禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第56話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第五十四章

 

《何百年も生きた化け物共》

 

 

夜は更けていた。

 

 

焚き火は静かに燃え。

 

酒樽は何十本も空になり。

 

負傷者達ですら笑っている。

 

 

アメストリア兵達は最初こそ戸惑っていた。

 

 

異形の傭兵。

 

 

オーク。

 

 

混沌種。

 

 

ネクロン。

 

 

デーモン。

 

 

そして人間。

 

 

本来なら同じ場所で酒を飲むことなどありえない者達。

 

 

だが。

 

 

ネヴァーモーンの宴にそんなものは関係なかった。

 

 

傷だらけの兵士達が肩を組み。

 

死んだ仲間の話をし。

 

酒を飲み。

 

笑い合っている。

 

 

その中心。

 

 

ヴォルグラムは包帯だらけのまま椅子に座っていた。

 

 

右腕は固定。

 

胸には包帯。

 

足もまともに動かない。

 

 

その姿は英雄というより。

 

 

ほぼ重傷患者である。

 

 

そして。

 

 

隣では。

 

 

グラッグが五人前の肉を食っていた。

 

 

カイウスは静かに酒を飲んでいる。

 

 

ドッグは煙草を吸っている。

 

 

ブラッドレイは静かにその様子を見ていた。

 

 

ヴォルグラムが酒を飲む。

 

 

ぽた。

 

 

包帯から酒が漏れる。

 

 

グラッグ。

 

 

「漏レテル。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「うるせぇ。」

 

 

周囲が笑う。

 

 

その時。

 

 

カイウスが静かに言った。

 

 

「しかし。」

 

 

「我々も歳を取った。」

 

 

ドッグ。

 

 

「珍しく年寄りみたいなことを言う。」

 

 

カイウス。

 

 

「事実だ。」

 

 

グラッグ。

 

 

「オレ若イ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「お前は黙ってろ。」

 

 

しばらく静かな時間が流れる。

 

 

焚き火。

 

 

酒。

 

 

家族。

 

 

その全てを見つめながら。

 

 

ヴォルグラムがゆっくり笑った。

 

 

「ハハハ……」

 

 

皆が見る。

 

 

彼は酒を口へ運ぶ。

 

 

「伊達に何百年も生きてないからな。」

 

 

その言葉。

 

 

アメストリア兵達が静かになる。

 

 

若い兵士が驚く。

 

 

「何百年……?」

 

 

ブラッドレイも静かに目を細める。

 

 

ヴォルグラムは空を見る。

 

 

赤い空。

 

 

灰。

 

 

遠い星々。

 

 

「若い頃はもっと無茶した。」

 

 

ドッグが笑う。

 

 

「宇宙要塞に単独突撃したな。」

 

 

カイウス。

 

 

「敵艦隊へ生身で乗り込んだ。」

 

 

グラッグ。

 

 

「惑星モ割ッタ。」

 

 

アメストリア兵。

 

 

「えぇ……」

 

 

ヴォルグラムは笑う。

 

 

「昔は本当に馬鹿だった。」

 

 

ドッグ。

 

 

「今もだ。」

 

 

「うるさい。」

 

 

カイウスが酒を飲む。

 

 

「百年以上前だったか。」

 

 

「団長が敵のタイタンへ斧一本で突っ込んだのは。」

 

 

マルケウスが笑う。

 

 

「あの時は死んだと思ったぞ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「俺も思った。」

 

 

グラッグ。

 

 

「生キテタ。」

 

 

「生きてた。」

 

 

ドッグ。

 

 

「いつもだ。」

 

 

しばらく。

 

 

誰も話さない。

 

 

何百年。

 

 

それは人間には長すぎる時間。

 

 

無数の戦争。

 

 

無数の星。

 

 

数え切れない死。

 

 

家族達。

 

 

仲間達。

 

 

失った者。

 

 

看取った者。

 

 

それでも。

 

 

彼らは生きてきた。

 

 

ヴォルグラムの顔から笑みが少し消える。

 

 

「たくさん見送った。」

 

 

「家族も。」

 

 

「戦友も。」

 

 

「仲間も。」

 

 

焚き火が揺れる。

 

 

誰も口を挟まない。

 

 

「だがな。」

 

 

ヴォルグラムはゆっくり笑った。

 

 

「また家族が増えた。」

 

 

その視線。

 

 

ブラッドレイへ向く。

 

 

アメストリアへ向く。

 

 

「だから悪くない。」

 

 

ブラッドレイは静かに酒を飲む。

 

 

「……なるほど。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「長く生きるとよ。」

 

 

「家族が増えるんだ。」

 

 

ドッグ。

 

 

「その分泣くことも増える。」

 

 

カイウス。

 

 

「別れも増える。」

 

 

グラッグ。

 

 

「デモ酒モ増エル。」

 

 

周囲。

 

 

「ハハハハハ!!」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「それは確かだ。」

 

 

彼はゆっくり酒杯を持ち上げる。

 

 

震える手。

 

 

傷だらけの身体。

 

 

何百年も戦ってきた男。

 

 

「まだまだ死ねねぇな。」

 

 

ドッグ。

 

 

「何百年生きる気だ?」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「家族がいる限り。」

 

 

「かな。」

 

 

静かな言葉。

 

 

誰も笑わない。

 

 

ブラッドレイはその言葉を聞く。

 

 

人間。

 

 

寿命。

 

 

老い。

 

 

死。

 

 

自らも自然な人間として死ぬことを願う王。

 

 

その彼の目の前にいるのは。

 

 

何百年生きてもなお。

 

 

家族のために戦い続ける化け物達。

 

 

だが。

 

 

その姿は。

 

 

どこまでも人間らしかった。

 

 

グラッグが巨大な酒樽を掲げる。

 

 

「団長!!」

 

 

「ン?」

 

 

「千年生キルカ?」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「勘弁しろ。」

 

 

ドッグ。

 

 

「その頃には酒代が破産する。」

 

 

カイウス。

 

 

「私は付き合う。」

 

 

マルケウス。

 

 

「俺もだ。」

 

 

リリス。

 

 

「私もよ。」

 

 

ブラッドレイが静かに杯を上げる。

 

 

「その宴が続くなら。」

 

 

「私も参加しよう。」

 

 

ヴォルグラムは少し驚き。

 

 

そして。

 

 

大きく笑った。

 

 

「ハハハハハ!!」

 

 

「ならまだまだ死ねねぇな!!」

 

 

夜空の下。

 

 

何百年も戦い続けた古い戦士達は。

 

 

新しい家族と共に。

 

 

静かに酒を飲み続けるのだった。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第五十四章 完

 

――長く生きたから強いのではない。大切な者を失っても、なお誰かを家族と呼べる者だけが、何百年もの時を生き抜ける。――

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