幻想からの帰還者   作:兼永一真

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入学編
二度目の入学式


朝の鍛錬を終え、先生に雨夜千草の事を尋ねる

 

「知っているとも。彼は13歳の時に起きた伝統派の反乱を一人で鎮圧したんだ。その時の戦い方が凄惨だったことからついた異名は、雨夜の狂気」

 

「失踪のことは?」

 

「ーー基本的には君と同じくらいの情報だ。でも妙な噂なら聞いたことがある」

 

「なんですか?その噂って」

 

「曼荼羅に行っていたとそう言っていたらしい。」

 

「曼荼羅?」

 

「雨夜家の伝統派の中でも特に古きを尊ぶ家でね。忍術の根源である逃げるための術、遁甲術では逃げ続け、現世からも逃げたその先をそういうそうだ」

 

「先生はその曼荼羅に行っていたと思いますか」

 

「分からない。でも、雨夜家が総力を挙げても髪の毛1つ見つからなかった、というのは事実だ」

 

 

 

今日は入学式。俺にとっては二度目だが、正直ワクワクしてる。

 

「いってきます」

 

朝の支度を済ませ、家を出る。

 

ちなみに家はよくあるマンションの一室などではなく、雨夜の別邸だ。本家は比叡山にあるのだが、俺が一校に入学するのに伴ってここに別邸が建てられた

 

 

 

校門をくぐったところで歩調を緩める

 

2,3年ぶりのこの景色をしっかりと目に焼き付けておきたい。

 

歩いていると、前で人の流れが鈍る。見ると一組の男女が言い争っていた。

 

「納得できません!何故お兄様が補欠なのですか?入試の成績は、お兄様がトップだったじゃありませんか!本来ならばわたしではなく、お兄様が…」

 

少々うるさいその声を流しながら、生徒会本部へ向かう。摩利に呼ばれたからだ

 

「それで何の用ですか?渡辺風紀委員長?」

 

「ここに呼び出された時点で分かっているだろ」

 

実際、見当はついている。多分当たってると思うし

 

「風紀委員への推薦だろ?受けるよ」

 

「そうか。なら大丈夫だ」

 

そろそろ入学式が始まるため、急いで会場に向かう

 

 

講堂に入ると、すでに半分以上埋まっていた。1回目と同じように一科は前に、二科は後ろにと分かれている。誰に命じられたわけでもないのにだ

一科と二科の差別撤廃という七草の目標はどうやらうまくいってないらしい。それだけ差別意識が根深いということでもあるのだろう

 

「こっち空いてるぞ」

 

席を探していると、声をかけられた。お言葉に甘えて隣に座る。

 

「ありがとう。俺は雨夜千草。千草でいいよ」

 

「ーー司波達也。達也でいい。宜しく」

 

なんか僅かに間があった気がするが無視する。もしかしたら復学生ってことで知られてたのかもしれない

 

「あの、お隣空いてますか?」

 

そう声を掛けられる。振り返ると3人の女子生徒がいた。

 

メガネを掛けた大人しそうな少女と、赤毛の活発そうな少女と、

 

「ーー菫子?」

 

「ーーチグサッチ?」

 

宇佐見董子。かつて幻想郷を破壊しかねない異変をおこした外の人間。最近は夢で来れるようになったらしくてたまに会っていたのだが、

 

「「なんでいるの?」」

 

完璧にハモった。赤毛の少女が笑いをこらえている。

 

「ーーだって前に17歳って、」

 

「二年間失踪しててね。それで今年復学してきたのよ」

 

あぁ。と納得し菫子は席に着く。

 

「あ、アタシは千葉エリカ。エリカでいいわ」

「柴田美月です。美月でいいですよ」

「宇佐見菫子。董子で構わないよ」

「雨夜千草。千草でいいよ」

「司波達也だ。達也で構わない」

 

自己紹介を済ませたところで入学式が始まった。

 

七草も立派に生徒会長やってんだな~と思っていると、新入生答辞が始まる。1回目は七草だったなと思っていると、女子生徒が出てきた。

 

「司波深雪ってことは、達也の妹?」

 

「あぁ」

 

「え、新入生総代の司波さんって、司波君の妹なの?双子?」

 

「違う」

 

この大人数の前だと言うのに、一切動揺や緊張は見られない。感心していると、

 

「この新たな学び舎では、同じ生徒として別け隔てなく学び、高めあいたいと思っています」

 

深雪の言葉に、達也は体を強張らせる。

 

「お前の妹、なかなか肝が据わってるな」

「後で言わなくてはだな」

 

菫子とエリカは察していそうだが、美月は察していなさそうだ。その純粋さは大切にしてほしい

 

 

 

式も終わり、IDカードを受け取る。ものの見事に全員1-Eだ

 

「三人はホームルーム覗いていくの?」

 

「私はパス」

「俺もめんどいからいかない。達也は妹だろ?」

「ああ。多分そろそろ…」

 

「お兄様、お待たせしました」

「大丈夫だ。待ってない」

 

深雪の背後にいた七草に手を振ると、手を振り返してくる

が、七草の隣にいる男生徒、たしか服部副会長だったか。その副会長がすっごい形相でこちらを睨んでいる。

 

「深雪さん、詳しい話はまた日を改めて。」

 

そう言った後、俺の方に向き直ってくる

 

「久しぶりね。雨夜くん」

 

「大体3年ぶりとかだろ。まぁそこそこ会ってなかったな」

 

「そうね。それで彼女は?」

 

ん?と横を向くと菫子がいた。目で話を振ると、自己紹介を始める

 

「宇佐見菫子です。よろしくお願いします」

 

「生徒会長の七草真由美です。ななくさと書いて、さえぐさと読みます。よろしくね」

 

「それで、これからどうします?」

 

「帰るけど」

 

その後の展開はおおむね予測できた。だから先んじて言っておく

 

「一緒に帰るか?」

 

「よろこんで」

 

エリカの視線を躱しながら帰路につく。

 

 

 

「それで、お前はなんで一校に?.......いや、やっぱいいわ」

 

なんか碌な返答が来そうにないのでやめておいた。多分、一校でしか読めない資料とかが目当てなんだろうけど

 

「そういえば、入試の成績ってどうでした?」

 

「筆記はボロカス、実技は歴代最高。」

 

「私は逆ですね。筆記はかなり良かったんですけど実技はちょっと........」

 

「お前の場合はしょうがないだろ」

 

菫子はサイキッカーなのだ。魔法だって多少は使えるが、本領はそこではない。

 

「それじゃ。また会おう」

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