禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第50話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第四十八章

 

《まだ生きてるか?》

 

 

ドォォォォォォン……

 

 

十メートルの怪物が完全に崩れ落ちる。

 

 

核は砕け。

 

魔力は霧散し。

 

赤黒い光は静かに消えていった。

 

 

数秒前まで戦場を支配していた圧倒的な威圧感。

 

 

それが完全に消える。

 

 

熱風だけが吹いていた。

 

 

誰も動かない。

 

 

ブラッドレイは静かにサーベルを鞘へ納める。

 

 

リリスは膝をつく。

 

 

ドッグは空薬莢を地面へ落とす。

 

 

上空のセトラも何も言わない。

 

 

そして。

 

 

怪物を押さえ込んでいた三人。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

グラッグ。

 

 

カイウス。

 

 

彼らはまるで壊れた人形のように怪物の身体からずり落ちた。

 

 

ドサッ。

 

 

まずヴォルグラム。

 

 

砕けた鎧。

 

裂けた筋肉。

 

折れた肋骨。

 

 

右腕は感覚がほとんどない。

 

 

肺には血が溜まり。

 

視界も霞む。

 

 

グラッグ。

 

 

肩は外れ。

 

腕は砕け。

 

肋骨は何本も折れていた。

 

 

カイウス。

 

 

胸部装甲は消失。

 

剣は折れ。

 

全身が血で濡れている。

 

 

三人。

 

 

満身創痍。

 

 

もはや立っているのが奇跡だった。

 

 

ヴォルグラムは仰向けに倒れたまま空を見上げる。

 

 

赤い空。

 

 

灰。

 

 

燃える雲。

 

 

しばらく何も言わない。

 

 

そして。

 

 

小さく笑った。

 

 

「……流石に無茶したな。」

 

 

血が口から流れる。

 

 

呼吸のたびに胸が痛む。

 

 

グラッグが隣で倒れている。

 

 

カイウスも動かない。

 

 

ヴォルグラムは苦笑した。

 

 

「何十年ぶりだ?」

 

 

少し咳き込む。

 

 

「俺達三人が……ここまでズタボロなのはな?」

 

 

静かな風。

 

 

そして。

 

 

ヴォルグラムがゆっくり顔を横へ向ける。

 

 

「生きてるか?」

 

 

返事がない。

 

 

数秒。

 

 

十秒。

 

 

そして。

 

 

グラッグがゆっくり親指を立てた。

 

 

「生キテル……」

 

 

そのまま倒れる。

 

 

ヴォルグラムが笑う。

 

 

「おう。」

 

 

少し離れた場所。

 

 

カイウスが空を見上げていた。

 

 

「まだ……死ねん。」

 

 

「酒がある。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「そうだな。」

 

 

その時。

 

 

ドッグが近づいてくる。

 

 

血だらけ。

 

 

帽子も破れている。

 

 

「酷い顔だぞ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「鏡持ってこい。」

 

 

ドッグ。

 

 

「見たら泣くぞ。」

 

 

リリスも歩いてくる。

 

 

目元は赤い。

 

 

「馬鹿。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「知ってる。」

 

 

「本当に馬鹿。」

 

 

グラッグ。

 

 

「団長モ馬鹿。」

 

 

カイウス。

 

 

「否定はできない。」

 

 

そして。

 

 

全員が笑った。

 

 

血だらけ。

 

 

満身創痍。

 

 

今にも倒れそう。

 

 

それでも。

 

 

笑った。

 

 

ブラッドレイが静かに近づく。

 

 

新しいサーベル。

 

 

家族の剣。

 

 

彼は三人を見る。

 

 

ボロボロだった。

 

 

アメストリアでも見たことがないほど。

 

 

歴戦の戦士。

 

 

怪物。

 

 

英雄。

 

 

そんな者達が。

 

 

今はただ傷だらけの兵士だった。

 

 

ブラッドレイが静かに言う。

 

 

「見事だった。」

 

 

ヴォルグラムは笑う。

 

 

「褒めるなら酒の席で頼む。」

 

 

ブラッドレイ。

 

 

「そうしよう。」

 

 

セトラの通信が入る。

 

 

『聞こえるか。』

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「ああ。」

 

 

『生体反応は?』

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「三人とも半分死んでる。」

 

 

セトラ。

 

 

『なるほど。』

 

 

少し間。

 

 

『いつものことだな。』

 

 

ドッグが笑う。

 

 

「王様も慣れたな。」

 

 

リリス。

 

 

「迎えは?」

 

 

『強襲艦が向かっている。』

 

 

『あと五分だ。』

 

 

ヴォルグラムは目を閉じる。

 

 

長い戦いだった。

 

 

死者。

 

 

負傷者。

 

 

家族。

 

 

そして。

 

 

アメストリア。

 

 

ブラッドレイ。

 

 

この惑星。

 

 

全てが繋がった。

 

 

しばらく沈黙。

 

 

風だけが吹く。

 

 

そして。

 

 

ヴォルグラムがぽつりと言う。

 

 

「……生きてるな。」

 

 

グラッグ。

 

 

「生キテル。」

 

 

カイウス。

 

 

「まだな。」

 

 

ドッグ。

 

 

「しぶとい連中だ。」

 

 

リリス。

 

 

「だから家族なのよ。」

 

 

ブラッドレイは静かにその光景を見る。

 

 

血の繋がりはない。

 

 

種族も違う。

 

 

思想も違う。

 

 

だが。

 

 

彼らは確かに家族だった。

 

 

そして。

 

 

遠く。

 

 

強襲艦のエンジン音が聞こえ始める。

 

 

迎えが来る。

 

 

酒が待っている。

 

 

家族が待っている。

 

 

ヴォルグラムは最後に空を見上げる。

 

 

「帰るか。」

 

 

「宴の時間だ。」

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第四十八章 完

 

――傷だらけでも、生きていれば家族のもとへ帰れる。――

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