ぐちゃドロ系サイコ女は俺を立派な人斬りに育てたい   作:フォン・デ・ペギラパギラ

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6話:甘ったるい女

 目が覚めると、コピアの寝顔が目の前にあった。

 

「……」

 

 女のやわらかい感触。

 チョコレートのような褐色の肌から香る、甘ったるい匂い。

 

 沼を行くように、気張らねば“ずぶり”と意識が沈みそう。

 

 無理やりに体を起こそうとすると、コピアの絡み付いた手足が邪魔をした。

 

「……コイツ」

 

 指の一本一本を、おっかなびっくり引きはがす。

 起こすのは忍びない。

 

 自由になると、巧はよろけながらベッドから立ち上がった。

 

「ふう……」

 

 ずっと頭が痛い。

 当然ながら、寝つきも良くなかった。

 

 窓枠まで歩くと窓を静かに開け放った。

 新鮮な空気を期待したが、真昼の湿った風が顔を叩いた。

 それでもいくらか心地良い。

 

「……」

 

 階下の通りを見下ろす。

 見ずぼらしい小屋や崩壊寸前のバラックと、いかにも厳重で怪しい店舗が違和感なく同居している。

 

 コピアから聞かされた通り、ここはそういった地域だった。

 

「んぅ……」

 

 悩ましい声が耳につく。

 甘くて、ドロドロで――いつまでも聞いていたくなる高い声。

 

「タクミぃ、起きたの……?」

 

 衣擦れの音。

 巧が振り返ると、コピアが目を擦りながら、女の子座りで、ベッドの上にちんまりと収まっていた。

 

 その佇まいは、どこか彼女らしくない気品があった。

 

 上品で薄手のネグリジェ。

 肌の色が透けている。

 異常に短い裾から、艶のある褐色の太ももが投げ出されている。

 

 巧は無言で、窓の外に目を背けた。

 

「よ、っと」

 

 コピアは、猫が段差を飛び下りるように身軽に立った。

 そしてちょこちょこ、と歩み寄って、巧に自然と寄り添った。

 肩に、寄りかかる。

 

「外、見てたの?」

「……おい、離れろ」

「ぶー、いいじゃーん……、ダメぇ?」

 

 巧は口元を歪めた。

 

 はっきりと拒絶するべきだ。拒絶したい。

 ……だというのに、口も体も言うことを聞かなかった。

 

 巧は誤魔化すように、少しの焦りの中で言葉を作った。

 

「それで、“霧中の真実(ブリューム・ヴェルム)”って何なんだ」

 

 昨日聞きそびれたそれ。

 

「えーと、裏稼業?」

 

 巧は視線で、もっと語れと促した。

 

 コピアは眉を可愛く曲げる。

 

「ボクもよく知らないんだよ、雇われ剣士だし……。一緒に仕事するときもあったから同僚はちょっと知ってるんだけど、上の方がどうなってるかとか、サッパリ」

 

 コピアは肩を竦めた。

 

「犯罪組織……」

「そうそう! 金払いはいいけど、抜けらんないからチョットめんどくさい感じ。仕事中も監視が付くし」

 

 ――後から気付いたけどね。

 と、コピアは小さく続けた。

 

「さぁーて! とりあえず、買い出ししよっか」

 

 うーん、と唸りながらコピアが伸びる。

 しなやかな筋肉。背から腰までの女の稜線に、思わず色香を感じた。

 

「買い出し?」

「うん。ココ、誰にも割れてはいないと思うんだけど、とっとと遠くにズラかった方がいいと思うんだよね。勘だけど」

 

 コピアが人懐っこい顔を向ける。

 

「旅だね! “組織”から抜けれたら、行きたいところがあったんだ~」

 

 朗らかに未来を描いてみせる。

 しかし巧は、未だについていけないでいた。

 

「逃げる……のか」

 

 俯く。

 窓枠に溜まった汚れが目につく。

 ずしり、と。両肩に荷物が乗ったままだった。

 

 ――恩を仇で返した、卑怯者。

 

 そんな言葉が過る。

 しかし、己一人で何ができる。

 

 葛藤が胃の中で暴れている。

 

「タクミ……?」

 

 コピアの透き通った瞳がじっと見てくる。

 心の底まで覗くような、綺麗な色をしていた。

 

 コピアは、にっ、と笑うと、巧から軽やかに少し離れた。

 

「タクミ、ちょっとこっち見て」

「……?」

「――はい!」

 

 そう言うと。

 何の前触れもなく。

 

 ――ネグリジェを脱ぎ払った。

 

 艶美ながら幼い肢体が、太陽の元に晒される。

 

 褐色のなだらかな稜線。

 重力に逆らうように控えめに張ったふくらみから、頬張りたいほどぴんと張った桃色の■■。

 

 僅かなくびれ。

 

 鼠径部の影が深くなるところに、整えられた■毛と――思わず目が吸い寄せられる、悩ましい縦の割れ目。

 

 しなやかで鍛えられていながら、女の柔らかさはそのまま。

 

 ほんの一瞬なのに瞼の裏に焼き付く。

 殺人鬼の体とは思えないほど、美しかった。

 

 今頃、ひらりと舞いながらネグリジェが床に落ちた。

 

「おいっ!」

 

 巧は咄嗟に目を逸らした。

 頬が熱くなるのを感じる。

 

「元気出た?」

「クソ……っ、近づくな。やめろって!」

 

 にまにまと、垂れ目を更に垂らして巧の視界に入ろうとする。

 

 ひとしきりグルグルと巧の周りを回って遊んだ後、コピアは悪戯な笑みを浮かべたまま言った。

 

「着替えるけど、見てていいからね」

「いい加減にしろ……!」

 

 巧は衣擦れの音を聞きながら、陰鬱な景色に視線を逃がした。




ワイは限界に挑むで。
あんま読まれてないしイケる。
怒られたら考える。
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