。

 

 

「酒……ですか……」

 

 

隣の老兵が笑う。

 

 

「らしいな。」

 

 

ネヴァーモーンのオークが叫ぶ。

 

 

「酒ダァァ!!」

 

 

デーモン達が笑う。

 

 

混沌種が武器を叩く。

 

 

医療班まで笑っている。

 

 

そして。

 

その横。

 

 

キング・ブラッドレイが静かに前へ出る。

 

 

彼も通信機を取る。

 

 

『アメストリア軍。』

 

 

全兵士が背筋を伸ばす。

 

 

『今日までよく戦った。』

 

 

『私は諸君を誇りに思う。』

 

 

その声はいつも通りだった。

 

 

冷静。

 

厳格。

 

 

だが。

 

少しだけ優しい。

 

 

『生きて帰れ。』

 

 

『それが命令だ。』

 

 

兵士達の目から涙が流れる。

 

 

総統。

 

 

この男は。

 

いつも先頭に立っていた。

 

 

誰よりも戦い。

 

誰よりも危険な場所へ行き。

 

誰よりも多くの敵を殺した。

 

 

その男が。

 

帰れと言った。

 

 

生きろと言った。

 

 

若い兵士が剣を握る。

 

 

「了解!!」

 

 

その声が広がる。

 

 

「了解!!」

 

 

「了解!!」

 

 

「了解!!」

 

 

何万人もの声。

 

 

ヴォルグラムがブラッドレイを見る。

 

 

「いい指揮官だ。」

 

 

ブラッドレイが答える。

 

 

「お前もな。」

 

 

そして。

 

敵軍が動く。

 

 

大地が揺れる。

 

 

怪物の大軍。

 

 

終わりのない死。

 

 

だが。

 

今。

 

恐怖はなかった。

 

 

帰る場所がある。

 

 

待っている家族がいる。

 

 

酒がある。

 

 

宴がある。

 

 

それだけで十分だった。

 

 

グラッグがハンマーを掲げる。

 

 

「飲ムゾォォ!!」

 

 

ドッグ。

 

 

「死んだら飲めねぇぞ!!」

 

 

リリス。

 

 

「全員帰るわよ。」

 

 

カイウス。

 

 

「戦列を維持しろ。」

 

 

マルケウス。

 

 

「宴会はまだ先だ。」

 

 

セトラ。

 

 

「生存率が上昇した。」

 

 

ブラッドレイが剣を構える。

 

 

ヴォルグラムが巨大斧を握る。

 

 

二人が同時に前を見る。

 

 

その先。

 

数十万の敵。

 

 

地獄。

 

 

だが。

 

二人は笑った。

 

 

「前進。」

 

 

「前進。」

 

 

ネヴァーモーン。

 

 

アメストリア。

 

 

家族達。

 

 

兵士達。

 

 

全員が武器を掲げる。

 

 

その日。

 

辺境宇宙で最も狂った軍隊と。

 

最も誇り高い人間達は。

 

 

「生きて帰って酒を飲む。」

 

 

その約束だけを胸に。

 

 

再び。

 

地獄へと進軍した。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第二十七章 完

 

――だから、死ぬな。帰って飲むぞ。――

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