禁忌混成傭兵団   作:甘めのコーヒー

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第57話

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第五十五章

 

《長生きしろ》

 

 

夜は深かった。

 

 

宴はまだ続いている。

 

 

焚き火の火は少し小さくなり。

 

酒樽はいくつも空になり。

 

歌声も笑い声も少しずつ静かになっていた。

 

 

重傷者達はその場で眠り。

 

包帯を巻かれた兵士達は互いに寄りかかりながら酒を飲んでいる。

 

 

アメストリア兵達も。

 

ネヴァーモーンの兵達も。

 

今は区別なく同じ席に座っていた。

 

 

その中心。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

カイウス。

 

 

ドッグ。

 

 

グラッグ。

 

 

ブラッドレイ。

 

 

焚き火の前。

 

 

誰も大声を出していない。

 

 

戦いの後の静かな時間だった。

 

 

ヴォルグラムは酒を飲む。

 

 

傷が痛む。

 

 

肋骨が軋む。

 

 

肺が痛い。

 

 

それでも。

 

 

酒はうまかった。

 

 

しばらく黙って火を見る。

 

 

パチパチ。

 

 

薪の爆ぜる音。

 

 

遠くの笑い声。

 

 

そして。

 

 

ヴォルグラムはぽつりと言った。

 

 

「ドッグ。」

 

 

「ん?」

 

 

「ブラッドレイ。」

 

 

ブラッドレイが静かに視線を向ける。

 

 

「なんだ。」

 

 

ヴォルグラムは少し笑う。

 

 

「お前らは生身の人間だ。」

 

 

ドッグは煙草を咥える。

 

 

ブラッドレイは黙って聞いている。

 

 

「俺やカイウスみたいに身体を弄ってない。」

 

 

胸を軽く叩く。

 

 

金属音。

 

 

人工骨格。

 

 

補助器官。

 

 

再生装置。

 

 

何度も繰り返した改造。

 

 

戦場を生き残るための代償。

 

 

カイウスも静かに頷く。

 

 

「我々は半分機械だ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「グラッグはそもそもオークだ。」

 

 

グラッグ。

 

 

「オークダ。」

 

 

「マルケウスは化け物。」

 

 

「化ケ物ダ。」

 

 

「リリスも人間やめてる。」

 

 

遠くから。

 

 

「聞こえてるわよ!!」

 

 

周囲が笑う。

 

 

ヴォルグラムは少しだけ空を見上げる。

 

 

「でもよ。」

 

 

「お前らは違う。」

 

 

ドッグ。

 

 

「俺も十分おかしいぞ。」

 

 

「お前は論外だ。」

 

 

笑いが起きる。

 

 

だが。

 

 

ヴォルグラムの目は真面目だった。

 

 

「お前らは寿命が短い。」

 

 

「俺達より脆い。」

 

 

「簡単に死ぬ。」

 

 

焚き火が揺れる。

 

 

ブラッドレイは黙って聞く。

 

 

「でもな。」

 

 

少し笑う。

 

 

「たまに眩しく映るんだ。」

 

 

誰も喋らない。

 

 

「羨ましくなる時がある。」

 

 

ドッグの煙草が止まる。

 

 

ブラッドレイも静かに目を細める。

 

 

ヴォルグラムはゆっくり話し始める。

 

 

「何百年も生きてるとよ。」

 

 

「家族が死ぬ。」

 

 

「仲間が死ぬ。」

 

 

「愛した奴も死ぬ。」

 

 

「弟みたいな奴も。」

 

 

「娘みたいな奴も。」

 

 

「全部見送る。」

 

 

焚き火。

 

 

静かな夜。

 

 

アメストリア兵達もいつの間にか聞いていた。

 

 

「長生きってのはな。」

 

 

「案外いいことばかりじゃねぇ。」

 

 

「取り残される。」

 

 

「覚えてるのは自分だけになる。」

 

 

カイウスが静かに酒を飲む。

 

 

彼も同じだった。

 

 

数百年。

 

 

無数の死。

 

 

無数の別れ。

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「だからたまに思う。」

 

 

「羨ましいってな。」

 

 

ブラッドレイ。

 

 

自然な人間。

 

 

老いる。

 

 

死ぬ。

 

 

短い人生。

 

 

だが。

 

 

その短さが。

 

 

眩しく見える。

 

 

「命に限りがあるから。」

 

 

「お前らは強い。」

 

 

ドッグが笑う。

 

 

「買い被りだ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「違う。」

 

 

「俺達は死ねない。」

 

 

「でもお前らは死ぬ。」

 

 

「それでも前に出る。」

 

 

「それが眩しい。」

 

 

ブラッドレイは酒杯を見る。

 

 

彼が望むもの。

 

 

普通の人間としての死。

 

 

自然な最期。

 

 

ヴォルグラムは笑う。

 

 

「だからな。」

 

 

「無茶は俺達がやる。」

 

 

胸を叩く。

 

 

「改造組。」

 

 

カイウス。

 

 

「同意する。」

 

 

グラッグ。

 

 

「オークモ。」

 

 

遠くからマルケウス。

 

 

「俺もだ。」

 

 

リリス。

 

 

「私もよ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「人外組がやる。」

 

 

「壁になる。」

 

 

「盾になる。」

 

 

「化け物は俺達で十分だ。」

 

 

ドッグが苦笑する。

 

 

「俺は人間なんだが。」

 

 

「お前は例外。」

 

 

周囲が笑う。

 

 

そして。

 

 

ヴォルグラムはブラッドレイを見る。

 

 

「だからよ。」

 

 

少し間。

 

 

「長生きしろ。」

 

 

「頼むぜ。」

 

 

静かな声だった。

 

 

戦場の英雄でも。

 

 

団長でもない。

 

 

ただ。

 

 

長く生きてきた男の言葉。

 

 

「お前らが先に死ぬのは仕方ねぇ。」

 

 

「でも。」

 

 

「なるべく遅くしろ。」

 

 

「出来るだけ笑え。」

 

 

「飯を食え。」

 

 

「酒を飲め。」

 

 

「家族を作れ。」

 

 

「仲間を増やせ。」

 

 

「そして。」

 

 

「出来るだけ生きろ。」

 

 

ドッグは煙草を消す。

 

 

「難しい注文だ。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「俺達よりは簡単だ。」

 

 

ブラッドレイはしばらく黙る。

 

 

アメストリア。

 

 

兵達。

 

 

人間。

 

 

寿命。

 

 

その全てを考える。

 

 

そして。

 

 

静かに酒杯を上げた。

 

 

「約束はできん。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「知ってる。」

 

 

「だが努力はしよう。」

 

 

その言葉。

 

 

ヴォルグラムは笑った。

 

 

「それで十分だ。」

 

 

ドッグも酒を持つ。

 

 

「俺も簡単には死なん。」

 

 

グラッグ。

 

 

「死ンダラ殴ル。」

 

 

「死んでるだろ。」

 

 

「殴ル。」

 

 

カイウスが珍しく笑う。

 

 

「それは怖いな。」

 

 

焚き火の炎。

 

 

星空。

 

 

灰。

 

 

そして。

 

 

傷だらけの家族達。

 

 

ヴォルグラムは最後の酒を飲む。

 

 

傷から少し漏れる。

 

 

ぽた。

 

 

グラッグ。

 

 

「漏レテル。」

 

 

ヴォルグラム。

 

 

「うるせぇ。」

 

 

皆が笑う。

 

 

何百年も生きた化け物達。

 

 

だが。

 

 

彼らが羨ましいと思うのは。

 

 

限られた命を燃やしながら。

 

 

それでも笑って生きる人間達だった。

 

 

その夜。

 

 

ネヴァーモーンとアメストリア。

 

 

二つの家族は。

 

 

静かな焚き火の前で。

 

 

未来の話をしていた。

 

 

まだ見ぬ戦い。

 

 

まだ見ぬ宴。

 

 

そして。

 

 

いつか訪れる別れのその日まで。

 

 

出来るだけ長く。

 

 

共に生きることを願いながら。

 

 

《WARHAMMER 40,000》

 

NEVERMOURN

 

第五十五章 完

 

――長く生きる者は死を知る。短く生きる者は命の輝きを知る。だから彼らは互いを羨み、そして家族になる。――

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