禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

35 / 62
第35話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第三十三章

 

《王の演算》

 

⸻

 

アメストリア中央戦線。

 

炎。

 

黒煙。

 

崩れた都市。

 

⸻

 

数十分前まで。

 

そこは戦場だった。

 

⸻

 

今。

 

そこは逃げ遅れれば死ぬ場所になろうとしていた。

 

⸻

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》。

 

艦首。

 

巨大な砲門。

 

⸻

 

バンカー・ランス。

 

⸻

 

惑星そのものを貫くための兵器。

 

⸻

 

それは敵を殺す兵器ではない。

 

世界を傷つける兵器だった。

 

⸻

 

ヴォルグラムは空を見上げる。

 

巨大な光。

 

唸る艦体。

 

震える空。

 

⸻

 

ブラッドレイもその光景を見つめる。

 

⸻

 

「随分大掛かりだな。」

 

⸻

 

ヴォルグラムは苦笑した。

 

⸻

 

「俺も滅多に使わねぇ。」

 

⸻

 

その時。

 

通信を開く。

 

⸻

 

「セトラ。」

 

⸻

 

艦橋。

 

⸻

 

緑の光。

 

無数の演算式。

 

惑星断面図。

 

地殻。

 

マントル。

 

地下施設。

 

惑星核。

 

⸻

 

ネクロンの王。

 

セトラ。

 

⸻

 

数千年。

 

いや。

 

数万年に及ぶ知識。

 

古代王の演算能力。

 

⸻

 

彼の瞳には惑星そのものが映っていた。

 

⸻

 

ヴォルグラムが言う。

 

⸻

 

「頼むぜ?」

 

⸻

 

少し笑う。

 

⸻

 

「核まで打ち込むなよ?」

 

⸻

 

艦橋が静まる。

 

⸻

 

「お前の演算にかかってる。」

 

⸻

 

セトラは静かに答える。

 

⸻

 

「無茶を言うな。」

 

⸻

 

「惑星貫通兵器を使っておいて、壊すなとはな。」

 

⸻

 

ドッグが通信に割り込む。

 

⸻

 

「失敗したら?」

 

⸻

 

セトラ。

 

⸻

 

「惑星ごと消える。」

 

⸻

 

艦橋が沈黙する。

 

⸻

 

ブラッドレイが空を見る。

 

⸻

 

アメストリア。

 

⸻

 

数億の人間。

 

都市。

 

故郷。

 

⸻

 

その全て。

 

⸻

 

一発で終わる。

 

⸻

 

ヴォルグラムは静かに言う。

 

⸻

 

「だからお前なんだ。」

 

⸻

 

「俺じゃ計算出来ねぇ。」

 

⸻

 

セトラがゆっくり椅子にもたれる。

 

⸻

 

「安心しろ。」

 

⸻

 

「年寄りは失敗しない。」

 

⸻

 

緑の瞳が輝く。

 

⸻

 

惑星の自転。

 

地殻密度。

 

地下空洞。

 

マグマ層。

 

重力偏差。

 

⸻

 

膨大な計算。

 

⸻

 

数十万。

 

数百万。

 

⸻

 

人間では到底処理できない演算。

 

⸻

 

セトラが静かに言う。

 

⸻

 

「着弾点修正。」

 

⸻

 

「角度変更。」

 

⸻

 

「出力を二十一パーセント制限。」

 

⸻

 

砲術士官。

 

⸻

 

「二十一ですか?」

 

⸻

 

「十分だ。」

 

⸻

 

「地下を砕くだけならな。」

 

⸻

 

ヴォルグラム。

 

⸻

 

「発射タイミングを知らせろ。」

 

⸻

 

セトラ。

 

⸻

 

「当然だ。」

 

⸻

 

その瞬間。

 

全軍回線が開く。

 

⸻

 

ネヴァーモーン。

 

アメストリア。

 

全兵器部隊。

 

⸻

 

数万人が耳を傾ける。

 

⸻

 

ヴォルグラムの声。

 

⸻

 

「兵器部隊、下がれ。」

 

⸻

 

重戦車が停止する。

 

⸻

 

オーク達が振り返る。

 

⸻

 

マリーン達が後退を始める。

 

⸻

 

「アメストリア軍と家族を拾え。」

 

⸻

 

避難民。

 

負傷兵。

 

子供。

 

⸻

 

戦車の上。

 

装甲車の中。

 

輸送機。

 

⸻

 

全てに人々が乗せられる。

 

⸻

 

「とにかく離れろ!!」

 

⸻

 

ブラッドレイも命令する。

 

⸻

 

「全軍撤退。」

 

⸻

 

「走れ。」

 

⸻

 

「生きろ。」

 

⸻

 

アメストリア兵達が負傷者を背負う。

 

⸻

 

オークが子供を抱える。

 

⸻

 

デーモンが瓦礫をどかす。

 

⸻

 

マリーンが老人を運ぶ。

 

⸻

 

ネクロンが担架を持つ。

 

⸻

 

ネヴァーモーンの日常。

 

⸻

 

怪物達が家族を運ぶ。

 

⸻

 

その時。

 

敵軍が前進を始める。

 

⸻

 

混沌兵。

 

異形。

 

デーモン。

 

⸻

 

彼らも理解していた。

 

⸻

 

何かが起きる。

 

⸻

 

しかし。

 

もう遅い。

 

⸻

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》。

 

⸻

 

艦首。

 

⸻

 

巨大な槍。

 

⸻

 

青白い光。

 

⸻

 

艦体が震える。

 

⸻

 

警報。

 

⸻

 

「エネルギー充填九十パーセント。」

 

⸻

 

「九十五。」

 

⸻

 

「九十八。」

 

⸻

 

セトラが静かに目を閉じる。

 

⸻

 

惑星。

 

⸻

 

地下構造。

 

⸻

 

敵司令部。

 

⸻

 

そして。

 

惑星核。

 

⸻

 

その全てを見つめる。

 

⸻

 

「……三キロ深い。」

 

⸻

 

「少し浅く。」

 

⸻

 

「角度修正〇・四度。」

 

⸻

 

砲術士官。

 

⸻

 

「修正完了。」

 

⸻

 

セトラ。

 

⸻

 

「よし。」

 

⸻

 

その時。

 

ヴォルグラムの通信。

 

⸻

 

「セトラ。」

 

⸻

 

「なんだ。」

 

⸻

 

「失敗するなよ。」

 

⸻

 

少しの沈黙。

 

⸻

 

そして。

 

老王は静かに笑った。

 

⸻

 

「誰に言ってる。」

 

⸻

 

「俺は昔、星を割ってたんだ。」

 

⸻

 

ブラッドレイが小さく笑う。

 

⸻

 

「頼もしい。」

 

⸻

 

セトラ。

 

⸻

 

「年寄りを信じろ。」

 

⸻

 

その時。

 

全軍回線。

 

⸻

 

『発射まで六十秒。』

 

⸻

 

アメストリア軍が走る。

 

⸻

 

負傷兵が運ばれる。

 

⸻

 

強襲艦が次々離脱する。

 

⸻

 

重戦車が最後尾で敵を抑える。

 

⸻

 

グラッグが笑う。

 

⸻

 

「急ゲ!!」

 

⸻

 

ドッグ。

 

⸻

 

「酒が待ってるぞ!!」

 

⸻

 

リリス。

 

⸻

 

「死んだら怒るわよ。」

 

⸻

 

ブラッドレイは振り返る。

 

⸻

 

アメストリア。

 

⸻

 

彼の国。

 

⸻

 

彼の兵士達。

 

⸻

 

そして。

 

初めて出会った家族達。

 

⸻

 

ヴォルグラムは空を見上げる。

 

⸻

 

「頼んだぞ。」

 

⸻

 

艦橋。

 

⸻

 

セトラはゆっくりと立ち上がった。

 

⸻

 

「全艦。」

 

⸻

 

「発射準備。」

 

⸻

 

緑の瞳。

 

⸻

 

古き王。

 

⸻

 

長い年月を生きた男。

 

⸻

 

彼は静かに言う。

 

⸻

 

「この星は壊さん。」

 

⸻

 

「だが。」

 

⸻

 

「地下に隠れた愚か者には少し痛い目を見てもらう。」

 

⸻

 

『発射まで十秒。』

 

⸻

 

九。

 

⸻

 

八。

 

⸻

 

七。

 

⸻

 

戦場全体が静まり返る。

 

⸻

 

六。

 

⸻

 

五。

 

⸻

 

四。

 

⸻

 

三。

 

⸻

 

二。

 

⸻

 

一。

 

⸻

 

セトラが静かに命じた。

 

⸻

 

「撃て。」

 

⸻

 

その瞬間。

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》の艦首から。

 

銀河を貫く巨大な光の槍が放たれた。

 

⸻

 

その光は。

 

地上へ。

 

地下へ。

 

そして。

 

敵司令部へ向かって落ちていった。

 

⸻

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第三十三章 完

 

――星は壊さない。だが、地獄には穴を開ける。――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。