辺境惑星召喚――コロニストたちの異世界漂流記   作:ホゲフガ

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第11話:皇国の算盤

 

 

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## ## 第11話:皇国の算盤、怪物の市場

 

### 1. 覇府の黄昏

 

夕暮れの街道を、十数両の豪奢な馬車列が静かに、しかし厳かに進んでいた。

街道の先には、第三文明圏最大級の帝都――パーパルディア皇国首都エストシランドが、血のように赤く染まる空の下にその巨大な輪郭を浮かび上がらせている。

 

幾重にも築かれた、大砲すら跳ね返す白亜の三重城壁。

黒い煤煙を吐き出し、皇国の軍事力を支える広大な蒸気式工業区。

数千基の魔導灯に絢爛と照らされた、大理石の石畳が続く大通り。

そして、都市中央の小高い丘にそびえ立つ、第3文明圏の中心を自負する皇城。

 

数百年にわたって第三文明圏の頂点に君臨してきた大国の威容は、地方都市ミューズとは比較にならないほどの精神的圧迫感を周囲に放っていた。だが。

最高級の絹で仕立てられた馬車の窓からその景色を眺めるレミールの表情は、少しも晴れなかった。

 

(……気に入らない。美しくないわ)

 

彼女の脳裏にはミューズの平原、外交モジュールの窓から見えた、あの巨大な白銀のグラヴシップ――プロスペリティ号の姿が、網膜に焼き付いて離れなかった。

空を裂いて音もなく飛来した白銀のシャトル。鋼鉄の巨躯。一瞬にして、皇国の誇る1個大隊を「戦闘」にすら至らせず壊滅させた未知の兵器群。

そして何より。あの藍色の瞳をした狐耳の女、CEOタドコロ。

 

思い出すだけで、レミールは無意識のうちに扇子を握る指先に力を込め、美しい眉をひそめた。

あの女は終始、穏やかだった。礼節もあり、言葉遣いも極めて理性的だった。だが、その態度、声音、視線の端々から、隠しようもなく滲み出ていたのだ。

 

『自分たちはパーパルディア皇国などという前近代国家より、遥かに上位の文明生命体である』という、絶対的な確信が。

しかも最悪なことに、それは空虚な傲慢ではない。実際に、彼女たちは国家を容易に消滅させられる「暴力」と「富」をその細い指の中に握っている。

 

「……不愉快極まりないわね」

 

レミールは小さく吐き捨てた。正面の特等席に座るロウガン少将が、静かに、しかし重く口を開く。

 

「ですが陛下。感情は脇に置くべきです。あれは……我が国がこれまで滅ぼしてきた『蛮族』の類では断じてありません。無視すれば、我が国が滅びます」

 

「分かっているわよ」レミールは不機嫌に腕を組んだ。

 

「だから腹立たしいの。コントロールできない駒が、喉元に現れたのだから」

 

通常ならば、国家の論理は簡単だった。辺境に現れた不遜な反乱勢力など、軍を動員して物理的に圧殺すればそれで終わる。だがコホートは違う。

 

力で押し潰そうにも、現状の軍事ドクトリンでは逆立ちしても勝算が見えない。かと言って放置すれば、彼らの持ち込む「便利すぎる毒」によって、属州の統治構造が内側から腐り落ちていく。

 

実際、ミューズ周辺ではすでに致命的な異変が起き始めていた。

過酷な労働を強いられていた小作民や亜人の奴隷層は、皇国の役人に隠れてコホート製の頑丈な農具を求め始め、抜け目のない商人たちはコホート製の奇跡の薬品(抗生剤)を密輸して本国へ転売し、莫大な富を得ている。

一部の村落にいたっては、皇国への納税を堂々と拒否し、コホートとの物々交換のために労働力を優先し始めているという。

 

これは「軍事侵攻」ではない。資本による国家の浸】だ。

しかも恐ろしいのは、コホート側に「侵略している」という悪意や自覚が、おそらく薄いことだった。あの狐耳の女たちは、ただ自社の合理性に基づいて、不要な在庫を処理し、利益を追求しているだけ。

 

ただそれだけの結果として、パーパルディアが数百年かけて築き上げてきた恐怖の支配構造が、紙屑のように無力化されていく。

 

「……本当に『企業』なのね」

 

レミールは苦々しく呟いた。国家なら分かりやすい。領土を求め、民を支配し、軍を進める。だが企業は違う。利益のために動き、利益のために他者と協力し、利益のために新しい市場を創造する。そしていつの間にか、その経済の網で国家そのものを窒息させ、飲み込む。その底知れない不気味さを、レミールは本能的に感じ取っていた。

 

やがて馬車列は巨大な皇城門を通過し、大理石で磨き上げられた皇城中庭へと滑り込んだ。待機していた数百名の近衛兵たちが一斉に直立不動の姿勢を取り、銃を掲げて敬礼する。

 

「レミール皇妃殿下、ご帰還――!」

 

重厚な真鍮の扉が開かれる。暖かな魔導灯の火に照らされた回廊を、レミールはドレスの裾を激しくなびかせながら、迷いなく突き進んでいく。

目的地はただ一つ。この帝国の絶対的な意思決定者、皇帝ルディアスの執務室であった。

 

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### 2. 理性の天秤

 

皇帝執務室。

重厚な黒檀の机の奥で、皇帝ルディアスは静かに、前線から届いたばかりの機密書類へ目を通していた。

 

20代半ば。鋭い灰色の瞳。贅肉の一切を削ぎ落とした、冷徹な軍人を思わせる顔立ち。豪奢な皇帝衣装を纏っていても、その本質は冷徹なリアリストだ。歴代の暗愚な皇帝たちとは異なり、彼は徹底した「合理主義者」として知られていた。

 

ノックの音もなく扉が開き、レミールが入室する。

 

「戻ったわ、ルディアス」

 

「ご苦労」ルディアスは書類から目を離さず、短く答えた。

 

無駄な挨拶や慰労の言葉はない。互いに形式だけの儀礼を嫌うことを知っているからだ。

 

「報告の書状はすでに精読した。ミューズ西方に出現した未知の武装集団“コホート・コーポレーション”との接触。および、先遣大隊500名の完全壊滅。……そして、飛竜12騎の全損についてだな」

 

「……紙の報告書だけでは、あの怪物の本質は伝わらないわ」

 

レミールは机の前に立ち、真っ直ぐに皇帝の灰色の瞳を射抜いた。

 

「実際に奴らと対峙した者として進言するけれど、あれはただの脅威ではないわ。国家の存亡に関わる『最悪の疫病』よ」

 

「どの程度だ?」

 

「少なくとも、従来の戦列歩兵や飛竜による戦争観では、爪の先ほども測れない程度には」

 

ルディアスの羽ペンの先が、ピタリと止まった。彼はゆっくりと顔を上げ、妻であり、帝国の最高外交官でもある女の顔を見つめた。

 

「具体的に言え」

 

「我が方の最高戦力である飛竜部隊が、交戦距離に達する前に、空中で一瞬にして肉片に叩き落とされたわ。地上部隊も、敵の姿すら見えない地平線の彼方からの連続砲撃によって、接敵前に組織が崩壊。そして――」

 

レミールは思い出すように唇を噛んだ。

 

「コホートの連中は、それを『大した戦闘ではない』……ただの『業務上の突発的な接触トラブル』という顔で、冷淡に処理していたわ」

 

執務室に、重苦しい静寂が落ちる。

ルディアスは感情を一切表に出さなかった。だが、その灰色の瞳の奥で、膨大な思考の歯車が高速で回転を始めたのをレミールは察知した。国家の規模、世界の軍事バランス、経済への影響、そして皇国の権威。すべてを天秤にかけ、計算している。

 

「奴らの目的は何だ。領土の割譲か、あるいは属州の独立か」

 

「市場の拡大よ」レミールは即答した。

 

「少なくとも現時点では、彼らは土地の支配に興味はないわ。ただ、自社の商品を売り捌き、原材料を買い叩くための『物流網』を求めている」

 

「商人国家、というわけか」

 

「ええ。だからこそ、軍隊よりも厄介なのよ」彼女は声を低くして続けた。

 

「すでに周辺の属州民は、皇国の恐怖による統治よりも、コホートがもたらす『利益』と『利便性』を信仰し始めているわ。武力による搾取システムが、商売という名の合理性に敗北しつつあるの」

 

その瞬間。ルディアスの灰色の目が、鋭く、極限まで細められた。

軍隊が1個消えたことよりも、その統治基盤の浸食こそが、帝国にとって真に致命的な一撃であると、この合理主義の皇帝は即座に見抜いたのだ。

国家とは、武力という暴力装置だけで維持できるものではない。民衆が「従う他ない」という諦念とシステムへの依存を失えば、内側から瓦解する。

 

「……御前会議を開く」

 

ルディアスは静かに立ち上がった。その背後で、皇帝の象徴である深紅の外套が揺れる。

 

「軍部、外務局、財務局、植民局の主要閣僚をすべて招集しろ。この件は、もはや地方の武装衝突ではない。皇国全土の戦略を書き換えるべき事態だ」

 

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### 3. 覇権の御前会議

 

その夜。

エストシランドの皇城・中央戦略会議室には、パーパルディア皇国の権力を握る中枢の人間たちが、一堂に集結していた。

 

中央に鎮座する、楕円形の巨大な黒檀の会議机。壁面を埋め尽くす世界地図と、細密な軍用地図。天井からは魔導照明の淡い白光が降り注ぎ、室内の高級官僚たちの顔を青白く照らしている。

皇国陸軍参謀本部、海軍省、植民局、財務局。そして、外交を司る外務局。

 

皇帝ルディアスが上座に腰掛け、鋭い視線で全員を見渡した。

 

「始める」

 

短い一言で、会議室の空気が張り詰めた弦のように引き締まる。

 

「ミューズ方面に出現した未知の勢力“コホート・コーポレーション”についての対応策を策定する。現状は、現地守備隊1個大隊の壊滅、ならびに飛竜12騎の喪失。さらに、東部属州における深刻な『経済の無許可浸透』を確認している」

 

ざわり、と席上が小さく揺れた。だが、その反応は一様ではなかった。

 

「陛下」

 

最初に傲然と口を開いたのは、第一外務局長エルトだった。

 

長い金髪を後ろで厳格に束ねた彼女は、皇国内でも有名な超強硬派の女官僚だ。その端正な顔には、中央の絶対的な権力に胡坐をかいた、隠しきれない傲慢さが張り付いている。

 

「辺境の蛮族どもが、古代の遺物か何かの奇妙な魔導兵器をいくつか振り回した程度の一件でしょう。本国の中枢がここまで大袈裟に動くなど、他国への示しがつきません。皇国の威信に関わりますわ」

 

「我が方の1個大隊が『消滅』しているのだぞ、エルト局長」

 

海軍の老提督が、不快そうに髭を揺らして苦々しく言った。

 

エルトはふんと鼻で笑い、冷ややかに言い放った。

 

「所詮は属州の二線級部隊でしょう。ラーク総督の指揮能力が絶望的に無能だっただけに過ぎませんわ。我が皇国の誇る本国正規軍の魔導戦列艦や、主力竜騎士団を投入すれば、あのような亜人の群れなど数日で塵に帰せます」

 

ラークの名が出た瞬間、周囲の官僚たちが露骨に視線を逸らした。だが、その楽観論を冷徹に切り裂く声が響く。

 

「……私は、第一外務局長ほど楽観的にはなれませんな」

 

静かに資料をめくったのは、第三外務局長カイオスだった。

痩身で長身の男であり、常に感情を排して事実のみを追う、帝国中央でも稀有な現実主義者として知られている。

 

「大隊の壊滅そのものよりも深刻なのは、生還した兵士たちの証言が、我が国の『軍事常識』から完全に逸脱している点です」

 

カイオスは淡々と、しかし確実に室内の熱を奪うように告げた。

 

「空を飛ぶ鉄の船。魔法障壁とは異なる、目に見えない無形の盾。地平線の彼方から正確無比に降り注ぐ、雷鳴のような未知の長距離砲撃。そして、飛竜を瞬時に消滅させる光線。……これらがすべて、誇張のない事実だとしたらどうするのです?」

 

「馬鹿馬鹿しい! どこぞの神代の御伽噺ですか!」エルトが机を叩いて声を荒げる。

 

「仮に古代魔法帝国のロストテクノロジーの発掘品、あるいはそれらを量産する技術を保有している集団なのだとすれば、それは一地方の反乱分子などではない。国家戦略級の『最高特異点』だと言っているのだ、エルト」

 

カイオスの冷徹な指摘に、会議室は再び沈黙に包まれた。言葉だけを聞けば荒唐無稽。だが、現実に飛竜部隊が「何もできずに墜ちた」という結果が、その重みとなって一同にのしかかる。

 

「……しかし、その『脅威』とやらがもたらす経済的側面も、無視するわけにはいきませんな」

 

ここで、これまで沈黙を守っていた財務局長が、欲深い目を光らせて口を挟んだ。

 

「何ですって!?」エルトが鋭い視線で睨みつける。

 

財務局長は臆せず、手元の交易統計を提示した。

 

「すでにミューズの闇市場、および東部属州の商人たちの間で、コホート社製の『民生品』が信じがたい高値で取引されている。奴らの持ち込んだ農具を使用している地域では、生産効率が3倍以上に跳ね上がっているとの報告もあるのだ。さらに、いかなる高熱病も一晩で治癒する魔法の薬……。もし、これらの交易を皇国の管理下で『正式化』し、関税を徴収できれば、我が国の国庫には莫大な利益が転がり込む計算になる」

 

その瞬間、室内の空気が三度(みたび)、変質した。

軍人たちは軍人のプライドから不快そうな顔を隠さず、官僚たちは利権の計算で目を細め、商人派閥の貴族たちは新たな富の匂いに鼻を蠢かせる。

 

国家という巨大な怪物は、単一の論理では動かない。軍事、経済、権威、外交。すべてが複雑に絡み合い、互いの利益を貪り合っている。コホート・コーポレーションという異物の存在は、そのすべての歯車に、一瞬にして噛み込んでしまったのだ。

 

「……陛下」

 

これまで沈黙を守り、議論を観察していたレミールが、静かに口を開いた。

 

「彼らは極めて危険な存在です。ですが同時に、我が国がさらに強大になるための『利用価値』も秘めているわ。……少なくとも、正面から戦って弾薬と兵を無駄にする段階ではないわね」

 

エルトが即座に、不満を隠そうともせずに反論する。

 

「皇妃殿下! あのような素性も知れぬ辺境の亜人企業を公に認めれば、周辺諸国に対する皇国の『絶対的威信』が損なわれます! 恐怖による統治こそが、我が国の基盤ではなかったのですか!」

 

「では、エルト局長」

 

レミールは、感情の消えた冷徹な赤い瞳を強硬派の女官僚へと向けた。

 

「――あなたは、あのコホートに勝てるの?」

 

「それは……っ」

 

「我が国の飛竜をゴミのように叩き落とし、大隊を姿も見せずに消し去った相手よ。本国正規軍を動かせば確実に勝てるという、具体的な根拠が、あなたのその頭の中にあるのかと聞いているのよ」

 

エルトの美しい顔が、屈辱と怒りで激しく歪んだ。だが、言葉が続かない。この場にいる陸海軍の将官たちも、誰一人として「確実に勝てる」と断言できる者は、一人としていなかった。

 

その完璧な沈黙を見届けた後。

皇帝ルディアスが、ゆっくりと椅子から立ち上がった。全員が弾かれたように椅子を 立ち上がり、姿勢を正して首を垂れる。

 

「結論を出す」

 

ルディアスの低く重い声が、会議室の隅々にまで浸透していく。

 

「現時点において、コホート・コーポレーションに対する『全面的な軍事制裁』は行わない」

 

軍部の強硬派からかすかな、しかし不満げな吐息が漏れる。だが、皇帝の言葉は終わらない。

 

「第一外務局、および第三外務局は連名で、コホート社に対する公式の『使節団』を編成しろ。目的は、公式な限定交易の許可、および外交ルートの開設。……交易という名の鎖で奴らを繋ぎ、その間に奴らの技術、目的、そして軍事力の限界を徹底的に『監視』し、情報を収集する」

 

「陛下……!」エルトがなおも食い下がろうとするが、ルディアスはそれを片手で制した。

 

「敵の真の実力を知らぬまま、プライドのために戦争を始めるほど、私は暗愚ではない、エルト」

 

ルディアスの灰色の瞳に、絶対君主としての冷徹極まる光が宿る。

 

「だが――もし奴らが、交易の枠を超えて皇国の支配権(システム)そのものを侵す実害を出すならば。その時は、帝国の総力を以て、あの白銀の船ごと地上から跡形もなく踏み潰す」

 

「ハッ……!」

 

全閣僚が一斉に頭を下げ、至高の皇帝への絶対服従を誓った。

 

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### 4. 時代の閾(しきい)

 

御前会議が解散し、重苦しい熱気が引いていく戦略会議室。

ルディアスは一人、壁面に掛けられた広大な第三文明圏の地図を見つめていた。その視線は、赤くマーキングされたミューズ周辺の、さらにその奥――コホートが関心を示しているという、東部山岳地帯の広大な鉱山地帯へと向けられていた。

 

「ミスリル、か……」

 

ルディアスは小さく呟いた。

コホート社が、属州の流通を支配する過程で、現地の「ミスリル製品」の回収や鉱床のデータ収集を行っているという報告が、カイオスのルートから密かにもたらされていた。

 

皇国にとっては、精鋭部隊の象徴である頑丈な魔法のような金属。だが、あの異世界の企業が、なぜそれほどまでにその金属を欲するのか。その本当の「価値」を、パーパルディアの誰も、まだ正確には理解していなかった。

 

一方、その頃。

遥か東方のミューズ平原。

夜の闇に紛れて青白い光のラインを明滅させる、巨大グラヴシップ《プロスペリティ》の中央意思決定室でもまた、タドコロCEOを中心に、ミウラ、キムラによる冷徹な「次の四半期の戦略会議」が行われていた。

 

パーパルディア皇国は、限定交易という名の「監視の檻」でコホートを囲い込もうとしている。

対するコホート・コーポレーションは、その限定交易という合法的な窓口を利用して、帝国の喉元にある「ミスリル(プラスチール)鉱山」の利権を合法的に買い叩き、支配圏をさらに資本で内側から窒息させようと画策している。

 

互いに、現時点での全面戦争はコストに見合わないとして、望んではいない。

だが互いに、相手を自らの生存システムを脅かす「排除すべき怪物」として、牙を研ぎ澄まし始めている。

 

平和と交易の仮面を被った、静かなる侵略。

そして歴史というものは――往々にして、双方の合理的な「様子見」の計算が、最も最悪な形で衝突する瞬間へ向けて、音もなく転がり始めるものだった。

 

 

 

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