新世紀エヴァンゲリオン(The Beginning of the End) 作:Yuinagi715
⏱️ 1997/5/27 from [email protected] Sub 今どこ?
やっほーカイ君。ところで今どこ?
海外にいるのはわかってるんだけどどこにいるかわかんないと心配だよ。
ユイさんも心配してたよ。ゲンドウ君は……別にって感じ。
戻ってくる人かわかったらまた連絡して。
冬月教授も早く戻ってこいって言ってる。またメールしてね。
京都大学 人工進化研究所
「よし。これでオッケー……本当にどこ行っちゃったんだろ……寂しいぞ……」
「そんなこと言っとらんで君は早くレポート仕上げたまえ。五十嵐がいなくなってから手ついてないぞ」
「まあまあ冬月教授。カイ君がいないと少し物足りないですし。マリ、返信はまだなの?」
「ユイさん手伝って……あ、来た!」
⏱️ 1997/5/27 from [email protected] Sub Re:今どこ?
今はイスラエルですね。めっちゃオシャレな街で普通に観光できたかった。
他の国とかも行き来して疲れました。しんどい。
帰りですけど、今週中には帰れそうですね。
あ、あと六分儀さんと冬月教授に面白いお土産あると伝えておいてください。
美味しいお土産も期待しておいてください。できるだけすぐ帰ります。
「今週⁉︎」
「あら、今週帰れるの?意外と早いわね」
「ゲンドウ君、面白いお土産があるんだって!」
「……そうか」
「イスラエルで面白いお土産か。怪しいにおいがプンプンするな。相変わらずおかしな男だ」
「美味しいお土産か……わかってるなあ。カイ君は」
京大の俊英として人工進化研究所に所属していた碇ユイは、のちの「エヴァンゲリオン初号機」へ自身が取り込まれる(接触実験)こととなる、根幹的な理論や生命起源に関する研究を行っていた。六分儀ゲンドウはユイの研究に惹かれ、京大で形而上生物学の教鞭を執っていた冬月コウゾウはここで学生だったユイと出会い、また酒のトラブルを起こしたゲンドウの身元引受人となったことで、運命的な関わりを持つことになる。そして真希波・マリ・イラストリアスは手助けをしつつ飛び級で京都大学に入った生徒であった。そして後の綾波レイなどを生み出すための研究をし、NERV設立にも大いに関わることとなる青年五十嵐カイはマリと仲良くしており、イスカリオテのマリアとして人類補完計画やゼーレについてカイによって知ることになる。
数日後。京都大学の正門から黒い防護服の男を連れ入ってきたのは五十嵐カイ。いつも通り右半分をオールバックにし、もう片方を目元まで前髪を垂れ下げた髪型。後ろの男たちはアタッシュケースを数個持っており、カイは紙袋を所持していた。
「……いつまでついてくるんだ?もういいぞ。そいつをよこせ」
男はカイにアタッシュケースを渡し、去っていった。
「……人騒がしな連中だな全く……大学の敷地内にスナイパーなんかいないっての」
そう言いつつカイは研究室の扉を開けた。
「あ、帰ってきた!長旅お疲れ様!時差は大丈夫そう?」
「おかえりカイ君。本当にお疲れ様。お茶淹れるわね」
「ああ……お言葉に甘えます……ほら。持って帰ってきましたよ。例のお土産と美味しいお土産」
カイはマリに紙袋を手渡した。そしてゲンドウの前に行った。
「……六分儀さん。無事に持って帰ってきました」
「……でかした。ご苦労だったな五十嵐」
「本当にその中に入っているのか?あれが…….」
カイはアタッシュケースを机に置き、開けてみせた。
「死海文書。断片だらけですが繋げたら読めます」
ゲンドウはニヤリと笑った。アタッシュケースの中にはちぎられ断片になった古い紙。死海文書であった。
「うへー……本物だ……」
「ゼーレによると裏死海文書がなんとかって言ってましたけど」
カイはアタッシュケースを閉めて、ソファに深く腰掛けた。
「はいお茶。疲れたでしょ。今日はゆっくり休んで。マリ、そっちのお土産はなんだったの?」
「えっと?デーツじゃん!あとはあとは?」
マリは紙袋を漁って騒いでいる。
「冬月教授ワインお好きでしたよね?」
「おお。私の分もあるのか。お返ししてもしきれないな」
すると研究室の扉が開いた。
「冬月、ここのレポート……おお、五十嵐君。帰ってきたのかい」
扉を開いたのは葛城ヒデアキであった。冬月と同じ教授で今年12歳の娘を持つ。
「葛城。五十嵐は今疲れてるぞ。あまり疲れさせてやるな」
「わかってるよ。五十嵐君海外へ行っていたんだろう?どこへ行っていたんだい?」
「えっと、イスラエルとかパレスチナとかヨルダンとか諸々……」
「やはりあれだね。今はどこに?」
「死海文書ですか?あの中に入ってます」
「六分儀君、少し見させてもらっていいかい?」
「構いませんよ」
「全く相変わらずだま葛城は」
「カイ君。一緒にお土産でお茶しましょうか」
「いいですねユイさん!こっちはこっちでしましょ!」
「私も混ぜてもらうぞ」
葛城は冬月やゲンドウと南極の調査の話や葛城調査団について話している。
「……いやあ本当に南極まで五十嵐君にはついてきてほしいよ……って無理か」
「えっ……僕?」
「葛城。五十嵐は今忙しいんだぞ」
「わかってるよ。冗談だ。そうだ。また娘を大学に少し連れてこようかと思っててね。ずっと1人にさせてしまっている」
「お前のせいだろ」
「そうなんだけど……ここで少し預かってもらうのは駄目かな?色々あってね」
「それくらいはいいが……まともな世話はしてやれんぞ」
「じゃあ私たちでやりますよ冬月教授!」
「真希波がか?『たち』とは誰のことだ?」
「もちろんカイ君です!」
「え。なんで僕なん……」
「本当かい?恩に切るよ真希波君、五十嵐君」
阪急京都本線 阪急電鉄
「お疲れのようだね。眠たかったら私の肩を貸してやってもいいんだよ?」
「結構です……」
「あら、失礼しちゃうわね。どうだったのよ?おしゃれとか言ってたけど観光する暇あったわけ?」
「全然。本当に旅行で行きたかった……」
「じゃあさ、いつか研究とか色々終わって、ゲルヒンとか全部終わったら隠居して一緒に行っちゃおうよ」
「……隠居?」
「そ。私とは嫌とか言ったら怒っちゃうぞ?」
新世紀エヴァンゲリオン (The Beginning of the End)
第壱話 約束の意義
翌日 京都大学 人工進化研究所
「ほら。挨拶して」
「葛城ミサトです……」
「前言ってた通りここに少しの間ここに置かしてもらうぞ」
「ああ。真希波頼んだぞ」
「わかってますって。ミサトちゃん!おいで」
「……ミサト。お父さんもう行くぞ」
「……」
カイが立ち上がり、目線を合わせるように屈んだ。
「……ミサトちゃん。お菓子食べるかい?甘いのが好き?一緒に食べようか」
ミサトはカイが手に持っていたお菓子を受け取り、ソファに座って袋を開け始めた。
「おお〜さっすが!いいお父さんになれるぞ!」
「お、お父さん?」
マリはミサト横に座って話して、カイはデスクで作業をしながらチラチラ様子を伺っている。
「……みて」
「?なんだい?おお。絵か。上手だね」
ミサトがカイに歩み寄ってみせたのは動物の絵だった。
「ミサトちゃん、カイ君を相当気に入ったみたいね」
ユイはコーヒーを口に運びながら微笑んだ。
「子供にもモテモテってわけだ。さすがだなあ」
「『子供にも』ってなんすか……」
「五十嵐。死海文書の解読はゼーレで進んでいるのか?」
ゲンドウが話しかけてきた。
「ああ……してはいるみたいですけど……こっちの方が早くできるかと」
「そうか」
「ねえ……あのお兄ちゃん……なんの仕事してるの……」
「あのお兄ちゃんはねえ……世界を救うヒーローなんだよ!」
「それは言い過ぎだな……ただの学生っす……」
カイの電話が鳴った。カイは液晶を見て眉をひそめた。
「すみません。ちょっと席外します」
「ああ……誰からだ?」
「ゼーレです」
そういうと廊下へ出ていった。数分後。カイは帰ってきた。そして席につくなり、難しい顔をしている。
「カイ君なにかあったの?」
正面にいるユイが心配そうに訊いた。
「……いや……進捗を訊かれただけです」
「無理しちゃ駄目よ」
すると研究室の扉が開いた。
「すまんな。今戻ったよ。ミサト」
「お父さん……あのね……お菓子……あのお兄ちゃんにもらったの……」
「そうかそうか……ありがとう五十嵐君。真希波君も。迷惑かけなかったかい?」
「迷惑なんてないですよHP回復しました!」
「そうか。冬月もありがとう。ではまた」
「バイバイ」
ミサトがカイに手を振るとカイは手を振り返した。
中庭
「やっぱりここにいた。ここお気に入りだもんね」
カイがベンチに腰掛けていたのをマリは見つけた。
「マリさん……」
「進捗どうなの?そんで……さっきの電話……ただの状況確認じゃないんでしょ?」
「……貴女に言ってどうなるんですか」
「冷たいなあ……じゃあ……体で払うってのはど?」
「古いですね。やり方が」
「どうなのよ?帰ってきてから元気ないぞ?元気出してこーよ」
「………」
「……前から思ってたけどなんで敬語なの?同級生で同僚だしさ。っていうか私の方が年下じゃないの?」
「……僕は誰にでも敬語使いますよ」
「そっか。それがカイ君のいいとこなのかもね」
「……最近、自分を見失いつつあるんですよ。本当に合ってるのか、何が原動力で動いてるのか、わからなくなってきた」
「……原動力ねえ」
「……さっきの電話も……六分儀さんやあなた方を敵に回すようなことを指示された。……従う理由が……なんでかわからなくて」
「……カイ君でも弱音吐くのね。いいわよ。私でよければ相談乗ってあげるわよ」
「……僕だって1人の人間なんです」
「……そうね。よかったら今日は家に来ない?その弱音が収まるまでさ」
「……お言葉に甘えます」
月日は経った。死海文書の研究は進み、新たな人間の敵使徒が現れること、人間は不完全な知恵の実を持っているということなど、明らかになっていた。葛城ヒデアキ率いる葛城調査隊は南極へのちょさの準備を進めていた。国連の力やゼーレの力を借り、その準備は着々と進む。その目的は死海文書により明らかになった第1使徒アダムと呼ばれる生命体の発見とその調査、及びS²理論の解明であった。
人工進化研究所
「『第1使徒アダム』ねえ……」
マリはホチキスで止められた資料を捲りながら言った。
「難しいわよね。死海文書」
ユイはマリの後ろで資料を見ながら言った。
「カイ君とゲンドウ君だけしかわかってないじゃん」
「……そう言われても僕もわけわからんのですよ」
「そうなの?」
「単語の意味はですよ。なんとなく内容は理解できるけど……」
カイに電話がかかってきた。
「またかよ……南極の件で血が騒いでるのか全く……」
カイは電話を耳に当てながら扉を開いた。十数秒後。カイの驚く声が聞こえてきた。そして研究所の中に戻ってきた。
「ど、どうしたのカイ君なんかびっくりしてたじゃん……」
「……南極……ついて行けって……」
「ええ⁉︎」
「カイ君が……?」
マリは驚きの声を上げ、ユイは目を見開いていた。ゲンドウは微動だにしておらず、冬月は眉をひそめてカイを見ていた。
「五十嵐……ゼーレは何を考えている?」
「……わかんないです……ちょっといってきます。葛城教授に伝えなきゃ」
「うん。気をつけて……」
ユイは胸に手を当てて心配そうにカイを見守った。
「……六分儀。最初からわかっていたような顔をしているな」
「……ええ」
中庭
「とまれ」
カイの背中に冷たいものが当たっている。カイは感触ですぐわかった。拳銃だ。
「……なんのようだ……ここは大学敷地内だぞ……」
「先程の電話を聞いたな」
「……ああ」
男は拳銃を下ろした。その男の周りにいた2人がカイの腕を縛る。そして拳銃を持った男は音声伝達装置のようなものをカイに向けた。その装置からは男の声が聞こえてくる。
「ご苦労だな五十嵐君……先程の券は承諾ということでいいか?」
「あ、ああ……葛城教授にも言ったし……」
「よかろう。君に一つ任せたいことがある」
「……なんだ?物騒なことじゃないだろうな」
「勘がいいな相変わらず……南極にアダムがいることは確実だ。S²理論の実験時に君に小細工をしてほしい」
「小細工?」
「そうだ。内容は追って伝える。そしてその手がかりとして一ついっておこう。『ロンギヌスの槍』だ。君ならそれが何かわかるだろう?」
「……ええ……」
「ならいい。我々はこれで去る。研究に励みたまえ」
男たちはカイを解放し、去っていった。
「……ロンギヌスの槍……アダム……S²理論……」