幻想からの帰還者   作:兼永一真

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差別と諍い

翌日、菫子と共に教室に入り、適当な席に座る。

 

右前では達也がすごい速度でキーボードを打ち込んでいた。

 

その様子を眺めていると、達也の目の前の席の男子と目が合う。彼も達也のことを見ていたらしい。

 

達也が彼のほうを向くと、彼は話し始める。

 

「あぁ、すまん。いまどきキーボードオンリーなんて珍しいもんでな」

 

「慣れればこっちの方が速いんだ」

 

それには同意できる。河童たちのコンピューターがキーボードだったから始めたが、慣れれば打ち込んだ方が早い。

 

逆に菫子はよく分かっていなさそうだ。基本はキーボード使わんからな

 

「へ~。俺は西城レオンハルトだ。レオでいい」

 

名前から察するに海外との混血、クォーターか。この国際情勢でクォーターとは珍しい。

 

「司波達也だ。俺のことも達也でいい」

「オーケー達也。それで、そっちは?」

「雨夜千草だ。千草でいい」

「私は宇佐見菫子。菫子でいいよ」

 

「千草ね、オーケー。ところで、俺の得意な魔法は収束系の硬化魔法なんだが、二人はどうなんだ?」

 

こういうのはご法度というイメージがあったのだがそんなことないのか?いや、まぁ俺の家が忍びの家系だからなのか、得意魔法だとそうでもないのか。よくわからん。

 

「忍術だ。忍びの家系なんでな」

「私は稀代のサイキッカー。もちろん緒能力だよ」

「実技は苦手でな。魔工技師を目指してるんだ」

「頭良さそうだもんな。お前」

そうしていると予鈴が鳴る。席に着くと1人の教職員が入ってきた。

二科は教職員がつかないのでは?と思っていると自己紹介が入る。彼女は小野遥、学校のカウンセラーらしい。

 

「彼女がか、」

「どうかしたかい?」

「いや、なにも」

 

菫子の追及をかわす。彼女は家の情報にあった一校にいる公安だ。別にどうこうする気はないけど

 

「どっか見学行こうぜ」

 

「だったら工房に行ってみねぇか?」

レオが言う。

 

「闘技場とかじゃないんだ」

 

そう菫子が聞き返すと、レオがニヤリと笑う。

 

「そう見えるか?」

 

「どう見ても機械いじってるより、暴れてる方が似合うでしょ」

エリカが即答する。失礼ながら同感である。

 

「硬化魔法は武器術とも相性がいい。だったら、自分で使うもんの構造や整備を知っとくのは別に変じゃねえだろ」

 

ムッとした顔をしながらレオが答える。案外進路とか適正についてしっかり考えてるんだな

その後、美月も賛同し6人で教室を出た。

 

久しぶりに見た工房は記憶よりずっとデカかった。妖怪の山に匹敵しそうな大規模な実験施設。この規模だと工房というより工場だな。

 

「ーーあれ、一科か」

 

一科生は先生に連れられて見学している。俺も行ったなと思っていたが、レオとエリカの目には露骨な差別として映ったらしい。

 

思ったよりも時間が経っていた。が、中途半端な時間だ。

 

「昼食にするか」

 

全員が賛成し、食堂へと向かう

 

食堂へとつながる並木道はかなり混んでいた。この時期の新入生は勝手がわからず、どうしても混むのだろう。

 

「今のうちならなんとかなるか」

 

「ならないと困る。6人で立ち食いはごめんだぞ」

 

レオがそう言う。なかなか見つからなかったが、ようやくいい感じのテーブルを発見した。

 

そうして昼食が始まる。半分ほど食べた食べ進めたころには、レオはもう食べ終えていた。

 

「お兄様」

 

その声に視線を向けると、深雪がいた。

クラスメイトを連れて、真っ直ぐ達也たちのテーブルへ歩いていく。

 

達也の顔に目立った変化はない。

だが深雪の方は、最初からそこへ来るつもりだったのがよく分かった。

 

「ご一緒してもよろしいでしょうか」

 

「構わないが」

 

そう答えた瞬間に深雪の背後にいた一科生の空気が変わる。

 

「司波さん、もっと広い席に行こう」

 

一科生の一人が深雪にそう声をかけた。この先の発言が1回目の風紀委員の経験から何となく分かった俺は菫子に指示を出す。

 

「二科なんかとかかわるべきじゃない。けじめはちゃんとつけるべきだよ」

 

ほらこうなった。呆れつつ対処を始める

 

「えっと、君の名前を聞いてもいいかな?」

 

「僕か?」

 

「そう君だよ。君」

 

「森崎駿だ」

 

「森崎君ね。じゃあさ、何できみは深雪の行動に口を出すんだい?」

 

「二科の分際で口答えする気か?」

 

「残念ながら、俺は一科だったことがあるんでね。それに同じことを例えば、深雪から言われたとしてどう答える?けじめの一言で押し通す気じゃないよな」

 

「それは........」

 

手に持った箸を僅かに揺らしながらそう返すと答えに詰まる。

 

「な?結局、お前は理論的な反論を何一つできないの。これじゃ、二科の方がましだね」

 

「お前!」

 

森崎は胸倉へとつかみかかり、盛大に空振る。

 

 

 

「バカめ。それは幻術だ」

 

離れた席でそう呟く。

 

「なにをしたんだ。魔法を使っていたようには見えなかったが」

 

「そりゃつかってないからな。あれは幻術 枝垂れ柳、簡単に言うならコインに糸通してやる催眠術のすごい版」

 

本来は武器の揺れや指の動き、瞬きなどのわずかな動きから幻術を見せるものだ。正確に言うなら忍術を併用する場合もある。

 

「忍術ってのはそんなのもあるのか」

 

「そりゃあるよ。忍びに得意はあってもいいが、苦手は作るな。そう教えられたからな」

 

そうして昼食は終わる。この後も起こるであろう諍いに俺はため息をつくのだった

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