禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第54話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第五十二章

 

《なんで傷がねぇんだよ?》

 

 

宴は続いていた。

 

 

巨大な焚き火。

 

 

数え切れない酒樽。

 

 

肉を焼く匂い。

 

 

笑い声。

 

 

泣き声。

 

 

歌。

 

 

アメストリア兵達も混ざり、ネヴァーモーンの兵達と肩を組んでいる。

 

 

セトラですら酒を飲み。

 

 

ブラッドレイも珍しく穏やかな表情を浮かべていた。

 

 

そして。

 

 

その中心。

 

 

負傷者用の簡易椅子。

 

 

そこに座るヴォルグラム。

 

 

全身包帯。

 

 

肋骨固定。

 

 

腕も固定。

 

 

身体のあちこちからまだ血が滲んでいる。

 

 

その姿は。

 

 

団長というより。

 

 

重傷患者だった。

 

 

それでも。

 

 

酒は飲む。

 

 

ヴォルグラムが豪快に酒を口へ流し込む。

 

 

ゴク。

 

 

ゴク。

 

 

ゴク。

 

 

そして。

 

 

数秒後。

 

 

包帯から酒が滴った。

 

 

ぽた。

 

 

ぽた。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「……痛てぇな。」

 

 

兵士。

 

 

「当然です。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「飲んだ酒が傷から抜けてる。」

 

 

周囲。

 

 

「ハハハハハ!!」

 

 

「漏れてる!!」

 

 

「団長酒漏れてるぞ!!」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「締まらねぇな……」

 

 

傷口に染みる。

 

 

肺まで痛い。

 

 

肋骨も痛い。

 

 

顔をしかめながら酒を飲む。

 

 

ブラッドレイが横で少し呆れる。

 

 

「安静にする気はないのか。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「ある。」

 

 

「酒飲みながら寝る。」

 

 

「それは安静とは言わん。」

 

 

その時だった。

 

 

焚き火の向こう。

 

 

誰かが豪快に笑っている。

 

 

「ガハハハハハ!!」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「ん?」

 

 

そこには。

 

 

巨大な肉を片手で持ち。

 

 

巨大な酒樽を抱え。

 

 

豪快に飲み食いする。

 

 

グラッグ。

 

 

ヴォルグラムの目が止まる。

 

 

数秒。

 

 

じっと見る。

 

 

グラッグ。

 

 

笑っている。

 

 

肉食ってる。

 

 

酒飲んでる。

 

 

元気。

 

 

そして。

 

 

ヴォルグラムの顔が徐々に変わる。

 

 

「……おい。」

 

 

グラッグ。

 

 

「ン?」

 

 

「お前。」

 

 

「オウ。」

 

 

「なんでピンピンしてる?」

 

 

周囲が静かになる。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「さっきまで俺達と一緒で死にかけてたろ?」

 

 

グラッグ。

 

 

「死ニカケタ。」

 

 

「なんで傷ねぇんだよ?」

 

 

全員。

 

 

グラッグを見る。

 

 

確かに。

 

 

戦闘中。

 

 

肩は砕け。

 

 

腕は折れ。

 

 

肋骨も何本も折れていた。

 

 

だが。

 

 

今。

 

 

傷がほとんどない。

 

 

包帯すら巻いていない。

 

 

グラッグが肉を食べながら答える。

 

 

「治ッタ。」

 

 

沈黙。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「はぁ!?」

 

 

周囲。

 

 

「ハハハハハ!!」

 

 

ドッグが酒を吹き出す。

 

 

「お前!!」

 

 

リリス。

 

 

「そういえば……」

 

 

カイウスがじっと見る。

 

 

「本当に治っているな。」

 

 

グラッグ。

 

 

「酒飲ンダ。」

 

 

「肉食ッタ。」

 

 

「寝タ。」

 

 

「治ッタ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「意味分からん!!」

 

 

アメストリア兵達も驚いている。

 

 

若い兵士。

 

 

「オークってそうなんですか?」

 

 

ブラッドレイ。

 

 

「私も知らん。」

 

 

グラッグは酒樽を持ち上げる。

 

 

「オークダカラ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「納得できるか!!」

 

 

周囲大爆笑。

 

 

マルケウスが腹を抱える。

 

 

「ガハハハ!!」

 

 

「団長だけ死にかけてるぞ!!」

 

 

ドッグ。

 

 

「団長だけ人間だからな。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「くそったれ……」

 

 

カイウスが静かに言う。

 

 

「私はまだ痛い。」

 

 

リリス。

 

 

「私も魔力切れ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「だろ?」

 

 

「普通そうだろ?」

 

 

グラッグ。

 

 

「肉食ウカ?」

 

 

巨大な肉を差し出す。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「治るのか?」

 

 

「タブン。」

 

 

「信用できねぇ。」

 

 

グラッグ。

 

 

「酒モ飲メ。」

 

 

「今飲んでる。」

 

 

「モット飲メ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「死ぬわ。」

 

 

その時。

 

 

グラッグが真面目な顔になる。

 

 

「団長。」

 

 

「ン?」

 

 

「オ前死ナナイ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「なんで?」

 

 

グラッグ。

 

 

「家族ダカラ。」

 

 

周囲が静かになる。

 

 

巨大なオーク。

 

 

単純で。

 

 

豪快で。

 

 

だが。

 

 

その言葉は真っ直ぐだった。

 

 

「団長ガ死ンダラ困ル。」

 

 

「ダカラ死ナナイ。」

 

 

ヴォルグラムは少し笑う。

 

 

「無茶苦茶だ。」

 

 

グラッグ。

 

 

「ソレデイイ。」

 

 

ブラッドレイが静かに酒を飲む。

 

 

ネヴァーモーン。

 

 

この家族達は。

 

 

理屈で動いていない。

 

 

信頼。

 

 

絆。

 

 

家族。

 

 

それだけで。

 

 

死地を越えている。

 

 

ヴォルグラムは酒をもう一口飲む。

 

 

また包帯から酒が漏れる。

 

 

ぽた。

 

 

グラッグ。

 

 

「漏レテル。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「うるせぇ。」

 

 

周囲。

 

 

大爆笑。

 

 

その笑い声は。

 

 

夜のアメストリアにいつまでも響いていた。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第五十二章 完

 

――オークは傷を治し、人間は酒を漏らす。それでも皆、同じ家族だった。――

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