幻想からの帰還者   作:兼永一真

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増えた面倒事

翌日、先日までとは全く別の喧騒が校舎を包む。そう、新入生勧誘の時期である

 

風紀委員は勿論パトロールに駆り出される。

 

強引な勧誘へ警告しつつ向かったのは闘技場である。

 

「お前もか」

 

達也と闘技場にて鉢合わせた。

 

「俺は通りがかっただけだが」

 

「ーーここはだいたい面倒事が起きる。監視しておいた方がいい」

 

「剣道部と剣術部か」

 

「そうだ。非魔法クラブと魔法クラブでありながら活動はよく似通ってる。だから昔から仲が悪いんだよやつらは」

 

剣術部の2年桐原と壬生と呼ばれた女子生徒が決闘を始める。

 

一進一退の攻防。実力がかなり拮抗しているように見受けられる。

 

「あんな荒々しい剣だったかしら」

 

横で見ていたエリカが何か微妙な顔をしている。

 

「確かに剣道の動きじゃないな」

 

どっちかと言えば、剣術というか喧嘩殺法というか、競技者の動きではないな

 

だが、決闘はどんどんエスカレートしていっている。

 

「まずいな」

 

「あぁ」

 

魔法を使わないかと監視を継続していると、桐原と目が合った。

 

「あぁ、なるほど」

 

ーー相術といって忍びは相手の顔を見ただけで性格が分かる。一瞬とはいえ目が合った、それだけで考えていることは大雑把にわかる

 

「ーー達也は桐原を。俺はほかの部員を抑え込む」

 

そういった直後、桐原が魔法を使用する。高周波ブレード、殺傷ランクもそこそこ高い魔法だ。決闘で使う術ではないな

 

「いくぞ」

 

達也が、高周波ブレードの術式をキャンセルする。その隙に俺が二人の武器を酔夢想で霧散させる

 

「ーー風紀委員?しかも二科生なのに」

 

「とりあえず、今やったことは撮影済みだ」

 

「風紀委員でも部活連でも連れていけ。俺は逃げも隠れもせん」

 

「潔いのは結構ですが、なんでこんなことを?ーーいや、違いますね。そうまで重要ですか?剣ってのは」

 

「当たり前だ。壬生たちの剣を俺は取り戻したかった」

 

「ーーそれって、」

 

何か重要情報な気がした。だが、そうは問屋が卸さない。

 

「二科生ごときが偉そうに!!」

 

予想通り、剣術部の連中が絡んできた。俺が一歩、前へと出る。

 

「達也。5秒息止めろ」

 

CADを扇へと変形させる。有効範囲に部外者はいない、なら手加減の必要はない

 

「幻術 霞扇の術」

 

扇で巻き起こされた風の匂いと感触、さらに扇の動き。嗅覚、触覚、視覚。五感のうち三つに作用する幻術を発動する。

 

剣術部の連中は痙攣し、泡を吹きながらバタバタと倒れていく。結構強い幻術ではあるのだが、ここまでなるほどか?

 

「あぁ、いやそうか」

 

こいつらは人だ。人間相手であれば一部の例外を除けばこれはオーバーパワーなのである。

 

ーー三か月じゃリハビリ期間として足りなかったらしい

 

「土遁 黙殺縛りの術」

 

土の拘束具で部員たちを一気に拘束する。

 

「どうなってる。千草」

 

「桐原先輩が壬生先輩との決闘中に高周波ブレードを使用。それを取り押さえたところ、剣術部の部員たちから抵抗があったので制圧しました」

 

騒ぎを聞いて駆けつけてきた摩利に達也が状況を説明する。

 

「それならあいつはなんだ」

 

「え?」

 

1人明らかに服が違うやつがいた。あれは

 

「司甲?悪い悪い」

 

拘束を解いて声をかけるが反応がない。いくらなんでも効きすぎてないか?と疑問に思いつつ身体を揺する。

 

「起~きろ!夕方だぞ」

 

揺すっているとコロンと物音がした。

 

見ると人里の人たちが水筒に使っているような竹筒。それがコロンと転がっていた。

 

「ん?」

 

転がっている竹筒の側面に何かが見えた。あれは、呪印?

 

それを認識した瞬間に竹筒がガタガタと揺れ動く。

 

「ーー千草!」

 

同時に達也も気づいたらしい。あれは不味い

 

「風遁 烈風掌!」

 

竹筒を闘技場の壁ごと外に吹き飛ばす。あれと室内で戦うのはまずい

 

だから外で倒す

 

「おい、あっちは表だぞ」

 

だが、方向をしくじった。壁の向こうでは勧誘をしている奴らが多くいる

 

「全員逃げろ!」

 

その声に周囲の人間が気づいた瞬間に、竹筒が砕け散る。

 

黒い影が空へと舞い上がり、その姿を現す。

 

「やっぱ管狐か」

 

管狐という存在は幻想郷で見たことがあるし、多分俺も使役できる。だが、

 

「デカいな」

 

管狐というのは本来、イタチくらいの大きさなのだがこいつは10mくらいある。

 

周囲の人間は逃げるものと動かないものに分かれている。

一方の管狐も困惑しているのか攻撃を加えるそぶりを見せない。

 

「摩利、ここら一帯の人間にあいつを刺激しないように伝えろ。あいつは召喚式を解して送り返す」

 

臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前。九字と共に印を結び、集中力を高める。魔力と肉体の結びつきを意識しながら次の工程へと移る。

 

再度印を結び、解を発動させようとしたその時だった。

 

誰かが乗ったボードが管狐へと暴走しながら接近している。

 

「ほのか!?」

 

先日、出会ったばかりだがまさかこんなところで再開するとは。

 

「ーーじゃねぇ。あの進路、管狐に襲われる」

 

管狐は前足を振り上げている、このままじゃ校庭にミンチが出来上がる。

 

だが、瞬身を使ったところでこの距離じゃ間に合わない。なら、距離を短縮すればいい

 

「奥義 八重霧の渡s」

 

そこまで言いかけた時、ほのかの姿が消えた。振り下ろされた前足によってボードが砕かれる。一瞬焦るが背後から聞こえた声でそれは消える。

 

「チグサッチ。なに?あれ」

 

「ナイスタイミングだ。菫子」

菫子がテレポートで助けたんだろう。

「管狐、使い魔の一種だ。ある程度ダメージを与えれば召喚式のセーフティが機能して消える。とっとと倒すぞ」

 

俺はCADを箒に変形させてその上に立ち、菫子はそのまま。同時に浮き上がり、外へと向かっていく。

 

「風紀委員は避難指示を」

 

困惑しながらも摩利はそう呼び掛けている。管狐の周囲は既に人がいなくなっているが、弾幕の余波を気にしてる暇はないからありがたい。

 

「念力 サイコキネシスアプリ!」

「風遁 風輪の術!」

 

回転する多数の粗大ごみと風によって模られた魔力の輪が管狐へと当たる。だが、管狐は大したダメージを食らったように見えない。

 

「ならこれでどうだ」

反撃として振り下ろされた前足を躱しながら術を発動する。

「奥義 風輪分身の術!」

 

再度放った風輪を分身させる。皮膚を切り裂けてはいないが痛がった様子は見せた。

 

「効いてはいるな」

 

管狐は怒り狂う。自身の周囲に火の玉を発生させ、それを飛ばしてくる。

 

「ハイドロキネシス マンホール!」

 

菫子が超能力で水を操ってマンホールを破裂させ、火の玉を消火する。

 

「水遁 挿し水の術」

 

吹きあがった水を超高速で射出し、管狐の四肢に風穴を開ける。

 

管狐は空中でのたうち回り、土煙と共に地面をえぐる。

 

「水遁 水陣柱」

 

再度水を利用し、水の結界を展開する。これで雷遁が使いやすくなった。

 

「雷遁 震天雷!」

「念力 テレキネシス電柱!」

 

雷を圧縮した砲弾と通電したままの電柱が、管狐へと放たれる。

 

水にまみれた管狐には効果抜群。2倍どころか4倍弱点だ

 

管狐は痛みからか聞くに堪えない鳴き声を上げ始める。あんまりにもうるさいので水陣柱の周りに防音結界を張る。

 

しばらくするとポンっと煙と共に管狐の姿が消えた

 

「消えたか」

 

「誰が呼んだの?あれ」

 

「司甲があいつの入ってた竹筒を持ってた。尋問、最悪拷問だな」

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