《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第三十二章
《墓標艦の槍》
⸻
アメストリア中央戦線。
鋼鉄の道。
⸻
ネヴァーモーンの戦車群は敵陣を押し潰し続けていた。
重戦車の主砲。
強襲艦の爆撃。
《レクイエム・オブ・アッシュ》の砲撃。
⸻
だが。
敵はまだ止まらない。
⸻
混沌兵。
オーク。
異形。
悪魔。
⸻
まるで惑星そのものから湧き出しているかのようだった。
⸻
ブラッドレイが軍刀を振るいながら言う。
⸻
「異常だな。」
⸻
ヴォルグラムも敵軍を見つめる。
⸻
「ああ。」
⸻
「数もおかしい。」
⸻
「統率もおかしい。」
⸻
「これだけの戦力が地下にいるなら、ただの司令部じゃない。」
⸻
その時。
セトラの通信が入る。
⸻
『敵指揮反応は依然地下だ。』
⸻
『地下構造物は極めて巨大。』
⸻
『恐らく古代施設。』
⸻
ヴォルグラムはゆっくり空を見上げた。
⸻
黒い墓標艦。
《レクイエム・オブ・アッシュ》。
⸻
そして。
彼は何かを思い出したように笑った。
⸻
「待てよ……」
⸻
ブラッドレイが見る。
⸻
「どうした?」
⸻
ヴォルグラム。
⸻
「あれがあったな。」
⸻
艦橋。
⸻
セトラが眉を上げる。
⸻
『ほう。』
⸻
『ようやく思い出したか。』
⸻
ドッグが嫌な顔をする。
⸻
「団長。」
⸻
「まさか。」
⸻
ヴォルグラムが通信機を取る。
⸻
「セトラ。」
⸻
「この惑星の核までの距離を正確に測れ。」
⸻
艦橋が静まり返る。
⸻
砲術士官。
操舵士。
通信士。
⸻
全員が動きを止める。
⸻
ブラッドレイがゆっくり振り返る。
⸻
「何をする気だ。」
⸻
セトラの緑の瞳が輝く。
⸻
『なるほど。』
⸻
『確かに使える。』
⸻
『だが少々乱暴だぞ。』
⸻
ヴォルグラムが笑う。
⸻
「俺達らしいだろ。」
⸻
セトラは戦術図を展開する。
⸻
地殻。
マントル。
地下施設。
惑星核。
⸻
無数の計算。
重力。
密度。
地質。
⸻
数分後。
⸻
『計測完了。』
⸻
『惑星核まで約四千七百キロ。』
⸻
『地下司令部直下に亀裂帯を確認。』
⸻
『貫通可能性あり。』
⸻
ブラッドレイが目を細める。
⸻
「バンカーか。」
⸻
ヴォルグラム。
⸻
「ああ。」
⸻
ドッグが帽子を深く被る。
⸻
「久々だな。」
⸻
リリスが苦笑する。
⸻
「本当にやるの?」
⸻
「やる。」
⸻
ヴォルグラムの声は静かだった。
⸻
「敵が地下に籠もるなら。」
⸻
「地面ごと叩き割る。」
⸻
セトラが笑う。
⸻
『昔の王達はこういう発想をする。』
⸻
『嫌いではない。』
⸻
ヴォルグラムが全軍回線を開く。
⸻
ネヴァーモーン。
アメストリア。
全戦車部隊。
全航空隊。
⸻
数万人が聞いていた。
⸻
「全軍撤退だ。」
⸻
戦場が静まる。
⸻
アメストリア兵が驚く。
⸻
オーク達が顔を見合わせる。
⸻
ブラッドレイは黙っている。
⸻
「全兵力を後退させろ。」
⸻
「負傷者を優先。」
⸻
「歩兵を先に下げる。」
⸻
「兵器部隊は殿だ。」
⸻
その瞬間。
重戦車部隊が動く。
⸻
巨大な鋼鉄の壁。
⸻
彼らが最後尾へ回る。
⸻
強襲艦が低空支援へ。
⸻
自走砲部隊が展開。
⸻
グラッグが笑う。
⸻
「俺達ガ最後カ。」
⸻
ヴォルグラム。
⸻
「悪いな。」
⸻
「盾役だ。」
⸻
「任セロ。」
⸻
ブラッドレイも振り返る。
⸻
「アメストリア軍。」
⸻
「撤退を開始。」
⸻
若い兵士が叫ぶ。
⸻
「総統!」
⸻
「まだ戦えます!」
⸻
ブラッドレイは静かに言う。
⸻
「生き残れ。」
⸻
「それが命令だ。」
⸻
兵士達が動き始める。
⸻
負傷者。
避難民。
補給部隊。
⸻
全てが後方へ。
⸻
その間。
戦車部隊が敵を抑え込む。
⸻
主砲。
⸻
発射。
⸻
敵軍が吹き飛ぶ。
⸻
強襲艦が爆撃する。
⸻
空が炎に染まる。
⸻
《レクイエム・オブ・アッシュ》艦橋。
⸻
セトラ。
⸻
『バンカー・ランス起動。』
⸻
巨大な墓標艦内部。
⸻
封印されていた兵器。
⸻
巨大な貫通槍。
⸻
惑星貫通用兵装。
⸻
数千年使用されなかった武器。
⸻
砲術士官が震える。
⸻
「本当に撃つんですか……」
⸻
セトラは静かに答える。
⸻
『王は必要な時に決断する。』
⸻
『それだけだ。』
⸻
エネルギーが収束する。
⸻
艦体が震える。
⸻
空そのものが唸る。
⸻
地上。
⸻
アメストリア兵達が空を見る。
⸻
巨大な墓標艦。
⸻
その艦首。
⸻
ゆっくりと開く巨大砲門。
⸻
ブラッドレイが静かに言う。
⸻
「なるほど。」
⸻
ヴォルグラム。
⸻
「敵の王様に墓を掘ってやる。」
⸻
リリスが黒炎を消す。
⸻
「派手なお葬式ね。」
⸻
セトラの最後の通信。
⸻
『全軍退避を急げ。』
⸻
『撃てば地下は崩壊する。』
⸻
『敵も味方も巻き込む。』
⸻
『死にたい者だけ残れ。』
⸻
重戦車部隊が最後まで前進する。
⸻
砲撃。
爆発。
炎。
⸻
ネヴァーモーンの兵器達が最後の壁となる。
⸻
その後ろ。
数万人の命が撤退していく。
⸻
そして。
宇宙。
⸻
《レクイエム・オブ・アッシュ》の艦首に。
巨大な光が集まり始めた。
⸻
まるで。
銀河そのものを貫く槍のように。
⸻
敵の王。
地下深くの司令部。
惑星の傷。
⸻
その全てへ向けて。
墓標艦は静かに狙いを定める。
⸻
《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第三十二章 完
――王が地下に逃げるなら、地面ごと砕けばいい。――