禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第53話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第五十一章

 

《乾杯》

 

 

アメストリア防衛陣地。

 

 

夜が訪れていた。

 

 

燃えていた戦場も静まり。

 

砲声も止み。

 

咆哮も消えた。

 

 

空には灰が舞っている。

 

 

しかし。

 

 

もう誰も恐れてはいなかった。

 

 

怪物は死んだ。

 

 

惑星は救われた。

 

 

家族は帰ってきた。

 

 

傷だらけで。

 

血まみれで。

 

今にも倒れそうな者達ばかりだったが。

 

 

それでも。

 

 

帰ってきた。

 

 

陣地では既に宴の準備が始まっていた。

 

 

巨大な焚き火。

 

 

運び出される酒樽。

 

 

簡易テーブル。

 

 

負傷者用の寝台。

 

 

治療班。

 

 

そして。

 

 

数え切れない兵士達。

 

 

ネヴァーモーン。

 

 

アメストリア軍。

 

 

難民達。

 

 

誰もが忙しく動いていた。

 

 

その中央。

 

 

マルケウスに担がれたヴォルグラムが笑う。

 

 

「降ろせ。」

 

 

「重い。」

 

 

マルケウス。

 

 

「嘘つけ。」

 

 

「お前の方が重い。」

 

 

周囲が笑う。

 

 

その時。

 

 

ヴォルグラムが通信機を受け取った。

 

 

血の付いた手。

 

 

傷だらけの顔。

 

 

それでも。

 

 

ネヴァーモーン団長の声はいつも通りだった。

 

 

「通信を繋げ。」

 

 

オペレーター。

 

 

「全艦回線接続。」

 

 

「レクイエム・オブ・アッシュ。」

 

 

「アメストリア防衛軍。」

 

 

「全部隊接続完了。」

 

 

ヴォルグラムは少し笑う。

 

 

「セトラ。」

 

 

艦橋。

 

 

静かな王。

 

 

老王セトラが答える。

 

 

『聞いている。』

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「お前も艦から降りてこい。」

 

 

少し沈黙。

 

 

『余がか?』

 

 

「飲むぞ。」

 

 

艦橋のクルー達が静かに笑う。

 

 

セトラは数秒黙る。

 

 

そして。

 

 

『……分かった。』

 

 

『たまには悪くない。』

 

 

リリスが笑う。

 

 

「奇跡ね。」

 

 

ドッグ。

 

 

「王様が宴に来る。」

 

 

グラッグ。

 

 

「酒飲ム!!」

 

 

ヴォルグラムは立ち上がろうとする。

 

 

当然。

 

 

失敗する。

 

 

「無理するな!!」

 

 

「団長!!」

 

 

「座ってろ!!」

 

 

兵士達が慌てる。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「うるせぇ。」

 

 

「団長だぞ。」

 

 

ブラッドレイが静かに肩を支える。

 

 

「まだ動くな。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「王様が言うなら仕方ねぇ。」

 

 

そして。

 

 

彼はゆっくり前を見る。

 

 

数千人。

 

 

ネヴァーモーン。

 

 

アメストリア。

 

 

難民達。

 

 

家族達。

 

 

死んだ仲間達の遺体。

 

 

負傷者。

 

 

泣いている者。

 

 

笑っている者。

 

 

その全てを見渡した。

 

 

そして。

 

 

通信回線を開く。

 

 

『ネヴァーモーン。』

 

 

『及び。』

 

 

『アメストリア全軍に告ぐ。』

 

 

静寂。

 

 

誰も喋らない。

 

 

数千人が耳を傾ける。

 

 

ヴォルグラムはゆっくり話した。

 

 

「よくやった。」

 

 

「終わりだ。」

 

 

「俺達の勝ちだ。」

 

 

兵士達が静かに笑う。

 

 

涙を流す者もいる。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「たくさん死んだ。」

 

 

「たくさん怪我した。」

 

 

「俺達もボロボロだ。」

 

 

グラッグ。

 

 

「ボロボロダ。」

 

 

周囲が笑う。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「だがな。」

 

 

「難民は生きてる。」

 

 

「惑星も生きてる。」

 

 

「家族も帰ってきた。」

 

 

「だから。」

 

 

「上出来だ。」

 

 

アメストリア兵達が静かに拳を握る。

 

 

ブラッドレイも黙って聞いている。

 

 

ヴォルグラムの声が少し優しくなる。

 

 

「宴の準備だ。」

 

 

「死にかけの奴も酒を持て。」

 

 

「重傷者も持て。」

 

 

「医者は後回しだ。」

 

 

治療班。

 

 

「駄目です!!」

 

 

周囲が笑う。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「少しくらい死なねぇ。」

 

 

ドッグ。

 

 

「たぶん。」

 

 

リリス。

 

 

「保証しない。」

 

 

再び笑い声。

 

 

そして。

 

 

ヴォルグラムはゆっくり酒瓶を受け取る。

 

 

血の付いた手。

 

 

震える腕。

 

 

それでも。

 

 

しっかり持ち上げる。

 

 

夜空。

 

 

灰。

 

 

焚き火。

 

 

そして。

 

 

静かに言う。

 

 

「死んだ英雄達に。」

 

 

「逝った家族達に。」

 

 

周囲の兵士達が酒を持つ。

 

 

包帯だらけの兵士。

 

 

義手の兵士。

 

 

担架の重傷者。

 

 

誰もが酒を持つ。

 

 

アメストリア軍も同じだった。

 

 

ブラッドレイも酒杯を取る。

 

 

セトラもゆっくり陣地へ現れる。

 

 

老王。

 

 

古き王。

 

 

静かに杯を持つ。

 

 

ヴォルグラムの目がブラッドレイへ向く。

 

 

アメストリア。

 

 

人間達。

 

 

共に戦った新しい戦友。

 

 

そして。

 

 

彼は笑った。

 

 

「そして。」

 

 

「新たな家族に。」

 

 

ブラッドレイの目がわずかに細くなる。

 

 

アメストリア兵達が驚く。

 

 

しかし。

 

 

誰も反対しない。

 

 

セトラが静かに杯を掲げる。

 

 

『良き出会いだ。』

 

 

ブラッドレイが酒杯を持ち上げる。

 

 

「光栄だ。」

 

 

ヴォルグラムが叫ぶ。

 

 

「乾杯!!」

 

 

その瞬間。

 

 

数千人の声が夜空へ響いた。

 

 

「乾杯!!」

 

 

酒が飲まれる。

 

 

笑い声。

 

 

泣き声。

 

 

歌。

 

 

焚き火。

 

 

抱き合う家族。

 

 

肩を叩く戦友。

 

 

死者の名前を語る者。

 

 

笑いながら泣く者。

 

 

そこには。

 

 

種族も。

 

国家も。

 

立場も。

 

存在しなかった。

 

 

ただ。

 

 

同じ地獄を生き抜いた家族だけがいた。

 

 

ブラッドレイは静かに酒を口にする。

 

 

その隣。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「どうだ?」

 

 

「悪くない。」

 

 

「だろ?」

 

 

夜空の下。

 

 

死んだ英雄達はきっと見ている。

 

 

そして。

 

 

ネヴァーモーンとアメストリア。

 

 

二つの家族の宴は。

 

 

朝まで続くのだった。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第五十一章 完

 

――血の繋がりはなくとも、共に戦い、共に笑い、共に杯を交わした者達は家族である。――

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