異能コレクターは気がつかない   作:永戸陽介

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第3話「竜殺しの砲撃」

「ドラ、ゴン?」

 

りゅう、龍、竜、ドラゴン。ドラゴン!!

ファンタジーには欠かせない、最強種のモンスター、何なら神に近い存在なことまである。

 

全身が赤黒い色をしており、禍々しい翼を広げ、口から灰色のような光線を吐き散らす。

体長は、恐らく今いるビルよりも少しデカい。ビジュアルをもう少し変えたら怪獣映画になるだろう。

 

おおよそファンタジーとはかけ離れた街並みを破壊していくドラゴンだが、動きが妙だ。飛ぶ気配もなく、執拗に下を向いて光線を吐いたり、しっぽで建物をなぎ倒している。

 

「もうちょいズーム」

 

よく見ると何か小さな粒のようなものが動いている。実質全クリ報酬だった高解像度モードをオンにする。

 

人だ。人間。

 

軍服?のような格好をした人間が数人、ドラゴンに立ち向かっている。1人は剣を持ち、ドラゴンを切り付けているが効果はなく、1人は、たったいま光線が直撃して消し飛ばされた。もう1人は何か攻撃魔法をとばしているが、やはり効いてない。

 

よく見たら地面に数十人も同じような軍服が倒れている。近場のビルにも何人かめり込んでいる。戦況は絶望的と言ったところだ。

 

「中途半端にファンタジー要素いれてきたか。かっこよく助けたいところだけど、あのクラウチングスタートじゃ間に合わないよな」

 

非常に申し訳ないが、ドラゴンはラスボス級のモンスター、舐めてかかってはいけない。今の自分の手札は、大ジャンプ、カマイタチ、望遠鏡、だ。

 

たとえ間に合ったとしても、金網を切れる程度のカマイタチじゃドラゴンには効かないだろう。現に軍服の人が凄そうな剣で何度も切りつけても、傷一つ与えられていな、ん?

 

「あれ?あれって……」

 

もはや、ドラゴンにたった1人で立ち向かっている軍服の剣士、その腰までかかる黒い長髪、仲間が全滅しても諦めずに戦い続ける強さ。

 

「軍服刀剣使いの才女だ!!!!!!」

 

これは、これは流石に助けなくてはいけない。

 

この人を見捨てたら、イカついけど凄い優しい鍛治職人のおじさんも、その服で聖職者は無理だろってお姉さんも、過去に何かあってサボってるけど実はめちゃ強いおっさんも、出会えないような気がしてくる。

 

「何とか、何とかしてあそこまで一瞬で辿り着く魔法と、一瞬でドラゴンを倒せる魔法を…」

 

あ。

 

手元に、手のひらサイズの薄黄色の正八面体が現れる。内部は透けており、中央部分は小さく光っている。

 

テレポーター。

観察した事のある箇所に移動する消費アイテム。

 

先ほどのカメラアクションゲームでは、本来は一度訪れた事のある場所にしか移動できない。

あれは恐らく移動描写の省略だから、能力でもアイテムを使っている訳でもないのだろう。

 

ただ終盤になると、今まで観察する事しか出来なかったエリアに、このアイテムを使う事で立ち入れるようになる。

 

「無意味に値段が高かったの一生忘れないからな。やり込み要素だからってコストかけさせやがって…」

 

そんな事は今はどうでもいい。

望遠鏡を覗いたまま、テレポーターを床に落とす。

ガシャーンと大きな音を立て、内部からゆらゆらと光の玉が浮かび、そして観察している地点にあっという間に到達する。

 

「使う時にわざわざ大きな音を立てて割れるし、発動までにラグがあるから、逃亡手段としての能力は壊滅的だったんだよな…初めて使った時に魔物に囲まれて死んだの、あれは、本当にマジで……」

 

どうでもいいのだ。今は。そんなことは。

 

「光はうまいことドラゴンの頭上あたりに設定できた。あとは…」

 

このテレポーターは、移動地点が地面から離れた高所に設定されている場合、そのまま空中に転移するが、着地するまでの間だけ落下速度が低下して安全に空中落下が可能になる。

 

空中写真を撮るお題をクリアしようとした時に、死亡覚悟で上空をテレポート先に設定した時に気がついた。

 

「試してる時間はない、本番一発勝負!『テレポーター使用 』」

 

目の前が明転し、次の瞬間には空中に放り出される。

しかしやはり、低速落下の効果は健在だ。観覧車よりも若干早い程度。これなら怖くない。

 

軍服刀剣使いの才女は、と下に目をやる。

ちょうどその時、彼女がドラゴンを斬りつけた剣が、パキッと折れてしまっていた。

 

攻撃手段のなくなった彼女が体勢を立て直そうとした隙を見逃さず、ドラゴンは痛烈なテイルアタックをぶちかます。直撃しビルに叩きつけられても尚、立ち上がろうとする彼女に、ドラゴンは光線でトドメを刺そうとする。

 

「ドラゴンバスターキャノーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

射程距離がカスだった時を考慮して、ギリギリまで使用を粘っていたが、流石に悠長な事もしていられないと、魔法を発動する。

 

突き出した拳からはモノクロの砲撃が射出される。

その弾道はドラゴンの体を上から貫通し、地面にぶつかるとすぐに、衝撃と共に消え去る。

その衝撃でドラゴンの全身は紙屑のように崩壊し、その破片すら土煙になるまで小さく分解されていく。

 

「ドラゴンだけを即死させる、超汎用性が低くて対人戦ではまるで役に立たない魔法。攻略でも、そもそも希少アイテム集めて習得するより、普通にレベル上げて攻撃した方がマシ、レベル制限のあるダンジョンではまさかの使用不可、しかもエフェクトは地味と散々な評判だった、この魔法。遂に大活躍と言って良いんじゃないか〜〜!?」

 

昔ハマっていたRPGの、いわゆるゴミ魔法枠。名前がカッコいいから習得してみたものの、本当に割に合わなかった。

 

しかし準備がまるで不足しているのにドラゴンを一撃で倒さなければならないような、今の状況なら神魔法も良いところだ。

 

「この調子で、色んな魔法や能力を使えるようになってやるぞ〜!!夢の異世界生活に向けて!!!!」

 

正直、記憶があやふやで一回しか使った事もない魔法すら再現できるなら、俺の手札は今まで見てきた作品の能力の数だけ存在する事になる。

 

異世界で無双する日も遠くはないだろう。

 

「おっとまずい、まずは軍服刀剣使いの才女を助けて、初ヒロイン獲得しないと」

 

____リリリ____

 

「回復魔法も多分使えるし、いや回復アイテムとかを出した方が良いのか?」

 

____リリリリリリリ________

 

「アイテムも出せるなら装備とかも出せるか?2人の刀剣使いとして活動しても……」

 

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ

 

「うるっさいなぁ!!!もう!!!」

 

目覚まし時計を叩きつける。

時刻は7時を指していた。

 

「ぁ」

 

何も変わらない、自分の部屋の風景。

 

「ぁぁあ」

 

手の平には棒人間が書いてある。服はパジャマ。

カーテン越しに陽光が差している。

まもなく、少しずらして設定していたスマホの目覚まし時計も鳴り始める。

 

「ぁぁぁぁぁぁもうなんだよぉぉぉぉ」

 

夢はいつも良いところで覚めると知っているはずの少年は、小さく悲痛な叫び声をあげる。

 

程なく起き上がって、毎日つけている夢日記を書き上げる。今日の夢は割と長く覚えていられる。記憶がしっかりあるうちに、書き込んでおかないと。

 

どうか、次の夢が今日の続きである事を祈って、少年は夢日記を書き終えた。

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