白髪褐色狂剣少女は俺を立派な人斬りに育てたい   作:フォン・デ・ペギラパギラ

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12話:猛毒のチョコレート

 少し硬いベッドの上に、巧は座っていた。

 

 結局のところ、彼はコピアの隠れ家に戻ってきていた。

 

 住処など無い。

 自分のケツさえ拭けそうにない。

 そんな己にうんざりする。

 

 すっかり夜の帳が下りた窓の先を見つめていると。

 

 ――ととん、と軽やかな足音。

 

 コピアが巧の隣に座った。

 体温を感じるほど、やけに近い。

 

「はいっ……、これおいしいよ」

「なんだ、これ」

 

 甲斐甲斐しく差し出されたカップを手に取る。

 

 中身が波立って、油灯の火の光をぬるりと乱反射させている。

 

 ――脳が疲れていた。

 特に気を留めず、一口喉に流し込んだ。

 

「――っ、ゴホ、ゴホッ!」

 

 鋭い刺激。

 咽がひっくり返るかと巧は思った。

 

「酒かよ!」

 

 巧は涙目で、濡れた口元を拭う。

 

「わ、ごめん……!」

 

 コピアは、まだ腫れている垂れ目を更に垂らした。

 すっかり弱気になってしまったのか、ただ咄嗟に謝ってみせる。

 

 どこからともなく布を取り出すと、巧の口元を拭おうと近づいてきた。

 

「おい、いいって……」

 

 そっと突き放すと、コピアはしゅんとした。

 

 ――巧はかぶりを振る。

 

 彼女の笑顔を取り戻したくなると同時に、単純で愚かな自分が嫌になる。

 でも、勝手に口が動いた。

 

「……これ、確かに美味いな」

 

 ぱあ、と花が咲いた。

 

「そうでしょ……!? 前の仕事の時に、せっかくだし貰ったんだ! どうせ持ち主は()()()()()()し、いいよね」

 

 そう言って可愛らしくはにかんだ。

 ころりころり、と鈴が鳴るような声が耳に纏わりつく。

 悪気など何処にもない。

 

 巧は小さく息を吐く。

 その言葉の真意を確かめたくも無い。

 

 しかし、目を逸らしてもその朗らかな笑みが瞼の裏から離れなかった。

 

 ――しばらく。

 

 巧がちびちびと酒を呷る音だけが響く。

 

 コピアからなるべく視線を外して、ゆっくりと流れる時間を感じていた。

 

 狭い部屋。

 暖かな油灯の火。

 

 少しスモーキーなカビ臭さに混じる、隣の女の甘い香り。

 

 コピアは突然、するりと巧の腕を抱いた。

 

「……離せ」

「ねえ」

 

 聞きやしない。

 コピアはジッと仄暗い上目遣いで刺してくる。

 

「やっぱり、ボクのこと嫌い……?」

「なんだそれ」

「……嫌いなんだ」

 

 巧は腕を軽く振るってコピアを剝がそうと試みる。

 しかし、噛みついたように離さない。

 

 巧は観念したように続けた。

 

「……ああもう、別に嫌いじゃないって」

 

 その言葉を聞き届けてもなお、コピアは不安げにこちらを見つめている。

 小さな手のひらが、そっと巧の手を取った。

 

 かと思うと。

 ――急に。

 

 巧の手を、ホットパンツの中に招き入れた。

 

 突然のことだった。

 目を見開いた。

 ぎょっとした。

 

 だがその間にも、指先の感触がコピアの肌を滑る。

 奥に、奥に滑る。

 

 ふわりとした毛の感触。

 やわらかな股肉を掻き分け、太ももの奥に隠れた()が――。

 

「何してんだオマエ!!」

 

 勢いよく引き抜いた。

 

「……んっ」

 

 何かに擦れたのか、悩ましい小さい声を上げるコピア。

 

 指先がジンジン痺れて、熱を持っている。

 

「お前、なにを、いい加減に……!」

 

 あまりの事に口が回らない。

 言葉に詰まった瞬間を目掛け、コピアが被せてくる。

 

「だって、()()()()()だったから……」

「……〜っ!」

「いっぱい、ボクの()()、見てるよね……?」

 

 じっと見つめられる。

 

 粘り気のある目。

 甲高くも、とろんとした声色。

 

 意思とは関係なく、下腹部の奥からずんずんと何かが突き上げてくる。

 

 脳は彼女から離れようとしているのに、体が動かなかった。

 

「――いいんだよ?」

 

 何かを言い返そうとしたが口が動かない。

 

 鼻腔が焼けるほど熱い。

 鼻の穴が倍になっているかと思うほど広がっているのが分かる。

 

 コピアはベッドから腰を上げ、すぐ目の前に立つ。

 

 そして、前触れもなく――ホットパンツを脱ぎ下ろした。

 すとん、と何でもないように落ちる。

 

 すぐ目前に、露わになる。

 部屋の灯りを褐色が艶かしく弾き、なだらかな稜線を描いている。

 

 香りが強くなる。

 甘い、甘い、チョコレートのような。

 

「いっぱい、見て……ね?」

 

 蕩ける声。

 喉が痛いほど渇き、思わず唾を飲む。

 

 見上げると、コピアのオレンジ色の両眼が、まるで誘蛾灯のように妖しく煌めいている。

 

 ――その色は、欲情ではない。

 鈍い巧でも分かった。

 

 男を求めているのではない。

 獲物を絡め取ろうと、見定めている。

 

 それがはっきり分かるのに――拒否ができない。

 

「……さわっても、いいよ? ボクの初めて、全部、あげる」

 

 ――ぎし、と。

 ベッドを軋ませながら、巧に覆い被さってくる。

 

 頭上から落とされた声には、吐息が混じり、思わずクラクラする。

 “あげる”と言いながら奪いにきている、と巧は理解した。

 

 だが。

 

 とうとう、押しのけることは出来なかった。

 

 甘く熱い褐色の肌触り。

 吐息の奥の、生の人間の匂い。

 初めての女の味。

 

 この女の。

 

 ――肌は。

 ――舌は。

 ――体液は。

 

 腰が浮くほど、美味(うま)かった。

 

 あらゆる場所に指を沿わず度、この女は愛らしく小さく鳴いて――巧を沼底へ引き摺り込んでいった。

 




うおおおおおおおセーフセーフセーフセーフセーフ!!!!11
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