禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第35話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第三十三章

 

《王の演算》

 

 

アメストリア中央戦線。

 

炎。

 

黒煙。

 

崩れた都市。

 

 

数十分前まで。

 

そこは戦場だった。

 

 

今。

 

そこは逃げ遅れれば死ぬ場所になろうとしていた。

 

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》。

 

艦首。

 

巨大な砲門。

 

 

バンカー・ランス。

 

 

惑星そのものを貫くための兵器。

 

 

それは敵を殺す兵器ではない。

 

世界を傷つける兵器だった。

 

 

ヴォルグラムは空を見上げる。

 

巨大な光。

 

唸る艦体。

 

震える空。

 

 

ブラッドレイもその光景を見つめる。

 

 

「随分大掛かりだな。」

 

 

ヴォルグラムは苦笑した。

 

 

「俺も滅多に使わねぇ。」

 

 

その時。

 

通信を開く。

 

 

「セトラ。」

 

 

艦橋。

 

 

緑の光。

 

無数の演算式。

 

惑星断面図。

 

地殻。

 

マントル。

 

地下施設。

 

惑星核。

 

 

ネクロンの王。

 

セトラ。

 

 

数千年。

 

いや。

 

数万年に及ぶ知識。

 

古代王の演算能力。

 

 

彼の瞳には惑星そのものが映っていた。

 

 

ヴォルグラムが言う。

 

 

「頼むぜ?」

 

 

少し笑う。

 

 

「核まで打ち込むなよ?」

 

 

艦橋が静まる。

 

 

「お前の演算にかかってる。」

 

 

セトラは静かに答える。

 

 

「無茶を言うな。」

 

 

「惑星貫通兵器を使っておいて、壊すなとはな。」

 

 

ドッグが通信に割り込む。

 

 

「失敗したら?」

 

 

セトラ。

 

 

「惑星ごと消える。」

 

 

艦橋が沈黙する。

 

 

ブラッドレイが空を見る。

 

 

アメストリア。

 

 

数億の人間。

 

都市。

 

故郷。

 

 

その全て。

 

 

一発で終わる。

 

 

ヴォルグラムは静かに言う。

 

 

「だからお前なんだ。」

 

 

「俺じゃ計算出来ねぇ。」

 

 

セトラがゆっくり椅子にもたれる。

 

 

「安心しろ。」

 

 

「年寄りは失敗しない。」

 

 

緑の瞳が輝く。

 

 

惑星の自転。

 

地殻密度。

 

地下空洞。

 

マグマ層。

 

重力偏差。

 

 

膨大な計算。

 

 

数十万。

 

数百万。

 

 

人間では到底処理できない演算。

 

 

セトラが静かに言う。

 

 

「着弾点修正。」

 

 

「角度変更。」

 

 

「出力を二十一パーセント制限。」

 

 

砲術士官。

 

 

「二十一ですか?」

 

 

「十分だ。」

 

 

「地下を砕くだけならな。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「発射タイミングを知らせろ。」

 

 

セトラ。

 

 

「当然だ。」

 

 

その瞬間。

 

全軍回線が開く。

 

 

ネヴァーモーン。

 

アメストリア。

 

全兵器部隊。

 

 

数万人が耳を傾ける。

 

 

ヴォルグラムの声。

 

 

「兵器部隊、下がれ。」

 

 

重戦車が停止する。

 

 

オーク達が振り返る。

 

 

マリーン達が後退を始める。

 

 

「アメストリア軍と家族を拾え。」

 

 

避難民。

 

負傷兵。

 

子供。

 

 

戦車の上。

 

装甲車の中。

 

輸送機。

 

 

全てに人々が乗せられる。

 

 

「とにかく離れろ!!」

 

 

ブラッドレイも命令する。

 

 

「全軍撤退。」

 

 

「走れ。」

 

 

「生きろ。」

 

 

アメストリア兵達が負傷者を背負う。

 

 

オークが子供を抱える。

 

 

デーモンが瓦礫をどかす。

 

 

マリーンが老人を運ぶ。

 

 

ネクロンが担架を持つ。

 

 

ネヴァーモーンの日常。

 

 

怪物達が家族を運ぶ。

 

 

その時。

 

敵軍が前進を始める。

 

 

混沌兵。

 

異形。

 

デーモン。

 

 

彼らも理解していた。

 

 

何かが起きる。

 

 

しかし。

 

もう遅い。

 

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》。

 

 

艦首。

 

 

巨大な槍。

 

 

青白い光。

 

 

艦体が震える。

 

 

警報。

 

 

「エネルギー充填九十パーセント。」

 

 

「九十五。」

 

 

「九十八。」

 

 

セトラが静かに目を閉じる。

 

 

惑星。

 

 

地下構造。

 

 

敵司令部。

 

 

そして。

 

惑星核。

 

 

その全てを見つめる。

 

 

「……三キロ深い。」

 

 

「少し浅く。」

 

 

「角度修正〇・四度。」

 

 

砲術士官。

 

 

「修正完了。」

 

 

セトラ。

 

 

「よし。」

 

 

その時。

 

ヴォルグラムの通信。

 

 

「セトラ。」

 

 

「なんだ。」

 

 

「失敗するなよ。」

 

 

少しの沈黙。

 

 

そして。

 

老王は静かに笑った。

 

 

「誰に言ってる。」

 

 

「俺は昔、星を割ってたんだ。」

 

 

ブラッドレイが小さく笑う。

 

 

「頼もしい。」

 

 

セトラ。

 

 

「年寄りを信じろ。」

 

 

その時。

 

全軍回線。

 

 

『発射まで六十秒。』

 

 

アメストリア軍が走る。

 

 

負傷兵が運ばれる。

 

 

強襲艦が次々離脱する。

 

 

重戦車が最後尾で敵を抑える。

 

 

グラッグが笑う。

 

 

「急ゲ!!」

 

 

ドッグ。

 

 

「酒が待ってるぞ!!」

 

 

リリス。

 

 

「死んだら怒るわよ。」

 

 

ブラッドレイは振り返る。

 

 

アメストリア。

 

 

彼の国。

 

 

彼の兵士達。

 

 

そして。

 

初めて出会った家族達。

 

 

ヴォルグラムは空を見上げる。

 

 

「頼んだぞ。」

 

 

艦橋。

 

 

セトラはゆっくりと立ち上がった。

 

 

「全艦。」

 

 

「発射準備。」

 

 

緑の瞳。

 

 

古き王。

 

 

長い年月を生きた男。

 

 

彼は静かに言う。

 

 

「この星は壊さん。」

 

 

「だが。」

 

 

「地下に隠れた愚か者には少し痛い目を見てもらう。」

 

 

『発射まで十秒。』

 

 

九。

 

 

八。

 

 

七。

 

 

戦場全体が静まり返る。

 

 

六。

 

 

五。

 

 

四。

 

 

三。

 

 

二。

 

 

一。

 

 

セトラが静かに命じた。

 

 

「撃て。」

 

 

その瞬間。

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》の艦首から。

 

銀河を貫く巨大な光の槍が放たれた。

 

 

その光は。

 

地上へ。

 

地下へ。

 

そして。

 

敵司令部へ向かって落ちていった。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第三十三章 完

 

――星は壊さない。だが、地獄には穴を開ける。――

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