《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第三十九章
《地獄の中心》
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強襲艦の機体が激しく揺れる。
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ゴォォォォォォ―――
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推進器の轟音。
舞い上がる灰。
崩落し続ける岩盤。
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三隻の強襲艦は巨大な裂け目の上空を低空飛行していた。
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数十分前まで地下司令部だった場所。
今では地獄そのものだった。
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大地は割れ。
溶岩が噴き出し。
数千度にも達する熱気が吹き上がっている。
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崩壊した地下施設。
ねじ曲がった鋼材。
蒸発した戦車。
焼け落ちた異形達。
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重粒子砲の跡。
対艦ミサイルの爆心地。
通常砲弾による無数のクレーター。
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そこには戦場など存在しない。
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ただ。
破壊だけがあった。
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強襲艦の窓からヴォルグラムが外を見る。
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巨大斧を肩に担いだまま笑う。
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「中心部が見えてきた。」
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ブラッドレイも外を見る。
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二本の軍刀を静かに握る。
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「……ひどいな。」
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リリスが苦笑する。
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「自分達でやっておいて何だけど。」
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ドッグが煙草を咥える。
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「流石にあれだけ撃てば地獄だ。」
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グラッグが窓に顔を近付ける。
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「燃エテル。」
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カイウスが静かに呟く。
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「都市一つが消えている。」
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強襲艦はさらに降下する。
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そして。
クレーター中心部。
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そこだけ。
煙が渦巻いていた。
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セトラの通信。
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「そこだ。」
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「反応地点は真下。」
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ヴォルグラムが通信を取る。
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「セトラ。」
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「聞こえてる。」
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「まだ反応はあるか?」
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セトラはしばらく黙る。
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艦橋。
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戦術画面。
熱源。
魔力。
生命反応。
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その中心。
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巨大な赤い光。
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「ある。」
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「かなり弱ってる。」
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「だが消えてない。」
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その時。
強襲艦がゆっくり停止した。
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「目標視認。」
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操縦士の声。
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全員が窓を見る。
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そして。
誰も喋らなくなった。
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巨大だった。
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約十メートル。
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人間の数倍。
スペースマリーンですら子供に見える。
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その身体は至る所が欠損していた。
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右腕。
消失。
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左肩。
砕けている。
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胸部。
巨大な穴。
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下半身。
半分以上が吹き飛んでいる。
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黒い装甲。
赤黒い肉。
露出した骨。
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重粒子砲が焼き焦がした跡。
対艦ミサイルによる裂傷。
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まるで死体だった。
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だが。
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まだ立っている。
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その巨体は。
崩れた岩盤にもたれながら。
静かに呼吸していた。
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ヴォルグラムが思わず笑う。
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「おいおい。」
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「随分デカくないか?」
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ドッグが煙草を落とす。
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「冗談だろ。」
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グラッグが目を輝かせる。
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「デカイ!!」
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リリスの黒炎が揺れる。
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「まだ生きてる……」
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ブラッドレイが静かに目を細めた。
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「化け物だな。」
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通信。
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ヴォルグラム。
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「セトラ。」
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「なんだ。」
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「かなりデカいんだが?」
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艦橋。
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セトラは戦術図を見つめる。
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そして。
少し笑った。
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「見えてる。」
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「十・三メートル。」
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「推定質量百数十トン。」
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「生体反応は極めて低い。」
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「だが。」
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ヴォルグラム。
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「だが?」
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「まだ死んでない。」
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その瞬間。
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化け物の赤い目がゆっくり開いた。
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全員が武器を構える。
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ブラッドレイ。
軍刀。
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ヴォルグラム。
巨大斧。
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カイウス。
長剣。
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リリス。
黒炎。
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ドッグ。
大型拳銃。
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グラッグ。
戦斧。
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その怪物は。
ゆっくり。
ゆっくりと。
顔を上げた。
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欠損した身体。
砕けた角。
燃える肉体。
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それでも。
なお。
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生きていた。
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セトラの声が静かに響く。
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「気を付けろ。」
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「あれは瀕死だ。」
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「だからこそ危険だ。」
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老王の声には珍しく緊張があった。
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「長く生きた怪物ほど。」
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「最後に全てを賭ける。」
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強襲艦の後部ハッチがゆっくり開く。
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熱風。
灰。
硫黄の匂い。
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その先。
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地獄の中心。
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そこに。
バンカー・ランスを耐え。
重粒子砲を耐え。
艦隊砲撃を耐えた最後の怪物が座っていた。
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ヴォルグラムは巨大斧を握り直す。
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「さて。」
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ゆっくり笑う。
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「話し合いが出来る顔じゃねぇな。」
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ブラッドレイが隣に立つ。
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「最初からそのつもりだ。」
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燃える地獄。
崩壊した地下世界。
死にかけた怪物。
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そして。
その前に立つ。
六人の戦士達。
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最後の戦いが。
静かに始まろうとしていた。
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《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第三十九章 完
――怪物は死にかけていた。それでもなお、王達を待っていた。――