異能コレクターは気がつかない   作:永戸陽介

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第13話「滅・メスガキ・クロニクル」

この世界は自由だ。

強者である私は、好きに弱者を虐めて良い。

好きに遊び、好きに殺し、好きに破壊する。

 

夢の中だけの、文字通り夢みたいな空間。

現実では発散できない事も自在に行える。

 

 

好きに暴れた。

境界監視隊とかいうウザイ大人みたいな連中も、何も分かっていない来訪者も、勧誘しにきたどこかの組織の連中も、いたぶったり、建物の下敷きにしたり、命乞いしようが泣き喚こうが、誰も生きては返さなかった。

 

 

「君は、【死の軍勢】に来るべきだ」

 

 

死んだ魚の目をした、自分と同じか少し年下くらいの男の子。【死の軍勢】の死将を名乗ったそいつは、いつもの雑魚と同じように勧誘してきた。

 

「うーん♡私に勝てたらいいよ♡ざぁ〜こ♡」

 

目が気に食わなかったから少し本気を出した。

いつもの雑魚なら手を抜いても余裕。

一瞬で消し飛んで終わりだと思った。

 

「うん。やはり君は【死の軍勢】に入るべきだ」

 

無傷。ムカついた。

この夢を見始めてから、初めて全力を出した。

 

区画が更地になるまで戦った。

そいつは一度も手を出して来なかった。

ただふらふらと何もせず、時折勧誘の言葉を口にする。

 

無性に腹が立った。全てを達観したような目が。見下しているような目が。

 

自身の破壊衝動に従って、夢を見るたびに戦い続けた。人質を取ったり、無関係の者を巻き込んで暴虐の限りを尽くしてみたが、まるで効果はなかった。

 

多分1週間くらいはそんな夢を見続けた。

限界が来た。飽きたと言って良いだろう。

 

何をしても無反応な、壊れない相手を攻撃し続けることに、嫌気が差した。

終わりのない無意味な時間は、楽しかった夢の時間を台無しにしていた。

 

「これが行末だよ。破壊して、破壊して、破壊し続けて、その先には何もない。その最中だけは嫌な事を忘れられるだろうけど。目的が無い行動に意味はない」

 

「だから手下になれって?偉っそうに♡本当にムカつく♡」

 

「手下になれと言った覚えはないよ。君ほど【死の軍勢】に適した人間はいない。君は目標のある蹂躙を永劫に楽しめる、それを勝手に僕が役立てる。上も下もないだろ」

 

「じゃあ私に命令すんな♡うっざい♡」

 

「命令が嫌なら指令しようか。それともお願いが好みかな」

 

「きもっ♡私の行動に指図するなって言ってんの♡頭よわよわ?♡」

 

「自由に暴れ回った結末は今見せた。何も残らないと分かったはず。これが最後だ。【死の軍勢】に来い。来ないならお前の夢はここで終わりだ」

 

あの時の視線を忘れた事はない。

 

7日間の戦闘すら、全く本気では無かったと、こちらを見る、黒よりも黒い漆黒の目がそれを示していた。

 

いつでも殺せる相手を7日間も掌の上で弄んでいたのだと。

 

「ん〜、何するかによるかな♡君の命令が死ぬほどつまらないなら、ここで死ぬのと変わらないし♡」

 

せめてもの抵抗だった。

利用されて死ぬくらいなら、利用されずに殺された方がまだマシ。

それは実質、勝ち逃げのようなものだから。

 

「心配しなくて良い。別にやる事は変わらない。君は今まで通り好きに暴れて、ついでに使える人と使えないゴミを選別するだけだ。後は僕みたいな面倒な奴に目をつけられないように、攻撃する相手を少し減らすくらいか」

 

「めんどくさ♡それにやる事が変わらないなら、結局ここに辿り着くだけじゃん♡」

 

「どんな願いでも叶う世界があるとしたら、君はどうする?」

 

急に会話の内容が変わった事に私は戸惑った。

この夢も希望も持っていなさそうな奴が、突然ロマンチックな事を言い出した事に、不気味さすら感じる。

 

「なにそれ♡夢の中で何か叶えても現実に関係ないじゃん♡意味な〜い♡」

 

「すまない。言葉が足りてなかった。願いは現実にすら影響を及ぼせるものだ。どうする?」

 

「どうするって…」

 

願い、現実で叶えたい願い、そんな会話をしたのは、いつ振りだろうか。

 

「今無理に言う必要はない。僕らの目標は、その願いが叶う世界に辿り着くこと。君の力は、そこへ到達する柱になる。だから無意味にはならない」

 

「…利用するだけ利用して、どうせ君の願いを叶えたら、さようならでしょ。分かってるんだから」

 

「自覚は無いだろうが、君は今色んな人達に狙われている。僕と同じくらい強い奴が、あと7人、いや8人くらいはいると考えてくれ。彼らは君を問答無用で始末するつもりだ。君の脅威が、彼らにとっての利用価値を上回ったんだよ」

 

コイツと同じような人間と遭遇するのは、確かに面白くない。何故なら今も非常に面白くないから。

 

「その話の信頼性は?…♡」

 

「さっき僕は選別して欲しいと言ったね。当然、願いを叶えられる人数には限りがある。だから僕たちは、最初から人数を絞っているんだ。勿論、貢献度に対して順番はつけているけど、選んだ人を見捨てるつもりはない」

 

「それで?♡」

 

「他の組織は選別などしない。無制限に人を受け入れて、利用し搾取する。上と下をつくり、下の者に希望だけちらつかせて、最後に上だけが願いを叶えるつもりだ。だから必要以上に上を揺るがす強い駒は必要ない。多少の違いはあるけど、大抵そんなとこかな」

 

「答えになってない♡君の組織がそうじゃない証拠は?♡」

 

黒い目の男の子は少し笑いながら言った。

 

「貢献度によって順番を付けてると言っただろう。それは全員が納得してそうなっている。君の強さならすぐに上の順番になれる。それに誰も文句は言わないし、不満があるなら決闘で上下を示す事になる。それも君の得意分野だろう」

 

「私に都合が良すぎて逆に怪し〜♡」

 

「最初に言ったはずだ。君は【死の軍勢】に入るべきだと。君のような存在が、無意味に暴れて朽ちていくのはただの損失なんだよ」

 

闇より深い黒い瞳に、悪意や敵意は感じられない。驚くほど無機質で、何かを騙そうという気すら含まれていないように見えた。

 

「最後に一個良い?♡何でそこまで私を勧誘するの?♡1週間も粘着して♡私のこと好きなの?♡」

 

「……てたから……」

 

「え?♡聞こえな〜い♡腹から声出せ♡」

 

「……使える人は何人いても良い。そんな人達が使えない奴と同じ末路を辿るのは見たくない。それだけだよ」

 

どこか遠くを見つめている。さっき口にした事と違うような気がするが、まぁ気にしなくていっか。

 

「めんどくさくなったら全部壊すから♡それが条件♡それがイヤならさっさと殺せば〜?♡」

 

「それでいい。ようこそ【死の軍勢】へ。いつか来るその時までに、叶えたい願いを考えておきなよ」

 

 

『持たざる者の抵抗』発動から3秒経過。

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