魔法世界の海に生きる   作:鉄野波琉

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第一章 3話 触れ合う出会い

 駐車場につくと、車を適当に止めて階段を駆け上がる。いつもは咲き乱れる花々を見ながら登っていくが、今日ばかりはそうはいかない。息を荒げながら階段を駆け上がり、頂上に着く。あたりを見渡すと、いつもの花畑が広がる。だが海崎の心は乱れていた。一刻も早く彼女を見つけ出さなければ。

 

「篠葉さん!いますか!どうか返事をしてください!篠葉さん!」

 

 海崎は叫び、歩き回る。あの光は現実の人間を召喚する光。あれは間違いなくここに落ちていた。いるはずなのだ、彼女が。そしてすぐに声が返ってきた。いつもは柔らかな優しい、あの声が。

 

「かいざきさん...?海崎さん!!!」

 

「篠葉さん!大丈夫ですか!」

 

 二人は駆け寄る、そのまま彼女は両手を海崎の胸に当て、ほぼ密着状態となった。

 

「わ、私、あ、あの、信じてもらえないと思うんですけど、ここにいて、えっと、なんていったらいいのか、あの、わたし、はいってきちゃったんです。」

 

 彼女が動揺しきった声で話す。目には涙が浮かび、手は海崎の服を握りしめていた。海崎は彼女を落ち着かせようと肩をもつ。

 

「大丈夫です。どうか落ち着いて...篠葉さんのおっしゃることはよくわかります。私も...この世界に入り込んでしまいした。今私たちは、この世界に存在しています。町の皆もそうです。」

 

 海崎はそう言うと、ゆっくりと彼女から一歩下がった。篠葉も少しづつ落ち着きを取り戻し、両手を下げる。

 

「ご、ごめんなさい...何が起こったかわからなくって...でも、みんなそうなんですか...?」

 

「はい。トントレースの方も同じ状況のようです。下の町で会議がありました。篠葉さんも良ければ、町の方にお越しください。」

 

「わ、わかりました...」

 

 海崎に連れられて、彼女は階段を下りる。不安げな表情が見て取れたが、元から口下手の海崎には、今の彼女にかけられる言葉はなかった。ただ時折彼女の顔を見て、不安にさせまいと軽い笑顔を見せた。それを見た彼女は、少しづつ顔色を取り戻し、小さくうなづいていた。

 

「篠葉ちゃん!良かった無事ね…いえ、この世界に来ちゃったことは良くないわね…」

 

 町に戻るや否や、菊地が篠原に駆け寄り手を握った。彼女なりに篠葉のことをずっと心配していたのだろう。だが菊地の言う通り、この再開は決していいものではなかった。これでアイセントのプレイヤー全員が転生したことが判明してしまったのだ。

 

「心配かけてごめんなさい…できることなら何でもしますから、わ、私も、もっと皆と話せるようになりますから、えっと、ど、どうかよろしくお願いします…」

 

 篠葉がなんとか声を振り絞り話す。如何せん町の皆が彼女のことを見ていたために、緊張してしまったのだろう。

 

「無理しなくて大丈夫よ。今は一旦落ち着いて、お茶でも飲んでゆっくりしましょ。その後は、今日の夕飯を作らなきゃね。」

 

 菊地が篠葉をなだめる、取りあえずは店長に任せれば大丈夫だろう。海崎もようやく肩の力を抜く。

 

「普通に飛行魔法が使える奴に頼めば早かったろうに、お前ときたら何も考えずに突っ走ってたなぁ。普段は合理的とか言ってる奴にしちゃ随分無計画だなぁ、ん?」

 

「…お世話になってたんだ。人として心配するだろう。少し焦っただけだ。」

 

「まっそうだな。今はそれだけってことにしとくよ。」

 

 こんな状況でも余計なことを言ってくる鉄野に少し面倒臭さを感じていたが、残念ながら事実であったために海崎は言い返すことができずにいた。虫の居所が悪いので無理矢理話を変えることにする。

 

「それよりも他に気になることがある。こんな大事件となればギルドに騎士団、中央委員会も大慌てだろう。」

 

「そうだな、もう少ししたらトントレースの方も何とか落ち着くだろ。そしたらまたそっちの住人さんに聞いてみるべ。」

 

 海崎の周りは取り敢えずの落ち着きを取り戻すことには成功した。だがそれは人口の少なさとアイセントの人たちが穏やかな性格であったことが大きい。

 

(上の組織の連中、上手くまとまってくれるといいが…流石に転生したとなればロールプレイではないからな…)

 

 海崎の知る組織達は、エイナスの中心的存在としてこの世界の統率者のようにロールプレイをしていた。しかし転生したとなった以上ロールプレイをしている場合ではないことは分かっているだろう。だが逆に言えばこれからはロールプレイではなく実際に統率者、言うなれば政府としてこの世界の住人を導かなければならなくなる。だがプレイヤーの中身はごく普通の一般人だ。果たして上手くこの世界を統制してくれるだろうか…考えれば考えるほど、海崎には不安が積もっていった。

 

 

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