50歳のおじさんがJKにTS転生したのでネットアイドルしてみる話   作:アラフィフ大活躍

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ちょっと短めです。
通勤時間で読めるので結果オーライという事で……


十八話 待望の新入部員(仮)

 

 

「あ、そこの一年女子ー!部活入らない?」

 

 そういえば部活動とかノーマークだった。

 

 などと、俺は眼前で勧誘のチラシを差し出す先輩女子を見ながら思ったのだ。

 

 美璃と高橋さんがやってきた怒涛(?)のお泊まり会から数日過ぎた放課後。昇降口を目指す俺の前に立ちはだかるように先輩が。

 

 2年生だというのはジャージの色でわかる。

 

「女子ダンス部……」

 

 受け取ったビラには、手作り感満載の文字やイラスト。しかし、楽しそうな雰囲気と熱量は伝わってくる出来。きっとこの先輩やダンス部のメンバーは真面目だったり、いい人なのだろう。

 

 ただし!

 

「申し訳ありませんが、ダンスはあまり得意じゃないので遠慮しておきます」

 

 俺はダンスなんて全然向いてない。

 

 以前合同ライブ出演の際、美璃が特訓してくれたおかげでちょっとは様になったけど……付け焼き刃にもほどがあった。

 

 とても高校の部活動で踊るだなんて、烏滸がましいよ。配信する時間も減ってしまうだろうし、今の俺にはそこまでの余裕も無い。

 

 誘ってくれたのは嬉しいけどね。

 

「ふーん?得意じゃないのに、こんなに踊れるわけ」

 

 そう言いつつ、先輩は件の合同ライブの映像を見せて来た。小さな画面の中で、渾身のダンスを披露するひまりん……つまり俺の姿が。

 

「あっ!?」

 

「見つけちゃったんだよねぇ。人生相談系ネットアイドル、ひまりん」

 

 この人、俺の配信を見た上で勧誘してきたのか!さも偶然かのようにチラシ配ってきたけど、俺の帰りを待ち構えていたのだろうか。

 

「他人の空似でしょう」

 

 俺は踵を返す。だが

 

「ふふーん。逃がさないわよ?星野ひ、ま、り、ちゃん」

 

 先輩はぬらりと俺の背後に回り込み、肩を組んで画面をアップで見せてくる。

 

「……こんなにも見る人の心を動かす熱いダンス、そして抜群のルックス!!まさに、高校ダンス界に現れた新星!!!」

 

 すんごい熱量だ。

 

 俺の拙いダンスをここまで見込んでくれるだなんて。

 

「ふふーん。偶然チラシ配ってたと思った?」

 

「て、言うことは違うんですね?」

 

「三日前から狙ってたのよ」

 

「怖い!!」

 

 全然気が付かなかったし。

 この三日間、どこからか見られていたのか。

 

「申し遅れたわねっ!アタシは女子ダンス部二年、副部長の瀬戸前 千夏よっ。貴女のセンス、野に埋もれさすにはあまりに惜しいの」

 

「は、はぁ……しかしですね、あれはクラスメイトの白石さんが教えてくれたから上手くいっただけで、俺はそれまでダンスなんてやった事も無かったですし」

 

 誘うならどう考えても美璃でしょ!

 

「一年の白石……って、美璃?」

 

 瀬戸前先輩が腕を組む。

 

 美璃のこと、知っているとは。

 

「美璃をご存知で?」

 

「やっぱりか!ヤツとは小学生の頃同じダンススクールだったんだ」

 

「えっ、そうだったんですか!?」

 

 ダンス部の副部長とかつて切磋琢磨していたとは。そりゃあ美璃のダンスが上手いはずだよ。

 

 教えるのだってうまいし、尚更俺より美璃を勧誘すべきでは?

 

「美璃が教えたなら納得。でもね、貴女には光るものがあるのっ。そもそも才能が無かったら、ここまで踊れるようにならないし」

 

「えーと。仮にそうでも、教えた側の美璃を誘うのが先じゃありませんか?」

 

 俺の一言に先輩はカッと目を見開く。

 

「この瀬戸前千夏を見くびらないでくれ。とっくに勧誘している。でも、やる気ないでーすって言ったんだ、あの子は……!」

 

 プルプルと拳を振るわせ、悔しそうに唇を噛んでいた。とっくに撃沈済みだったのか。

 

「そうでしたか。それは残念でしたね」

 

「でもまさか、君たちにそのような繋がりがあったとは。……ならば尚更、ひまりちゃんを諦めるわけにはいかなくなったなぁ?」

 

 どう言う事?

 

 先輩はニヤッと嫌な微笑みを浮かべて。

 

「クラスメイトで、ダンスを教える仲なんでしょ?なら、ひまりちゃんが入部したら美璃もついてくる可能性があるよねっ?」

 

 あー、皮算用してらっしゃったのか……。抱き合わせ商法みたいな発想だけど。

 

「そう都合よくいくとは思いませんが。なんなら、俺も入部するつもりありませんし!」

 

 女子ダンス部の皆さんが手作りしたチラシを俺は丁寧にお返しする。

 

「な、何故っ!?我々ダンス部はこんなにもひまりちゃんを欲しているというのに」

 

 返されたチラシを大事そうに抱える先輩。

 

 ここは正直に、こちらも誠意をもってお断りするべきだね。

 

「瀬戸前先輩」

 

 俺は姿勢を正して、先輩の目を見た。

 

「誘ってくださって、本当にありがとうございます。でも、ごめんなさい。今の俺には配信活動が大事なんです。まだ不慣れで、学校生活との両立が精一杯でして」

 

 笑顔のまま固まる瀬戸前先輩。

 

「配信しながら部活すればいいじゃん!」

 

「いえ、それは出来ません。中途半端な気持ちで入部する方が、部のみなさんに失礼ですから」

 

 前世で学んだことがある。

 

 『考えておきます』や『また今度』は、相手に余計な期待を持たせるだけだ。

 

 だから、断るならちゃんと断る。これが俺なりの誠意なのだ。

 

「なので……本当に嬉しかったですけど、ごめんなさい」

 

 俺はぺこりと頭を下げた。

 

「う、うぅぅ……金の卵が逃げていく……」

 

 瀬戸前先輩は崩れ落ち、しばらく床を見つめていたが、やがて大きく息を吐いて立ち上がる。

 

「そこまで真っすぐ言われたら、今日のところは引き下がるしかないかぁ」

 

「ありがとうございます」

 

 わかってくれたか。

 

「でも!」

 

 ビシッと人差し指を突き付けられる。

 

「アタシは諦めないからね!」

 

「えぇっ!?」

 

 わかってないじゃん!?

 

「部活はいつでも見学自由!気が変わったら真っ先にダンス部へ来ること!」

 

 そう言うと瀬戸前先輩は大切なビラを強引に俺の胸ポケットへねじ込み、くるりと踵を返した。

 

「また勧誘するからねー!ひまりちゃーん!」

 

「まだ来るんですか……」

 

 元気よく手を振りながら去っていく背中を見送り、俺は胸ポケットのビラを取り出す。

 

 ……これはしばらく、放課後は気を付けて帰った方が良さそうだ。

 

 

 今日のところは引き下がる。

 

 そう言って本当にその日だけ引き下がる人っているんだ。

 

 つまり、翌日。瀬戸前先輩はまたも俺と、今日は美璃の前にも立ちはだかった。

 

「ふっふっふ。リベンジよ、ひまりちゃんっ!そして今日は美璃もいるのね!!」

 

「げぇー。セトゥーちゃんじゃん。そのチラシ、性懲りも無くダンス部の勧誘?」

 

 美璃は舌を出して露骨に嫌そうな態度。

 

「人の顔見て、げぇーはやめなさいよ!?」

 

「あははっ。けどま、ひまりに目をつけたのは流石女子ダンス部副部長だねぇ」

 

「でしょっ!?美璃の弟子だったとは思わなかったけどさっ」

 

 小学生の頃一緒にダンスしてただけあり、この二人は相当仲良さそうだなぁ。

 

「めげないですね、瀬戸前先輩。そのガッツがあれば、営業向いてますよ!」

 

 諦めない不屈の精神。営業マンには必要な才能だ。

 

 瀬戸前先輩こそ、俺が会社にいた頃ならスカウトしたい人材ですっ。

 

「営業って、サラリーマンとかの……あの営業?」

 

 先輩はポカンとしている。

 

「はい!」

 

「え、なんで女子高生からそんな評価されるの?」

 

 当然の疑問だった。

 

 ……また俺は失言を。

 

「あー、それ通常運転だから」

 

 美璃がさらっと答える。

 

「ひまり、たまに昭和のサラリーマンみたいなこと言うし」

 

「そ、そんなにおじさんみたいかなぁ」

 

「【営業向いてる】とか【ノルマ】とか、語彙が会社員なんよ」

 

「……でもさ。それって社会に出たら求められるものではあるよ?」

 

 俺はせめてもの反論として、この二人が社会人になった時にふと思い出して貰えるよう正当性を主張しておいた。

 

「……ほらね?」

 

 なのに、美璃が肩をすくめる。

 

「なんか、ひまりちゃんを勧誘していいか微妙かも……?いやいや、あのダンスならおじさん成分くらい目をつぶるべきで……」

 

 瀬戸前先輩が俺の勧誘にちょっとでも不安を覚えてくれたみたいだからヨシッ!!

 

 ……自分で言ってて悲しいけどさっ!

 

 

 

 

 

 

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