二色の魔眼と錬鉄の呪術師   作:lambdazero

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姉妹校交流戦 五

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 立てた作戦は非常にシンプルだった。

 先ず、雪と乙骨の存在。

 特級とそれに匹敵する化け物。

 本気こそ出さないが、この二人の戦力が強力すぎる。

 向こうの最大戦力は東堂で、これは虎杖とのスパーリングを約束しているため絶対だ。

 東堂は頭のネジが外れているが、気に入った相手には気前が良い。

 指図も大嫌いなのでほぼ間違いなく虎杖との特訓を優先するだろう。

 なら、残った連中は?

「正直言うと他の連中……特に憲紀以外は大して強くはねえ。赤血操術が厄介だがこっちにはイレギュラーの空折がいる」

「いきなり制圧しちゃって良いの?」

 ケラケラ笑って、本気で殲滅すると言い切る雪。

 乙骨が自重しようと言っておく。

 去年やらかしたのが乙骨である。

「いい訳ねえだろ! 建前は交流戦だぞ! お前と悠仁は予想外の戦力なんだよ。で、悠仁は東堂との訓練で引き受ける。だからもう正直今年も勝ったな。余裕だ」

 本来は団体戦。

 種目こそまだ分からないが多分妨害してくる。

 で、向こうの恐怖は乙骨と特に雪。

 京都校の連中には雪の情報が全くない。

 未知の呪術師というか、最早怪物だ。

「私らが集団で動いて、連中の気を引く。連中は間違いなく憂太を狙う。お前はどこに居てもその魔眼で位置を見えるんだろう、化け物。好きに動くとお前のせいで戦況が混乱する。ついてこい」

「人のこと化け物って言うの止めてよ」

「悪い悪い。ただの軽口だ、流せ」

「誹謗ですけど?」

 打ち解けたというか、悪意が無いのが伝わったら随分と軽口を言う真希。

 曰くこの気紛れな伏黒の救いも、虎杖の救いも、事実として見るなら間違いなく善行。

 理由は置いといて、安堵する彼を見てこう述べた。

「お前の存在は、私らに大きな波を起こす特異点。未来を見るのは、一般的な千里眼って奴だ。確定の未来を変えたなら満足だろう。手を貸せよ、お前の目的があのバカなら、条件は回避したんじゃねえの? なら、早々死なねえよ。お前がもう摘み取った。違うか?」

 厄介オタクが、絶対視する五条の存在。

 彼が無事なら、それでいいだろう。

「うん、そうだね。大体回避は出来ると思う」

 おおよその目的は果たした。

 獄門疆持ってるあいつの存在も、大ごとではない。

 最悪渋谷の時に真人を加勢して虎杖が殺せば、間に合う。

 そもそも、この交流戦が終えたら雪は黒幕を攻める。

 幸吉を使って。橋のエピソードの突破はあのナイフで十分だ。

 使い方は単純だし、何なら証拠を見せるか聞いた。

「いや、いい。お前の気紛れでも、津美紀を救えるなら……俺は信じよう。実際、虎杖をお前は助力してる。理由は不純だけどな」

「伏黒、空折は……怖えけど、裏切りはしない。だって、こいつの目的は先生の基盤にした傍観だ。こいつは先生の敵になるのだけはしないから」

 虎杖も言う。五条の執着に誓って、敵対はしない。

 救うことは合っても。

「あんな適当な男の何がいいの? あんた男の趣味悪くない?」

「釘崎さん、推しへの誹謗は捻じ曲げるよ?」

 釘崎に黙ってろと威嚇こそするが。

「いや、お前東堂にも言われただろ。あいつ本当にモテねえんだぞ?」

 真希の指摘にぐうの音も出ない。

 フリーダムな最強に異性は惹かれないと。

「私だけが良さを知っているんだ……」

「空折、本当に東堂にそっくりだなお前」

「シャケ」

 腕組みして唸る雪にパンダと狗巻も言った。

 乙骨も言ってた。似てないし。何故そう言われる。

「兎に角。悠仁は東堂とタイマンで鍛えてこい。空折は私らの援護な。……そもそもお前、戦術はなんだ?」

 戦術レベルで問われる。

 言っても良いけど、どうしよう。

 興味ないし、どの道襲撃されるから。

「えー……見たいの? 私の眼」

 一同の前で今朝縛りを解いたが、向けたのは東堂だ。

 皆に渋々、魔眼を見せることにした。

 眼帯を取って、見せた。

 右の昏い瑠璃、左の鮮烈な螺旋の緑を。

「おい、空折……。お前、何を見てる?」

 真希が鋭い五感で直ぐ気付く。

 違う次元でリアルを見ていると。

「天与呪縛は気付くの速いね。こう見ると禪院先輩の身体、線も点も、随分と少ない……。手っ取り早く私の武器でパワーアップしちゃう? それ以外方法無いよ?」

 笑って見ている視界。

 縛りで見ている対象のみの点と線しか見えないが、真希の身体は天与呪縛のせいか、斬れる部分が極端に少ない。

「私が天与呪縛だからか」

「直感も冴えてる。そう言う意味だけど、どうする? そうすると、さっき言った惨劇も余裕で回避できるよ」

 聞いてるだけなら未来の禪院家の滅亡は避けられる。

 自分への見返りはなんだと真希は問う。

「私がうちのクソ連中を皆殺しにする理由は、まだ聞かねえ。だが呪具だけしか強くなれねえってどういう意味だ」

 つまり、自分の理由を聞きたいと。

 さっき教えたのに。甚爾という、存在を。

「先生に聞けば分かるよ。……それとも、ここで全てを知る? 私というアンサーを持つ奴に、問いを投げて」

 試すように問う。

 性格の悪い雪に、舌打ちして真希は先に断っておく。

「……悪い、恵。お前も多分、関係あることだ。先に聞いて良いか?」

「え? えぇ、別に良いですけど?」

 いきなり振られた彼は戸惑うが良いと言った。

「前から憲紀がうちの宗家がどうとか言ってたんだ。まさか……」

 手招きして、一度立ち上がる。

 ちょっと離れて、コソコソと耳打ちして教えてやる。

 何故、全滅してのか。

 その理由はぼかして、結論だけ言う。

 すると。

 決心は、速かった。

「言って良いんだな? 最悪、恵の立場は最悪になるぞ」

「でも加茂さんがどうせ交流戦で伏黒君に絡んでくるよ。あの人、知ってるから。家系だって」

「だから恵に何か言ってたのか。あの野郎……」

 舌打ちして真希は皆の前で打ち明けた。

 そもそも、真希も真依も彼を知らない。

 一世代前の事を、禪院家は黙っていたから。

 雪が思うのは、よくも同じ天与呪縛を軽く扱えたもんである。

 甚爾で学習しなかったのか。

 戻ってきてから真希は言った。

「……恵。お前の親父、餓鬼の頃蒸発してるんだよな?」

 確認のために聞くと、困惑しながら肯定。

 大きく息を吸って、真希は驚愕の事実を告げる。

「……恵は、私と真依の親戚だ。何故なら、その甚爾って奴は、お前の親父で禪院家から出てった、立派な禪院家の一人だとよ。だから恵は十種影法術を使える。んで、その禪院甚爾はもう死んでる。殺したのは若い頃の悟らしい」

「……はっ?」

 実の父が、禪院甚爾。最後まで知り得なかった事実。

 究極の天与呪縛。呪力を全く持たない鬼神。

 それをもう殺しているのが、五条。

 つまり伏黒の親を。五条が殺しているのだ。

「……マジかよ。どっかで生きてると思ってたら、もう死んでたのか」

「ショックじゃないの? 五条先生が伏黒君の親殺してるのに?」

 死んでた事実の方が大きいのか意外だった雪が聞く。

 彼は、顔も覚えていない親を五条に殺されていても別に良いと言いきった。

 若い頃の五条が殺す。つまり彼が呪術師として見るなら敵対的、親は呪詛師だと理解した。

 どうせネグレクトしていた時点で情もクソも無い。

 それよりは長年の疑問が解けたという。

 何故禪院家に関係ない自分が十種影法術を使えたのか。親戚だったからか。

「その甚爾ってのが、最高の天与呪縛……フィジカルギフテッドだと。呪力を全く持たない、身体能力の極限の強化。私の上位互換だってよ。それになるなら、代償を支払えとさ」

 苦い顔で、ボリボリと頭をかいた。

 何せ真希と真依は双子。

 呪術師として見るに、解釈は同一人物になる。

 今の二人は分割された状態なのだと。

「代償……ですか」

 伏黒が嫌な予感をして促すと、察しはついている虎杖以外の一同は息を呑む。

「そうだよ。完璧になるには、一体化して戻るしかねえ。つまり、真依に死ねって言ってるんだ」

 分割された状態から戻るには、片方が死ぬしか無い。

 未来では、真依が死ぬ。向こうの三年、西宮の警告を無視して真依は実家に戻ったそうだ。

「分かったよ悠仁。マジで悪かった。お前の復讐を私は絶対に否定しちゃいけねえ。今、私は実際皆殺しにしたい気分だ」

「……」

 虎杖は理解は出来るように沈黙する。

 真希は真依を嫌っていない。寧ろ大事に思っている。

 それを未来では実家に殺される。

 ちなみに連中には雪から見ても悪びれた様子は無かったらしい。

「真依が死なないと、私は頭打ちだって。成長できねえ。当たり前だよな。双子で分割された状態ならお互いが足引っ張って、前に進めない」

「おい……空折。これ、マジものの情報か?」

「おかか……」

 混乱するパンダと狗巻に、事実だと認める。

 過去においては確実に合っている。 

 変えようが無いから。

「つまり私は真依が生きている限り、このままって事だ。真依も多分、気付いて居るんだろうな。私に黙って、先に帰って捕まったらしい。……あの野郎、誰が汚点だ巫山戯やがって。そこまで腐ってると吐き気を通り越して言葉も出ねえ」

 真希が何を怒っているのか、雪が言った。

 未来で姉妹を殺そうとするのは実の父、扇。

 子を殺す理由は、自分が当主になれなかった理由が出来損ないの自分の子供にあるからという。

 直毘人は禪院家の方ならマシな部類だ。

 話も聞くし、飲んだくれのジジイでも実力も確か。

 直哉は兎も角、扇は雪を持っても擁護する気も無いクズ。

「特級地雷だよあの人。マジで救いようが無い」

「お前人様の親を……」

 虎杖が苦言を呈するが、言って良いと娘が言う。

 逆恨みも良いところで、この二人は被害者である。

「真依を殺してまで、強くなる気はねえよ。だったら私が当主になって禪院家を変える……と、言いたいんだが。直哉に今の私は確実に負ける、だと。投射呪法に追いつけずボコボコにされて殺されてお陀仏。腹が立つが直哉はうちの最強格だ。納得しかねえよ」

「あのドブカスは甚爾って人に脳を焼かれてるから、格下はまあ見下すよね。ちなみに伏黒君も嫌いだって」

「何でだよ。親戚でも面識ねえぞ」

 巻き込むなというスタンスの伏黒に、お前の親父に脳を焼かれてる厄介オタクが、直伝の術式持ってる息子を認めると思うか? と聞いたら黙った。

 立場が憧れの息子、直伝の術式、才能ありで下手すると自分より強くなる。

 投射呪法も直伝の術式だが十種影法術より歴史は浅い。

 羨望と妬みで嫌われる。

「条件揃うと殺しに来るよ。ま、理由あって撃退されたときに乙骨先輩に救われた情けない人だけど」

「僕もそう言う人は助けたくないかな……」

 クズ過ぎて嫌そうにする乙骨。

 だが、直哉は結構な確率で伏黒を狙いに来る。

 条件が緩いから。渋谷事変の時に直毘人が死ぬ。

 以上だけである。

「ジジイが殺されるのかよ。じゃあ、次の当主は直哉だろうに」

「遺言に条件付きで当主は親戚の伏黒君にしろって書いてたみたいだよ?」

「あのクソジジイ! 地雷仕込むなよ!」

 親戚の伏黒にする理由は投射呪法より十種影法術を持っていたから。これに限る。

 でも、大丈夫。

「まあ、そういうぐちゃぐちゃの腐敗した内戦が起きても多分あのドブカスが結果的に当主になる。その条件付きを私が潰したからね」

「また五条先生かよ! 厄ネタ過ぎねえか!?」

 雪が潰すのは五条の関係。

 だから次の当主になるのは直哉。

 虎杖が呆れている。

 あのフリーダム、影響力がとんでもないと改めて思う。

「そもそも禪院家って五条先生の家と対立して険悪なんだよ。色々あって」

「まぁ、そもそも呪術師であいつのこと肯定してるの珍しいし。うちでも直哉だけだしな」

 最強は疎まれる。

 権力と実力を振りかざす台風みたいな奴が五条。

 呪術師達にとっては毛嫌いにするに相応しい言動。

「モテねえ以前に全体的に全方位で嫌われてる。空折が推してる訳も私には理解できねえよ」

「強者は何時だって孤独だよ」

「格好いいセリフだけど先生には何か似合わない!」

 ツッコミの虎杖の言うとおり、似合わない。

 基本的に色々あって演じているノリの軽さだから。

「ふぅん……。つまり、伏黒は御三家の親戚で、真希さんの身内に近いって事ね?」

「らしいな。津美紀は関係ないのが幸いか……」

 釘崎の要点に、出自を聞いて納得と安堵の伏黒。

「うちのゴタゴタに巻き込む可能性があるなら、悪いな恵」

「いえ、十種影法術を持ってる時点で禪院家の方から接触されても変ではないので」

 改めて、その変のネタバレをした上で聞く。

「私なら、フィジカルで戦うの嫌だから援護に徹するよ。って言うか、前に出たら全滅させるからね」

「僕もそのつもりです。まあ、僕は狙われるだろうけど。東堂さんが虎杖君のトレーニングに付き合うなら、僕はこっちで的になります」

 最強二人は援護になる。

 見せ場というか、フェアじゃない。

 襲撃のことは言わない。

 アレを言うと、雪の立場が悪くなる。

「真依が心配だな……。いや、向こうには西宮もいるし、高専に居る以上は奴等もちょっかいは出さないか」

「向こうの先輩は何か嫌ってるっていうか、露骨に嫌がるよね」

 真依は噛みつくというか、表面上は嫌がっている。

 姉の方は嫌っていないし、理由も知れた。

「理由が分かった。私が実家を出て行って置いてきぼりにしたせいだろ。分かってりゃ連れ出せたのに……」

「今からでも謝ったら?」

 溝の訳が見えたのなら、改善は可能だろう。

 雪の言うことに首肯する真希。

「寧ろこっちに呼び寄せた方が安全だ。あのバカもいるんだ。利用しない手はねえ、そうしよう。悪い。真依は私がやる。ってか、京都に居るのが危険な気がする。実家が近いとクソ親父と直哉あたりが何するか分からねえ。東京に呼ぶわ。最悪悟に介入させる」

 もっと両者の対立が悪くなるが、まあ知ったことじゃない。

 纏めよう。

 先ず虎杖は東堂とトレーニング。

 他は真希が真依を探して説得する。

 このまま行けば、禪院家のバカ共が割り込むかもしれない。

 雪は皆の手伝い。乙骨も援護に入る。

「向こうは西宮が偵察に来るはずだ。あいつ飛べるからな」

「魔女みたいだよねー」 

 京都校の女子は、こう見ると呪術師大人組よりもだいぶマトモだった。

 後輩思いの西宮、普通を保つ三輪、グレてるだけの真依。

 逆に男子は裏切り者メカ丸、自己中の東堂、天然ボケの加茂。

「あ、先輩待って。メカ丸って人を私がやるよ。聞かないといけないことがあるから」

 雪がこのままの展開だとアレだから、裏切り者をちょっと相手してみることにする。

 縛りで口外が出来ないだろうが、揺さぶりをかけて焦らせる。

 動機は分かる以上、奴も一時は生存して貰う。

 こっちに奴が来れば、一気に有利になる。

 裏切り者だから総監部が死刑にしても情報さえ五条に伝われば良い。

「メカ丸? ま、別に良いが。壊すなよ」

「絶対に壊さない。その方が都合が良い」

 何か企む彼女に一同もう気にしない。

 また仕出かす気だろうが……追いつけないので放置で。

「じゃあ、そんな感じで良いんだな。そろそろ寝ようぜ。明日に響く」

 時計を見れば、良い時間だった。

 眼帯をまたつけて、それぞれ皆片付ける。

 パンダの言うとおり、お開きにして各々自分の部屋に戻って行く。

「空折」

 戻っていく雪に、伏黒が声をかけた。

 振り返ると、彼は。

「……津美紀の件と言い、色々教えてくれてありがとう。ずっと疑問だったことが、分かってスッキリした」

「時期尚早だとは思うけど、この交流戦で出来うる事をしておきたいだけだよ」

 礼を言うので、気にするなとだけ言っておいた。

 これはあくまで雪が変化した物語を見るための改変。

 皆が戻り、自分の部屋に戻るや。

「さて……最後の嫌がらせをしてくるか」

 窓から上履きのまま、外に出る。

 闇の中を歩いて行く雪。

 目的は、稼働を終えたメカ丸の部屋。

 ちょっと、前振りしておこう。

 そう思い、暗躍した前夜だった。

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