たった一つの道標 〜暁美ほむらが鹿目まどかと別れるまで〜 作:厨二少女
まどかと付き合い始めて、二日目。
昨日はまどかと付き合えたことに対する嬉しさで気持ちが落ち着かなくて、なかなか眠れなかった。
その影響で起きるのが普段より遅れたことに、時計を見て気付く。
――まどかを待たせてしまってるわね。
私の脳裏にそんな考えが過ぎり、多少の罪悪感を覚える。
私とまどかは付き合い始めた。だから私は登校もまどかと出来ると考えていたけど、これだとまどかを待たせてしまっている可能性がある。
私は急いで支度をして、家を出るとまどかの自宅に向かう。
――まどか。間に合えばいいけど……。
そんな一抹の不安が過る。
気にし過ぎかもしれないけど、付き合い始めた翌日にこんなにも情けないことになるとは思わなかった。
まどかと合流次第、謝罪する必要があるわね……。
私は出来る限りの速さで走る。
まどかの恋人として、あの子に迷惑は掛けたくない。
――そして、まどかの自宅に着いた。
インターホンを押す。
ガチャリ。
家の扉が開いて――そこから出てきたのは、まどかじゃなかった。
――まどかのお母さん曰く、もうまどかは登校したらしい。
……私が迎えに来たことに驚いてたけど、私とまどかの関係についてはまだ説明してなかったのかしら?
それには多少、思うところがあったけど……女性同士で付き合ってるなんて、禁忌の関係だから仕方ないとも思う。
私は急いで、学校に向かう。
まどかが自宅から学校に向かうルートについては、知っている。ずっとあの子を見守り続けたもの、知らないわけがない。
そして必死に走り続けて、まどかの背中が見えた。
でもそこには一緒に並んでる生徒も居て。
あの水色髪のボブカットは――美樹さやか。
私とは何かと相性の悪い存在が、まどかと仲良さそうに談笑しながら登校していた。
――ゴクリ。
唾を呑み込む。
まどかが誰と登校するのも自由なはずなのに、少しモヤモヤとした感情を覚える。
――そんな感情、決して良くないとわかってるのに。
そして今のまどかに話しかけるのは、緊張する。
私が話し掛けることにより、まどかの楽しみを邪魔してしまわないか……そんなことが脳裏を過ぎる。
「あの……ま、ど……」
喉から声を絞り出そうとしても、上手く発声出来ない。
だけどまどかは、振り向いてくれて。
「おはよう、ほむらちゃん。良かったらほむらちゃんも一緒に登校する?」
まどかが優しく声を掛けてくれる。
ああ、やっぱりこの子は本当に優しい。
「将来のお嫁さんと仲良く登校してたのに、このタイミングで来るなんてやるわねー。とりあえずあんたも一緒に来る?」
美樹さやかが、揶揄うような声音でまどかを“将来のお嫁さん”なんて口にして、少し嫌悪感を覚えた。
悪気がないことはわかってる。そしてこの言動から、まどかはまだ美樹さやかにも私たちの関係を伝えてない。……仕方ないけど、何も思わないと言えば嘘になる。
それでも美樹さやかも同行を許可してくれた。
それはもしかしたら、彼女なりの気遣いかもしれなくて。
「ありがとう。……それなら、そうさせてもらうわ」
私はまどかや美樹さやかと一緒に学校に向かった。
だけれど私は二人の会話に上手く入れなかった。……あまりそういう談笑は、得意じゃないから。
まどかや美樹さやかが気遣って話題を振ってくれることはあるけど、いまいち上手く返せなくて。
そんな自分に嫌気がさす。
美樹さやかのような性格なら、きっとまどかを楽しませられたのに。
そんなことを考えながら、結局あまり話せないまま学校に着いた。
休み時間、まどかに会いに行こうと思うけど――その時には既に美樹さやかや志筑仁美が居て。
その輪の中に入る勇気がなくて、そして学校が終わる。
帰宅時。
まどかが私の方に駆け寄ってくる。
「ほむらちゃん、顔色が悪いけど大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。それより、美樹さやか達と帰らなくていいのかしら?」
「うん。今日はほむらちゃんと帰りたいなって。ダメかな?」
「……ありがとう、まどか。もちろん嬉しいわ」
そして私とまどかは一緒に帰宅することになった。