禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第51話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第四十九章

 

《帰る場所》

 

 

ゴォォォォォォォ……

 

 

遠く。

 

空の彼方から重低音が響く。

 

 

赤く染まった空。

 

灰の舞う大地。

 

 

崩壊した巨大クレーター。

 

 

その中心にいる六人。

 

 

傷だらけ。

 

血まみれ。

 

 

満身創痍。

 

 

そして。

 

全員が生きていた。

 

 

強襲艦のエンジン音が次第に近付く。

 

 

三隻の輸送艦。

 

 

ネヴァーモーンの紋章。

 

 

黒い船体。

 

 

ゆっくりと地面へ降下する。

 

 

轟音。

 

土煙。

 

熱風。

 

 

ハッチが開く。

 

 

そして。

 

 

中から現れたのは。

 

 

ネヴァーモーンの家族達だった。

 

 

人間。

 

マリーン。

 

オーク。

 

デーモン。

 

混沌種。

 

 

生き残った兵士達。

 

 

負傷した者。

 

包帯だらけの者。

 

片腕を失った者。

 

 

その誰もが。

 

 

地獄のような戦場の中心で倒れている隊長達を見て。

 

 

数秒。

 

 

沈黙した。

 

 

そして。

 

 

一人が吹き出した。

 

 

「ハハハハハ!!」

 

 

別の兵士。

 

 

「隊長達が全滅してやがる!!」

 

 

「団長、ほぼ死んでるぞ!!」

 

 

「グラッグの腕変な方向向いてる!!」

 

 

「カイウスが死体みたいだ!!」

 

 

あちこちで笑い声が起きる。

 

 

リリスが呆れたようにため息を吐く。

 

 

「笑うところじゃないでしょう……」

 

 

ドッグは帽子を深く被る。

 

 

「いつものことだ。」

 

 

グラッグは仰向けのまま笑う。

 

 

「勝ッタ!!」

 

 

カイウス。

 

 

「笑われるほど酷いか……?」

 

 

兵士。

 

 

「かなり酷いです。」

 

 

「団長、肋骨何本残ってます?」

 

 

ヴォルグラムが地面に寝転がったまま答える。

 

 

「知らん。」

 

 

「数える元気がない。」

 

 

周囲から再び笑い声。

 

 

一人の古参兵がしゃがみ込む。

 

 

「団長。」

 

 

「ん?」

 

 

「ほぼ死んでますね。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「うるせーな。」

 

 

笑いながら答える。

 

 

「肩かせ。」

 

 

右腕が動かない。

 

 

左肩も折れている。

 

 

脚にも力が入らない。

 

 

「身体が動かん。」

 

 

兵士達が笑う。

 

 

「珍しいですね。」

 

 

「団長が弱音吐いてる。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「うるさい。」

 

 

「優しくしろ。」

 

 

「痛ぇんだよ。」

 

 

その言葉に。

 

 

周囲の兵士達が吹き出した。

 

 

「優しくしろだってよ!!」

 

 

「団長が!!」

 

 

「録音しろ!!」

 

 

グラッグも笑う。

 

 

「団長弱イ!!」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「後で殴るぞ。」

 

 

グラッグ。

 

 

「今動ケナイ。」

 

 

また笑い声。

 

 

その光景を。

 

 

ブラッドレイは静かに見ていた。

 

 

普通の軍隊ではありえない。

 

 

上官を笑う兵士。

 

 

隊長をからかう部下。

 

 

血まみれのまま笑い合う戦士達。

 

 

アメストリアの兵士達も遠くから呆然と見ていた。

 

 

若い兵士が言う。

 

 

「……なんだあれは。」

 

 

老兵。

 

 

「家族なんだろう。」

 

 

その時。

 

 

一人の女性兵士がヴォルグラムの肩を支える。

 

 

「立てますか?」

 

 

「無理。」

 

 

「完全に?」

 

 

「完全に。」

 

 

「情けないですね。」

 

 

「知ってる。」

 

 

ゆっくり。

 

 

ゆっくり。

 

 

ヴォルグラムが立ち上がる。

 

 

全身が悲鳴を上げる。

 

 

肋骨。

 

腕。

 

脚。

 

肺。

 

 

全てが痛む。

 

 

それでも。

 

 

彼は笑う。

 

 

「帰るぞ。」

 

 

その時。

 

 

別の兵士がグラッグを担ぐ。

 

 

「重い!!」

 

 

「オーク重い!!」

 

 

グラッグ。

 

 

「筋肉ダ!!」

 

 

カイウスにも二人の兵士が寄り添う。

 

 

「隊長、歩けます?」

 

 

「少しなら。」

 

 

「嘘ですね。」

 

 

「少し無理だ。」

 

 

ドッグは一人で歩いている。

 

 

だが。

 

 

足を引きずっている。

 

 

リリスは魔力切れで顔色が悪い。

 

 

それでも。

 

 

全員笑っている。

 

 

その時。

 

 

ヴォルグラムが振り返る。

 

 

ブラッドレイ。

 

 

アメストリア。

 

 

燃える地平。

 

 

そして。

 

 

ネヴァーモーン。

 

 

彼は少し笑った。

 

 

「ブラッドレイ。」

 

 

「なんだ。」

 

 

「帰る場所ってのはいいもんだぞ。」

 

 

ブラッドレイは黙る。

 

 

ネヴァーモーンの兵士達。

 

 

笑い。

 

支え合い。

 

傷を心配し。

 

冗談を言い合う。

 

 

そこには。

 

 

軍隊ではなく。

 

 

確かに家族がいた。

 

 

ヴォルグラムが血を吐きながら笑う。

 

 

「酒だ。」

 

 

「飯だ。」

 

 

「宴だ。」

 

 

「だから。」

 

 

肩を借りながら。

 

 

ゆっくりと強襲艦へ向かう。

 

 

「帰るぞ、家族共。」

 

 

その言葉に。

 

 

何十人もの兵士達が笑いながら答えた。

 

 

「了解!!」

 

 

「酒だ!!」

 

 

「宴だ!!」

 

 

「団長を医務室へ投げ込め!!」

 

 

「優しく扱え!!」

 

 

「無理です!!」

 

 

笑い声。

 

 

血。

 

 

傷。

 

 

そして。

 

 

生きて帰れた喜び。

 

 

地獄のような戦場の中心で。

 

 

ネヴァーモーンは。

 

 

今日も家族として笑っていた。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第四十九章 完

 

――帰る場所があるから、人は最後まで戦える。――

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