いつものライブ終わり。
私たちAve Mujicaのメンバーはみんなで楽屋に向かっていた。
先頭を歩くのはにゃむちゃん。
今日は調子が良かったのかいつもよりちょっとご機嫌。
楽しそうに鼻歌まで歌ってる。
その後ろを歩くのは睦ちゃんと海鈴ちゃん。
二人はライブ後の熱気とか今日の調子とか関係なく黙々と歩いている。
なんだか仕事人みたい。
脳内で反省会とかしてるのかな。
そしてさらに後ろを歩いているのが私とさきちゃん。
さきちゃんも二人と同じで黙々と歩いている。
さきちゃんはライブの後とかどんなこと考えてるんだろう。
やっぱり今日の反省とかかな。
それとも次のライブの演出とかなのかな。
気になる。
今度聞いてみよ。
そんなことを考えながら歩いていると、隣を歩いていたさきちゃんが突然立ち止まった。
意図せずさきちゃんを置き去りにしてしまったので振り返って声をかける。
「さきちゃん、どうした、の、」
振り向いた時、豊川祥子はいなかった。
いや、正確に言うと私の視界からズレるように落ちていった。
「え、、?」
ドサッという鈍い音。
私から声が漏れるのとその音が聞こえたのはほぼ同時だった。
さきちゃんが倒れている。
糸の切れた人形みたいに、電池の切れたおもちゃみたいにピクリとも動かない。
いやだ、いやだ、いやだ。
脳が理解することを嫌がっている。
この光景を拒んでいる。
「サキコ!」
そんな時、異変に気づいたにゃむちゃん達が駆け寄ってきた。
私はまだ動けない。
にゃむちゃんはさきちゃんの様子を少し確認すると、
「とにかく、ウミコはスタッフさん探してきて。ウイコも一緒に……、」
と私を見た。
私はまだ声も出せない。
「――いや、やっぱりウイコはそばにいてあげて。ムーコ、私もスタッフさん探してくるから二人のことお願い」
「わかった」
睦ちゃんの返事を最後に沈黙だけがこの場に残る。
睦ちゃんはさきちゃんの近くにしゃがみ込んでその様子を確認していた。
私にも時折話しかけてくれた。
私はまだ動けない。
少し経って、にゃむちゃんたちが呼んできたスタッフさんがさきちゃんを担架で運んでいった。
今起こったことが嘘みたいにその場に残ったのは私たちと沈黙だけになった。
「ウイコ、もう大丈夫だから。とりあえず私たちも休もう」
その声と肩に乗せられた手の感触が私をやっと現実に戻してゆく。
私を支えていた唯一のものが無くなり膝から崩れ落ちる。
残ったものは何もできなかった無力感と膝の痛みだけだった。