禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第37話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第三十五章

 

《空を覆う砲門》

 

 

アメストリア中央戦線。

 

かつて都市だった場所。

 

 

今。

 

そこには巨大な裂け目が存在していた。

 

 

バンカー・ランス。

 

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》が放った惑星穿孔兵器。

 

その一撃によって、敵地下司令部は崩壊し、数十キロにも及ぶ巨大な亀裂が大地を切り裂いている。

 

 

黒煙。

 

青白い光。

 

崩落する岩盤。

 

 

そして。

 

地下の奥底。

 

 

何かが動いていた。

 

 

巨大な熱源。

 

異常な魔力。

 

膨大な生命反応。

 

 

セトラの戦術投影には、なお一つの赤い光が映っていた。

 

 

それは死んでいない。

 

 

それどころか。

 

 

ゆっくり。

 

確実に。

 

 

地表へ向かっている。

 

 

ブラッドレイが軍刀を握る。

 

 

「化け物だな。」

 

 

リリスの黒炎が揺らぐ。

 

 

「悪魔とも違う。」

 

 

「混沌とも違う。」

 

 

ドッグが煙草に火をつける。

 

 

「嫌な予感しかしねぇ。」

 

 

グラッグが牙を見せる。

 

 

「デカイノカ?」

 

 

セトラ。

 

 

「かなりな。」

 

 

「余でも少々興味が湧く程度にはな。」

 

 

その時。

 

ヴォルグラムが割れた大地を見つめながら笑った。

 

 

「ハハハ……」

 

 

「しぶとい野郎だ。」

 

 

巨大斧を肩に担ぐ。

 

 

「セトラ。」

 

 

「聞いてる。」

 

 

「地表に出てきたら……」

 

 

少し笑う。

 

 

「重粒子砲を全門使え。」

 

 

艦橋。

 

 

士官達が振り向く。

 

 

「全門ですか?」

 

 

セトラの緑の瞳が静かに輝く。

 

 

「なるほど。」

 

 

「確かに効くだろう。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「ただし。」

 

 

「地表に当てるなよ?」

 

 

静寂。

 

 

ブラッドレイが思わず苦笑する。

 

 

「無茶を言う。」

 

 

セトラは椅子に深く腰掛ける。

 

 

「お前はいつも注文が難しい。」

 

 

「惑星は壊すな。」

 

 

「敵だけ殺せ。」

 

 

「しかも全門斉射だ。」

 

 

ドッグが笑う。

 

 

「年寄りには厳しいな。」

 

 

セトラ。

 

 

「まったくだ。」

 

 

戦術図。

 

 

裂け目。

 

熱源。

 

上昇速度。

 

風向。

 

重力偏差。

 

 

無数の演算が始まる。

 

 

「重粒子砲全門使用の場合。」

 

 

「着弾誤差〇・三秒。」

 

 

「照準誤差一メートル以内。」

 

 

「失敗した場合。」

 

 

グラッグ。

 

 

「ドウナル?」

 

 

セトラ。

 

 

「アメストリアの一部が消える。」

 

 

周囲が静かになる。

 

 

ブラッドレイは前を見る。

 

 

その先。

 

故郷。

 

都市。

 

国民。

 

 

そして。

 

セトラがゆっくり笑った。

 

 

「だから失敗しない。」

 

 

リリスが笑う。

 

 

「頼もしいわねぇ。」

 

 

「年寄りは経験がある。」

 

 

「お前達若いのとは違う。」

 

 

その時。

 

地面が震えた。

 

 

轟音。

 

 

崩壊。

 

 

巨大な亀裂がさらに広がる。

 

 

熱風。

 

 

赤い光。

 

 

アメストリア兵達が後退する。

 

 

ネヴァーモーンも武器を構える。

 

 

ヴォルグラムが通信を開く。

 

 

「全軍。」

 

 

「距離を取れ。」

 

 

「重戦車は最終防衛線を形成。」

 

 

「強襲艦は待機。」

 

 

「アメストリア軍は負傷者を下げろ。」

 

 

ブラッドレイも命じる。

 

 

「全軍後退。」

 

 

「ここから先は我々ではない。」

 

 

若い兵士が叫ぶ。

 

 

「総統!」

 

 

ブラッドレイ。

 

 

「生きて帰れ。」

 

 

「命令だ。」

 

 

兵士達が動く。

 

 

負傷兵。

 

避難民。

 

補給部隊。

 

 

全てが下がる。

 

 

その間。

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》。

 

 

艦首。

 

側面。

 

上部砲塔。

 

 

巨大な砲門が次々と展開する。

 

 

重粒子砲。

 

 

一本。

 

二本。

 

十本。

 

二十本。

 

 

数十門。

 

 

まるで空そのものに槍が並んでいるようだった。

 

 

艦橋。

 

 

砲術士官。

 

 

「全門展開完了。」

 

 

「照準待機。」

 

 

セトラは静かに言う。

 

 

「まだ撃つな。」

 

 

「奴が出るまで待て。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「頼んだぞ。」

 

 

セトラ。

 

 

「分かってる。」

 

 

「外したらお前に怒られる。」

 

 

ドッグ。

 

 

「星も怒るぞ。」

 

 

リリス。

 

 

「私も怒るわ。」

 

 

グラッグ。

 

 

「酒ガ無クナル。」

 

 

セトラが笑った。

 

 

「それが一番怖いな。」

 

 

その時だった。

 

 

巨大な裂け目。

 

 

そこから。

 

 

黒い腕。

 

 

いや。

 

腕ではない。

 

 

巨大な何か。

 

 

赤黒い装甲。

 

 

異様な魔力。

 

 

圧倒的な存在感。

 

 

ゆっくり。

 

 

ゆっくり。

 

 

地獄の底から。

 

 

何かが這い上がってくる。

 

 

全軍が息を呑む。

 

 

ブラッドレイが軍刀を握る。

 

 

ヴォルグラムが斧を担ぐ。

 

 

セトラの瞳が細くなる。

 

 

「なるほど。」

 

 

「これは少し大物だ。」

 

 

空。

 

 

《レクイエム・オブ・アッシュ》。

 

 

数十門の重粒子砲。

 

 

全てが。

 

その怪物へ狙いを定めていた。

 

 

そして。

 

老王セトラは静かに言った。

 

 

「出てこい。」

 

 

「空はもう、お前のものじゃない。」

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第三十五章 完

 

――空には墓標艦がいる。怪物が逃げる場所はない。――

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