50歳のおじさんがJKにTS転生したのでネットアイドルしてみる話 作:アラフィフ大活躍
仕事でミスって傷心して更新遅くなりました。
初代デジモンのbraveheartを聴いてことなきをえました。
何日かして、声かけられムーブもおさまってきた頃。俺は朝の登校時に下駄箱に手紙が入ってるのを目にした。
「これは」
昔からお馴染みの、ラブレターまたは果し状の受け渡し方法だ。簡素な便箋。愛の告白であれば、もうちょっと気を遣っても良さそう。だとしたら不良からの呼び出しだろうか。
登校ラッシュ時間、周囲には人も多い。
まさかその場で開封するわけにもいかず。サッとスクールバッグにしまい、一旦最寄りの女子トイレへ。適当な個室へ入ってから、ようやく中身を確認してみる。
『星野さんへ
今日の放課後、特別教室棟三階の東階段のところに来てもらえませんか? 相談したいことがあります。できれば一人で来てください』
内容はシンプル。が、書いた人が誰なのかもわからない。悪戯の可能性もあるかな? りあらちゃん効果で俺の活動を知った生徒が、偽の呼び出ししてきたりとか。その場合は三ツ橋先生案件だが。
もちろん、真面目なお悩み相談で、藁にもすがる思いで俺に手紙をくれたのかもしれない。学生が誰にも頼れず困っているのだとしたら、それは助けてあげたい。ここはとりあえず待ち合わせにくらい行ってあげとくかな。一人で来てくださいって書くあたり、なるべく人には知られなくない悩みなのかも。
守秘義務なんて無いけど、美璃や高橋さんには内緒にしておこう。ひとまずね。
授業を受けながらも相談の内容が気になって気もそぞろだったのは許して欲しい。なんといっても、画面越しの相談じゃない。リアルな、同じ学校で学ぶ生徒に頼られているのだから。
別に、配信では適当なお悩み解決してるわけじゃあ無いけどね!
◇
そうして、放課後。特別教室棟の東階段三階が呼び出しポイントだったな。放課後ともなると人気が少なく、ちょっとした話をするにはうってつけ。……かつあげするのにもうってつけだけど、そこは考慮しないでおく。
普段生徒や先生がメインで昇降するのは西階段で、東階段はよほど端の教室に用事がある人じゃないと利用しないのもポイント。
賑わう放課後の校舎にも関わらず、周囲に喧騒は無い。果たして、相談者は本当にいるのだろうか。
帰りを共にしようと声かけてきた美璃や高橋さんには用事があると伝えたので、ここにいるのは指定通り俺一人だ。
踊り場に到達したところでは、見知らぬ女子生徒が手すりに腰掛けていた。この子が手紙の主?
違ったらどうしようか。
声をかけるのを躊躇っていると。
「あ! 本当に来てくれたぁ、星野さぁん」
間違いない。
目の前の女生徒が待ち合わせ相手だ。
俺は向こうの顔を知らないので、向こうから話しかけてくれないと始まらないよね。
「初めまして。君が……靴箱に手紙を入れたんだね」
「そうですぅ! 来てくれてぇ、ありがとうございますぅ」
なんだか語尾を伸ばしてる?
喋り方がちょっとのんびり屋さんっぽい、そんな印象を受けた。
結構、校則違反では? という見た目の子だ。
というのも、シルバーのアクセサリーなんかつけてて、髪も一部染めている。スカートも短いし、これは生徒指導の先生に目をつけられてるかも?
「改めて、星野ひまりです。相談してきたって事は、配信見てくれてるって考えてもいいのかな?」
全く知りもしない相手に、ランダムで相談は持ち掛けないよね。
「1-E、二本柳優子です。いきなりこんな形で相談しちゃって、ごめんねぇ」
二本柳さんか、かっこいい苗字だな。
「そんな気にしなくていいよ。それで、早速だけど相談って何かな? ここで話せる内容?」
「んっとね、簡単にだけここで話しておこぉかな。今日すぐに解決するものじゃないから、ひとまずはざっくりと」
すぐに解決しない……か。てことは、悩みが解決するまでちょこちょこ経過観察しなきゃいけない感じ?
なんにせよ、相談の内容がわからないと助けられるかどうかも決められないか。
「私としても、悩みを解決出来そうかどうか概要を聞いてから判断したいかな。力になれなさそうだと困るし、人に聞かれても良いように話してくれると嬉しいかも」
重要な情報を聞かされて、今更受けられないとは言わせない! ってなっても困るし。
「わかったぁ。ホントに端的に言うとね、気になる人がいるのぉ。他校の男子なんだけどね」
顎に人差し指を当てる二本柳さん。恋愛相談……かぁ。俺が最も苦手とする分野だ。
やっぱり美璃に助力を求めなきゃかも。その前に二本柳さんの許可は得ないとだけど。
まさか、高橋さんのように配信者に恋してるとか言わないよねぇ。
「はあ……その人って、実在してる?」
「してるしてる!」
「現代日本にいる?」
「現代日本にいるよぉー!」
「配信者ですか?」
「配信者ではないかなぁ。星野さん、急にアキネイターみたくならないでよぉー」
実在してたし、配信者でもなかった。第二の高橋さんとはならなさそうで何より。
「なるほど。それで、私に相談したいというのは?」
今の俺は女子高生。
気になる男子とやらが好きそうなもの、場所、ご飯を男目線に聞きたいとかじゃないだろうし。
まさか星野ひまりが恋愛上級者と思われてるわけは無さそうだが……
「実は優子ねー、同じクラスに中学からの親友がいるんだけどぉ。気になってる男子っていうのも同じ中学でぇ」
「ふぅん、親友と狙ってる男子が同じ中学……」
これは、親友と好きな人が被っちゃって友情と愛情どっちを取ればいいんだみたいな展開か!? そしそうなら三角関係の定番だ。ドラマや漫画でしか知らないけどさっ。
「でぇ、優子の親友とその男子は春から付き合い始めたのね?」
……ん?
「親友の彼氏と付き合うには、どうしたら良いのかなって相談したかったのー。星野さんってぇ、人生相談系ネットアイドルなんでしょ? なんか良い案とか知らないかなって」
「ちょっとタンマ! 君の親友と、その男は既に恋人なんだよねっ!? 二本柳さんが出る幕は無くない?」
「えぇー? だって優子もその男子は好きだしぃ、しょーがなくない?」
そんな昼ドラみたいな恋愛は高一でしないで欲しいが。
「……じゃ親友との関係を壊してまでその男と付き合いたいのかな? 君は。同じクラスなんだよね、どうなっても気まずいと思うけど」
階段の踊り場でする話でも無いし!
「だったら、優子が既にメンタルヤバいんだけどー。茉莉奈のやつ、ずっとデートの話とかばっかしてきてさぁ」
「茉莉奈……てのは、同じクラスの?」
「そう! 優子が羨ましがってるのも知らずに、幸せそうにさぁ」
ははぁ、少しだけ見えてきたな。
当時はわからないが、高校に入ってその男子と離れ離れになった二本柳さんは、今まさに恋を自覚したのだろう。でも、物理的な距離はいかんともしがたい。中学時代よりその男子とは触れ合える機会も減ったはずだ。そんな中で親友が楽しそうにその男子の話をしてくれば、面白く無いのかもね。
「だとしても。君がその男子と付き合ったら、絶対に茉莉奈さんとは喧嘩になると思うよ」
略奪されたというならまだしも。
略奪したら? なんて言うつもりは無い。
「だからぁ、そうならないように星野さんの知恵を借りたいんじゃないかよぉー」
「無理に決まってるでしょっ! 第一、相手の男子……ええっと」
名前がわからない。
「琉宇久」
「え?」
「優子が好きな男子の名前! 琉宇久っていうの」
今どきな名前ですね。
「じゃあ、そのルークくんも彼女がいるのに二本柳さんには靡かないんじゃない? 仮に靡いたとしたら、それはそれで幻滅とかしないかい」
それで付き合えたとしても。そういう男はまた違う女の子に惚れちゃうんじゃないかなぁ。
「優子の愛はその程度じゃ冷めませんよぉー。つかね、聞いて?」
なんだい。
予想より重たい相談内容だったので、これ以上長くなるならファーストフードにでも行きたいよ。
「こないだ、琉宇久が優子の部屋に遊びに来たんだけどぉ」
……え。
彼女がいるのに、別の女の子と遊ぶかね? 普通。それも、部屋にまであがるとは。
や、冷静になるんだ。
これは、この間まで中学生だった男女の話。
成人ならそれはもう浮気の証拠にもなりかねない状況だけど、普通にスマシスやっただけかもしれないじゃん。
子供だし。
「そうなんだ。高校生になっても、仲はいいんだね」
子供なのだから、部屋で遊ぶくらい普通だろう。
俺は自分に言い聞かせて落ち着きを取り戻す。
すると、二本柳さんは自分の唇に人差し指を添えて。
「でしょー。しかもそん時ね? チューしたの。これって脈あるくなーい?」
「何やってんだよルーク!?」
俺は反射的に、見ず知らずの男子高校生にブチギレてしまった。
「わっ!? 急に大声ださないでよぉー。いくら人が来ないからって、油断は出来ないじゃん。茉莉奈が通るかもだしぃ」
大声くらいは許してほしい。
「二本柳さん、一つ確認したいんだが」
「ん、なになにぃ?」
この恋愛相談は既に知恵の輪くらいこんがらがってる。なので、一つ一つ解いていかなきゃダメだ。
「そのキスなんだけど、君とルークくん。どちらからしたのかな?」
「それは、琉宇久からだよぉ」
おい、ルークくん。
君は彼女の親友の部屋にあがって、自分からキスしたのか?
ここで二本柳さんからキスをしたなら、彼女を叱って終わりでわかりやすかった。だがしかし、ルークのせいで俺の不得意分野の恋愛相談が更に複雑になってしまったんだが!?
俺は深く、深く息を吐く。
そして。
「そんな男はやめておけよ。どうせ人生で初めて彼女が出来て、浮かれて俺ってモテるんじゃねとか勘違いして女の子にグイグイいくような勘違い状態になってるだけだろ、知らんけど。彼女がいるのに不義理な真似をするような奴と付き合っても、君はもちろん親友の茉莉奈さんまで不幸になるのは確定だよ。恋と友情のどちらを取るかで君は迷っているみたいだけれど、今回の相談の本質はそこじゃない。君と茉莉奈さんの目が曇っているから、まずはそこを晴らそうか。つまり、君の親友が碌でも無い男と付き合っているけどどうしよう、という問題に落ち着くんじゃ無いかな、この話はつまるところ」
俺の口からは、自然と大量のルークくん否定語をガトリングのように吐き出してしまっていた。
べ、別に前世でモテる男の人や遊び慣れしたチャラ男を憎んでて、それに対する苦言が口をついたわけじゃないんだからねっ。
「星野さんっ? 急に早口でどしたのぉ!? 優子、全然聞き取れなかったんだけどっ!」
幸い聞き取られてはいなかった。
「あ、いやぁ、なんでもない。ただ、ルークくんとの関係はちょっと冷静に考えた方がいいかなってさ」
「そう、なんだ。それが星野さんの感想ね。……でも優子、好きって気持ちは抑えられなさそう」
好きな男子からキスされれば無理もない。人間の感情なんて、スイッチ一つで切り替えられるものでもないし。
確かにこれは、今日この場で解決はしない問題だね。
「それとぉ、やっぱ茉莉奈のことも普通に好きではあるしぃ。ほんとーに困っちゃうなぁ」
「……そっか」
これが会社であったなら。
ルークくんが転勤して終わったんだけどねぇ。