禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第42話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第四十章

 

《家族の剣》

 

 

巨大クレーター中央部。

 

 

熱風が吹く。

 

灰が舞う。

 

燃え続ける地下施設。

 

 

十メートルの怪物はなおもそこにいた。

 

 

欠損した右腕。

 

吹き飛んだ下半身。

 

砕けた装甲。

 

露出した骨。

 

 

それでも。

 

まだ死んでいない。

 

 

強襲艦のエンジン音だけが地獄に響いていた。

 

 

ヴォルグラムはゆっくりと振り返る。

 

 

「強襲艦は交戦範囲から離れて待機だ。」

 

 

操縦士。

 

 

「了解。」

 

 

「半径五キロまで後退します。」

 

 

ヴォルグラムは軽く手を振った。

 

 

「終わったら迎えに来てくれ。」

 

 

「酒が待ってる。」

 

 

ドッグが笑う。

 

 

「死ぬなよ。」

 

 

「お互い様だ。」

 

 

リリスが黒炎を揺らす。

 

 

「置いて帰るわよ?」

 

 

グラッグが大笑いする。

 

 

「ボスハ死ナナイ!!」

 

 

強襲艦のハッチが閉じる。

 

 

推進器が唸る。

 

 

三隻の機体はゆっくりと上昇していく。

 

 

残されたのは。

 

 

ヴォルグラム。

 

ブラッドレイ。

 

リリス。

 

ドッグ。

 

グラッグ。

 

カイウス。

 

 

ネヴァーモーンの隊長達。

 

 

そして。

 

最後の怪物。

 

 

ヴォルグラムは巨大斧を肩に担いだ。

 

 

「さて。」

 

 

静かに笑う。

 

 

「最後の仕事だ。」

 

 

ブラッドレイも二本の軍刀を握る。

 

 

しかし。

 

その片方。

 

 

長い戦い。

 

無数の斬撃。

 

異形との戦闘。

 

 

刀身は大きく欠けていた。

 

 

ひび。

 

歪み。

 

刃こぼれ。

 

 

もはや限界だった。

 

 

ヴォルグラムがそれを見る。

 

 

「ブラッドレイ。」

 

 

ブラッドレイ。

 

 

「どうした。」

 

 

ヴォルグラムは背中の荷物を外した。

 

 

古びた黒い布。

 

 

ゆっくりほどく。

 

 

その中には。

 

一振りの軍刀。

 

 

いや。

 

サーベル。

 

 

黒い鞘。

 

銀色の刀身。

 

 

決して派手ではない。

 

 

だが。

 

異様な存在感があった。

 

 

ドッグが目を細める。

 

 

「まさか。」

 

 

リリスが静かに見る。

 

 

グラッグも黙る。

 

 

ブラッドレイが視線を向ける。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「ブラッドレイ。」

 

 

そのサーベルを差し出す。

 

 

「うちの家族が打った業物のサーベルをやるよ。」

 

 

ブラッドレイは黙っている。

 

 

ヴォルグラムはブラッドレイの軍刀を見る。

 

 

「それはもうダメだろ?」

 

 

静かな風。

 

 

燃える瓦礫。

 

 

ブラッドレイは手元の軍刀を見る。

 

 

長い戦い。

 

多くの敵。

 

多くの死。

 

 

共に戦った相棒。

 

 

その刃は限界だった。

 

 

しばらくの沈黙。

 

 

そして。

 

ブラッドレイはゆっくり鞘へ納めた。

 

 

「……そうだな。」

 

 

ヴォルグラムが笑う。

 

 

「こいつはドワーフの鍛冶屋と。」

 

 

「ネクロンの職人と。」

 

 

「うちの馬鹿共が作った。」

 

 

ドッグ。

 

 

「かなり酔ってたな。」

 

 

リリス。

 

 

「三日くらい鍛えてたわね。」

 

 

グラッグ。

 

 

「酒モ入ッテタ!!」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「家族の剣だ。」

 

 

「王様が持つには悪くない。」

 

 

ブラッドレイはゆっくり受け取る。

 

 

その瞬間。

 

 

重い。

 

 

しかし。

 

よく手に馴染む。

 

 

握り。

 

重心。

 

長さ。

 

 

まるで最初から自分のために作られていたかのようだった。

 

 

ブラッドレイはゆっくり抜刀する。

 

 

鋼が鳴る。

 

 

美しい。

 

 

実用だけを追求した軍刀。

 

 

無駄な装飾はない。

 

 

ただ。

 

戦うためだけに存在する刃。

 

 

セトラの通信が入る。

 

 

「気に入ったか?」

 

 

ブラッドレイ。

 

 

「お前達が?」

 

 

「少し手を貸した。」

 

 

リリス。

 

 

「私は魔術刻印。」

 

 

ドッグ。

 

 

「俺は重心。」

 

 

グラッグ。

 

 

「俺ハ叩イタ!!」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「家族全員で作った。」

 

 

ブラッドレイは静かに刀身を見る。

 

 

長い人生。

 

 

数え切れない剣。

 

 

無数の戦場。

 

 

しかし。

 

誰かから剣を贈られたことはほとんどなかった。

 

 

少しだけ。

 

 

ほんの少しだけ。

 

 

その目が柔らかくなる。

 

 

「……そうか。」

 

 

ヴォルグラムが笑う。

 

 

「返さなくていい。」

 

 

「家族からの贈り物だ。」

 

 

その時。

 

 

巨大な怪物がゆっくり立ち上がる。

 

 

十メートルの身体。

 

 

赤い眼。

 

 

傷だらけの肉体。

 

 

最後の敵。

 

 

ブラッドレイは新しいサーベルを構える。

 

 

片手には旧い軍刀。

 

 

もう片方には家族の剣。

 

 

ヴォルグラムが巨大斧を握る。

 

 

「行くぞ。」

 

 

ブラッドレイ。

 

 

「ああ。」

 

 

リリス。

 

 

「終わらせましょう。」

 

 

ドッグ。

 

 

「帰って飲むぞ。」

 

 

グラッグ。

 

 

「宴ダ!!」

 

 

燃える地獄の中心。

 

 

家族の剣を握る王。

 

 

そして。

 

最後の怪物。

 

 

二つの王の最後の戦いが。

 

今。

 

始まろうとしていた。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第四十章 完

 

――その剣は鋼ではない。家族そのものだった。――

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