《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第四十六章
《焼き尽くせ、家族共》
⸻
ゴォォォォォォォォォォォォ――――!!
⸻
怪物が暴れる。
⸻
十メートルの巨体。
百数十トンを超える質量。
⸻
赤い魔力。
黒い炎。
砕けた肉体。
⸻
その全てが最後の力を振り絞っていた。
⸻
ヴォルグラムの腕が軋む。
⸻
筋肉が裂ける。
⸻
折れた肋骨が肺を傷つける。
⸻
口から血が流れる。
⸻
それでも。
⸻
離さない。
⸻
グラッグの右肩は完全に外れていた。
⸻
腕の骨が皮膚を突き破る。
⸻
それでも。
⸻
巨大な腕で怪物の脚を抱き締めている。
⸻
「逃ガサナイ!!」
⸻
カイウスの鎧は砕けていた。
⸻
胸甲は割れ。
肋骨は何本も折れている。
⸻
剣を怪物の身体へ突き刺し、自らを固定していた。
⸻
「まだ……動ける……」
⸻
怪物が咆哮する。
⸻
ゴォォォォォ!!
⸻
赤い雷。
⸻
爆発。
⸻
三人の身体が再び地面へ叩きつけられる。
⸻
だが。
⸻
それでも。
⸻
離さない。
⸻
後方。
⸻
リリスの顔が青ざめる。
⸻
「駄目よ!!」
⸻
「これ以上は死ぬ!!」
⸻
ヴォルグラムは血を吐きながら笑った。
⸻
「長くは持たねぇ。」
⸻
怪物の筋肉が膨張する。
⸻
拘束が軋む。
⸻
あと数秒。
⸻
それだけで三人は吹き飛ばされる。
⸻
ヴォルグラムが叫ぶ。
⸻
「リリス!!」
⸻
黒炎の魔女が顔を上げる。
⸻
「俺達ごと焼け!!」
⸻
リリス。
⸻
「何言ってるのよ!!」
⸻
「死ぬわよ!!」
⸻
ヴォルグラムが笑う。
⸻
「気にするな!!」
⸻
「化け物より頑丈だ!!」
⸻
グラッグが大笑いする。
⸻
「焼ケ!!」
⸻
カイウスも静かに言う。
⸻
「構わない。」
⸻
リリスの目が揺れる。
⸻
家族。
⸻
仲間。
⸻
共に酒を飲み。
共に笑い。
共に戦った者達。
⸻
その三人を自分の炎で焼く。
⸻
その命令。
⸻
だが。
⸻
ネヴァーモーンでは。
⸻
盾役が作った機会は無駄にしない。
⸻
それが家族の掟。
⸻
リリスは目を閉じる。
⸻
黒炎が周囲に渦巻く。
⸻
「……怒るから。」
⸻
ヴォルグラム。
⸻
「生きて帰るさ。」
⸻
その時。
⸻
ドッグが弾倉を叩き込む。
⸻
ガシャン。
⸻
最後の弾。
⸻
最後の援護。
⸻
ヴォルグラムが叫ぶ。
⸻
「ドッグ!!」
⸻
「聞いてる!!」
⸻
「ブラッドレイを援護だ!!」
⸻
ドッグは帽子を深く被る。
⸻
血まみれの顔。
⸻
傷だらけの身体。
⸻
それでも笑う。
⸻
「任せろ。」
⸻
拳銃を構える。
⸻
「王様。」
⸻
ブラッドレイが視線を向ける。
⸻
「道は作る。」
⸻
「あんたは斬れ。」
⸻
ブラッドレイは静かに頷いた。
⸻
「了解した。」
⸻
その瞬間。
⸻
リリスの黒炎が解き放たれる。
⸻
巨大な魔法陣。
⸻
幾重もの黒い円。
⸻
大地を覆う炎。
⸻
「燃えなさい!!」
⸻
ゴォォォォォ!!
⸻
黒炎が怪物を包む。
⸻
ヴォルグラム。
⸻
グラッグ。
⸻
カイウス。
⸻
三人ごと。
⸻
怪物の肉が焼ける。
⸻
再生組織が消える。
⸻
黒い肉が崩れる。
⸻
怪物が絶叫する。
⸻
グラッグも叫ぶ。
⸻
「熱イ!!」
⸻
ヴォルグラム。
⸻
「文句言うな!!」
⸻
カイウス。
⸻
「確かに熱いな……」
⸻
ドッグが走る。
⸻
ドォン!!
⸻
一発。
⸻
右眼。
⸻
ドォン!!
⸻
二発。
⸻
首。
⸻
ドォン!!
⸻
三発。
⸻
露出した心臓の周囲。
⸻
怪物の身体がわずかに動きを止める。
⸻
「今だ!!」
⸻
ブラッドレイ。
⸻
究極の眼。
⸻
時間が止まる。
⸻
心臓。
⸻
動脈。
⸻
骨。
⸻
筋肉。
⸻
全てが見える。
⸻
新しいサーベル。
⸻
ネヴァーモーンの家族達が打った剣。
⸻
その刃を握る。
⸻
目の前。
⸻
血だらけの三人。
⸻
命を賭ける盾。
⸻
後方。
⸻
炎を放つ魔女。
⸻
援護する傭兵。
⸻
上空。
⸻
見守る老王。
⸻
そして。
⸻
自分を家族と呼んだ者達。
⸻
ブラッドレイの目が細くなる。
⸻
「……見事だ。」
⸻
ヴォルグラムが笑う。
⸻
「褒めるのは後だ。」
⸻
「やれ。」
⸻
怪物が最後の力で暴れる。
⸻
拘束が限界を迎える。
⸻
ヴォルグラムの腕が裂ける。
⸻
グラッグの脚が砕ける。
⸻
カイウスの剣が折れる。
⸻
それでも。
⸻
離さない。
⸻
三人が同時に叫ぶ。
⸻
「今だァァァァァ!!」
⸻
ブラッドレイが走る。
⸻
炎。
⸻
灰。
⸻
血。
⸻
黒炎。
⸻
そして。
⸻
家族が作った一本道。
⸻
その先に。
⸻
最後の一撃が待っていた。
⸻
《WARHAMMER 40,000》
NEVERMOURN
第四十六章 完
――盾が命を賭けた時、剣は必ず届く。――