禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第3話

《WARHAMMER 40,000》

 

――NEVERMOURN――

 

第一章

 

《血と鉄の家族》

 

 

銀河は、狂っている。

 

人類帝国は終わりなき戦争を続け、

異種族は互いを喰らい合い、

混沌は魂を腐らせ、

星々は毎日燃えていた。

 

そんな地獄の中で。

 

“あり得ない旗”を掲げる者達がいた。

 

 

禁忌混成傭兵団

 

《ネヴァーモーン》

 

 

人間。

 

オーク。

 

ネクロン。

 

混沌種。

 

デーモン。

 

スペースマリーン。

 

本来なら、

絶対に共存しない怪物達。

 

だが彼らは、

同じ酒を飲み、

同じ船で眠り、

同じ戦場で背中を預けていた。

 

銀河は彼らを恐れた。

 

化物。

 

異端。

 

狂人。

 

そう呼びながら。

 

だが――

 

誰よりも仲間を愛していたのも、

また彼らだった。

 

 

第一節

 

墓標艦《レクイエム・オブ・アッシュ》

 

巨大移動要塞艦。

 

全長四十二キロ。

 

黒鉄の艦体には、

数え切れない砲門と、

無数の戦傷跡。

 

まるで、

銀河そのものが傷付いたような船だった。

 

艦内では、

怒鳴り声と笑い声が響いている。

 

オーク達が酒樽を抱え。

 

人間兵がカード遊びをし。

 

デーモンが料理を作り。

 

ネクロンが無言で通路警備を行う。

 

普通なら発狂する光景。

 

だがここでは日常だった。

 

 

「オイ人間!! 飲メ!!」

 

超巨大オーク、

グラッグ・ドッカが、

片手で酒樽を持ち上げる。

 

グラッグ・ドッカ

 

向かい側では、

若い人間兵が引き攣った笑みを浮かべていた。

 

「いや隊長、それ毒みたいな色して――」

 

「細ケェ事ハ気合ダ!!」

 

豪快に背中を叩かれ、

人間兵は机に顔面から沈む。

 

周囲は大爆笑。

 

その時だった。

 

艦内警報が鳴り響く。

 

 

【緊急通信】

 

【辺境惑星ヴァル=シグマより救援要請】

 

 

空気が変わった。

 

笑い声が止まる。

 

ネクロン兵達が静かに顔を上げる。

 

デーモン達の瞳が赤く光る。

 

そして。

 

玉座のような鉄椅子に座っていた男が、

ゆっくり立ち上がった。

 

 

ヴォルグラム・ケイン

 

身長三メートルを超える巨体。

 

全身を覆う黒い重装甲。

 

片目は赤く発光し、

背中には無数の鎖。

 

歩くだけで、

床が軋む。

 

 

「……状況は」

 

低い声。

 

オペレーターが震えながら報告する。

 

「辺境惑星ヴァル=シグマ、現在混沌軍勢の侵攻を受けています」

 

「帝国軍は?」

 

「撤退しました」

 

沈黙。

 

艦橋の空気が冷える。

 

若い兵士が呟く。

 

「……見捨てられたのか」

 

その瞬間。

 

ヴォルグラムの義眼が赤く輝いた。

 

 

「総員戦闘準備」

 

静かな声だった。

 

だが、

全員が笑った。

 

オークが牙を剥く。

 

マリーンがボルトガンを装填する。

 

ネクロンの瞳が緑に点灯。

 

デーモン達が嬉しそうに笑う。

 

 

「家族を迎えに行くぞ」

 

その一言で。

 

巨大艦全体が、

まるで生き物のように動き始めた。

 

 

第二節

 

炎の惑星

 

ヴァル=シグマ。

 

かつて鉱山惑星だった世界。

 

だが今は。

 

燃えていた。

 

都市は崩壊し。

 

空には混沌の紋章。

 

地表には、

無数の死体。

 

避難民達は絶望していた。

 

帝国軍は逃げた。

 

誰も助けに来ない。

 

その時だった。

 

空が割れた。

 

 

巨大戦艦。

 

黒鉄の怪物。

 

艦首に刻まれた、

巨大な髑髏。

 

 

《NEVERMOURN》

 

 

避難民達が息を呑む。

 

そして次の瞬間。

 

無数の降下ポッドが、

大気圏を突き破った。

 

 

「イヤッホォォォォ!!」

 

オーク達が笑いながら着地。

 

混沌兵を殴り飛ばす。

 

スペースマリーンが着地と同時に射撃。

 

ネクロン兵が転移門を展開。

 

デーモン達がワープ炎を撒き散らす。

 

地獄。

 

まさに地獄だった。

 

だが。

 

混沌軍が押されていた。

 

 

「ナ、ナンダコイツラ!?」

 

混沌兵が悲鳴を上げる。

 

その中央を。

 

巨大な黒い影が歩く。

 

ヴォルグラムだった。

 

巨大斧を肩に担ぎ。

 

返り血を浴びながら。

 

笑っていた。

 

 

「楽しくなってきたじゃねぇか」

 

直後。

 

斧が振るわれる。

 

混沌戦車が真っ二つに裂けた。

 

爆炎。

 

悲鳴。

 

血。

 

だがヴォルグラムは止まらない。

 

笑いながら前進する。

 

 

その姿を見た避難民の少女が、

小さく呟いた。

 

「……化物」

 

すると隣にいた老兵が笑った。

 

 

「あぁ、そうだ」

 

「だがな」

 

「アイツらは――助けに来た化物だ」

 

 

第三節

 

家族

 

戦闘は六時間続いた。

 

混沌軍は壊滅。

 

生き残った敵は逃走。

 

戦場には、

煙と血の臭いだけが残った。

 

その中で。

 

ネヴァーモーンの兵士達は、

負傷者を運んでいた。

 

敵味方関係なく。

 

子供を抱えるオーク。

 

瓦礫を退かすマリーン。

 

無言で治療器具を運ぶネクロン。

 

避難民達は、

信じられないものを見るような顔をしていた。

 

 

少女がヴォルグラムに尋ねる。

 

「……どうして助けたの?」

 

ヴォルグラムは少しだけ黙り。

 

そして笑った。

 

 

「決まってんだろ」

 

「放っとけねぇからだ」

 

 

少女は泣いた。

 

その小さな頭を。

 

血塗れの怪物は、

不器用に撫でた。

 

 

宇宙は今日も狂っている。

 

戦争は終わらない。

 

明日にはまた、

誰かが死ぬ。

 

それでも。

 

銀河のどこかで。

 

禁忌の家族達は、

今日も笑いながら戦っていた。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

――第一章 完――

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