異能コレクターは気がつかない   作:永戸陽介

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第11話「初見殺し」

初見殺しという言葉がある。

簡単に言うと、事前知識がなければ確実に助からない出来事のことだ。

 

最強の能力トークでは、この「初見殺し」を含む能力の話題がよく上がっていた。

 

認識範囲外からの遠距離狙撃、不可視の即死攻撃、耐性のつけられない行動制限やダメージ、とまぁ挙げればきりがないものだ。

 

これに対抗するには、事前に何とかして情報を集めて対策を練るか、それらによって命が脅かされないほど耐久を固めるか、それらが通用しないレベルの能力で相手を上回るか、それこそ委員長が言ってたように未来でも見て予測するか、大体この辺の手段に限られる。

 

 

地面にうつ伏せで倒れ込み、血が大量に流れ出る感覚に身を任せながら、俺は『高位回復(エクスヒール)』を自身に向けて唱える。

 

攻撃を知覚できなかった。

気がついた時にはもう血が噴き出していた。

 

目に見えない速度で斬りつけられたり、カマイタチのような魔法であれば、何かしらの事前動作があるはず。

もしその事前動作を隠すために何かしらの細工をしていたのなら、何かしら動きに違和感があったはずだ。

いや、それすら違和感なく実行できる実力者の可能性もあるか。

 

「近づくな!!!!」

 

レーザーが再び光線を放つが、やはりメスガキと名乗っていた幼女の少し手前で分散する。

 

「お姉さん大丈夫?♡凄く痛そう♡使った方の爪が全部剥がれちゃうなんてかわいそ〜♡」

 

レーザーが鈍い声をあげて倒れるが、自身の回復を優先させる。連行するとか言っていたんだ、すぐに殺したりはしないんだろう。お約束というやつだ。

 

「わたし的にはお姉さんの事はど〜でもいいんだけど♡元帥の命令だから殺さないであげるね♡逃げられたらめんど〜だから両足は使えなくするけど♡」

 

レーザーに視線をやると、両足の肉が削ぎ落とされていた。まただ。また何の音もしなかった。

 

「大人しくしててね♡私はちょっと、お兄さんと話があるから♡」

 

バレてたか。まだ能力の検討がついてないのに。

 

傷が治り切ると同時に立ち上がる。

服は修復している余裕はない。今気がついたが部屋着じゃないか。もっとカッコいい装備に変更すべきか?

 

「絶対仕留めたと思ったのに♡雑魚にしてはタフじゃん♡」

 

こちらに向かってゆっくりと歩んでくる。

斬撃は、こない。今度は何も見逃さない。

『集中力強化』を使用して相手の一挙手一投足に気を配る。

 

「でも回復能力って微妙〜♡事後対応しか出来ないよわよわ能力♡期待はずれ〜♡」

 

「その回復に自慢の初見殺しが阻まれた気分はどうよ、メスガキちゃん」

 

初見殺しの対応法、その攻撃を受けても耐えられるように守りを固める。

 

 

『表皮硬化(ハードスケイル)』で全身の硬度を上げ、『魔法自動行使術式』に『高位回復(エクスヒール)』を設定する。

 

斬撃に対する耐性を持つ『鉄の鎧 Lv.8』を装備し、一定回数斬撃を防げる『ヒーローシールド』を左手に構える。

 

右手には『ノーマルソード』を持ち、『自動反撃の型』で、カウンターの準備をする。

 

 

「え〜♡なんかいっぱいでてきた♡すっご♡もしかして監視隊の遊撃要員だった?♡」

 

こない。まだこない。どこから来る。今度は見逃さない。絶対に。

 

「ん〜♡じゃあちょっと私も遊んじゃおっかな♡」

 

装備していた鎧が塵紙のように細切れになる。

構えたヒーローシールドはダンボールのように引き裂かれる。

ノーマルソードは棒切れのように刀身が折れる。

そして再び、胴体の前面から血が吹き出す。

今度は左肩から右脚にかけて。

 

しかし先ほどとは違い倒れ込まない。

『魔法自動行使術式』に設定された『高位回復(エクスヒール)』が、直ちに傷を癒す。

 

「自慢の対策がぜ〜んぶ無意味だった気分はどうかな♡お兄さん♡」

 

目前まで一瞬で移動してきた幼女を、集中力強化で辛うじて捉え、刃が折れたノーマルソードでのカウンターを試みる。

 

しかし、ひらりと受け流され、逆に強烈な一撃を、傷が治りきっていない腹に叩き込まれる。

 

1発の衝撃が何倍にも増幅していき、遥か後方へ殴り飛ばされ、建物の外壁に激突する。何本かどこかの骨が折れたような気がする。回復が、追いつかない。

 

「あと、わたしは滅ガキだから♡メスじゃなくて滅亡の滅♡お兄さんみたいな雑魚を何人も滅してきたから、そう名乗ってるんだよ♡聞いてますか〜♡」

 

まだ能力が分からない。

こういう時はスマートに、さっと相手の能力を見破って、適切な戦法で戦わなければならないのに。

 

1つも動きを見逃さないようにした。可能な限りの斬撃対策をした。程度の差はあれど、何かしら威力が弱まったりなどの違いは現れるはずだった。

 

しかし結果は、集中力強化を使用しても何の動作も見えず、防具と盾と武器は同時に破壊され、先ほどと全く同じだけの外傷を負った。ただの斬撃じゃない。

 

身体能力も高すぎる。カウンターを避ける反応速度、ひと回りは大きい自分を簡単に吹き飛ばせる殴打。威力が増幅したのも妙な感覚だ。

 

「これが、能力バトル…」

 

「まだ生きてるんだ♡じゃあご褒美をあげるね♡」

 

周囲のビルが音を立てて崩れ、こちらに倒壊し始める。

 

まだ体は回復しきらない。

 

「ビルの墓標♡贅沢に4本♡手持ちのアイテムで防ぎ切れるかな♡」

 

命のイアリングを再び装備する。

 

倒壊する建造物たちは、既に頭上のすぐそこまで迫っている。

 

「『絶死波動(リードエンド)』」

 

滅ガキと名乗った幼女に向けてそう言い終えると同時に、頭部に瓦礫が直撃する。再びイアリングが砕け散った。

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