最忠の犬と、万魔の主 作:マタマタ
お気に入り50………50?5じゃなくて?
評価9……2つ?二つも?マジでありがとうございます!!
これからもどうぞよろしくお願い致します。そして評価とコメントのほど、どうかよろしくお願い致します。
ブルアカのガチャの結果は……ふふっ、大爆死です。
流石に便利屋のみんなへの愛は止まりませんでした……所でドレスイブキちゃんとマコト様の実装まだですか?
ゲヘナ学園には、ゲヘナ学園・万魔殿所属の2年生、棗イロハだけの「秘密のサボり部屋」が存在する。
ふかふかのクッションに、適度な日当たり。
「はぁ……やっぱり、ここが一番落ち着きます……」
イロハはごろりと横たわり、お気に入りの小説を片手に、至福の時間を噛み締めていた。
今日も今日とて、議長室ではマコトが「書類が多すぎる!」と騒いでいたはずだが、そんなものは知ったことではない。自分には自分の、命を守るための休息が必要なのだ。
「肌触りのいい部屋……手を伸ばせばいつでも取れるお菓子に本、もうずっとここでこうしていたい……ここならあの怖い先輩もいないですし」
「私ってそんなに怖いですかね」
「!!?」
突然の涼やかな声に閉じていた目を開き、イロハは跳ね起きた。
声の主は万魔殿の専属執事である家留ベル、いつの間にか侵入していた彼女はイロハの前に丁寧な姿勢で座っていた。
「……怖いですよいつも無表情で、何考えてるかわからないですし、頭がいいし……あと身長が高くて力が強いから、持ち上げられた時なんてもう…」
「これでも頑張って表情を動かそうとしてるんですけどね……力も頑張って押さえに抑えてますし」
「抑えてあれなのが余計に怖いですよ。──所でなんでここにいるんですか? と言うかどうやってここを見つけたんですか?」
「私は鼻がいいので」
ベルは頭の上の犬耳をピコピコと自慢げに動かしてみせる。燕尾服の裾から覗くフサフサの尻尾が、床をパタンパタンと嬉しげに叩いていた。どうやらイロハの匂いを追ってここまで来たらしい。野生の勘が有能すぎて恐ろしい。
「……えっと、私に何か用ですか? 今日の分の仕事は全部終わらせたはずですけど」
「ご安心を、仕事のお話ではありません。先ほどまで出かけていたサツキ様、そしてチアキ様、イブキ様がケーキを買ってきておりまして、ぜひ皆様で食べましょうとなりまして。私はマコト様に『イロハを連れてくるように』と命じられ、ここまでやってきました」
「そう言う事だったんですね……わかりました、すぐに行きます」
ケーキ、しかもイブキが待っているとなれば話は別だ。イロハがホッと胸をなでおろし、ソファから立ち上がろうとした、その時。
「所でイロハさん」
「はい」
「イロハさんってちっちゃくて可愛いですよね」
「……はい? いきなり何───……っ!!」
本能的な危機感を察知したイロハは、すぐさま立ち上がり、移動し自身の愛用武器である万魔殿制式拳銃を取りベルの方へと向ける。──が、時すでに遅し。
すでにベルは超スピードで彼女の後ろへ回り込んでおり、逃げ道を完璧に塞ぐ形で、背後からギュッと抱きつかれ、そのままお抱っこで持ち上げられていた。
「………ベル先輩、私、自分で歩けますよ」
「まあまあ、私が運んだほうが早く目的地につきますし。マコト様にも『見つけ次第即連行だ!!』と言われておりますし」
「だからって何もこうする必要は無いんじゃ……」
「すみません、可愛いイロハさんを見ているとついつい」
「ついついじゃ無いですよ……」
「さあ行きましょう、皆様が待っています」
「せめて部屋の前ではおろしてくださいね」
結局イロハは最後の最後まで下されることはなく、マコト達のところまで連行された。少し不機嫌ではあったが、イブキの笑顔とケーキのおいしさに免じ、気を持ち直しその時間を楽しんだ。
こうして、ケーキを食べ終えて一息ついた後のこと。仕事がやっと終わったベルはチアキとサツキを連れ、イブキと共に遊びに出かけており、その間ベルが手際よく空いたお皿やフォークを片付けていた。
そこへ、食後の紅茶が入ったカップを片手にしたイロハが、足音を忍ばせるようにして近づいてくる。ベルの手伝いをしてくると言って、マコト達とは別れたようだ。
「……ベル先輩」
「おや、イロハさん。私が入れた紅茶はお口に合いましたか?」
ベルは振り返り、いつも通りの誰に対しても崩さない無表情のまま呟いた。。頭の上の犬耳がピコッと小さく揺れる。
イロハはカップを口元に運び、ふぅ、と小さく息を吹きかけてからジト目を向けた。
「紅茶は…文句なしに美味しかったです。それはそれとして」
「はい、それとして」
「本当に部屋の前でおろしてくれないなんて、どういうつもりですか……連行中、廊下で他の生徒にすれ違わなかったのが不運中の幸いです。見られたらどう言い訳すればいいんですか」
じとーっと睨むイロハに対し、ベルは困ったように眉を下げてみせる。しかし、燕尾服の裾から伸びるフサフサの尻尾は、床をパタン、パタンと心地よさそうに叩いていた。
「滅相もございません。あれは『見つけ次第即連行』という厳命を忠実に守ったまでのこと。部屋の前でおろしてイロハさんに再度脱走されては、執事としての面目が立ちませんから」
「……本当は、ただ私を抱っこしたまま歩きたかっただけでしょう」
「おや、バレてしまいましたか」
あっさりと白状したベルは、瞳の奥にハッキリとした悪知恵(ともふもふへの執念)の光を宿し、嬉しそうに耳をパタパタと動かした。
「イロハさんのあのサイズ感は、非常に腕への収まりが良いのです。歩くたびに伝わる適度な重みと、ふんわりとした髪の香り……。おかげさまで、先ほどまで溜まっていた私の実務疲労が、綺麗さっぱり霧散いたしました」
「……またそんな恥ずかしいことを真顔で。本当に、無表情なわりに本音のハードルが低いですよね、あなたって人は」
少しだけ呆れながらも、ほんの少し照れながらも、紅茶を一口啜り、イロハは諦め混じりのため息をつく。
「まぁ、今日のところは……ケーキの味と、イブキの笑顔に免じて不問にしてあげます。……ただ、次にあそこ(秘密の部屋)に来る時は、せめてノックくらいはしてください。心臓に悪いですから」
「承知いたしました。次はしっかりと、誠実なノックの後にイロハさんをギュッとして抱っこしてそのまま床にゴローン、をさせていただきますね」
「抱っことゴローンが前提になってる時点で、全然誠実じゃないです」
イロハの鋭いツッコミを受けながらも、尻尾を動かすベル。ベルにとってイロハは可愛い後輩の1人であり、大切な存在であるのだ。